第百九十九話 底知れぬ強さ その四
お疲れ様です。
連休中の深夜にそっと投稿を添えさせて頂きます。
ただそこに静かに佇む彼女から放たれる力が私の心臓を鷲掴みにして鋭い痛みを与え、纏う邪悪な空気に気圧されると自然と後ろ足に体重を掛けてしまう。
音を立てずに頬を伝い落ちる酷く冷たい汗。
背の肌が泡立ち心臓が痛い程に鼓動を続けて心がここから一刻も早く逃げ出せと忙しなく弱気な声を放つ。
真面な人なら彼女を視界に捉えた時点で撤退を始めるでしょうね。
ですが、私は海竜の血を引く者。
神にも等しき力を持つ九祖の末裔なのです。情けなく踵を返す様では他の魔物達に示しが付きませんよ。
負けは論外、引き分けも駄目。
私は彼女に勝利する事が大前提なのです。
「ふふ。そう来なくては面白くありませんよ??」
両足に力を籠めて立ち上がると苛立ちを覚えさせる声色が耳に届く。
「それは、どうも」
服に付着した土埃を払い平静を装う。
「私の魔法を受け止める処か、反撃に至るその魔力と冷静な洞察眼。遊び相手に相応しいと認めてあげます」
遊び相手、ですか。
お馬鹿なクレヴィスさんなら兎も角。
今の彼女から放たれた言葉であると妙に納得してしまう愚かなもう一人の自分がいた。
私が今まで放った魔法の数々、それを。
『敢えて』
似たような種類の魔法、同じ属性、そして極僅かに上回る威力で相殺。
向こうは無傷、それに対してこちらは徐々に攻撃が蓄積されてしまう。
彼女はまるで冷静沈着な狩人が獲物を徐々に追い詰めていく様に私の体を敢えて絶命させない様に少しずつ傷付けていた。
手加減されている事に多大なる憤怒と屈辱を覚え、それが何度も私を奮い立たせた。
「ほら。お次はどんな魔法で攻撃されるのですか?? 得意な水属性?? 火?? 風?? それとも……。クスっ。こちらに背を見せて逃げても宜しいですよ。実は、貴女が不憫で仕方が無いと考えていますので」
右手を口元に当てて微笑を浮かべ数段上の高みから私を見下ろす。
ふぅ――。別に、構いませんよ?? 実力差は確かに存在しますから。
ですが……。
私も感情を持つ一人の魔物。悔しくないと言えば嘘になりますよ!!
「穿ちなさい!! 雷水槍!!」
体の奥から振り絞った魔力を消費してクレヴィス擬きを包囲する形で雷の力を宿した水の槍を召喚。
屈辱を力に、そして憤怒を魔力に変換して解き放つが。
「んぅ――。まぁ、威力は並み以下ですけど。二つの属性を同時にしかも短い詠唱で放てるのは及第点を上げますよ」
襲い掛かる槍の数々を丁寧に解説を続けながら似た様な魔法で相殺してしまった。
これも正しく私への当てつけですよね。
こちらは詠唱も無しに貴様と同じ威力の魔法を使用出来るのだぞ、と。
「攻撃の継続時間もまぁ並程度。ですがねぇ……。肝が冷える魔法はもうお持ちで無いのですか??」
「くっ!!!!」
防御の為に前方へ展開させた結界に火と水の力を持ち合わせた槍が着弾。
恐ろしいまでの轟音が爆ぜて結界が霧散すると、その余波を受けた私の体が後方へ吹き飛ばされてしまった。
「あら?? ごめんなさい!! ちょっと威力を強くしてしまいました」
「ど、どう致しまして……」
立って話すの面倒になり、片膝を着いた状態で話す。
桁外れな魔力の容量と威力。魔法の豊富な種類と他属性を含めた同時詠唱。
参りましたねぇ。
現時点で勝てる要素が一つも見当たりません。
「もう降参ですか?? でしたら……。他の人達の相手を務めさせて頂きますので失礼します」
人の感情を逆撫でする口角を上げると、興味を失った様な表情を刹那に浮かべて私の前から移動を開始し始める。
「…………。待って」
涸れ果てた体力と魔力に鞭を打ち、両の足で大地をしっかりと捉え。元の位置へと目線を戻した。
た、立ち上がる事がここまで困難であるとは思いませんでしたよ……。
少しでも気を抜けば意識を失いそうです。
「何ですか?? 貴女の相手はもう飽きました。他の人で『暇潰し』 に興じようと考えていますので」
私は暇潰しにもならないと言うのですか??
