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第五十九話 流派、その名は

お待たせしました!!


本日の投稿になります。それでは、御覧下さい。




 長く広い縁側に腰を掛け、怪しい青の光を放つ月をおかずにして冷たい茶を啜る。


 随分と年寄り臭いと言われようが。


 今、この時だけは誂えた行動だと断定出来ますね。




 喧しい連中……。正確に言えば、一人がそれを発生させる諸悪の根源なのですが。


 鼓膜さんを辟易させる音源が消失し、久方ぶりの静寂に相応しい風情溢れる光景が周囲を包んでいた。




 耳を澄ませば、リンっと夜虫が歌声を放ち。


 風がさぁっと拭けば草木が心を落ち着かせてくれる音を奏でる。




 いや、本当に静かで良い場所だな……。



 この静かな雰囲気は齷齪頑張って登って来たご褒美ってとこか。



 茶を飲み終え、ふぅっと息を漏らしていると。



「ん?? 何じゃ?? あ奴らは湯に出ておるのか」



 金の髪を揺らし、モフモフの三本の尻尾を器用に揺らしながら師匠が歩み来た。



 昼間の服装とは違い、随分と薄めの生地の浴衣を着ていますね。



「先程、お腹を抑えながら出て行きましたよ」


「そうか。ほっ!!」



 縁側にぴょんと腰かけ。



「一人で茶を肴にして月を眺める、か。爺臭いのぉ??」



 縁側の淵から零れ落ちてしまっている足をプラプラと上下に揺らしつつ此方を見つめた。



「あはは……。偶にしか訪れない静寂を楽しむには持って来いだと考えましたので」


「じゃろうなぁ。あ奴らは少々喧しいからのぉ……」



 少々では無く。


 多大に、ですよっと。



「イスハさ……」


「おほんっ」



 おっと。


 違いましたね。



「師匠」


「何じゃ!!」



 こっちが正解でしたね。


 にっこりと微笑み、瞳の中に浮かぶ向日葵さんも大変ご満悦な御様子ですので……。



「明日は何時起床ですか??」



「明日は六時起床じゃ。六時半に訓練場へ、直ぐにでも運動できるよう準備を整えておくように」


「了解しました」



 六時、起床か。


 早めに眠って、体調を整えよう。



「傷の具合はどうじゃ??」


「傷?? あぁ、エルザードさんから受けた傷ですか」



 頑丈な訓練着をちょいと摘まみ、確認するものの。



「――――。出血は収まりましたが……。傷跡は暫く残りそうですね」



 入れ墨。


 じゃあないけど、まさかこのまま一生消えないとかじゃないよね??



「どれ、見せてみぃ」



 そう仰り、細い指で服を捲られた。



「ふぅむ……?? うむっ。これなら厳しい指導にも耐えられそうじゃな!!」



 満面の笑みを浮かべつつ、さらっと恐ろしい事を言わないで下さい。



「程々、にでお願いします」


「駄目じゃ!! 儂は弟子には厳しいからな!!」



 弟子にだけでは無く。


 マイ達にも同様に辛いシゴキを与えてあげて下さい。



「のぉ、レイドや」



 元の位置へと戻り。


 再び足を悪戯に動かし始めた師匠がポツリと言葉を漏らす。



「どうされました??」



「お主は任務でふぁすとべーす、じゃったか?? そこへ訪れたと申しておったが。お主はどういった経緯で軍隊に入隊しようと考えたのじゃ??」



「経緯、ですか。う――ん……。強いて言うのであれば。尊命な人の命を奪い、暴虐の限りを尽くすあの醜い豚共を駆逐する為。自分だけが楽観視している場合じゃないと考えに至り」



