第二百四十一話 拮抗する勝負
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
燃え盛る闘志の炎で熱せられた極上の息が口から漏れ、額から流れ落ちる汗を瞬時に蒸発させる程の熱量を体が帯びる。
沸点を超えた熱き魂がぶつかり合い冷涼な空気を震わせ熱波へと変換。見ている者の心さえも熱くさせる激闘の火蓋が切って落とされた。
「くらぇぇえええ!!」
正面から一切の小細工を省いた全身の肌が泡立つ右の正拳が襲い来る。
「甘い!!」
左手で弾き己の得意の距離に身を置こうと足を運ぶが。
「逃がすかぁ!!」
それを見逃す獣では無い。
「くっ!!」
姿勢を低く、まるで草を食む飛蝗を捉える燕の飛翔にも似た軌道で容易く追いつかれてしまった。
全く!! 苦労するよ、コイツの相手は!!
「し、しつこいぞ!!」
燕の軌道を予測して右拳を打ち下ろすが。
「遅い!!」
最小限の頭の動きだけで躱し、お返しと言わんばかりに激烈な拳を解き放った。
「つっ……」
防御した腕が痺れる程の拳圧。流石、首席卒業は伊達じゃないな。
一進一退の攻防を続けてどれだけ経過しただろう??
己の感覚だと数時間は経過していると認識しているが、恐らく現実では十分も経過していないだろう。
極上の相手に攻めあぐねている訳では無いが、勝利への攻めに至るきっかけが掴めないでいた。
この模擬戦は相手を打ち倒すまで戦うのでは無くて、先に有効打を与えた方の勝ち。つまり下手に攻めて手痛いお返しを食らった時点で負けが確定してしまうのだ。
攻撃の初手には慎重にならざるを得ない。
それなのにコイツと来たら……。数手先の攻撃、相手の反撃、多様な角度からの攻撃等は一切考えず、只々目の前に存在する相手を打ちのめそうとして向かって来る。
それは恐らく考えるよりも行動に移った方が得策だと判断した結果なのだろうさ。
「ふぅ……。もう少し手加減しろよ」
拳圧に押され、トアから距離を取り顎から滴り落ちる汗を拭った。
「あんた相手にはそんなものは不要よ」
そりゃどうも。
最高の賛辞を頂き、さてこれからどうしたものかと思考を繰り広げていると。
「さぁ、続きよ!!」
獰猛な獣が一息も付かせない宣言を放ち再び距離を縮めて来た。
「ちょ、ちょっと待てよ!!」
「うっさい!! はぁっ!!!!」
左の拳を人体の急所の一つである人中へと打つ。
正々堂々。
一切の無駄な動きを見せない攻撃の軌道は美しくそして芸術にも見える。
この攻撃を一般人が食らったら間違いなく致命傷に至るだろうさ。
惚れ惚れして見つめていたいが、生憎これは勝負。
我が分隊へ勝利を届ける為に負ける訳にはいかんのでね!!
「ふっ!!」
下がって躱すのでは無く敢えて前へ出る。
当然、相手は面食らう訳だ。
「っ!!」
ほら、可愛い真ん丸お目目が見開いた。
超接近戦の間合いに足を置き、トアの整った顎先へ向かい左の拳を突き上げようと画策した。
悪いね……。少しの間、地面と仲良く抱擁を交わして貰おうかぁ!!
もう間も無く着弾すると思われた刹那、トアの瞳に強力な光が灯る。その光が第六感に猛烈な危機感を与えた。
ま、不味い!!
「でやぁッ!!」
「あっぶねぇ!!!!」
何を考えたのか知らんが……。女の子が頭突きをするなよ!!
あ、いや。ユウは組手で偶に使用するな。
『はっは――!! 貰ったぁぁああああ!!!!』
『あめぇ!! ウンガッ!!!!』
『ぎぃぃぇえええああ――――!?!?』
超超接近戦を挑んだ赤き龍の突撃を頭突き一発で粉砕してたし……。
『み、み、耳から脳が零れたぁぁ――ッ!!!!』
真っ赤に腫れた額と、片方の耳を抑えて地面の上で悶え打つマイの姿を見て戦慄が走ったのを今でも覚えている。
あの時のユウの姿が役に立つとは……。今度さり気なく礼を伝えよう。
「避けるな!! 折角鼻を折ってやろうと思ったのに!!」
お構いなしの攻撃かよ。避けるこちらの事も考えてくれ。
「多少の負傷は厭わない、か。トアらしいよ」
「そりゃどうも。ほら、続き。始めるわよ……」
軽い笑みが消失すると静かに腰を落とし、再び闘志が漲る。
この圧……。
いいねぇ。ここまで見て来た又は交わして来た戦いとはまるで別物だよ。
決勝に相応しい本物の戦いを続けましょう!!
