表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
672/1237

第二百二十九話 懐かしき友人達との再会 その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




「はは!! ウェイルズ。トアの飯を奪う事はな?? 自分の命をドブに投げ捨てる様なもんなんだよ」



 三人の悪友を前に腕を組んで目を瞑り、ウンウンと頷いて話す。



「――――。ほぉ?? もっと具体的に言って御覧なさい?? レイドちゃん」


「誰がレイドちゃんだよ、タスカー。まぁいい。ほら、この前一緒に任務に就いたって言ってただろ??」



「「「ほうほうっ」」」



 三人仲良く声を合わせ、興味津々といった様子で俺の発言に応える。



「あいつ。自分が飯を作るのが面倒だと言って俺に作らせたんだぜ?? それだけじゃない。天幕を張るのも面倒だから俺のを使わせろって言うんだ」



「「「それで――??」」」



 仲良く声を合わせちゃってまぁ――……。


 それ程に俺の話に興味があるのか。仕方が無い!! 舌を存分に動かしてアイツの素行の悪さを白日の下に晒してやろう!!



「寝起きは悪い、夜間の哨戒任務が面倒だ、口から出るのは文句ばかり……。あれで俺達二十期生の首席卒業だぜ?? あいつは俺達の代表である自覚が無いからそうやって文句ばかり言うんだよ。上官達からニ十期生達は何をやっているんだと思われても仕方が無いって。それ相応の自覚を持てと、あの横着者に正々堂々と言ってやりたいね」



 やれやれ。そんな感じで手を一杯に広げて多少大袈裟に息を漏らして話し終えた。


 久々の再開で会話に華が咲くってのはこういう事を言うんでしょうねぇ。


 女性達のお喋り好きが何となく理解出来たぞ。


 手を元の位置へ戻し、静かに目を開くと三名がニヤニヤと笑い俺の後方へと視線を送っていた。


 誰か知り合いが居たのかしらね??



 視線につられ何の警戒心も、そして心の準備もしないで振り返ってやった。



「――――――――。ほぉ?? あんたは私の事をそういう風にみていたんだぁ??」

「ひぃぃっ!!」



 俺の目と鼻の先には……。悪魔の使いが居た。


 い、いや。


 使いじゃない。地獄の底から召喚された悪魔そのものが立ち、凍てつく瞳を浮かべて俺を睨みつけていたのだ。



「ち、違うんだ!! これには訳があって!!」



 こういう危機的状況に陥ると男は先ず言い訳を口走るから痛い目に遭うのだ。


 様々な苦い経験から培ってきたものだからもっと様々な選択肢があるだろうとは思うが、咄嗟に体が見苦しい言い訳を放ってしまうのが情けない。



「訳??」



 さてとっ、どうやってこいつをぶん殴ってやろうか。


 そんな感じで首の筋を変な角度に曲げ、拳を開いたり閉じたりしている。



「え、えぇ。言い訳にも聞こえるかも知れませんが……。じ、自分はありのままを話している次第なのです」


「ふぅん。そうなんだ」



 覚悟は決まったかしら??


 言葉で説明するのも面倒なのか。


 俺の胸倉を男勝りの出で立ちで堂々と掴み、右の拳には燃え盛る真っ赤な憤怒が籠められいつそれが俺の顔に襲い掛かってもおかしく無かった。



「は、話しを聞け!! それと!! 拳を仕舞って下さい!!」


「嫌よ。私の悪口を言う奴には今後何があっても絶対!! 逆らえない様に鉄拳制裁を食らわせないと……。ねぇ!!」


「い、いやぁぁああッ!! うぶぐぅっ!!!!」



 左の頬を気持ち良い殺意の波動が駆け抜けて行き、俺の体は面白い角度で地面へと叩きつけられてしまった。



 い、いてぇ。


 多少なりにも痛みに慣れている筈なのだが……。的確に人間の急所を穿つ力は御立派ですね。


 首席卒業の名は伊達じゃない。


 言葉よりも激烈な痛みで理解出来てしまった瞬間であった。



「ふんっ。あんたはそうやって情けない顔を浮かべて私を見上げているのがお似合いなのよ」


「トアちゃんよぉ――。それってぇ、つまり――。レイドは愛の奴隷って事なの――??」



 タスカー。


 俺の命の灯火が消失してしまうのでお願いだからそいつをそれ以上刺激するのは止めて??