「ふむふむ……」



 コクコクと小さく頷きつつ、俺の飲みかけのお茶をズズっと啜る。



「魔女と呼ばれる者を抹殺し、そして……。人の温かい笑みが咲き誇る世にする為ですかね」




「その笑みを浮かべる者達に、お主の家族も含まれておるのか??」


「あ、いや。自分は孤児院出身で家族と呼べる者は居ません」


「ほう、それは初耳じゃな」


「実はですね…………」




 孤児院で育ち、わんぱくな幼少期から入隊に至るまで。端的に説明を開始した。



 笑えてしまう子供の時分の失敗談を話せば。



「なはは!! お主、意外とやんちゃだったのか??」



 端整な少女の顔に相応しい笑みでケラケラと笑い。



 隣町の男の子と、互いにボッロボロになるまで喧嘩した話をすると。



「当然、勝ったのじゃろうな!?」



 勝敗が大変気になるのか。


 ぐぐっと此方へ距離を詰めて問うた。




 真面目な話はウンウンと小さく頷き。



 下らない話には肩の力を弛緩して、ふぅっと息を吐き。



「…………」



 首飾りとして下げていた美しい翡翠の勾玉を細い指で弄りつつ、柔らかい瞳で満点の星空を仰ぎ見た。





 自分の身の上の話をするのは余り得意じゃないけど、何だろう……。



 何処までも続く大海原をも超えるとても広い心の持ち主だと心が判断して、この人には包み隠さずに話しても構わないと考えているのだろうか??



 知り合って半日も経たないのに、こんな感情を持つなんて。


 不思議な御方だな。




「――――。そうして、卒業出来るギリギリの成績で訓練所を卒業して初任務へ就き。此処に至ったのです」



 少々長話になってしまったので、師匠の脇にちょこんと置いてあるコップを手に取り。


 乾いてしまった舌を、冷たいお茶をずずっと啜って潤した。



「ふぅむ……。お主は、両親についてどう思っておるのじゃ??」



 おっと。


 そこは敢えて触れない様に超端的に説明したのですけどね。




「子供の頃は恨んでいましたよ?? どうして俺を捨てたのか。俺が、これから一人で生きて行く辛さを多少なりとも汲める感情の持ち主ならいっその事殺してくれれば良かったのにとさえ考えていました。でも……」



「でも??」



「今は別に何とも思っていませんね。自分には家族はいませんが、それに代わる素晴らしい友人達が出来ましたので。 人間の友、そして魔物の友。どちらも、高価な宝よりも価値のある素敵な者です。この二つの者を失わない為に不撓不屈の精神で戦い、忌々しい魔女を抹殺してやろうと考えております」



 うん。


 間違っていない。



 友人と呼ぶより、友人以上家族未満ってところかな。


 口喧しく、時に暴力を与え、時に飯を奪い、時に……。いやいや。


 負の姿ばかり浮かんで来るけども。


 皆、大切な友人なのですよっと。




「お主の心は蛍の光の様に……。温かな火の持ち主じゃ」



 そう仰ると一本の尻尾が、トンっと。


 俺の胸に添えられた。



「じゃが、その火は下らぬ感情の欠片によって己を焼き尽くす業火にも変化する。良いか?? レイド」


「はい、何でしょうか??」



 真面目な口調に対し、此方も誠心誠意。確と背を伸ばして覇気ある声で言葉を返した。





「心に映すのは……。己の姿をも映す、鏡の様に透き通った水面じゃ」





「水面、ですか」




「うむっ。美しき水面に敵の姿を映せば柔軟な対応が可能になり、鏡に映った己の醜悪な姿を見出せば自ずと愚行に気付く。澄み渡り、風に靡く波紋も無く、乱れぬ不動の心……」



