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第六十話 朝ご飯は黄金色に輝くアレ

お疲れ様です!!


本日の投稿になります。


ごゆっくり御覧下さい。




 大変痛む顎を大事に抑え訓練場の上に立つと。



『朝から大変でしたね』 と。



 小鳥達が労いの言葉を送りつつ青く澄み渡った空を横切って行く。


 一列横隊にキチンと……。



「ふわぁ。ねっみぃ――……」



 基。



 若干一名が列を乱しながらも、指導者足る人物が概ね納得して頂ける列を形成。



 在る者は朝の余韻を引きずる欠伸を堪え、又在る者は我慢する素振すら見せずに解き放つ。


 ゆっくりと過ぎ去る時間の中、朝の柔らかい光が射す訓練場の上で各々が思い思いの時間を過ごし。


 有難い指導を与えて下さる御方を待ち続けていた。



「ねぇ――。未だ来ないの――??」



 痺れを切らしたマイがぶつくさと文句を放ち、もう何度目か分からない欠伸を放ちつつ誰とも無しに話す。



「もう直ぐ到着しますよ」


「カエデ、何で分かるのよ」


「大きな力が動き続けていますからね。ほら、来ました」



 カエデの視線を追うと。



「おはよう」



 本日も青の袴を身に纏った師匠がなだらかな丘を下りつつ、此方に向かって朝に相応しい言葉を送って下さった。



「おはようございます!!」



 朝一番に覇気の無い声は憚れる。


 そう考え、早朝の清々しい空気を吹き飛ばす勢いで声を上げたが。



「「おはよ――ございま――す」」



 間延びした両名の声が台無しにしてしまった。



「何じゃ、だらしない声を出しおって」



 師匠が深紅と深緑に向かい、キリっとした瞳を向ける。



「朝っぱら水の中に叩き落とされれば誰だってこんな顔にならぁ。そうだよな?? え??」



 そう話し。


 此方をジロリと見上げた。



 貴女が中々起きない結果を鑑みれば理解出来るのでは?? そう言えればどれだけ楽か。



「そ、それはそうと。朝の指導はどういった内容なのですか??」



 これ以上怒りの矛先を向けられたら余計な怒りを買ってしまう虞もある。


 若干噛んでしまったものの。


 良好な声質で指導内容を請うた。



「うむっ。お――い、持って来――い」



 師匠が体をクルリと反転させ、此方に小さな背中とモフモフの尻尾を見せると。



「よいしょ……とぉ!! おっも!!!!」



 メアさんが何やら四苦八苦しながら背嚢を運んで来た。



「師匠、あれは??」



 随分と重そうな背嚢ですね。



「むふふ。聞きたいか??」



 いや、聞かなければどういった訓練を行うか理解出来ませんので……。



「あの背嚢の中には岩と石が詰めてあるっ。重量約五十キロのな!!」



「質量は理解出来ました。問題はそれを使って何をすれば宜しいのでしょうか??」



 ちょっとだけキツイ寝癖の余韻が残るカエデが挙手しつつ問う。



「なぁに、簡単じゃよ。アレを背負って此処まで登って来た階段を一往復して来い。それが朝の稽古じゃ」



「えぇ!? くっそ重たい荷物を背負って馬鹿なげぇ階段を上り下りしなきゃいけないの!?」



 マイが信じられないといった感じで話す。


 そして言葉が汚いのでちょっと直そうか。



「それを終えるまで、朝飯は抜きじゃ。食いたければさっさと行ってこい」



 此方をあしらうように。



『早く行け』



 そんな感じで三本の尻尾を振る。


 黙っていても訓練が終わる訳じゃないし……。早速、行動を開始しましょうかね!!



 くすんだ白色の背嚢を背負い、両足に力を籠めて立ち上がるが……。



「う、む……。結構重たいな」



 両太腿に良好な重量感がずしんと圧し掛かる。



 人、一人分が此処に詰まっているのだ。


 重いと感じるには十分でしょう。



「横着が出来ない様に、モアが麓で待機しておる。彼女に挨拶を交わし。此処迄戻って来い」



「了解しました!! よし!! 皆行こう!!」



 こういう時は誰かが前に出れば、後に続くものだ。


 若干大袈裟に声を上げ、クルリと振り返るが……。




「はぁ……。おっも……」


「あたし的には楽勝なんだけど……。階段の長さがねぇ」


「自分より重い物を背負う者の気持ちも汲んで欲しいですね」


「レイド様。私、実は懐妊してしまいまして……」




 全く!!!!


