第百九十六話 淫魔の女王様の力の片鱗
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
私の肩から二本の狼の足が離れると体に圧し掛かっていた重みが消失してすっと体が軽くなる。
戦闘の残り香が漂う部屋に細心の注意を払い、鋭い鷹の目を以て警戒を続けるが……。
どうやら全ての敵を撃退する事に成功した様だ。
私達に向けられる敵意の欠片も見当たらない事に安堵を籠めた吐息を柔らかく漏らして、少しだけ強張っていた肩の力を抜いた。
取り敢えず迎撃は成功、か。
途中、幾つか危ない場面もあったけどそれを苦ともしない心構え。そして多様に変化する戦いの状況に対し、私が一々口出ししなくても即座に対応出来ていたのは一指導者として大変喜ばしい限りよ。
しかし……。見事なまでに強くなってるわねぇ。三人共。
初対面の時と比べたら雲泥の差よ。こりゃ私達に追いつく日もそう遠くは無いかもね。
「アオイちゃ――ん。暗いくて怖いからもうちょっと明かりを強くしてよ」
「はい?? これで十分なのでは??」
「駄目っ!! 奥の暗闇の中から変な奴出てきそうだもん!!」
「貴様は臆病だな」
「リューも怖がりじゃん!! 言っちゃうよ!? 恥ずかしい過去!!」
ふふ、私達もあぁやってアレコレ騒ぎながら行動していたわねぇ。
彼女達の陽性な声が遠い昔の輝かしい思い出を呼び醒ます。
あのクソ狐……。向こうの三人の面倒をちゃんと見ているのかしら??
アイツ自体は何も気にする必要は無いけど、それだけが不安材料だ。
マイ達はまだ甘さが抜けていないというか見ていて不安になるというか……。
例えるのなら直ぐに割れてしまいそうな産まれたての純白の卵みたいな感じ。
それは当然、彼にも当て嵌まる。
大丈夫かしらね、私の旦那さんは。
貧弱な人間と共に魔女の居城へと向かうって聞いたけど……。
その話を聞いた私は止めようかどうか一瞬迷っちゃったのよねぇ。クソ狐もそんな顔を刹那に浮かべていたもの。
偵察と聞いたから許したけど、それが侵攻だと聞いたらまず間違いなく私達は彼の身を拘束しただろう。
まだ機は熟していないから、ってね。
「んぅ!? なあに!? アレ!!」
お惚け狼さんが前触れも無く陽気な声を出したものだから、それにつられ黒ずんだ石畳から正面へと視線を向けた。
「石柱と……。何ですの?? その円蓋は」
訝し気な表情のアオイが話す通り。
私達の前に突如として背の低い女性程度の高さの石柱と、その先にくすんだ銀色が嫌でも目立つ円盤が現れた。
ってか、今の顔。不機嫌な顔のフォレインに物凄く似ていたわね。流石母娘って感じ。
「石柱は特に変わった箇所は無い。しかし……。この円盤は一体なんだ?? 鉄でも、銀でも無いぞ」
リューヴが円の中央に屈み、指先を丸めて円盤を軽く叩く。
良くもまぁ無警戒で立とうと思うわね。私なら先ずは様子を窺い、ある程度調べてから触れるわ。
いや、それも面倒だから使い魔に調べさせるかもっ。
「おぉっ!! 引っ掻くと良い音するね!!」
「ちょっと、あんた達。罠かも知れないのよ?? 迂闊に手を出さない」
彼女の行動に興味津々といった感じで前足の爪で円盤を引っ掻く陽気な狼に注意を促してやった。
「それらしい魔力の欠片もありませんし、触る程度なら構わないでしょう」
まっ。それもそっか。
ルーとリューヴと同じく円盤の上に立つアオイが話す。
「これってさぁ、蓋かもよ?? ひょっとしたら奥に続いているのかも!!」
「それはあり得る話だな。どれ、砕いてみるか……」
何と愚直。
リューヴが拳に黒き稲妻を宿して、下段へと打ち込もうとする。
「止めなさい、どこぞのクソ狐じゃないんだから」
アイツの馬鹿が皆に移ってるじゃない。
これは全く以て不愉快な傾向ね。
今度から私がしっかり、みっちり、一から指導し直さないと。
「あら?? 何かしら、これ……」
自分でもちょっと厳し過ぎるかなぁっと思えちゃう世にも恐ろしい指導方法を思い描いていると、石柱の裏側の根本に妙なポッチを見つけてしまった。
他にはこれといった特徴の無い石柱。しかし、ここだけに凹凸がある。
んふっ。こういうのって、なぁんだか押したくなるのよねぇ……。
石柱の前にすっとしゃがみ込み、悪戯心満載で人差し指を立ててやった。
そぉれっ、ポチっとね!!