「ば、馬鹿じゃないの!!」



 タスカーの言葉を受け取ると瞬時に顔が朱に染まり、俺の想像していた反応とは違った顔を浮かべてしまった。


 体内から迸る殺意が彼女の体温を上昇させたのかしらね。



「俺達はどうせ馬鹿四天王だもんなぁ??」


「「ねぇ――??」」



 ハドソンの言葉に二人が悪ノリを開始する。


 そういう所が良く無いんですよ。悪魔を前に決して行ってはいけない行動なのです。



「一生馬鹿騒ぎしてろ!!!!」



 捨て台詞を吐き捨てた悪魔が列の前方へと進んで行く。


 どうやら俺を攻撃して満足して頂けたようだな。左頬一つで済んだ事に感謝しましょう。


 臀部に付着した土埃を払いつつ立ち上がった。



「レイド、お前本当にトアと何も無かったのか??」


 ハドソンが悪魔の背を見送りつつ話す。


「ん?? あぁ、何度も言わせるなよ」


 全く、しつこいなぁ。


「ふぅん。何も、ねぇ」



 怒りを撒き散らしつつ我が道を進んで行くトアの覇気溢れる後ろ姿を見て言う。



「何だ?? 気になる事でもあるのか??」


「ん――。まぁ、こういう事は当事者が決める事だし。俺らが首を突っ込む事でもねぇからな」



 うん?? どういう事??



「だなぁ。ってか、やっべぇ!! 列が動き始めたぞ!!」



 タスカーが動き出した列に向かって慌てて走り出す。



「おめぇが下らない事やってるからだぞ」


「ハドソン、お前らも同罪だって。ほれ、行くぞ!!」


「ま、待てよ!!」



 足早に動き出す三名に倣い俺も両の足を動かすが。



「レイドぉ!! 遅いぞ!!」


「喧しい!! 誰の所為だと思ってんだ!!」



 どこぞの暴君から受けた影響が足に響き思う様に動かせないでいた。



「はははは!! 最後に到着した奴は恥ずかしい過去を話して貰うからなぁ!!」


「ず、ずるいぞ!! ハドソン!!」


「遅いお前が悪いんだ!!」



 くそう!!


 お前もトアに殴られてみろ。俺以上に動けなくなるからな!!


 頭の命令を仕方なく聞いて動いてくれる足を何んとか器用に操り街道を道なり。北北西へと進軍を開始した列へと向かい、良く晴れた空の下に些か不釣り合いな足取りで息を切らしつつ追走を始めた。




















 ◇




 あ――あ……。行っちゃった。


 レイド先輩がいつもの可愛らしい笑顔を残し、私の前から列の前方へと駆け足で向かって行くのを名残惜しむ様に見送った。


 久々に会ったっていうのに。もうちょっとくらい話してくれもいいじゃん。


 口を尖らせ眉を顰めて列に戻ろうとすると、とても矮小ながらも頭の中に残る声色を捉えてしまった。



「レイド先輩」


「リネアか!!」



 一期先輩のリネア先輩が、私の彼……。


 コホン。


 レイド先輩を捕まえ、訓練施設では見た事が無い女性らしい明るい笑顔を振りまいていた。


 えぇ?? 嘘でしょ??