それに……。私の友人達には指一本触れさせませんよ。
友達の大切さ、友と過ごす時間の有難さを教えてくれた方々ですので。
「ふぅ……。この力を解放するのは本意では無いのです。まだまだ手に余る力ですのでね」
「貴女は『一応』 大魔の血を引く者でしたね。どうぞ?? お力を解放して下さい。それまで待って差し上げます」
私の魔力を感知したのか。
先程までとは打って変わって、陽性な感情が籠った声で私を捉える。
ご要望に応えて……。未熟ながら大魔の力を覚醒させます。
お願い……。私の体……。持って下さいね!!!!
心の奥底。
更にその奥に封印してある扉に手を掛けた。
「ぐっ!! うぅぅぅ……!!!!」
四肢が四方八方へ引き千切られる痛みを伴う感触。そして沸き上がる黒き殺意と禍々しい憎悪。
敵に情けをかけるな、無慈悲に殺せ、蹂躙しろ。惨たらしい死を与えてやれ。
凡そ真面とは思えない負の感情が冷静な感情を侵食し始めて私の意志など関係無く力の限りに暴れろと命ずる。
こ、この力はこれだから嫌いなのです。
私は冷徹な獣では無く温かい感情を持った生物なのですからね。
「へぇ!! やれば出来るじゃないですか」
小さな手でパチパチと柏手を打つ。
「こ、この状態では手加減出来ませんので……。死んでも文句言わないで下さいよ」
「死んだら文句言えないですよ?? 頭までお馬鹿さんになったのですか??」
彼女が放った数言が限界まで昂っている私の感情を爆ぜさせた。
「遥か天より降り注げ光の雨よ。そして無慈悲に殲滅せよ!! 天星屑煌雨!!!!」
体の内側から押し寄せる負の感情の赴くままに魔力を高めていくと、この部屋の天井を覆い尽くす光の魔法陣が出現。
地に蔓延る闇が天から降り注ぐ光に顔を顰める。
「あらあら。まぁまぁ……。魔力が勿体ないですよ?? ちゃぁあんと、私に当てて下さいね??」
「お願いします。その鬱陶しい目玉と指先をこちらに……。向けるなぁあああ――ッ!!」
異常なまでに昂った感情のまま魔力の全てを解放し。
そして、暴力と殺意の塊を彼女へ向けてやった。
「へぇ――。光属性に……。火と、水?? うん!! 三属性同時詠唱とは中々ですね!!」
生物の鮮血を彷彿させる恐ろしい赤い光を放つ深紅の矢の雨が結界へと着弾。
大地を轟かせる轟音と生物が絶死を免れない熱波が迸る空間の中から彼女の冷静な声が零れ続ける。
これだけの攻撃を加えているのに焦燥感の欠片も見当たらない声色を放つ敵。
それが私の心を悪戯に刺激してしまう。
駄目だと分かっているのに……。我慢出来ません。
この殺意の衝動を抑える事は!!
「そうそう!! そうやって負の感情に身を落として下さいね。そっちの方が断然強いですよ」
「う……」
「ん――?? 気持ちの良い攻撃の所為で聞こえませんよ――?? 肩、凝っていたからこの衝撃が丁度いいかも」
「五月蠅い!! 五月蠅い!!!! 死んで、私に頭を垂れなさい!!!!」
両手を掲げ、右手に持つアトランティスに持てる全ての力を預けた。
さぁ……。肉片の欠片も残さず消滅させてあげますよ!!
「きゃぁああ――!! ど、どうしよう!? 結界がぁ――!!」
私の友人に手を出した。それがお前の罪だ!! そして、友人に手を出す奴は皆殺しにしてやる!!