「うぉっ!?」
「きゃっ!!」
「びゃぁああっ!!」
うん?? 何かしら、今の可愛い声は。
「ちょっと――。あんた達何に驚い……。エッ!?」
女性達の驚く声を受け取りくるりと振り返ると、先程まであそこに居た筈の三人の存在が消失してしまっていた。
「うっそ!! これ、押した所為!?」
慌ててポッチを押すが何も起こらず。
しんっと静まり返った空気だけが私を包み込んでいた。
「あちゃ――。何処かに転移されちゃった?? それともこの蓋が開いて……」
ヤレヤレといった感じで立ち上がり円盤を調べようと歩み出すと。
「ググゥゥ……」
強力な力を宿した招かねざる客が闇の中から近付いて来た。
体内から溢れ出る力の鼓動を微塵も隠そうともしない漆黒の巨躯。
丸太を彷彿させる左右の巨椀には形容し難い触手が至る所から伸び、背には生物が宿すとは思えない形の巨大な翼が生える。
オークの顔はそのままに、しかしあの個体はもう別の存在へと変わり果ててしまっていた。
それを見た私は素直にこう漏らした。
「憐れな存在ね、あなたは。この世に生まれてはいけない存在だったのよ」
「ウガアァアアァア――――ッ!!!!」
私の言葉を理解したのか、それとも敵とみなしたのか。
振り上げた巨椀が私の頭上から襲い掛かる。
「残念ね。私、避けるのも当てるのも得意なの!!」
上空から降り注ぐ力の塊を躱し、後方へ下がると同時に炎の塊を放つ。
「ギィッアアアァア!!」
巨躯を包み込む炎に多少の効果があったようだが……。私の放った炎は咆哮と共に消し飛んでしまった。
焼き焦げた体表面は常軌を逸した回復力で刹那に完治。炎が着弾した箇所は更に硬度を高めた装甲へと変化してしまう。
「魔法の効き目は薄い。それと物理攻撃も然程効果はなさそうね」
余計な攻撃を与えて更に厄介な形態変化をさせてしまったら長期戦を余儀なくされる。
彼女達の安否を最優先で確保しなければならないこの状況下でそれは最も回避しなければならない事態だ。
「グルル……」
それと……。多少の知能も持ち合わせているらしい。
私と距離を置き、魔法が放たれるのを警戒しているのが良い証拠。
「ん――。まどろっこしい戦いは嫌いじゃないけど。生憎、手の掛る子達が待っているのよ」
ここで時間を食うのは得策では無い。
そう判断した私は躊躇無く体の奥に眠る彼等を呼び出した。
「従属なる眷属共よ。目の前に立ち塞がる愚者を撃ち滅ぼしなさい……。さぁ……。いくわよ!!」
周囲の濃いマナを取り込み魔力を解放すると足元に光り輝く巨大な魔法陣が出現。周囲に蠢く闇を打ち払い強力な閃光が迸る。
久々ねぇ。これだけの強い力を解放するのは……。
ここが頑丈な場所である事とマナの濃度が地上とは比べられない程濃密だから出来る業。
地上でこれだけの魔力を放出したら私の生徒に怒られちゃうもん。
『先生。地図を書き換えるつもりですか??』 ってね。
近くに誰も居ないし、お誂え向きの状況って事っ。
私が直接手を下して速攻で倒しても構わないけど……。さっきから五月蠅いのよねぇ。
ぎゃあぎゃあ言わなくても直ぐに出してあげるわ。極上の魔力を纏って、思うがままに暴れなさい……。
「古より纏いし始祖の力、今ここに放つ!!!!」
体内から湧き起こる魔力を解き放つと、口喧しい連中が私の前に現れた。
「いよぅ!! エルザード!!」
「ん――っ!! はぁっ!! やっぱ外は気持ち良いわねぇ」
「…………」
「えぇ――。あの怖い顔の奴と戦わなきゃいけないのですかぁ……」
「貴様等……。エルザード様、大変申し訳ありません。私が指揮を執りますので。御手を煩わせるまでありません」
「ありがとうね、オーウェン」
私の足元で背筋を伸ばし、キチンと姿勢を正す黒猫に頭を乗せて礼を述べてやる。
「んだよ。実際に見たら只のデカブツじゃねぇか。二階建ての家屋ぐらいかぁ??」
「ベゼル――。あんた、一人で片付けなさいよ。自慢の鱗が剥がれたら嫌だもん」
