第二百二十三話 意外と策士な彼女
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
恐ろしい圧を放つ二つの背に続き少々おっかなびっくり平屋の戸を潜り山腹に出ると冬らしい乾いた空気の風が俺達を出迎え、予想外の緊迫感で嫌な体温の上昇を見せる体の熱を冷ましてくれる。
突き抜ける青の空からは燦々と輝く太陽の光が地上へと降り注いでいた。
こんな晴れた日はお弁当でも持って朗らかな散歩に興じたいのですが、それを良しとしない二人が訓練場の中央へ肩で風を切り大股で向かって行く。
背に流れる深紅の髪を揺らし時折大地を蹴って軽く弾む女性、剛力が秘められた右腕をグルンっと勢い良く回して軽い柔軟を続ける深緑の髪の女性。
好天に恵まれた大地の上で二人の女性が歩みを止めると。
「「……」」
その端整な顔とは正反対の表情を浮かべ、剥き出しの感情をぶつけて対峙していた。
両者の視線が激しく衝突すると空気を焦がす熱となって周囲の空間を振るわす。
そして、何かきっかけさえあれば今にも相手の胸倉を掴んで互いに剛拳を叩き込みそうな一触即発の雰囲気が漂っていた。
「あ、あのぉ……。喧嘩じゃないよね??」
訓練場の中央。
覇王の娘と怪力無双の娘が正々堂々と対峙している姿に向かっておずおずと声を掛けた。
「あ?? あぁ、勿論よ」
「単なる遊びだよなぁ?? マイちゃんよぉ……」
この雰囲気……。遊びの延長戦として絶対喧嘩に発展するし!!
師匠から運動を禁じられている手前、このままじゃ不味い。
何か新たな取り決めを決めなきゃエライ事になりかねん。
「皆さん、先程決めた取り決めに幾つか新しい決め事を追加した方が宜しいのではないでしょうか??」
流石!! カエデ!!
こういう時に俺の気持ちを汲んでくれるのは助かるぞ!!
「具体的に言うと??」
微妙に口角を上げて腕を組み、火花散らす両者を満足気に眺めながらリューヴが問う。
「そうですね。白熱した戦いに発展すると思われますので、己自身に付与する魔法は解禁。それと相手の命を奪う可能性もありますので継承召喚は禁止にします」
「それってさ!! 雷の力を宿してもいいって事だよね!?」
訓練場の土の上にちょこんと座りながらルーが元気良く左前足で挙手した。
「勿論です。付与魔法は許可しますが、対峙する相手に対して明確な意志を持っての魔法の攻撃、若しくは魔法が当たってしまった場合は負けになります。続いて、激しい衝突により互いの体が吹き飛んだ時の想定を決めましょう」
最初から吹き飛ぶ事を前提に話してもいいものだろうか。
まぁこの人達は加減ってものを知らないから必要かも知れませんよね。
「最初の取り決めでは体勢を崩し、足が新たな地面を踏んだ瞬間に勝利が決します。つまり、互いに吹き飛んだ場合は先に地面に着地した方の負けとします」
「はいっ!! 私は飛んでも宜しいのでしょうか!?」
それじゃあ空を飛べぬ俺達はどうやってアレクシアさんに攻撃を加えればいいんでしょうかね??