 ふぅっと息を吸い込み。


 そして優しく吐き出し、俺の目を真っ直ぐに捉えて仰った。



「これこそ、我が極光無双流きょくこうむそうりゅうの教えじゃ」




「極光無双流……。流派の名前ですか??」



「そうじゃ。お主は今日から我が流派の一番弟子じゃ、今の教えを反芻し。心に確と刻んでおけ。分かったか??」




 状況が目まぐるしく変化する中でも周章狼狽せず。


 激情に駆られ、真意を見誤る愚行を犯さず。


 心静かにそして透き通った水面に敵の姿を映せ、か。




 状況を見誤った結果が先の惨敗に繋がった。判断が遅れた為に要らぬ怪我を負った。


 この教えはまるで今の自分を諭している様だ。



『心動じるなかれ』



 そして。



『平常心を保ち状況を見誤るな』 と。



 見透かされるのは本来であれば喜ばしい事ではない。しかし、師匠は教えを通して自分の至らぬ所を諭してくれた。



 この事が何よりも嬉しかった。



「は、はい!! 有難う御座います!!」



 未熟も未熟な俺に教えを説くだけ徒労に終わるかも知れないってのに……。


 くそう!!


 嬉しくて口角が上がっちまうよ!!



「う、うむっ。分かれば良いのじゃ」



 ちょっとだけ赤くぽっと染まった頬で、再び此方の飲みかけのコップへと小さな唇をくっ付けてお茶を啜る。



 もう一つ用意すれば良かったかな??


 至らぬ弟子で申し訳ありません。



 心の中で謝意を述べていると。



「只今戻りました」



 頭からぽっ、ぽっと蒸気を放つカエデが静かな歩みで帰って来た。



「湯加減はどうじゃった??」


「最高でしたよ。疲労も落ちて、且怪我にも効能があるようですね」



 ほう。


 それは良い事を聞いた。肌がフニャフニャになるまで浸かってやろう。



「此処の湯にはそういった効能が含まれておるからな。疲れを取るのには正にうってつけじゃ」



「後で自分も頂きます」



 一日の疲れを拭い去るのは御風呂。


 うむ。


 理想の一日の終わり方ですね。



 少なくとも、今から帰って来る喧噪に包まれて眠るのは勘弁して頂きたい。



「は、はわわわ……。地面が揺れるぅ……」


「あ、頭いてぇ――……」



 深紅の髪の女性が酔っ払った鶏みたいな足取りで帰ってくれば。


 深緑の髪の女性が、モゥっと唸る雄牛に太鼓判を押される呻き声を放ちつつ帰って来た。



「二人共、随分と辛そうだな??」



 だらしなく縁側に寝そべった二人にそう話す。



「ふ、風呂の中で遊び過ぎた……」


「何してんだか」



 はぁっと大きな溜息を漏らし、ぐでんぐでんっと目を回しているマイに言ってやる。



「レイド様!! ほ、ほら!! 御覧下さいまし!! お肌がこぉぉんなにツルツルですのよ!?」



「お止めなさい!!!!」



 しっとり艶々の手で己が胸の中へと取り込もうとするので、慌てて手を引き抜く。


 折角、師匠が素晴らしい雰囲気の中で教えを説いてくれたってのに……。


 師匠の前でふしだらな行為は頂けません!!



 ――――――――。



 師匠の前じゃなくても駄目ですけどね。



「うふふ。ここもモチモチですのよ……」



 随分と白い肌が僅かに桜色に染まり、何と言えない女性の香りを放つ。


 このままでは男の性が目覚めてしまいそうなので。



「師匠。御風呂、頂きますね」



 己の膝をピシャリと叩き、煩悩を霧散させ。


 その勢いで立ってやった。



「うむっ。ゆっくり浸かり、明日に疲労を残すでないぞ??」


「分かりました。じゃ、皆。行って来るから」



「う――い。いってらっさ――いっと」



 あなたはもうちょっとマシな見送り方が出来ないのですか??


 整った右足を天へとピンっ!! と伸ばし。


 ヒラヒラと此方に足を振る者を背に、魅惑的な効能を持つ温泉へと向かって行った。










   ◇










 最高な朝の目覚め方は?? と、問われたらどう答えるだろう??