着弾によって迸る黒き爆煙、常軌を逸した衝撃の余波が私の嗜虐心を何処まででも高めてしまう。
敵の結界を切り裂くまで後僅か。
最後の力を振り絞って更に強力な追撃を画策すると。
「――――――――。はい、また私の勝ち」
「え?? あぐっ!!」
私の背を呆れた衝撃が襲った。
くしゃくしゃに丸めた紙屑同然に地面を転がり続ける私の体。
「ぐっ……」
常識の範囲内を超えた速度で石柱に背が叩きつけられると味わいたくも無い敗北という名の鉄の味が口一杯に広がった。
「ゲホッ!! ゴフッ!!」
「いいですねぇ。その地面を這いつくばる姿。お似合いですっ」
反重力魔法を詠唱して宙に浮き、指をパチンと鳴らす。
「そ、その仕草。止めて下さいって言いましたよね??」
吐血によって呼吸し辛い口を必死に動かして精々の強がりを放つ。
不味いですね。
今の一撃で覚醒が霧散してしまいました。
ここで時間を稼いで、魔力を溜め直さないと……。
「あ、そうでしたね。本来の私の癖なんですよ」
「本来と仰いましたけど、クレヴィスさん……。いえ、フレイアさんは元々何から生み出された存在なのですか??」
震える上体を起こして石柱に背を預けて話す。
「言いたいのは山々なんですけど。人と何かから生み出されたと申しましょうか」
「人を基礎にするのは、他の滅魔の方々も同じですか??」
「勿論です。そうじゃなきゃ、人の姿になれないじゃないですか」
ごもっともです。
「あなた達大魔が人と交わって生まれた様に。私達も人を元に生まれた存在です。創造主様であられる亜人様は本当に素晴らしい御方です」
「確かに……。素晴らしい力を持っていますよね。こうして、途轍もない化け物を生み出すのですから」
よし、一発分の魔力は溜まった。
指先に集約させた魔力で、フレイアさんの魔力の根源を撃ち抜きます。
殺してしまう事に躊躇いはあるかと問われたら勿論あります。
善と悪。
私はどちらの心も持ち合わせている温かい心の持ち主ですからね。
「化け物?? それは私達の事ですか??」
細い首を傾げる。
「気色悪いお尻に醜い顔。よくもまぁ、こんな化け物を作ろうと思いましたね。亜人とやらは」
「ふぅん。貴女、カエデって名前でしたよね??」
「そうですよ」
いいですね。
そのままこちらに接近して下さい。
「その名前。ちゃあんと墓標に刻んでおきますね??」
フレイアさんが此方に向かって右手を掲げると小さな火球が現れ、それが時間と共に熱を帯び巨大な火球へと変貌を遂げた。
ある程度離れているのに産毛を焦がしてしまう熱量。
恐らく、あれがこの体を襲えば瞬く間に全身の肉が焼け落ちてしまい。私という存在はこの世から刹那に消失してしまうでしょう。
断崖絶壁の淵に立たされてしまい背には異常なまでに高い崖が。そして正面にはこの世の理から外れた強さを持つ強敵。
正に絶体絶命な状況に追いやられてしまった。
ですが……。一縷の希望も見出せない危機的な状況下で泣き喚くのでは無く、冷静な心と判断で勝機を掴み取るのです。
「全く。ここまでの危機は人生で初めてでしたよ」
本当に静かに右手の人差し指に魔力を集中させる。
「でした?? 過去形では無くて現在進行形ですよ?? ふふ。攻撃を受け続けておかしくなっちゃったんですね?? 安心して下さい。今、楽にしてあげます」
恐ろしく冷たい声を放つと、地面に広がる石作りの床を溶かす程の熱量を放つ火球が私を捉えた。
火球に魔力を集中させて刹那に生まれた彼女の微かな隙。
そして、第二の心臓といえる魔力の根源を守る障壁にも微弱ながら揺らぎが確認出来た。
今だ!! 勝機はここしかありませんっ!!
お願い……。貫いて!!!!
「油断大敵という言葉……。その身を以て体感して下さい!!」
右手の指先に光り輝く魔法陣から、一筋の矢がフレイアさんの胸へと美しい軌道を描き直進。
そしていとも容易く胸を。そして魔力の根源を貫き美しい光の帯が暗闇の奥へと流れて行く。
「う……。嘘、でしょ……」
自分の胸元を見下ろし、信じられない。
そんな驚愕の表情を浮かべて力無く地面へと倒れた。
「はぁ……。はぁ……。ど、どうかそのまま立ち上がらないで下さい。あなたは本当に危険な存在ですから。」
「く、くそう……。もう、一度……。外の……」
水の中で藻掻き苦しむ様に右手を天へと伸ばし。何かを言おうと最後の力を振り絞るがそれは叶わず。
「……」
無情にも右手が地に落下した。
な、何とか勝利を収めました……。
これ程に疲れる戦闘はミルフレアさん以来かも知れませんね……。
「うっ……。ぐぅ……」
痛む全身に喝を入れて右肩を抑えて友人達の下へ向かって歩き出す。
継承召喚はもういりませんよね。一度、収めて魔力を回復させましょう。
正面を見つめるのも辛い程に体力が消耗してしまっている。
黒い石造りの地面に視線を落として足を引きずりながら友人達の下へと歩んで行く。
『この猫野郎――!! い――かげんに当たりやがれぇぇええ!!』
『テメェが遅過ぎるんだよ!! 阿保乳女がぁぁああ!!』
『風よ敵を穿て!! 重ね鎌鼬!!!!』
『威力は普通。でも、遅過ぎる』
『グゥゥ……。アアアァァッ!!!!』
『びゃぁああっ!! ちょ、ちょっと止めてよ!! そんな攻撃当てたら死んじゃうよ!?』
『くっ!! 流石だな!! だが、まだまだこれからだ!!』
まだ皆さんは戦闘を継続中の様ですね。
足の裏から感じる振動と、腹部を貫いて行く魔力の波動がそれを物語っていた。
ま、先ずは。皆と、合流を果たさないと……。そして、此処から早く脱出を……。
「――――――――。あれ?? 私を置いて何処へ行くのですか??」
う、嘘。
そ、そんな。有り得ない……。
俯く視界の端の暗闇の中から彼女の爪先が突如として出現。
私は祈る想いで視線を上げた。
「っ!!!!!!!!」
そこには先程と全く変わらぬ姿のフレイアさんが、鼻に付く陽気な笑みを浮かべて何事も無かった様に立ち尽くしていた。
「そ、そんな馬鹿な!!」
確実に射貫いた筈なのに!!