「それは反則です。あくまでも地に足を着けての戦いですので」
「何だぁ……。それなら絶対勝てると思ったのに……」
カエデの冷たい返事にしゅんっと肩を落とす。
大変分かり易く凹みますね。
「相手の体に魔法で攻撃を加えるのは禁止。付与魔法は許容範囲か。へへっ。おっしゃ!! 勝機が見えて来たぞ!!」
ユウが左右に首を傾け、軽い柔軟を続けながら話す。
「私も今しがた勝利への道筋がハッキリ!! と照らされたわ。あんたは惨たらしく地面と仲良く抱擁を交わしていなさい」
マイが腕を組み得意気に話す。
「はっは――ん?? そうやってマイは負けるんだぁ」
「あんたの事よ!!!! おらぁ!! さっさと始めるわよ!!」
始めるって言ったって誰が審判を務めるんだよ。
この二人の場合、どちらかが勝利しても絶対審判にいちゃもん付けるだろうし。
「審判は私が務めましょう。公平且冷静な視線で御二人の勝負を見極めます」
二人の戦いを見届けようと各々が楽な姿勢で寛ぐ列からカエデがすっと一歩前に出て、二人が待ち構えている訓練場の中央へと進んで行く。
カエデなら安心して任せられそうかな。
俺なんかが審判役を務めたら胸倉を掴まれて殴られるか、若しくは山の麓までぶん投げられるのかの二択を迫られるもの。
「マイの奴。自分が不利な状況であると認識しているのか??」
俺の右隣り。
先程まで高揚感を滲ませていた姿では無く、今度は何やら真剣な面持ちで正面の二人を見つめているリューヴが話す。
「不利?? どうして??」
ユウの力には敵わぬとも速さで勝るマイが不利に陥るとは思えないんだけど。
「持つ者と、持たざる者の差とでも申しましょうか」
アオイが笑みを含んで話す。
持たざる者?? 何の事だ。
「真正面に立って対峙すれば自ずと見えて来ますわ」
アオイの言葉に従い端整な彼女の横顔から真正面へ視線を送ると二人の話す意味がハッキリと理解出来てしまった。
「う、うぉぉぅ……。何ぃ?? これぇ……。パンパンに膨れ上がった巨大な瓜よりもえぐい膨らみ方じゃん」
ユウの前に立つマイがあわあわと口を開き、目の前に迫った双子の山を呆気に取られ見つめていた。
そ、そう言う事か。
マイは俺達の中で一番背が低い。カエデも背が低いと思うんだけどそれより下。そしてユウは俺より僅かながらに背が低い。つまり、大人の男性とほぼ同じ身長だ。
その……。本人を前にしては絶対言わないけどユウは人の頭と変わらぬ大きさのお胸をお持ちな訳であって。
マイからして見れば双子の大魔王様達が彼女の視界の大半を占め、尚且つ互いの体の間に存在する空間を占拠してしまっているのだ。
相手の体に触れてはいけない取り決めがある以上、攻撃を加える際には否応なしに大魔王様達に気を配らなければならない。
更に攻撃を躱された場合、体勢を崩して前のめりになった御顔がユウの魔境に触れてしまう恐れもある。
待ち構えているのは大地を揺るがす腕力、攻守ほぼ完璧に近い双子の大魔王様達、自分のそれよりも長い腕。
戦う前なのに盤面が詰み状態。世界最高の策士であろうが先ずこの盤面をひっくり返すのは難しいだろうさ。
分が悪過ぎるってのにマイの奴はどうやって戦うのだろう??
一気苛烈に攻めるべきなのかそれともユウの出方を伺うのか……。遊び感覚で始めたけど戦い方の勉強になりそうだな。
「あれっ!? マイが消えたぞ!?」
またそうやって相手を挑発する。
知らないぞ?? 喧嘩になっても。
「はぁ!? どこに目ぇ付けてんだぁ!!」
「おぉ、居た居た。ハハ、わりぃね。『小さく』 て!! 見えなかったよ」
「ウ゛ぬぬぅっ……!! あぁ、そっかぁ!! この前、腕相撲で私に負けたから悔しいんだぁ?? プクク。ごめんねぇ?? あんたより強くてぇ。弱い犬程良く吼えるって言われているけどさぁ、本当にその通りなのかもねぇ」
「――――。はぁっ??」
挑発した本人が挑発されないの。
「腕相撲?? 何の事です??」
きょとんとした顔でアレクシアさんが此方を見つめる。
「以前、ユウの里を訪れた時に面白半分で今みたいに皆で腕相撲をしたんですよ」
確かあの時優勝したのはマイだったな。
よく考えれば、あの時の決勝戦と同じ組み合わせじゃないか。負ける事が嫌いな彼女達が敗戦を忘れる訳ないし。この戦いはきっと苛烈な物へと昇華してしまうでしょうね。
「へぇ!! 誰が優勝したんですか??」
「マイですよ」
「マイさんが!? うっそ。ユウさんじゃないんだ」
まぁ……。俺が枷としての役割を担った事は内緒にしておきましょう。
また横っ面を殴られたくありませんので。
「掛かって来いよちんちくりんがぁ!!」
「びびってんじゃないわよ!! この卑猥な体の持ち主めっ!!!!!」
怒り心頭の両者が獣の牙を剥き出しにして互いの額を勢い良く衝突させると、金属同士が激しく合わさった炸裂音がここまで届く。
「凄い音だねぇ。きっと、マイちゃんもユウちゃんも頭が空っぽだからあぁやって響いたんだね」
「クスクス……。ルー、意外と上手い事を言いますわね」
地獄耳の二人に聞かれても知りませよ??