「はぁ?? てめぇのきったねぇ蛇の黒い鱗が剥がれたって誰も気にしやしねぇ――よ」
「何ですって!?」
「はぁ……。おい、ベゼル、リュージィ。エルザード様の前だぞ。少しは慎め」
大きな溜息を吐くと同時。
オーウェンが怪しく光る瞳孔をきゅっと縮めて黒犬と黒蛇を睨んだ。
「何で俺様がそんな事しなきゃいけないんだよ」
「そうそう。外に出るのは数年ぶりなんだから、少し位堪能させてよね」
私って傍から見たらあんな風に見えるのかしら。
反省って言葉。今なら大いに自分に当て嵌められそうよ。
「エルザード様っ!! お久しぶりですっ!!」
「久々ね?? シピカ」
よちよち歩きでこちらに近付いて来たペンギンのツルツル頭に手を添える。
「えへへ――。もっと撫でて下さいなのですっ」
くぅっ……。か、可愛過ぎでしょ!!
気持ち良さそうにコロコロと喉を鳴らして目を瞑り、両のヒレを嬉しそうに上下へと振る。
私の使い魔の中でもピカイチの可愛さ。そして甘え上手な彼女にキュンっと心が潤ってしまった。
使い魔を召喚する際に影響されるのは術者の記憶と性格。
つまり多くの生命体の形を記憶に刻み込んでいればそれだけ使役出来る使い魔の選択肢が増える訳だ。
南の極寒の大陸で出会った飛べない鳥を見付けておいて本当に良かったわ。そうでなければこぉんな可愛い使い魔ちゃんを使役出来る事もなかったものね――。
まぁ、欲を言えば栗鼠が良かったけども。こればかりは選べないので我慢しましょう。
「おい――。シピカぁ。尻尾食ませろよ――」
「ちょ、ちょっと!! 止めてなのですっ!!」
「いいじゃねぇか。そぉれ!!」
「痛い――――!! あ――――んっ!!」
ベゼルの牙がシピカの小振りの尻尾を食むと可哀想な泣き声が部屋の中を駆け抜けて行く。
弱虫なのは相変わらずね。
「おい!! いい加減にしろ!! 我々の役目を忘れたのか!?」
流石、真面目一筋の古参。
オーウェンが使い魔達の先頭に躍り出て腕をムンっと組み、直立不動の姿勢でお叱りの声を放った。
「へいへい。シピカ――、尻尾美味かったぜ??」
「うぅ――……。レイドさんにも食まれた事ないのにぃ……」
シクシクと泣きながら両の平ぺったいヒレで目元を覆う。
いやいや。彼は絶対そんな事をしないと思うわよ??
大体、そんな事しようものなら全力で阻止して。シピカの尻尾の代わりに私の可愛いお尻ちゃんを無理矢理食ませてやるわ。
「で――?? どうやってアイツを倒すのよ」
リュージィが首を擡げ、二股に別れた舌をチロチロと覗かせ。
「グルル……」
今も私達に向かって最大限の警戒を続ける巨大なオーク擬きを睨む。
「俺が一人で相手してやってもいいんだぜ??」
「どうせキャンキャンと喚き散らして無様に負けるのが落ちよ」
「あぁ!?」
「二人ともいい加減にしろ。おい、ビル。さっきから黙っていないで、貴様も何か言ったらどうだ??」
鳥にしては大柄で黒い体。靴の裏みたいなでっかい嘴を備え、生物を慄かせるのに十分過ぎる眼光を放つ一羽のハシビロコウ。
ビルは動く事が苦手というか、起きているのか寝ているのかも分からない程に動かないのよねぇ。
今も静かに佇みオーク擬きを正面でじぃぃっと捉えたまま動かないし。
「ビル?? 聞いているのか??」
訝し気な顔を浮かべてオーウェンが近付く。
「…………。何だ??」
オーウェンがビルの足元に到達すると同時に鋭い眼光と顔が彼を捉えた。
「うぉっ!? 急に動くな!!」
「…………。すまない、癖だ」
「そうだったな。作戦はあるのかと聞いている」
「作戦、か。エルザード様。久しぶりにアレをやっても宜しいでしょうか??」
主人である私もちょっと怖いなぁっと思う鋭い眼光がこちらを見つめて許可を促した。
「勿論っ。いいわよ」
小手先の技は不要。
最大火力を以て盤面を制すっ!! これこそ私に誂えた作戦だと思わない!?