「そうそう。そうやって驚きと恐怖に歪む顔を見たかったんですよ。偽物の魔力の源を穿って気分が良かったですか??」
あ、あれが偽物??
目を細め彼女の奥底に存在する魔力を改めて注視した。
「もう、駄目ですよ?? そうやって女性の体をじっと見つめたら」
「…………。あ、有り得ません。な、なんですかソレは」
通常、魔物が持つ魔力の源は一つ。
しかし……。彼女が持つそれは、幾つも存在しているかの様に螺旋を描き、形を変え、幾重にも折り重なっていた。
こ、こんな呆れた桁外れの魔力……。真面な精神じゃ制御出来ないですよ。
「驚きました?? 貴女がここまで頑張ったお礼として特別に私の源を見せて上げたんですよ??」
この場に似合わない柔和な笑みが私の心を揺さぶる。
「く、食らいなさい!! 火球連弾!!!!」
「ん?? 避ける必要ないけど、避けてあげようかな」
私が掲げた右手の魔法陣から放たれる無数の炎の礫を連続の空間転移で躱す。
魔力の移動軌跡から計算して……。
こっち!!
「うん!! そうそう!! 良く気付きましたね。そうやって、相手の軌跡を注視するのは良く出来た子の証拠ですよ」
「な、嘗めないで下さい!!!!」
上下、左右。
連続で姿を消しては現れる彼女の体へと暴力の塊を放ち続ける。
当たらない……。
当たって……。当たって下さいよ!!!!
何で当たらないの!?
「さって。そろそろ、お終いに……。ん?? あら。どうしたの?? こんな所に来て」
彼女の視線が私にでは無く、後方へと注がれる。
「――――。カエデ、交代よ」
後方から現れたマイが優しく私の肩に手を添えて話す。
「邪魔、しないで下さい!!」
嘗められ、侮辱されたまま戦いを放棄する訳にはいかない。
マイなりの優しさを無下に払う。
「っと。ん――。じゃあ、五分だけ私に時間を頂戴?? それまでカエデは休憩って事で」
にっと口角を上げるいつものマイの笑み。
今はそれが……。沈んだ心に痛く響いてしまう。
「邪魔って言っているでしょ!!」
言ってはいけないと分かっていても口からは辛辣な言葉が出て来てしまう。
自分が大っ嫌いになりそうな程にそれが堪らなく情けなかった。
友人を傷付けてしまう事も分かっているのに。
「あはは!! そうそう。そうやって憂さ晴らしした方がいいわよ。兎に角!! カエデはちょっと冷静になろうか。あんたらしくないわよ??」
黄金に光り輝く槍を肩に担ぎ、私の前に立つ。
「ですから、退いて下さい!! あの人を倒すのは私の役目って言っているじゃないですか!!」
「ふふ。情けないですね?? 御仲間に庇って貰って。下手糞で、弱くて、情けない魔法使いらしいですっ」
「っ!!」
フレイアさんから放たれた言葉が私の激情に火を灯して更に加熱させてしまう。
「マイ。もう一度言います」
「ん――??」
こちらに振り向かず、肩に担いだ槍をポンっと一つ大きく弾ませる。
「退いて!! 私が倒さなきゃいけないんですよ!!」
あいつは……。あいつは!! 私を見下した。侮辱した。情けをかけた!!