 朝一番の訓練でだらけてどうするの!!



「こらっ。早く終わらせないと、御飯が食べられないでしょう!!」




 腰にむんっと手を当て。


 一部の人が発した理解の範疇を越える言葉をサラリと流し、諭す様に話してやった。



「へぇへぇ。やればいいんでしょ、やれば……」


「だなぁ――」



 朝飯という単語に釣られたマイが歩み始め、それに深緑の彼女が続くのだが。


 藍色の髪の女性が両者を颯爽と追い抜かして階段へと到達。



「もう私に追い抜かされましたね?? 先が長いのに……。見ていて不安になりますね」



 ふんす……と。


 だらしないですねと言わんばかりに気怠く、いつもより長めの鼻息を漏らして階段を降り始めた。



「こ、この!! 待て!! カエデ!! 私の前を進むな!!」


「貧弱な体であたしに勝てると思うなよ!?」



 相も変わらず安い挑発に乗りますよね。


 カエデも随分と二人の扱いに慣れてきたものさ。



「さ、行きますよ??」



 今も中々動こうとしない白い髪の女性に話す。



「お腹の子がどうなっても良いのですか!?」


「う――ん……。それよりも、その子の名前決まっているのかな??」



 足首を解し、膝の軽運動を行いながら何気なく聞いてみた。



「は、はい!! 私達蜘蛛一族から生まれる子は皆、女性ですからね!! 髪の色で決めようかと考えているのです!!」



 頭上に光り輝く太陽も参ったなぁと困惑してしまう笑みを浮かべつつ、アオイが此方に向かって進み出す。



「そっかぁ。アオイはよぉく見ると白の中に青が混ざっているからねぇ。綺麗な髪の子に育つんじゃない??」



 アイツ等はもうあんた位置まで降りて行ったのか!?


 深緑と深紅が競う様に階段を馬鹿げた速さで降りて行くのを視界が捉えてしまった。



 俺も負けない様に追いつこう!!



「よ、よくご存じで御座いましたわね!! 私の事をそこまで見て頂けるなんて……。あぁ、これが夫婦の力なのですわぁ……」



 頬に手を当て、嫌々と顔を横に振る女性を背に。


 先ずは慎重に下り続ける手前の藍色の髪の女性の背に向かって足の筋力運動を開始した。








   ◇









 一段下れば、普段よりも重い負荷が膝へとずんっと圧し掛かり。


 それに負けじと足の全筋力が抗い。地面には決して膝を着けぬぞと叫ぶ。



 双肩に掛かる負荷と両足に掛かる超負荷。



 そして全身から吹き出す汗と激しい呼吸が、この稽古の辛さを代弁していた。



「ぬ、ぬぅ!! 下りは楽かと思ったけど。結構キツイわね!!」



 数段先を下り続けるマイが、右隣りで飄々と散歩気分で階段を下り続けているユウに問う。



「そうか??」



 普段から重たい荷物を運んでいる分。


 それと彼女が積載している筋力を加味すれば散歩気分なのも理解出来る。



 あの飄々とした姿に追いつく為。俺は今こうして滝の様な汗を流しているのだ。




「ちぃっ……。筋力馬鹿め」


「馬鹿は余分だっつ――の。おっ!! モアが見えたぞ!!」



 ユウの声を受け、俯きがちだった顔を上げると。



「みなさ――ん。もう少しで折り返しですよ――」



 柔和な弧を描く瞳を浮かべ、此方に手を振っていた。



「やっと地上かぁ……」



 大きく息を吐き出しつつ話す。




 巷でよく上がる問題にこういった例えがある。



 やっと折り返しなのか。それとも……。


 もう折り返しなのか。



 受け取る人によって答えが変わってしまうのだ。



 俺の場合は当然、前者だな。


 体全体が悲鳴を上げていますので。



「うぇっ。これから登りかぁ……。嫌だなぁ……」



 深紅の髪を汗でしっとりと濡らす彼女も俺と同じ。



「意外と早く着いたな」



 怪力無双のミノタウロスさんは当然、後者でしたよっと。



「到着!!」



 マイが先頭で大地に足を着け。



「到着だなぁっと」


「ふぅ……。お疲れ様です、モアさん」



 ユウの後に続いて平行な地面に足を乗せた。



「朝から精が出ますねぇ」


「師匠からの指示ですからね。従って当然です。所、で……。その手に持っている風呂敷は??」



 モアさんが大切に持つ風呂敷に視線を落として問う。



 まさかとは思いますが……。自家菜園で製造したアレでは無いですよね??