「へっへ――。おい、クソ雑魚。俺達を相手にした事を後悔するんだなっ!!」
「エルザード様ぁ――。ぱぱっとやっちゃいましょうよ」
「アレですか?? 久々だから上手く出来るか心配なのです」
「…………」
「いや、ビル。ここは何か言うところだぞ??」
オーウェンがビルの細い足を前足でちょんっと突くが、されど彼は身動き一つ取らず。厳しい瞳を浮かべたまま敵を注視していた。
「さ、お話はお終い。あなた達、準備はいいわよね??」
淫魔の力を全開解放して私本来の姿に戻り、とぉぉっておきの極大魔法の下準備へと取り掛かった。
う――ん……。全開放したのは良いんだけどさ。相変わらずこの尻尾と翼と角は余分よねぇ。
頭頂部から額に掛かる白き羊の角を模した淫魔の角、腰付近から体の外側へと伸びる蝙蝠擬きの翼。そして、世界最高のお尻ちゃんの真上の腰から生える黒くて細い尻尾。
私の美麗さには蛇足というか、不要というか……。私の旦那がこの姿を捉えたら怯えないかしらね??
「おっひょ――!! すんげぇ魔力ぅ!!」
「私を生み出しただけはあるわねぇ」
「わぁ!! エルザード様、凄いですぅ!!」
「…………お」
「お?? 何だ、続きを言え!!」
オーウェン、それを気にしていたらビルと長い付き合いは出来ないわよ??
「淫魔の女王が命じる……」
周囲に漂うマナを吸収して右手を前に翳し、私の魔力とマナを混ぜ合わせた漆黒の力を彼等に送り込む。
「来た来たぁ――――っ!!!!」
「あはぁん!! 溢れるぅ!!」
「痺れちゃいますぅ!!」
「…………さ」
「えぇい!! もういい!! エルザード様!! どうか私達に……。御命令を!!」
使い魔達全員が体内から溢れる力を精一杯に抑え、前へ前へと出るのを堪えている。
ここで焦らすのは野暮ってもんよねぇ。
「光の届かぬ地獄で神をも焼き殺す業火に包まれ、私に歯向かった事を未来永劫後悔し続けなさい……」
さぁ……。最も残虐で一方的な殺戮の時間の始まりよ!!!!
「――――。愚者への死罪!!!!」
闇より黒き魔力が私の腕から放たれ使い魔達へと流れ込み、彼等の力が空気を振るわせて焼却し始めた。
「「「「はぁああぁああああぁ――――!!!!」」」」
そして四つの黒き塊が一つとなり、正面の巨躯へ無慈悲に襲い掛かる。
「ギャアアァ!!!! ガアァア!?!?」
体に纏わり付く黒を払おうと腕を我武者羅に動かすが……。
「無駄よ?? あなたは為す術無く闇に飲まれるだけ。そう、眩い光さえも届かない。虚無の空間へと足を踏み入れるの……」
憐憫を含めた瞳で深い影に包まれて行く巨躯を見つめてやる。
「アァ……。アアアァア!!!!」
巨体を支える足が激しく震え、家屋よりも太い胴に亀裂が走り。そして闇に抗う巨腕が無意味に暴れ回る。
次々と闇に飲まれ行く体が私の残虐な心をイヤという程刺激してしまった。
ふ……。ふふふ!! あはハハ!!
