第二百二十五話 乙女達の頂
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
熟睡と呼べる状態の時に訪れてくれる体全体を優しく包み込むふわりとした感覚が荒んだ心を癒し、等間隔で安寧に近い呼吸を続けていると失った体力が回復され至る所に負った傷を治してくれる。
この素敵な感覚に包まれたまま美女との逢瀬、若しくは贅を尽くした御馳走が現れてくれれば正に文句の付け所が無い夢見心地なのですが……。
残念ながら女性も色を覚えてしまう絶世の美女は現れず、食欲を失った病人が涎をダラダラと垂らしてしまう程の御馳走も食卓に並ぶことは無く。只々無味乾燥な光景が目の前に広がっていた。
夢と呼ばれる代物は自分で想像する事は叶わないのだろうか??
想像力豊かな人間は眠っているという状態を確知しているのならば、その想像力を活かして夢の一つや二つを創造出来るのでは無いか。
自分のお願いを決して断らない理想の女性、王族さえも羨む大量の金銀財宝に囲まれての生活、そして死が隣り合う大冒険等々。
誰だって目を背けたくなる事実が存在する現実世界から乖離された自分の都合の良い世界に身を置きたがるだろう。
しかし、自分が想像した世界に入り浸っていては何時まで経っても現実世界に帰る事は叶わず永遠の眠りに就いてしまう。
人間が自分の都合の良い夢を見られない所以は恐らくその所為であろう。
全く……。九祖が一体の亜人とやらは上手い具合に人間を造ったものさ。
不動の大地と仲良く熱き抱擁を交わし、星の力強さを体全身で味わっていると鋭い痛みが脇腹を襲った。
「おら、起きろや」
「――――。おはようございます」
この場に酷く相応しいと思われる第一声を放ち上半身を起こすと顔を素早く横に二度振り、呆ける頭を現実へと引き戻す。
「勝負はどうなった??」
口の端っこに残る異物を吐き出して冷たい瞳の色でじろりと俺を見下ろすマイへ問う。
「カエデと鳥姉ちゃんの勝負はカエデの勝ち。んで、蜘蛛とお惚け狼の勝負は蜘蛛の勝ちよ」
あの乱痴気騒ぎの勝者はカエデか。
申し訳無いけど、ルーとアオイの勝負は何となく分かっていた気がする。
こんな事を言ったら怒るから言わないけどね。
「それで気を失ってくたばっているあんたの代わりに私が二回戦のクジを引いたの。礼は言わなくていいわ。私の善意だから」
「どうも……」
ここで。
『お前が殴った所為だろ!!』
と叫ぼうものならもう一度殴られてしまうので適当に肯定しておきましょうかね。
「二回戦はユウとリューヴ。カエデと蜘蛛になったわ」
「おっ。中々面白そうな組み合わせだな」
力と技。魔法と戦略。
どちらの組み合わせも甲乙つけがたい。
「今からやるんだろ?? どこでやるんだ??」
「あんた、どれだけ寝ていたと思ってんのよ。それはもう終わったわ」
「はぁっ!? そんな長い時間寝てたの!?」
マイの言葉に驚き慌てて上空へと顔を向けて太陽の角度を測った。
え、えっと。この季節でこの角度だから……。
「お、おい。もう昼過ぎじゃないか」
一番高い位置からちょいと西へ進んだ位置で昼寝前と変わらずニッコニコの笑みを浮かべている太陽さんが居た。
「そ。美味しい昼ご飯を食べ終えて今から決勝戦の始まりよ」
「何で起こしてくれなかったんだよ」
眩い太陽から深紅の髪の女性へと視線を移す。
「あんた、疲れてそうだったし。そのまま寝かしておいた方が良いと思っての行動よ」
「あ、そうなんだ。悪いね」
何で殴られた方が礼を言わにゃならんのだ。
でも、その気遣いが少し嬉しかった。
時間経過からして二、三時間は眠れたのだ。形はどうあれ休めたのは事実。
こいつも少しは気が回るようになったんだなぁ。
――――。
いやいや、それでも大の大人が気絶する程の勢いで殴ったら駄目だろ。
「それと……。はい、コレ」
俺からふっと視線を外すと彼女の背から随分と形の悪いおにぎりが出て来た。
指に力を籠めて大層な気合を入れて握った所為か微妙に整っていない三角、片手で持つのはちょっと厳しい大きさではあるが食欲を誘う白と塩気の香りがふわっと鼻腔に届くとお腹さんが大変卑しい音を奏でてしまう。
俗に言われている三角の形よりも。味と量を最優先させたおにぎりの完成形、とでも言えばいいのか。
見た目は兎に角味は良さそうだ。
「おっ、有難う」
マイからおにぎりを受け取り、早速ちょっとだけ機嫌が悪い腹へ迎えてやった。
「ん。ふまい」
前歯で白き三角を齧り取ると仄かな塩気が舌を喜ばせてくれる。そして肝心要の触感も上々。
この感触が大変気に入った奥歯さんがもっと寄越せと叫ぶので次々と白米を渡し続け、歓喜の咀嚼を続けていた。
硬くも柔らかくもないこの独特の握り具合が俺に嵌ったのかな??