ここまでの戦闘は彼女にとって戦いでは無く遊びだったんですよ!?
どうしても私はそれが許せなかった。
「…………ふふん。カエデ??」
マイが人を包み込む柔らかい笑みを浮かべてこちらに振り向く。
「何ですか!! 退いて……」
「隙ありぃ!!」
「きゃあ!?!?」
何を思ったのか。
マイが左手で私の胸に手を添え、剰え訳の分からない手の動きで双丘の片方を掴んでしまう。
「何するんですか!! こんな時に!!」
一気苛烈に顔の温度が上昇してしまった真っ赤な顔のままで横着な手を払う。
「へへ、どうよ?? 頭、冷静になったでしょ??」
「冷静処か、沸騰寸前ですよ……」
胸元を庇いつつ彼女から数歩下がった。
「こんな時だからこそあんたが冷静にならなきゃいけないのよ。前に出て馬鹿みたいに暴れるのは本来私の仕事。カエデは後ろからアレコレと文句垂れつつ、指示してくれればいいの。別に?? カエデが負けそうだから手を貸す訳じゃないのよ。私が前に出て。カエデはあの馬鹿げた相手の力を分析しろって事」
「作戦聞こえていますよ――??」
「隠す必要ないでしょ。馬鹿のクレヴィスと違って、あんたは賢そうだし??」
マイがフレイアさんに体の正面を向けて話す。
「賢そうじゃなくて、賢いんですよ?? 全知全能を体現したとでも申した方が宜しいでしょうかねぇ」
「ほぉん?? でっけぇ尻のくせに、そんな賢い事言って大丈夫??」
「…………。今、何んと仰いました??」
柔和な笑みから冷酷な顔に豹変。悪魔の瞳でマイを睨む。
「何度でも言ってやるわよ。デ、カ、イ、尻って言ったのよ」
「いいでしょう。平らな道も憐憫な瞳を浮かべる胸を持つお方の相手をしてあげましょう」
「あぁ!?!? もういっぺん言ってみろやぁ!!!! その尻ぃ、折檻してやんよぉ!! 嵐爆足!!!!」
マイが咆哮すると同時に私の目の前からその姿を消してしまう。
以前よりも強力な風を付与した動き。流石の一言に尽きます。
「おらぁっ!! 折檻折檻ぅぅうう!!」
「ふぅん……。速さは目を見張りますがやはり少々攻撃力が足りませんねぇ。あっ!! そっかぁ!! 胸がペラッペラだから重さが足りないのですね!!」
「へそに指突っ込んでズルズルと臓物引きずり出すぞこの巨大尻女がぁぁああ――――ッ!!!!」
力と魔力が衝突すると激しい火花が飛び散り、腹の奥に響く呆れた衝撃波が駆け抜けていく。
いいでしょう。マイの優しい言葉通り、私は少し休ませて貰います。
そしてあの化け物の綻びを見つけ出してみせますよ。
限界を迎えた体を地面に乗せて石柱に背を預けた。
「おらおらぁっ!! もう少しで結界が剥がれるぞ!?」
「あ、そうですか。じゃあお代わりを所望されます??」
「ひ、卑怯だぞ!! テメェ!! 女らしく拳同士で戦えや!! 胸を引き千切って魚の餌にすんぞ!!?
私に掛けてくれた言葉は友を労わる優しい言葉だったのですが……。出来る事ならもう少し相手にも丁寧な言葉を使用して下さい。
私達もマイと同じ括りにされるのは少々憚れます。
荒い呼吸を整え、枯渇していた魔力を回復させつつ。馬鹿げた力を解放する二人の攻防を見逃すまいと両の目に焼け付けていた。
お疲れ様でした。
いやぁ、スタミナ定食。美味しそうでしたね!!
昨日の深夜は大変お腹を空かせてドラマを見ていました。余りの空腹感に我慢できず、お湯を沸かしてカップラーメンを食してしまいましたもの。
深夜のラーメンはどうしてこうも罪悪感を感じてしまうのでしょうか。
そんな下らない話はさておき、プロット執筆がまぁまぁ進み。南の森で躍起になっている彼の行動の後半まで書き終える事が出来ました。
細かい修正点は幾つか御座いますが結末をどうしようか。それに大変悩んでいます。
果たして彼ならこの行動を選択するのだろうか?? その一点だけが筆を遅らせている原因となっております……。
この連休中にある程度纏めておかないといけませんよね。
それでは皆様、引き続き連休を御楽しみ下さいませ。