「いくぞ!!」
「来いっ!!」
俺が純粋な力の結晶を放つと。
「はっ!!」
彼女もそれに呼応して、放った力以上の輝きを返してくれる。
「ずぁっ!!」
瞬時に距離を削り、得意の間合いから磨いた技を見せると。
「温い!!」
まるで磨き足りないぞと、靡く風の如く躱してくれた。
互いに互いを認め合い、どちらの技又は力が上か。単純明快な競いが心地良い。
体力の続く限り魂が燃え尽きるその一瞬まで、いつまでもこうしていたいものだ。
だが……。残念な事に俺の体力は無限では無いので、そろそろ決着を付けようか。
決着が惜しいけどね……。
「お?? 何か思いついた顔してるわね」
「あぁ、勝利への道筋が見えたんだよ」
にっと口角を上げて話す。
「そう……。ふぅん。悪いけど、負けるのはあんたよ」
静かに構えるが、その構えからは豪炎が立ち昇り必勝への道を閉ざさんとする意思が香った。
「「…………」」
互いの闘志が混ざり合い陽炎の如く空気が揺れる。今まで広かった景色が狭まり、もうトアの体しか視界は捉えてくれなかった。
行くぞ。
集中しろよ?? 俺の体。
顎先から落ちた雫が地面に到達すると同時に、音を、そして残影をその場に置き去る。
「なっ!?」
低く、そして速く苛烈に踏み込む姿は相手にはこちらの姿が消え失せたと錯覚するだろう。
視線が下を向くその時を狙い打つ!!
「そこっ!!」
俺の動きを捉えた気持ちの良い拳が上空から降り注ぐ。
だが、これを待っていたんだ!! 拳より速く体を動かし、そして相手との距離を零に!!
肌に生える毛細が相手の衣服の感覚を捉えた。
「このっ!!」
右半身を密着させる俺の体に向かって有効打を与えようとする熱い右の拳が襲い来るが。
「……」
「わっ!?」
右の肩でトアの顎を空へと優しく押し上げ、巻き込む様に襲い来る拳を遮断してやった。
勝機到来ッ!! ここで決める!!!!
「貰ったぞ!!」
大地を捉える爪先から膝へ、柔軟な膝から腰へ。そして、全ての関節を駆使させた一撃を見舞う!!
トアの視界が空から大地へと注がれる前に全関節を起動させて彼女の腹部へと目掛け、体全体で回転する要領で右腕の下から左の掌底を筋肉の最深部へと突き刺してやった。
「ぐぅっ!?!?」
自由奔放に回り続ける独楽の要領で放った掌底を受け止めたトアの体が離れていく。
で、出来た!!