「これですか?? 鶏卵ですよ」



 良かったぁ……。


 それなら全然食べられますものね。



 安堵の息を吐き、手の甲でふぅっと額の汗を拭ってやった。



「おぉ!? 何々!? じゃあ、朝ご飯は卵焼きなの!?」



 モアさんにぐぅっと接近しつつマイが問う。



「いいえ?? 獲れたて新鮮ですので、卵かけご飯にしようかと……」



「皆!!!! お先っ!!!!」



 あの味を舌が思い出した刹那。



『早く食らうべきだ!!』



 そう言わんばかりに足が勝手に階段を昇り始めてしまった。


 待ってて下さいね!! 卵かけご飯……。じゃあない!! 師匠!!


 一番で到着しますから!!









「何よ、アイツ。長い便秘から解放された野ネズミみたいに快調な足取りしちゃって」


「すっげぇ分かんねぇ足取りだな」




「うふふ。レイドさんはきっと、卵かけご飯の味を知っているから急いだのでしょう」



「むぅ?? それ、そんなに美味しいの??」



「溶いた卵をホカホカ御飯の上に垂らし。醤油でちょっと塩気を足します。そしてぇ……。クルクルぅっと混ぜればあら不思議。黄金色に輝く宝石の完成です」



「ユウ!! 行くわよ!!!!」


「お、おぉ……。行こうか……」



 財宝を追い求める冒険者達。


 彼等も呆気に取られる速度で深紅の髪の女性が階段を昇り始めた。








 ◇








 大殿筋が痙攣を始め、下腿三頭筋が泣きっ面を浮かべ、肺が辟易した顔を浮かべる。


 体中の筋線維、五臓六腑がいい加減しろ!! っと頭に命令を送る頃。



 やっとの思いで頂上を捉える事が出来た。



「ま、待ちやがれぇぇえええ!! せめて、二着は私の物よ!!」



 数十段後ろ。



 大瀑布も、『ほぅ??』 っと。思わず顎に手を添えて頷く。


 滝の様な汗を流すマイが此方に向かって叫ぶ。



「レイド――。後少しだぞ――」


「お――!!」



 最上段で腰かけ、手拭いで汗を拭う彼女に向かって笑みを浮かべ。



「最後の一段…………。っとぉ!!!!」



 最後は大袈裟に足を石作りの階段から、山の大地へと突き刺してやった。



「うむっ。御苦労じゃ」


「いや、正直……。疲れましたね……」



 憎き重さを与え続けていた背嚢を地面へと下ろし、もういい加減休めと頭が命令し続けているのでその命に従い。


 ユウの隣で横になり、青い空を仰ぎ見た。



 はぁ……。


 やっと到着したぞ……。


 晴れ渡る空も俺を歓迎してくれるように澄み渡って綺麗な事ですね。




「うぎぎぃ……。むきぃいいいい!!」



 発情期の猿??



 耳が首を傾げてしまう声を放ちつつ。


 マイが三着で踏破した。



「ぐっはぁ!! づかれだ!!」


「お前さんは常日頃から楽しているからなぁ。それが響いているんだよっと」



 此方同様。


 だらんっと仰向けに寝転んだマイのお腹をユウがポンっと叩く。



「くそう……。空腹過ぎて怒る気も失せるわ……」



 何故、怒るのだろうか??