 あの人って、あんな笑顔を浮かべるんだ。



 真面目且、超優等生。


 そんな印象しか残らない人なのに、待機命令を無視して列からちょっと離れてレイド先輩と談笑を交わしている。


 訓練中、列を乱そうものなら



『そこ!! 戻りなさい!!』



 って、頭が痛くなる声で怒るのに。自分だけはいいんですかねぇ――。



「お――い。ミュント――。さっさと帰ってこ――い」


「分かった!! 今行く!!」



 友人の一人。


 腐れ縁でもあるシフォムからの声を受け、後ろ髪惹かれる思いで四列横隊の中心へと戻って行った。



「――――。よいしょっと。はぁ――。元気貰えたっ!!」


 列に戻り、頬から伝う汗を拭いつつ話す。


「ちょっと――。ミュントの所為で私まで怒られたら困るんだけど??」


「何であんたが怒られるのよ」



 左隣でじっとこちらを窺う彼女へ話す。



「そりゃあ、飼い主ですから」


「だ、誰が飼い主だ!!」


 お馬鹿な発言を放ったシフォムの肩を力強くポカンと叩いてやった。


「いった――」


「嘘仰い。――――。ところ、で」


「ん――??」


「リネア先輩ってさぁ。レイド先輩と妙に仲が良いと思わない??」



 先程視界に捉えた残像がチクリと胸を刺す。


 別に……。レイド先輩が誰と仲良くしようが勝手なのですが。どうも気持ちが良くないのは確かね。



「あ――。私達が入隊する前、レイド先輩に何か色々聞いていたらしいよ。指導とか座学やらで。それで仲が良いんじゃない??」


「嘘。それ初耳なんだけど??」


「今初めて言ったもん」



 あっけらかんと話す姿が誂えた様に似合いますねぇ。



「それで仲がいいのかぁ。う――ん……。でも、それだけじゃない気がするのよねぇ」



 そう!! これは女の勘って奴だ。


 視線から感じる乙女心の淡い匂い、言葉の端に含まれる妙に高揚した音。



 間違いなくリネア先輩はレイド先輩へ秘めたる想いを持っている筈。



「へっへっへっ。旦那ぁ。実はぁ……。もっと耳寄りな情報があるんでさぁ」


「あんた誰よ」



 急に口調も、声色も変わればそうも思うわ。



「なぁんと、レイモンドの街で私にたった!! 一食を御馳走するだけで耳寄りな情報を提供しますけど。どうします??」



 一食かぁ。


 この子の事だ。ちょいとお高いお店を所望するのが目に見えている。


 でも、耳寄りな情報と言われて食いつかないのは私では無い!!



「聞きましょう」


「毎度あり!! 実は、ね……」



 耳打ちをするように手を翳すので、私はそれに倣って耳を傾けた。



『レイド先輩が指導しに来てくれた日、あったでしょ??』


 ウンウンと頷く。


『レイド先輩が帰る日。リネア先輩は正面玄関前で彼に手作りの御守りを渡したらしいのよ』


「は、はぁっ!? 何それ!! ずっるい!!」



 シフォムからぱっと顔を離し、ついつい声を荒げてしまった。


 真面目な顔と態度を醸し出しているのに裏ではちゃあんとやる事をやっていたのだ。


 これで声を荒げるなと言われても無理よ。



 御守り、か。


 きっとレイド先輩が来てから寝る間を惜しんで作ったんだろうな。多忙を極める訓練の時間の合間を見つけて作ったとしても、とてもじゃないけど間に合いそうにないし。


 くっそう。


 やられたぁ!!


 これは由々しき事態ね!! どうにかしないとリネア先輩に取られちゃう!!



「ついでにぃ。たった!! もう一食と服一着でお得な情報もありますよ??」


「聞かせなさい!!」


「へへ。毎度あり――」



 再び彼女に向かって耳を傾ける。


 服と御飯で情報が買えるのなら安いものよ。



『ほら、指導中にさ。大蜥蜴の話出たじゃん??』



 あ――。あの妙に大袈裟な話か。


 ビッグス教官が自作した被り物を装備して登場した時、私達の腹筋に大いなる一撃を与えてくれたのを今でも覚えている。



『レイド先輩が大蜥蜴と出会った任務なんだけど。その任務にはレイド先輩の同期の女性も一緒に行動していたらしいのよ』


「ちょっと。その情報源はどこなの??」



 その情報は今一信憑性に欠けるのよね。


 どうして彼が行った任務をコイツが知っているのか。誰だって怪しむでしょうに。



『妙にご機嫌だったビッグス教官から聞いたのよ。大蜥蜴と会った任務、レイド先輩は一人だったんですか――って聞いたら。同期の女性と一緒だったって言ってたし』



 ふぅむ。それなら……。


 大人しく聞きましょう。



『んでぇ。その女性はどうやらレイド先輩と仲が大変宜しくて、訓練生時代でも良く一緒に居たって言ってたんだ』



 ふぅん。成程ねぇ。



「つまり、レイド先輩には現時点で五月蠅い蝿が二匹も集っているって事ね」


「知らないよ――?? 上官と先輩の事を蝿呼ばわりしても――」


「仕事は仕事、私生活は私生活。こういう事には分別が大事なのよ。大体、その二人には合わないと思うのよね――。レイド先輩は」


「つまり、あんたには合う。と??」


「そりゃあ……。まぁ、そうねぇ」



 出る所は……。普通の人より出ているし。それに!! 鍛えているからお腹ちゃんのお肉も目立たない。


 顔は、う――ん……。及第点をあげようと思う顔だとは思う。


 レイド先輩も私と話している時は楽しそうだし!!