師匠から教わった超超接近戦を制する技だ。
零距離から放つ攻撃は本来の力は半減処か一割にも満たない。しかし、全ての関節をしならせその場に留まりながら独楽の要領で力の重心を移動させれば一撃必殺の攻撃を可能とする。
これも日頃の訓練の賜物だな。
今の攻撃、是非師匠に見せたかった。
「一本。そこまで」
「「おおおぉおおおぉお――――ッ!!!!」」
わっ、凄い歓声だな。
戦いに集中し過ぎていた所為か。視界が元の広さ戻ると同時に鼓膜が痛くなる程の歓声が届いた。
「げほぉっ!! ちょ、ちょっと。あんた……。もうちょっと手加減してよ」
「悪いっ!! 大丈夫か??」
数メートル先で腹を抑えて屈むトアへと駆け寄る。
「何よ、今の技」
「咄嗟に思いついたんだよ。ほら、立てるか??」
嗚咽する彼女へ向かい手を差し出す。
「うん。ありがと」
「よいしょっと。ふぅ――……。ありがとうございました」
彼女を立たせると背筋を正して綺麗な角度で礼を放つ。
礼を尽くす事に勝敗は関係無い。武に身を置く者は相手を敬う心を持つ事が大切なんだ。
師匠にいつも叱られながら説かれているんでね。
「どういたしまして。くっそぉ……。今日こそは勝てると思ったんだけどなぁ」
「何度か危ない場面があったぞ」
「あぁ、頭突きの所?? 惜しかったわねぇ。あんたの鼻、曲げてやろうと思ったのに」
人差し指を折り曲げ、俺の鼻をピンっと弾く。
「いてっ。それより、リネアに使用した技は何で使わなかったの??」
「あんた相手に一度見せた技は通用しないからね。あ――あ!! 使うんじゃなかったなぁ!!」
そんな事言われましても……。
「まっ、今日は負けてあげるわ。次は私が勝つからね」
そう話すと右手を上げる。
「その時は宜しくっ!!」
「んっ!!」
彼女の手に誘われるがまま右手を勢い良く合わせ、軽快に響いた音が此度の戦いの終了を告げた。
よしっ!! これで先ず一勝だ。
第五区画の優勝まで後一人!!!!
「先輩、負けちゃいました!!」
「嬉しそうに言わないの。トアの仇は私が取るわ」
「宜しくですっ!!」
トアとイリア准尉が手を合わせ、あちらでも乾いた音が響くと分隊を率いる大将が静かな足取りで戦いの場へと降り立った。
「お待たせ、レイド」
「首を長くしてお待ちしておりましたよ」
「ふふっ。そう焦らないの。じっくり痛め付けてあげるからさ」
片目をパチンと閉じると赤の紐で髪を後ろに纏め始めた。
やっべ、イリア准尉も本気か。准尉は特に集中したい時に髪を纏める癖があるからな。
トアと同じく集中しないとあっと言う間に有効打を食らってしまいそうだ。
固唾を飲みその時を待っていると。
「「「「イリア准尉――――――っ!!!!」」」」
本日一番の声援が観衆の中から轟いた。
うるさっ!?
何!? この大声援!?
「あ、あはは……。どうもぉ……」
イリア准尉が小恥ずかしそうに観衆から浴びせられた声援に対してヒラヒラと手を振る。
「「きゃ――ッ!! イリアせんぱ――いっ!! かっこいい――!!!!」」
「あ、ありがとうねぇ」
「…………。人気者ですね??」
男性からだけでは無く同性からも熱い声援が送られている。
これは一体??
「何か、さ。勝ち進んで行く内にどんどん増えていっちゃったのよ。アレ」
「アレ、ですか」
「「「イリア准尉――!! 絶対勝って下さいよ――ッ!!!!」」」
男連中は准尉へ今も野太い声で熱い想いの丈を咆哮し。
「「きゃぁぁああ――!! カッコいいですぅ――!!!!」」
「そんな田舎者はちゃちゃっと退治してやって下さいね――!!!!」
女性陣は煌びやかな目で彼女を捉えて放さないでいた。
ってか、田舎者なのは自覚しておりますが。もう少し包んで揶揄して貰いたいものだ。
「うん。ほら、私は飛び入り参加みたいなものだから大将を務めなくてもいいってスレイン教官からお許しが出てね??」
じっと静かに佇むスレイン教官へ視線を送る。
「副将のトアがどうせ勝利を収めるだろうし、ここまで体力を温存させるのは不公平だと考えた結果ね」
あぁ、成程。
「コツコツと勝利を積み上げていったら一人、二人と増えていってさ。恥ずかしいから止して欲しいんだけど……」
髪を纏め終えた手をすっと下ろすと。
「「「イリア准尉の勝利を願い!! 必勝の声援を送らせて頂きます!!!!」」」
「「せ――のっ!! イリアせんぱ――いっ!! 頑張ってくださ――いっ!!」」
「あ、あはは……。ありがとう……」
恥ずかしいのなら止せばいいのに。
頬を朱に染め、大声援に向けて右手を小さく振っていた。
「さ、さて!! 勝負を始めましょうか!!」
「そ、そうですね。早く注目から逃れたい事でしょうし……」
俺が准尉の立場なら恥ずかしくて両手で顔を覆っているだろうさ。
「二人共、これから始まる勝負はこの区画の勝者を決める戦いよ。今まであなた達に負けた者の想いを背負い、決勝の名に恥じぬ戦いをしなさい」
「「はいっ!!」」
空に浮かぶ雲を霧散させる勢いで轟く大声援の中。微かに聞き取れるスレイン教官の言葉に頷く。
皆、待っていろよ?? 必ず勝利を届けてやるからな。
後方へ振り返り分隊へ視線を送ると。
「「「……」」」
全員が俺に熱き視線を送り続けていた。
「レイド先輩!! 負けないで下さい!!」
レンカさんの声援に一つ頷き。
「そうですよ!! 負けたら食べちゃいますからね!?」
ミュントさんの声援には愛想笑い。
「負けたら承知しないからな!?」
アッシュには拳を握って見せ。
「程々に――」
シフォムさんには力の抜けた笑みを送り。
「レイド先輩。待っています」
リネアには今日一番の笑みを送ってあげた。
分隊全員の想いがこの肩に、そして拳に乗っている。そう思うと力が漲って来るぞ。
准尉には申し訳無いが負けられない理由があるので勝たせて頂きます!!