「聞こえてんぞぉおおおおお!! お惚け狼がぁあ!!」
「後でたぁっぷり!! 埋めてやるからなぁ!!」
言わんこっちゃない。
「えぇ…………。あの距離で聞こえちゃんだ。耳が遠いおじいちゃんってさ。日常会話は聞き逃すけど。悪口だけは絶対聞き逃さないよね?? 多分、それかな??」
「プッ!! ル、ルーさん。駄目ですよ。悪口言っちゃ……」
アレクシアさんの変なツボを刺激しちゃったのかな。
獰猛な野獣の牙を覗かせる彼女達に笑いを悟られぬように腕で口元を隠して可愛らしい笑い声を上げた。
「さて、御二人共。準備は宜しいでしょうか??」
「あぁ、勿論だ」
「さっさと始めるわよ。お化け西瓜」
「うるせぇ。さっさと掛かって来いよ。生まれたての蟻んこ」
「んだとこの野郎!? 誰に口利いてんのか分かってんのかゴラァッ!!!!」
いよいよか。
カエデが喧嘩腰の二人の様子を伺いつつ、すぅっと大きく息を吸い込んだ。
「では……。始めっ!!!!」
「どおおおおぉおおりゃあぁああぁ!!!!」
開始の合図と共にマイが雄叫びを上げて両手を前に突き出す。
はっや!!
遠目だから見えるものの。至近距離であれだけの速さを誇る攻撃を回避出来るのか!?
「はっは――!! お見通しなんだよぉ!!」
互いの事を良く知っているからこそマイの突撃を予測出来たのであろう。
開始と同時に襲い来たマイの攻撃に対し、それよりも素早くすっと腕を引いて攻撃を受け流した。
「ぬぉぅっ!?!?」
支え所を無くしたマイの体が前のめりになり、体勢を整えようと腕を大きく回す。
「ほぉぉらっ。ここを触ったらぁ……。マイの負けだぞぉ――??」
クルクル回って虚しく空を切る腕、そして前のめりになって突出する顔。
そしてこれでもかと目を見開いて驚きを表現しているマイの顔へ接着させる為にユウがずいぃぃっと。そして無慈悲に上半身を反って無理矢理に巨岩を迫らせた。
「あ、あぶっ!! そ、そんな物騒な物を近付けんなぁあああ!!」
「手以外に触れたら負けですものね!! ユウさんらしい戦法ですっ!!」
「卑怯過ぎるよねぇ。あれだけおっきかったら絶対触っちゃいそうだもん」
あれは果たして戦法と呼べるのだろうか??
取り決めに従った戦法だけど……。ちょっとだけマイが不憫に感じてしまった。
「とっととぉ!!!! へへ。危ない危ない」
「ちっ。大人しく負けてりゃいいものの」
初手はユウが取ったか。
お次はどう出るかな??
「よ――し。あんたに見切れない速さで突いてやるからな?? 覚悟しなさいよ??」
「おぉ――。掛かってこいや」
「その余裕な笑み……。ほぼ見えんけど!!」
見えないんだ。
「くしゃくしゃに泣き散らかしてやるからね!! 吹き荒べ!! 行くわよぉ!! 嵐爆速ぉ!!」
うぉっ!?