見た目はまぁアレだが味、食感そのものは合格点を優に超える効用を与えてくれていた。
「そ、そう。良かった……」
「ふぁ??」
「な、何でもないわよ!!」
こいつは直ぐに怒るのが偶に瑕だな。大人しくしていれば人並以上なのに。
ってか、顔赤いよね?? どうした??
彼女の髪と同じ位に赤く染まった顔を眺めつつ、餌を頬張り過ぎてしまった卑しい栗鼠の如くモムモムと顎を動かしていると。
「うっしゃ――ッ!! 勝つぞぉ!!!!」
「勢いがあって結構ですが、勝利の栄光を掴むのは私ですからね」
遠くの平屋から色とりどりの花達が出て来た。その中で先陣を切ったのはユウとカエデだ。
腹ごしらえも済んで元気一杯の御様子で何よりです。
「あのふふぁりが、けふぉう??」
「そうよ。審議に物言いがアレコレと付きまくったけど、リューヴを下したのはユウ。幻術を使用して反則負けになったのは蜘蛛よ。はっ、ざまぁないわね」
貴女は一々小言が多いんですよ。
「早速決勝戦を始めようとしたんだけど。モアとメアが早く飯を食えとの事で一時休戦していた訳」
成程、俺が眠っている間に色々あったんだな。
「ふぁ、けふぉうふぇんがみふぇるふぁけでよふぁったよ」
「そうね。ってか早く飲み込みなさいよ」
「んんっ!! 俺はお前と違ってちゃんと咀嚼してるからな。御馳走様、美味しかったよ」
食事に礼は欠かせない。
俺の流儀でもあり、作法でもあるからな。
「うんっ。どういたしまして」
何だろう、普通の礼に対する返事なんだろうけど。
いつもの様子とガラリと違う優しく、そして柔らかい笑みが妙に眩しい。
「よ、よし!! では、最強の勝者は誰か。それを拝みに行くとしますかね!!」
「あんたがやる訳じゃないのよ。何、鼻息を荒くしてんだか」
出何処が不明な恥ずかしさを誤魔化しつつユウ達の下へと歩み出した。
「よぉ――!! 起きたか!!」
俺の存在に真っ先に気付いたユウがいつもの快活な笑みを浮かべて迎えてくれる。
「ぐっすりと眠っていましたね??」
その隣。
明日のお出掛けを待ちきれない子供の高揚感に似た雰囲気を醸し出すカエデが口角を上げた。
二人共よっぽど戦うのが楽しみなんだな。雰囲気一つで分かってしまうよ。
「お陰様で休めましたよ。今から決勝なんだって??」
「おうよ。前回は勝利を掴み取れなかったからなぁ……。今回は勝たせて貰う!!」
「それはこちらの台詞です。海竜こそが種族の頂点に立つ存在だと知らしめる良い機会です。誰にでも分かり易い形で勝利してみせますから」
おぉ、二人共自信満々だな。
「はは――ん。あたしに勝てる算段ありって顔だな??」
「勿論です。ありとあらゆる策を休み時間に練りましたから。完璧な布陣で迎え撃ちます」
カエデの考えた完璧な布陣、か。想像するだけでもう降参したくなるね。
「その豪華な布陣をあたしの力で粉砕してやるよ」
「それは不可能です。何人も私の策略を突破出来る者はいません」
「はっはっ――。そりゃあ……。楽しみだ」
「えぇ、是非とも堪能して下さい」
「「フフフ……」」
こわっ……。
二人が意味深な笑みと不穏な空気を残して訓練場の中央へと進んで行った。
喧嘩にならなきゃいいけど。
「レイド様ぁっ!!」
見方によっては一触即発にも見える二人の背を憂慮して見送っていると、女性の甲高い声と共に背に柔らかい肉が圧し掛かる。
「っと。アオイ、どうしたの??」
「聞いて下さいましっ!! アオイは何も姑息な手段を使用していないのに……。魔法の攻撃を企てたと冤罪を擦り付けられ敗北を喫してしまったのですよ!?」
さっき言ってた幻術の話か。
「マイから聞いたよ。カエデに幻術を仕掛けたってね」