両の拳を腰に置き、渾身の気合を入れ直した。
「ふぅむ。良い気合ね??」
「そりゃそうですよ。ここで勝てば優勝ですからね」
「そっか、うんうんっ。優勝したいものね」
コクコクとしんみりと頷く。
「でも、私も負けられないかな。今日は……。ううん。この戦いだけは負けたくないの」
「どうしてです?? やはり准尉も優勝を狙っているからですか??」
これが真っ当な理由でしょう。
「私が勝ちたい理由、知りたい??」
「えぇ、まぁ」
伺われたらそりゃ頷くでしょう。
未だ頬が朱に染まる准尉の顔に向かって一つ頷いた。
「えぇ――。どうしようかなぁ。大勢の前だからちょっと緊張しちゃうかも」
「はぁ」
只単に勝ちたいと言えない複雑な理由なのかしらね。
「ん――。ん――……。うんっ!! よしっ。言っちゃおう!!」
宜しくお願いします。
きゅっと可愛く拳を作ったイリア准尉が覚悟を決め、俺の瞳を真っ直ぐに捉えた。
「え――っと。レイド伍長!!」
「はい」
端的、且素早く上官殿へ返事を返す。
「今日私が勝ったら……。これから一生!! ずぅ――っと私の部下になりなさいっ!!!!」
部下、ですか。
まぁ、イリア准尉は上に立つ者に相応しい技術と思慮深い想いがあるので。これから俺が彼女の階級に追い付く事はありえないだろうし。
上官と下官の関係がひっくり返る事は皆無だ。
「いいですよ。それが准尉の御望みなら」
特に深く考える事なく肯定の返事を返した。
すると。
「「「…………」」」
あれだけ喧しかった声援がピタリと鳴り止み、代わりに俺の体に憎しみの視線が突き刺さった。
へ!? 何ですか!? 皆さん!?
「て、てめぇ!! 羨まし過ぎるぞ!!」
「いたっ!!」
先輩から放られた靴が頭を直撃し。
「イリア先輩!! あんな男は駄目ですっ!! 馬鹿ぁ!! 帰れぇッ!!」
「ちょ、ちょっと!?」
同期の女性からは石が投擲された。
当たったら出血するでしょうに!!
「この野郎!! ワザと負けたら殺すからな!?」
「棄権しやがれ!!」
「み、皆さん!? おちつきま……。いでぇ!!」
四方八方から襲い来る投擲物の一つが額に直撃してしまった。
俺が一体何をしたって言うんだ!?
外敵に襲われた亀の様に丸まり怒りの嵐が通り過ぎるのを待ち望んだ。
「こら。おふざけは後にしなさい」
スレイン教官が怒気を含ませた声を放つと。
「「「はぁ――い」」」
漸く酷い嵐が去ってくれた……。
「一体、何だったんですか??」
額、肩、頭の天辺に痛みが残り。自分でも分かる程に目に涙を浮かべて立ち上がる。
「あなたはもう少し考えて話すべきね」
「はい??」
程々に考えた結果の答えだったんですけど。
素早く瞬きをしてスレイン教官の言葉を咀嚼していると。
「あがぁっ!?」
本日一番の痛みが額を捉えた。
な、何!?