マイの体を中心として突風が発生して体の芯がぐらりと揺らぐ。
あの距離からここまで届く風の強さかよ。
「ん――!! 良い風ですね!!」
覇王の娘さんと同じく風の魔法を得意とするアレクシアさんが気持ち良さそうに風を受け取っている。
「どうですか?? マイの風の魔法は」
「そうですね……。荒々しく吹き荒れる風、とでも言いましょうか。これ程の風力は私達風を得意とするハーピー一族でも早々いませんよ」
強風によって靡く髪を耳にかけ、嬉しそうな笑みを零して此方を見た。
風を自在に操る女王様の御墨付か。
馬鹿みたいに食べて騒いで暴れていてもちゃんと成長しているんだな。
「よぉし。次で決めるわよ……」
マイが血走った目で舌なめずりをしつつユウの両手に標的を絞った。
「あたしもそう考えていたんだよ」
そしてユウも相応の覚悟を決めたのか、緊張の欠片を吐き出して大きく息を吸い込むと同時に顔から笑みが消え失せた。
「「…………」」
相対する両者。そして俺達の間にもピンっと張り詰めた緊張の糸が張り巡らされ、時間が経過すると共に糸の緊張度が増していく。
恐らく対峙しているあの二人にとっては俺達の何倍以上ものそれを感じ取っている事であろう。
刹那にでも視線を切れば敗北という二文字の結末が待ち構えている緊張感の中。
この空気に耐えられなくなったのか将又短期決戦を望んだのか。
「――――――――。おらぁぁああ――――ッ!!」
やはり先に仕掛けたのはマイだ。
小細工無し、小手先の技等不要。
最短距離を真っ直ぐ、一切の寄り道無しの惚れ惚れしてしまう軌道で両手を突き出した。
「これを……。待っていたんだよぉおおおお!!」
そして迎え撃つユウもこれまた愚直な迎撃を見せる。
風を纏い常軌を逸した速さの両腕を己の力のみで迎え撃った。
両者の腕が衝突した刹那。
「「ッ!?」」
二人の間に呆れた衝撃波が発生し、空間が弾け飛ぶと同時に両者の体が反対方向へと吹き飛んで行く。
腹の奥をずんと刺激する衝撃波がその大きさを言葉の代わりにこちらへと伝えてくれた。
「おぐっ!?」
「うぉっ!?」
反対方向へと飛んで行く両者だが……。ユウよりも微かにマイの方が上空を飛翔している。
自然の法則通りならこのまま重力に引かれて先に地へ体の一部を付けてしまうのはユウの方だ。
マイも俺と同じ考えに至ったのか。
「はっは――!! 私の……。勝ちね!!」
ユウの状態を視界に捉えると勝利を確信した笑みを浮かべた。
後数センチでユウが地面に到着してしまうと思われたその時。
「負けられるかぁぁああ――――ッ!! こなくそぉ!!!!」
ユウが渾身の力を籠めて叫ぶと右の拳に深緑の光が宿り、大地上に眩い光を放つ魔法陣が現れ。
「大地衝穿ッ!!!!」
そして彼女の右手と地面の魔法陣がほぼ同時に強く輝くと大地が隆起してユウの体を空高く押し上げてしまった。
あ、あはは。何て力技だよ……。
自身の体に敢えて攻撃魔法を加え、随分と高い位置まで飛翔して行ったユウの体を呆れた瞳の色で見上げていた。
「は、はぁ!? あんた……。ぐぇっ!!」
驚愕の表情を浮かべて空高く舞う友人を見上げると背中から派手に地面に着地。
一方ユウの体はまだまだ空中散歩の途中で落ちて来ない。
つまり、勝者は……。
「勝者……。ユウです」
カエデが冷静な声色でユウの勝利を宣言した。
「おぉ!! マイちゃん負けちゃった!!」
「い、インチキよ!! 自分に付与魔法以外は掛けちゃいけない取り決めでしょ!?」
尻もちを着きながら、随分と離れた位置に居るカエデへと叫ぶ。
「付与魔法は許可されています。そして、己自身に攻撃魔法を加えてはいけないとは言っていませんよ??」
確かに……。そう言っていたな。
数分前のカエデの言葉を思い出すが、攻撃魔法を自身に掛けてはいけないとは言っていなかった。
「ち、ち、ち、ちきぃしょおおおぉお!! 大体!! あんな無茶苦茶な作戦が咄嗟に浮かぶ訳ないじゃない!!」
「ユウは咄嗟の機転を思い浮かべて勝利へと繋げました。そこを褒めましょう」
そうそう!! 全くその通りだ。
カエデの言葉にウンウンと静かに頷く。
自分自身に攻撃を加えるのは勇気が要る事だし、それも空高く上昇してしまう程の威力だ。普通の勇気じゃ到底成し得ない行動だよ。
正面から小細工無しで戦うのが得意な両者だけど。勝敗を分けたのは勇気そして機転だ。
ちょっとした時間潰しから始まった遊びだけど意外と為になりそうだよね。間も無く始まる鍛錬に向けて己自身を見直す良い機会かもな。
「く、くっそぉぉおお――!! 世界最強の私が一回戦で敗北するなんてっ!!!!」
そんな事を考え、悔しそうに地面へと拳を叩きつけている『マイ』 を見つめていた。
ここで誰かが稽古をしている時はそこから決して視線を切ってはいけない。これは必ず守らなければならない事項である。
では、一体何故視線を切ってはいけないのか??