「それは言い掛かりですわ!! アオイは悪くありませんっ」
「それの判断を下すのは審判でしょ?? その時の審判は誰??」
「は――い!! 私だよ――!!」
軽快な足取りの灰色の狼が横を通過してデカイ狼の顔をこちらに向ける。
「ルーだったのか」
「そうそう。アオイちゃんがさぁ、カエデちゃんに対して幻の腕を見せたんだよ」
「幻??」
「そそ。腕を出して待つじゃん?? 偽物の腕でそれを作って、カエデちゃんの腕が飛び出て来た時に消しちゃったの。それで体勢を崩したカエデちゃんが足を着いたんだけど……」
「それが言い掛かりなのですっ!!」
魔法系統が苦手なルーなら兎も角、対峙するカエデが不正行為を見逃す筈も無いし。
その事を加味すれば……。
「――――。アオイ」
「はいっ!! 何で御座いますか!?」
右腕に甘く体を絡め右肩にちょこんと顎を乗せて話す。
「幻術を刹那に生み出して、咄嗟の判断で消失させたでしょ??」
「それはぁ……。秘密で御座いますわぁ」
背筋が泡立つ吐息を出すのは止めて頂けませんかね??
皆さんの視線が怖いので。
「惚けないの。アオイなら平気でそれ位の事をやってのけるだろ」
「まぁっ!! うふふ。アオイの実力を理解して下さって……。嬉しいですわぁ……」
こちら側に端整な顔を近付けて男の性を擽るしっとりと潤った唇を静かに差し出す。
乾燥した時期にこの潤いはちょいと卑怯だとは思います。しかし、この程度の事は想定済みだ。
ほら雷狼の子孫さん、出番ですよ。
「おぉっ。アオイちゃん、良い匂いだね」
獣臭い息をはぁはぁと零す灰色の狼がアオイの双肩に両前足を乗せ、粘度の高い唾液を纏わせた舌で淫靡な雰囲気を舐め取ってくれた。
「獣臭いですわ!! 退きなさい!!」
「やっ!!」
後退りを始める一人の美しい女性とそれを追う一頭の狼。
俺達にとってはありふれた日常的な光景だけど、平和な街中でこの光景を目撃されたら間違いなく狼は御用となってしまうだろうなぁ。
朗らかな空気に和みを覚え、目を細めて二人の様子を見つめていた。
「レイドさん」
「主」
ん??
声のした方向に振り向くと、アレクシアさんとリューヴが丁度訓練場に下りて来る所であった。
「二人共、食事はちゃんと摂った??」
「はいっ。量が少なくて助かりました……」
「その分、マイが食らっていたがな」
でしょうね。それは容易に想像出来ます。
「リューヴはユウに。アレクシアさんはあの後、カエデに負けたんだよね??」
「そうなんですよ!!」
「あれは私の勝利に間違いなかったんだ!!」
「お、おぉ。二人共、落ち着こう??」
二人が何の遠慮も無しにずぃぃっと詰め寄って来たので荒ぶる獣を宥める様に手を前に差し出す。
「カエデさんはずるいんです!! 私のスカートをヒラヒラと!!」
あの後もあの攻撃を食らったんだ。
「ユウが先に足を着いたんだ。私は負けていない!!」
「えぇっと。つまり、アレクシアさんはカエデにスカートを捲られて負けて。リューヴはユウに吹き飛ばされて負けたの??」
状況がさっぱり分からんが、多分こういう事であろう。
「「違う!!」」
「ごめんなさい!!」
二人の恐ろしい剣幕に思わず口から想定外の謝意が飛び出て来てしまった。
「私はスカートに気を取られている内に押されて負けたんですっ!!」
「ユウと私は共に激しい衝突を繰り返し。そして、力と力がぶつかり合い吹き飛んだのだ。そして、先に足を着けたのは……。私だと判断するではないか!! ありえん!!」
共にむすっとした表情を浮かべるけども端整な御顔なので余り迫力が伝わってきませんよ。
「リューヴの時の審判は誰??」
「マイだ。あいつめ……。きっとユウを贔屓にしたのだ。自分が一回戦で負けたのを悔しい事に……」