痛む額を抑え、飛来した対象物を確認すると。
地面にはどこから出現したのかと首を傾げたくなる程の大きな石が転がり、尖った一点には深紅の液体が付着していた。
誰だよ!? 人にこんなデカイ石を投擲する奴は!?
額を抑えたまま件の人物を探すと、あっけなくその人物は特定出来た。
いや、出来てしまったと言うべきか。
「……」
体の前で力強く威風堂々と腕を組み、悪魔も尻尾を巻いて逃げ出す程に眉間に皺が寄り、肩から放たれる闘志は凍てつく大地をも融解させるだろう。
「ト、トアさん?? どうしたんですか?? そんなに怒って」
恐る恐る鬼に言葉を掛けると。
「この決勝が終わったら……。あんたは死刑ね」
あっさりと極刑を言い渡されてしまった。
俺には弁護する機会も与えられないのか。不憫を通り越して、理不尽と感じてしまう。
「あっ。血が……」
イリア准尉が俺の額へと視線を向けて仰る。
「あぁ、これくらい軽傷ですよ。日常茶飯事ですからね」
出血が日常茶飯事なのもどうかと思うが。
特に痛みも無いし。大丈夫でしょう。
「駄目よ。戦いの最中に傷が開いたら不公平だし。ちょっと待ってて」
「あ、はい」
イリア准尉が訓練着のポケットからハンカチを取り出して俺の手を退かすと。
「ん――。あっ、ここか」
傷口を発見されて血を拭って下さった。
何だろう。
妙に距離感が、ですね。えぇ、そういう事なんですよ。
長い睫毛の下には優しき瞳が浮かび上がり、微風に乗ってふわぁっと届く准尉の香りがイケナイ何かを刺激してしまう。
『おっ?? 何々?? 戦いの真っ最中に始めるつもり??』
そんな器用な真似は出来ません。
『はっは――。ヤル前から出来ないって言っている様じゃあ無理だなぁ。せめて試してみろよ。ほらっ、目と鼻の先に美味そうな唇が待っているんだぞ??』
本能だけに従って行動するのは獣。人間は理性と倫理観を所持しているのでそれは了承しかねます。
『いいじゃんかよ!! ほれ!! 食え食えっ!!!!』
いつの間にやら起床してしまった性欲にグイグイと背を押されるがそれを必死の思いで御し、イリア准尉にされるがまま治療を受け続けていた。
「うんっ!! これで大丈夫!!」
「ありがとうございました」
しっかりと腰を曲げて謝意を表してこれ以上要らぬ物が飛来しませんようにと願った。
「じゃあ、どうしても勝ちたいからパパっと倒してあげるわね!!」
「自分も負けられない理由がありますので……。了承しかねます!!」
イリア准尉から距離を取り、構えを取る。
さぁ、集中しろよ??
お茶らけた雰囲気を払拭し、呼吸を整えて彼女を正面に捉えた。
「……」
准尉の瞳も先程とは打って変わり、獲物を狙う鋭い鷹の瞳へと変容していた。
お遊びはここまで。と、言う訳ですね??
ここからは互いの力と技をぶつけあいましょう。
あの瞳はそう言っていた。
「二人共、始めるわよ」
「はい!! お願いします!!」
スレイン教官に覇気のある声で返す。
「では、決勝戦。始めっ」
教官の合図と共に優勝決定戦の狼煙が上がった。
イリア准尉!! 後ろに控えている分隊の為。是が非でも勝利を持ち帰らせて頂きますからね!!
少しばかり五月蠅い心臓を宥め、静かに佇む彼女の間合いへと侵入を開始した。
最後まで御覧頂き有難う御座いました。
季節の変わり目。睡眠時間を削ってのプロット執筆等々。悪条件が重なって結果、風邪を罹患してしまいました。
喉の痛み、詰まる鼻。熱が無いのがせめてもの救いでしょうか。
今日はこれを投稿した後、直ぐに眠ります。読者様も体調管理には気を付けて下さいね。
そして、ブックマーク。いいねをして頂き有難う御座います!!
風邪でやる気が削がれる中、本当に嬉しい励みとなりました!!
それでは皆様、お休みなさいませ。