その答えは至極簡単です。とんでもないとばっちりを食らう可能性があるのだ。
実際、何度も常軌を逸した流れ魔法や流れ体躯が俺の体を直撃した。
その都度次は気を付けようと己に言い聞かせるんだけど……。如何せん、事ある毎に注意散漫な自分を呪う羽目になるのですよっと。
「――――。どっせぇぇい!!」
「ばがすっ!!!!」
上空から降って来た妙に柔らかい物体が顔面を直撃。俺の体はそのまま地面へとめり込んでしまった。
「いてて……。おっ!? 勝負はどうなった!?」
「ふふ。あそこを御覧になっては如何です??」
アオイの声を受けて、ユウがその先へと視線を送る。
「ちくしょ――!! ムカツクぅぅうう!!!!」
「は、はは!! やったぁ!! 勝った!! 勝ったぞ!!」
陽性な感情を惜し気も無く出し、両手の拳をぎゅっと握って勝利を噛み締めた。
「ユウちゃん凄かったねぇ!! まさかあそこで自分に魔法を掛けるなんて!!」
「ユウさんって意外と策士なんですね!!」
「ありがとう!! 後、アレクシア。意外とって余分じゃね??」
「えへへ。そうでしたね」
息苦しい暗闇に包まれる中、女性達の燥ぐ声が聞こえて来る。
楽し気な会話をプッツリと遮断させてしまうのは心苦しいが、そろそろ息が限界なので俺の顔面の上で揺れ動くお肉さんにこちらの存在を伝えましょうか。
「フゥ。くるふぃい!!」
「ひゃんっ!?!? な、なんだ!! そこに居たんだ!!」
「ぷはっ!! はぁ――――。苦しかった……」
数分ぶりの太陽の眩い姿が現れ、肺へと新鮮な空気を送り込んだ。
「あたしの為に下敷きになってくれたのか??」
頭上で光り輝く太陽にも劣らない明るい笑みを浮かべて手を差し出してくれる。
「突然降って来たんだよ。首の骨が折れるかと思ったぞ」
「へへっ。悪いね」
その手を受け取り彼女の力を借りて立ち上がった。
「さて!! 次の組み合わせを決めましょうかね!!」
体中に付着した土を払い、小さな木箱を取り出して少々大袈裟な声を出す。
「おらぁ!! ユウ!! もう一回やるわよ!! 今のはナシ!!!!」
「んな訳あるか。勝負に二度目は無いんだよ」
「あ、朝ご飯の時にもう一個おにぎりを食べていれば勝てたもん!! だからもう一回!! ねっ!?」
「だ――!! くっつくな!! もう勝負は決まっただろ!?」
龍とミノタウロスの場外乱闘が始まる前に決めちゃおうかね。
「これだけ広いからさぁ。後の組み合わせを決めて、ちゃちゃっと始めた方が良く無い?? 審判はマイちゃんとユウちゃんが務めてさ」
そっちの方が良いかも知れないな。
周りの陽性な空気に流されて忘れていたけど、まだまだたぁくさんの仕事が残っているし。早い所勝負を付けて仕事を片付けちゃいましょう。
ルーの提案に軽く頷くと残りの組み合わせ抽選会を開始した。
お疲れ様でした。
本日の執筆の御供は……。『トップガン マーヴェリック』でした!!
先日購入したのですが中々見る機会が無く、本日の執筆中に鑑賞していました。
映画館での鑑賞を合わせて二回目なのですがまだまだ面白いですね!! 特にF14で戦うシーンが堪らんです。
暫くの間はこの映画に頼って執筆を続けそうですね。
ブックマークをして頂き有難う御座いました!!
多忙明けで少々へこたれている体に嬉しい知らせとなりました!!
それでは皆様、お休みなさいませ。