 きっと、うん。一緒に居たら楽しんで貰えると思うんだよねぇ。



「レイド先輩が来るかどうか分からないのに。自分の店の下着を身に付けているのはその現れと捉えても宜しいか??」


「ちょっ!! 何で分かったのよ!!」



 三日前。


 訓練が急に休みになったので久しぶりに家に帰ると。



『お帰りなさい。どう?? 頑張っている??』



 と、母親から母性溢れる笑みを頂いた。


 私が普通――って答えると。



『そうなの?? ところでぇ。あなた、気になる人は居るのかしら??』


 母親の急展開過ぎる話に思わず詰まってしまった。


『その顔を見られて嬉しいわ。実は、ね。今度お店で出す新作があるのよ。既存の商品に色々と手を加えた物なんだけど……。良かったら試着して頂戴』



 こっちがアレコレ文句を言おうとも無理矢理服を脱がし、勝手に採寸を始め。


 良い様に私の体に下着を着けてしまった。


 どうやら新作への力の入れ具合は相当高く。


 それに比例するように、下着の着け心地は大変宜しく。しかも!! これが自分の胸かと思うくらいに一段階上の盛り上がりを見せてくれた。


 別に??


 今日着けるつもりは無かったんだけど……。


 こう、ピンっと!! 女の勘が働いたのだっ。



「そりゃ見れば分かるよ。いつもより張ってるし」


「張るとか言うな!! でもぉ。ぬふふ……。機会があれば、さり気なく?? 大胆に!! 見せちゃおうかなぁ!?」


「あ、それ。多分無理。あの人そういう事に関しては疎いから」



 私のウキウキした感情を返せ……。この大馬鹿野郎。


 友人の放った何気無い一言にがっくりと肩を落としていると。



「ちょっと。あなた達、さっきから五月蠅いわよ」


 ひとつ前の列から黒髪の女性が此方に振り返り苦言を吐いて来た。


「別にいいじゃない。私達以外にも沢山お喋りしている子、居るわよ??」



 レンカに向かい、微妙な声量で話し続ける周囲を顎で指してやった。


 この子はうっとおしい程に真面目なのが癪だ。それが無ければ気兼ねなく話せるってのに。



「あなた達は群を抜いて五月蠅いの。これから訓練が始まるのよ?? もう少し気を強く持ちなさい」


 そう話すと再び前を向いてしまう。


「はいは――い。どうせ、私達は五月蠅いですよ――っと」



 大分周囲とは打ち解けてきたんだけど……。どうもまだ壁を取っ払っていない感じがするのよね。


 見えない壁を築き、明るい場から一歩身を引いて外から眺めている感じだ。


 別に??


 人それぞれだから気にしないんだけど。


 私も人にアレコレと人生観を説ける程偉くもないし、長生きもしていないからね。



「お――。やぁっと動き出したね――」



 シフォムの声を受け、遠い前方に視線を動かすと。


 人の頭が上下に僅かに動き、大量の足が大地を踏み鳴らす音がここまで届いた。



「だね。一時間も待機したから足がもう疲れちゃった」


「訓練場まで数時間。頑張っていこ――」


「ん――」



 シフォムの気の抜ける声を受け、動き始めた列に同調して移動を開始する。


 レイド先輩と話す機会あるのかなぁ。


 どうせなら成長した私と、その……。一つ大きくなった私を見て欲しいんだけどな。


 後方に流れて行く風景、そして下らない世間話で盛り上がりを見せる友人と会話を続ける中でそんな事を考えていた。





お疲れ様でした。


本日のワールドカップは少々残念な結果になってしまいましたね。ですが!! 過ぎた事をいつまでもクヨクヨしていても結果が覆る訳では無いのです!!


次戦に向けて集中しましょう!!



ブックマーク、そして評価をして頂き有難う御座いました!!


多忙な時期を乗り越え連載を続けられる様になり、こうして皆様の温かな応援を頂けるとは本当に自分は恵まれているなと考えております。


光る画面の向こう側では皆様が考えている以上に嬉々とした表情を浮かべているのですよ??


いや、別に笑顔とかいいからさっさと続きを書きやがれっ。と、読者様達の辛辣な言葉の往復ビンタを食らったので寝る前のプロット執筆活動に戻りますね。



それでは皆様、お休みなさいませ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