狼の姿に変わり怒りを露わにして鼻へ皺を寄せる。
その姿で凄まれると結構心臓に悪いな。
「それは無いんじゃない?? ほら、アイツ目は良いし」
マイを擁護するつもりでは無いが。公平に審を下す事に贔屓も何も無いでしょう。
「主は奴を味方するのか!?」
後ろ足で立ち、太い前足を双肩に乗せて凄んだままの表情でこちらを窺う。
「違うよ!! そういう意味じゃないって!! だらしない一面もあるけど、勝負事に関しては贔屓しないって事だよ!!」
「…………ふんっ」
俺の意見に納得してくれたのか。大変濃い獣臭を残し、微妙に納得のいかない表情を浮かべて前足を降ろしてくれた。
はぁ……。怖かった。食われるかと思ったよ……。
「何々?? 何盛り上がってんの??」
リューヴと入れ替わりに問題の審判さんがこちらへと歩み来る。
「ユウとリューヴの審判でさ。リューヴがまだ納得していないみたいでね??」
「あぁ、アレね。微妙な判定だったわ」
うんうんと頷いているけど。
俺にも分かり易い様に説明してくれないかしらね。気絶していてその試合を見ていないのですから。
「ユウとリューヴの手が激しく衝突してさ」
ほうほう。
「逆方向に吹き飛んで行ったのよ」
「逆方向に?? それじゃあ視線で追えないだろ」
人の目玉は頭の後ろに付いてはいないのだ。
「安心しなさい。私を誰だと思ってんの??」
暴食暴飲の暴れん坊です。
そう言い出したいのをぐっと堪えて次の言葉を待つ。
「二人が吹き飛んだと同時に私も後方に下がってね?? ちゃあんと二人を視界に捉えたのよ。んで、足が長いリューヴが先に地面に着いたのをこの目で確かめたって訳よ」
「成程ねぇ。勝敗を分けたのは、足の長さか」
ユウは普通の長さだけど。
リューヴの四肢は長い方だからね。ちょっと羨ましいと思っているのは秘密です。
「私は負けていないからなっ!!!!」
こちらの話し声が聞こえたのか。
ちょっと離れた位置でこちらに背を向けたまま座っている狼が吼えた。
「はいはい。そう怒りなさんな。街に繰り出した時に甘い物買ってあげるからさ」
ふよふよと太った雀が翼をはためかせて狼の頭の天辺に着地する。
「ふ、ふんっ。別に……。要らぬ」
リューヴは甘い物が好きだっけ。
お目当ての味を想像したのか。注意して見ないと分からない程度に口角が上がった。
「へぇ?? いいのぉ?? タダであまぁい物が食べられるのよぉ??」
「それなら……。頂こうか」
堕ちるの早っ!!
悪魔の甘い囁きに早くも堕落してしまった。
女性にとって甘味はそれだけ魅惑的って事か。俺はそこまで得意じゃないけどね。
「ってな訳で。そこの卑猥な男」
「卑猥じゃない!!」
断固抗議だ!!
全く、あいつは俺の事を何だと思ってんだよ。
「はぁん?? カエデの生足を拝み剰えそこの鳥姉ちゃんの下着を覗いても、卑猥じゃないと??」
「あれは不可抗力だろ!? そうですよね?? アレクシアさん」
左後方に立つ彼女へと問う。
「え、えぇ。そうです、ね」
ポっと頬が朱に染まり、俺と目が合うと途端に視線を逸らしてしまう。
「ほら見ろ!! アレクシアさんもあぁ言っているじゃないか!!」
「結果はどうあれ、あんたは女性の恥ずかしい部分を見た訳だ。その事実を捻じ曲げようとしているのは……。だぁれぇ??」
「くっ……」
そ、そう来たか。
覆せぬ過去の愚行に歯軋りをし、込み上げて来る悔しさを誤魔化す為に拳をぎゅっと握った。
「はっ。言い返せないだろう?? 悔しいだろう??」
「まぁ、仕方が無いけど。その事実は認めよう……」
「リューヴ!! 鳥姉ちゃん!! 今の聞いたわよね!?」
何だ??