 彼女は至極真っ当な事を言っただけなのに。



「これ、お主達。登り終えたのなら平屋に戻って着替えを済ませろ」



 腕を組みつつ階段を見下ろしている師匠がそう仰る。



「着替えを済ませ、朝飯を食い終え。二時間休んだら稽古を始めるぞ」


「分かりました。ユウ、マイ。移動を始めようか」



 師匠の指示に従い、情けない足の筋力に鞭を打って立ち上がる。



「ご、御飯。御飯が待っているのよ……」



 足に力が入らず、立つことは叶わなくとも。


 飽くなき食への熱望が彼女を奮い立たせ。



 芋虫擬きの移動方法で大地を這い始めた。



「あはは!! なんだよ、マイ!! その可笑しな動き方は!!」


「う、うっせぇ!! お腹が空き過ぎて足が言う事を聞かないのよ!!」



 腹を抑えて笑うユウに噛みつく。



「あ――。笑った。レイド、行こうか」


「そうだな」



 ポンと此方の肩を叩き、平屋へと進むユウに続いた。



「ま、待ちやがれ!! どっちか私を背負えばいいじゃん!!」


「お主……。常日頃からそうやって誰かに泣き叫んでおるのか??」



 師匠が呆れにも似た声色でマイに問う。




「は?? そんな訳ないじゃん。アイツらが目に涙を浮かべて。


『私共はマイ様の従順なる僕で御座います故。どうぞお好きにお乗り下さい』


 って懇願するから。仕方がなぁく乗ってあげてんのよ」



 マイの言葉受け、ユウがピタリと足を止めてしまった。




「レイド、背嚢貸して??」


「ん――。俺の分も宜しく」



 背負っている背嚢を彼女に預け。


 随分と楽になった体重で平屋へと向かい始めた。



「や、やめろ!! 馬鹿乳!! 二つも乗せたら体がぶっ壊れるだろうがぁ!!」


「あたしの体も合わせて、三つ分ですよ――!!!!」


「あぶぐぅぅ!?」


「おらおらぁああ!! ついでだぁああああ!!!!」



「あはははは!! や、やめてぇ!! 足をツンツンしないでぇえええ!!」



 朝も早くからすいませんね?? 喧しくて。



 うら若き女性二人の声に顔を顰めている森の木々へと謝意を述べ。


 本日も大変馨しい香りを放つ伊草達の下へと進んで行った。










 ◇










 着替えを滞り無くとは言えない早さで終え、今も悲鳴を上げている足を解しつつ畳の上に座る。


 下半身は勿論の事。


 上半身も意外と疲れているんだな……。足を終えたらこっちも……。



「レ、レイド様ぁ……。足が動きませんのぉ……」



 筋線維を解き解していると、畳の上で横たわる白の塊が此方に向かって甘い声色を放った。



「アオイとカエデはさっき到着したばかりだからね。朝ご飯がもう直ぐ出来るみたいだし、しっかり休んでおくといいさ」


 気怠く、そして見様によっては淫靡にも映る寝返りを打つ彼女にそう話す。





 俺達が着替えを終え、畳の上で休んでいると。



『も、もう動けませんわ!!』


『まだまだ行けます……』



 一人は正直。


 もう一人は痩せ我慢が丸見えの表情を浮かべて帰って来た。


 二人共、華奢な体躯なのによく頑張っているよ。




「違いますわよぉ。レイド様ぁ……」



「違う??」



 何が??


 そんな感じで此方を見つめる黒の瞳に問いかけた。



「私のぉ、足をぉ、解して下さいましっ」



 あぁ、そういう事。



「ん?? 何だ、アオイ。整体を施して欲しいのか??」



 おっと。


 こいつは不味いですね。


 聞かれては不味い人の耳に言葉が伝わってしまいました。



 ユウがニィっと笑みを浮かべ。



「お、お止めなさい!!」


「まぁ、そう言うなって。あたしは父上によく肩揉みやら、腰の整体を施していたんだからさ」



 アオイの背中に遠慮も無しにポンっと乗り。拳をぎゅうっと握り、指間接の骨をこれでもかと鳴らした。


 今から始めるのは整体、ですよね?? 喧嘩は駄目ですよ??




「お退きなさい!! この体を跨いで良いはレイド様のみなのです!!」


「ユウ――。金輪際、蜘蛛がうるせぇ口を開けない位に足を揉んでやって」



 だらんと足を投げ出し、ユウ同様ニヤニヤと笑みを浮かべるマイが話す。




「ん――。分かったぁ――」


「や、やめっ!! ――――――――。あっっ…………」



 おや??


 想像とは真逆の声が漏れましたね??



 ユウがアオイの脹脛に優しく指を添えると、途端にアオイの頬が朱に染まった。



「どうだ――??」


「あぁっ……。くぅっ…………。て、的確ですわね……」



 でしょうねぇ。


 見ているだけでも心地良さが伝わって来る声色ですので。


 ですが、その……。



「あっ……。やっ…………。はぁっ……」



 淫靡に声を漏らすのは止めて頂けません??