いいわよ!! 死への絶望感を胸に抱き、悶え苦しみながらこの世から消滅しなさい!!
「さぁ止めよ、ビル」
「…………あぁ。分かっている!!!!」
「ク……。カカッ……」
全身の殆どが漆黒に包まれてしまった巨躯の足元にビルの鋭い眼から放たれた魔力が到達。
巨大な黒き影の足元に紅蓮と漆黒の魔法陣が浮かび上がり巨躯を飲み込み沈めて行く。
「アァ……。ギィィヤァァアアァアアァアァ!!!!」
「はハはは!! 断末魔の叫び声ね!! 私に牙を向けた事を後悔して……。滅しなさい!! 愚劣な下等生物めぇ!!」
この世から消えゆく黒に向かって昂った感情のまま最後の別れの言葉を放ってやった。
「――――。ふぅっ!! 久々に使ったけど、すんげぇ疲れるなコレ」
「馬鹿みたいにデカイ体だとそうなるでしょうね」
「誰が馬鹿だってぇ!?」
「二人共。喧嘩は良く無いですよ??」
「もう少し、静かにしろ……」
「お疲れ――。上出来だったわよ、あんた達」
不届き者が闇に飲まれて完全消失したのを見届けると大魔の力を霧散させて本来の可愛い姿へと戻り。
あの子達と然程変わらぬ喧噪を撒き散らして私の下へ戻って来た使い魔達を柔らかい笑みで迎えてやる。
「余裕よ、よゆ――」
「頑張りましたですっ!!」
「まっ。アイツがいないから上手くいったのかもねぇ」
「あ――……。まぁ、そうかもね」
一番手の掛る使い魔は流石の私でも呼ぶのは躊躇われもん。
「宜しかったのですか?? 彼女を呼ばなくても」
私の足元にちょこんと座ったオーウェンが此方を見上げる。
「私と似て気分屋だからさ。さっきも面倒だから呼ぶなって言われたし」
「そう、ですか。私の先輩にあたる方ですからこういう時こそ召喚して欲しいですね。彼等を纏めるのはもう懲り懲りです……」
オーウェンがそう言うと、溜息を放ちながら振り返る。
「ねぇぇ?? シピカぁ。私もそのピコピコ動く尻尾食んで良いぃ??」
「だ、駄目ですっ!! リュージィさんが食んだら取れちゃうです!!」
「え――。ベゼルは噛んだのに、私は駄目なのぉ??」
「きゃ――!! 止めてですぅ!!」
酷く暗い部屋に少々不釣り合いな明るい声が響く中。
「…………。一件落着」
ビルが静かにたった一言言葉を漏らすと、私とオーウェンが目を見開いて彼の方を向く。
「……」
しかし、そこに映ったのは悠久の時の流れの中でも決して変わる事の無い、静かに佇む凛とした立ち姿が浮かんでいた。
「あはは!! 美味し――ッ!!」
「や――っ!! レイドさんに食んで貰う前に取れちゃうのです――!!」
「……」
陰気な性格の者でさえも思わず口角が上がってしまう陽性な雰囲気が漂う部屋の中でも彼はその姿勢を崩すこと無くいつまでも佇み静観し続け。
重い沈黙と険しい眼光を以て彼等の行動を観察していたのだった。
お疲れ様でした。
昨日の夕食は友人達と久し振りにお酒を酌み交わして過ごしていたのですが……。どういう経緯で話題に上がったのか覚えていないのですが何故か、水戸黄門の話題になりまして。
友人の一人が水戸黄門のあの超有名なテーマソングをド忘れてしたと申したので、私が勢い良く。
「デデデ――ンッ!! デーデーデ――デー―ーンッ!! デーデデー、デデーデデ。デーデーデーデデーーンッ!!」 と。
酒の効果も相俟ってノリノリで口ずさんだら。
「「「それ、暴れん坊将軍じゃね??」」」 と、総ツッコミを食らってしまいました。
只でさえお酒を飲んで顔が熱いのに更に熱くなってしまいましたよ……。
お酒の力は本当に怖いですよね。皆様も飲み過ぎには気を付けて下さい。
ブックマークをして頂き有難う御座います!!
週の始まりに嬉しい知らせとなり、執筆活動の励みとなりました!!
それでは皆様、お休みなさいませ。