急に声を荒立てて。
「あぁ、聞いたぞ」
「えぇ。伺いましたね」
「こいつの口から罪を認めた発言はちゃんと第三者にも伝わったわ。と、いう訳で。あんたは私とリューヴに甘い物を驕る義務が発生した訳よ」
「はぁ!?」
何を言ってんだ?? コイツは。
「罪を償うのには色んな形があるわ。時に牢獄へ、時に金で。今回は、まぁ大目に見て後者でしょう。女性の体はおいそれとは覗き見てはいけないないのよね――??」
太った雀がリューヴの頭頂部へと問う。
「そうだな。主は我々に対する謝罪を目に見える形で償うべきだ」
「あ――。はいはい。別にいいよ、それくらい」
たかが甘い物の一つや二つ。別に構わん。
この事をダシにしていつまでも強請られていたら堪らんからな。
「おっひょ――!! やったね!! 儲けたわ!!」
狼の頭の上で小躍りする赤き龍。何だか気の抜ける姿だな。
もう間も無く、辛く厳しい鍛錬が開始されるのだ。英気を養うのも良いかもしれない……。
財布の中身は空っぽじゃ無かったよな?? 後で確認しておこう。
街に繰り出してお金が足りませんでした――。では再び横っ面を殴られかねない。
奢る方が殴られるってのも理不尽な話だけどね。
「お――い!! 始めるから誰か審判を務めてくれ――!!」
財政問題に思考を巡らせていると訓練場の中央からユウの声が届く。
「分かった!! 誰が審判を務める?? 俺でもいいけど」
その辺りで跋扈している大魔と古代種さん達へと話し掛けた。
「あんたが審判を務めるとまた厭らしい目付きで二人を見るでしょ」
「見ません!!」
速攻で龍の問題発言を訂正してやる。
「決勝戦に相応しい審判、か。公平に物事を図れるのは……。アオイ、やって貰える??」
「ヤッテ……!? は、はいっ!! レイド様の頼みなら何でもしますわ!! 服を脱げと言われたら脱ぎますし、孕めと言われたら喜んで受胎致します!! ふふ。最近、ですけどね?? 私とレイド様との赤子の服が出来ましたのよ?? それはもう立派な刺繍を施して……」
「あ――あ。また向こう側に行っちゃった」
ポっと朱に染まった両頬に両手を添え、イヤイヤと顔を横に振るアオイを見つめているルーが呆れた声を出す。
「アオイさんって……。冷静沈着な印象なんですけど……」
「アレクシアさんは初めてかな?? アオイちゃんはね?? 外見上は真面なんだけどさぁ。レイドが絡むとちょっとおかしくなっちゃうんだよ」
「へ、へぇ。そうなんですか」
参ったな……。頼んだ矢先にこれだもの。
仕方が無い。リューヴに頼むか。
「リューヴ」
「どうした」
お座りの姿勢からすっと立ち上がり、こちらへと顔を向ける。
「アオイが再起不能だから審判務めてくれる??」
「アオイが??」
俺からふっと視線を逸らし彼女へと顔を向けた。
「あぁ……。そんなぁ……。本日三回目だなんて。レイド様が果てるまで、アオイは付き添いますわぁ」
「いつものアレか。仕方が無い、公平な審判を下してやろう」
「頼むよ――!!」
訓練場の中央で待つ二人を目指して颯爽と一頭の狼が駆けて行く。
これで、漸く準備が整ったな。ここからじゃ何だし。勝利の行く末は是非とも間近で拝みたい。
俺達はリューヴの背を追い訓練場の中央へと歩み出して行った。
お疲れ様でした。
本日、日本のワールドカップ初戦が始まり相手は超強豪国であるドイツ。試合前の下馬評は圧倒的に本の不利でしたが……。
いや、本当に素晴らしい試合を見せて貰いました!! 日本が超逆転大勝利で初戦を飾ってくれました!!!!
正にジャイアントキリングッ!!!!
テレビ観戦をしていて久々に泣きそうになってしまいましたもの……。
ですがまだ残り二試合残っていますので選手の方々には勝って兜の緒を締めよ、ではありませんが良い集中力を継続させて欲しいですね。
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それでは皆様、お休みなさいませ。