 形容し難い感情が湧いてしまう虞がありますので。



「カエデは大丈夫なの??」



 壁際に背を預け。


『私はもう此処から一歩も動きませんよ』


 と、細い体の方々から放たれる空気に恐ろしい怒気を滲ませる彼女に問う。



「大丈夫?? 私がそう見える様に至ったレイドの考えを聞かせて下さい」


「あ、うん……。ゆっくり休んで……」



 これ以上話し掛けるな。


 そう言わんばかりにジロリと睨まれ、そそくさと退散しましたとさ。



 悪戯に視線を動かし、淫らな声が一際強く。



「あんっ!!!!」



 響くと同時にモアさんとメアさんが本日も呆れた大きさの御櫃を持って平屋に入って来た。




「お待たせしました!! 朝ご飯ですよ――!!」


「朝飯も残さず、全部食えよ!?」



 これが朝に食べる量なのかしら……。



 強大な白米の山が大部屋の中央でその存在感を存分に発揮すれば。


 脇に添えられた緑が目に嬉しい野菜炒めと、丸みが美しい鶏卵。


 そして水気をたっぷり含んだ野菜類の浅漬け。



 心は満たされるが、体は待ったの声を掛け続けている。


 そりゃあそうだろう。


 なんせ、喉の手前まで溢れる食物を詰めなければならないのだから……。



 卵かけご飯の味に発破を掛けられて階段を駆け上がって来たが、その間に食欲が失せてしまいましたよ……。



「はわわわ……。御飯だぁ……」



 アイツの無限に湧く食欲が羨ましい。


 目尻をトロンと下げて丼に白米をこれでもかと盛り付け。



「んふっ。これを割って御飯に掛けるのね……」



 おかず一式を取り皿に盛り付け、ついでと言わんばかりに鶏卵を手に取り元の位置へと戻った。



 食わなければ強くならない、か。


 これも頂へと続く道なのだ!! 食ってやるぞ!!



 意気揚々とまではいかないが、力強い歩みで御櫃へと向かい。


 若干投げやり気味に食材を入手し。



「これを……。今から頂くのですね……」



 食が始まる前から茫然と箸を持つカエデの隣へと戻った。




「じゃ、じゃあ皆。頂こうか……。頂きます」


「「「頂きます……」」」


「頂きま――っすっ!!!!」



 一人だけ元気一杯な声を皮切りに、戦いの火蓋が切って落とされた。



 さてと……。


 浅漬けから食しましょう……。



 一口大に切られた大根さんを口に運ぶ。



「…………。うんっ、美味しい!!」



 舌に広がる嬉しい塩気。


 咀嚼すればポリっと小気味良い音が奏でられ、僅かばかりに食欲が上体を起こす。


 あれ??


 意外と、食べられそうだな……。



「ガッフッ!! ハッフッ!! ハッファァ!!!!」



 三日間飯を食わなかった犬が大好物を貪り食う姿を模倣しているアイツの事はさて置き。


 自分に見合った配分で食を進め行こう。




 鶏卵をパカっと割り、朝の食卓に並べられる最良の黄色そして万人が納得する丸みを白の山へと乗せ。


 箸を器用に操ってクルクルと溶き混ぜ合わせる。



 そして、小瓶の中に入れられた醤油さんを時計回りに掛ければどうでしょう。



 簡単なのに、最高に美味しい卵かけご飯の出来上がりじゃあないですか!!


 丼から金色のドレスを身に纏った白米さんを箸で掬い、御口の中へ。



「ふぅ……。んまいっ」



 卵のまろやかさ。


 醤油の塩気。


 そして、ちょっと力を籠めただけで溶け落ちるお米さんの硬度。



 何度食べても飽きない幸せが口の中にふわっと広がった。



「クァァアア……」



 この味を感じたアイツもどうやら満足して頂けたようで??



 自分が考えていた以上の旨味を感じたのか。


 手から箸をポロリと落とし、恍惚の表情を浮かべていた。



「ユ、ユウ!! こ、これ美味過ぎじゃない!?」


「ふぉうだな――」



 彼女同様、卵かけご飯をモムモムと食しつつ話す。



「いや、本当……。どうしよう」


「ふぁにが??」


「無限に白米食べられそうなのよ……」



 出来ればお願いします。


 その分、俺達が食べる量が少なくなりますので。



 いつもは食い過ぎるなと叱るのだが。


 此処に居る時だけは彼女を応援しよう。


 中々減ってくれない食物達を見つめながら、そう決心したのだった。


最後まで御覧頂き有難うございました!!


卵かけご飯、偶に食べると美味しいですよね。

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