 隣で眠る最愛の人の囁き声で目を覚ます。


 愛犬の執拗な舌撃で嬉しいが、止めて欲しい。そんな何とも言えない気持ちで起きる。


 空を舞う鳥達の威勢の良い歌声で目覚める。




 十人十色と言われる様に数多溢れる正解が世の中には存在するでしょう。



 俺の場合は……。


 そうだなぁ……。



 誰にも邪魔される事無く、好きな時間に起きる。これが正解でしょう。


 少なくとも。



 喧しく鉄と鉄が衝突する音で目を覚ますのは了承し難いです……。




「起床起床!!!! 起きろ――!!」



 仕切りの向こう。


 大部屋から聞こえて来るメアさんの怒号と。



「起きないとぉ。四肢を切断しますよ――」



 ヒュッ!! っと。


 鋭利な物が空気を切り裂く音が混ざっているのが大変に肝を冷やしますね。




 もう朝か……。


 布団の中で体をグンッ!! と伸ばし。未だ眠りたいと呟く我儘な体さんに朝の来訪を伝えてあげた。


 窓から射しこむ光も未だ若干眠たそうだ。



「レイド!! 起き……。おっ、何だ。起きていたのか」


「おはようございます。この音で起きない方がおかしいですって」



 鉄鍋と鉄のお玉を持つメアさんに対し。


 しっかりと目覚めた瞳を以て答えてあげた。



「若干一名、まだ寝ていますけど……」



 あぁ、アイツか。




「アイツを起こすのには少々コツが必要なのですよ」



 布団をキチンと畳み、女の香が漂う大部屋へと移動を開始。



 件の女性を見付けると何だか得も言われぬ感情が心に湧いてしまった。



「ふがぁらぁ……」



 大きな布団の上に一匹の龍がだらしなく仰向けの状態で心地良い眠りを享受している。


 口からは粘度の高い唾液を零して布団を穢し。



「ふひっ……」



 ガリガリと腹を掻く鋭い爪が行先を失えば、布団を襲い。悪戯に表面を傷付ける。



 見るも無残な状況に申し訳無さと、情けなさを足して割った複雑な感情が大きく膨れ上がってしまった。



「申し訳ありません。布団を汚してしまって……」


「良いんですよ。所で、先程仰っていたコツとは??」



 相も変わらず湾曲する瞳でモアさんが此方に問う。


 今日の瞳は通常ですね。



「では、御覧頂きましょうか。カエデ、ユウ。いつもの奴をやるぞ」




「はよっ、レイド」


 若干の寝癖は残るものの。


 いつも通りの髪型のユウに対して朝の挨拶を交わし。




「おはようございます……」



 カエデさん。


 あなたの寝癖は一体全体……。どうやったらそんな形になるのですか??



 本日の寝癖は四方八方に伸びる雲丹うにの棘って感じですから。



「お、おはよう……」



 雲丹さんには若干可笑しな口調で朝の挨拶を終えた。




「え――。やるのぉ??」



 布団をきゅっと抱き。


 まだねむたぁいと伝えるユウに話す。



「私は構いませんけど……。レイド、顎は大丈夫??」



「「顎??」」



 雲丹さんの一言を受け、モアさんとメアさんが同時に首を傾げた。



「この方法は、奴を叩き起こすのには最適な方法なのですけど。その……。何んと言いますか。その代償として、とんでもない仕返しを食らうのです」



「そ――そ――。今の所……。あたしが四勝一敗か」


「私は五連勝ですね。では、外で準備を整えておきます」



 ふわぁっと大きな欠伸を放ち。


 ちょっとだけ頼りない足取りで雲丹さんがこれまた頼りない光の下へと向かって行った。




 何故、皆様勝ち星を誇るのだろう??


 俺は……。一勝四敗だけど。それは仕方がないのです!! アイツの凶悪な性格を加味すればね!!




「よぅし!!!! ユウ、やるぞ!! 今日こそは負けないからな!?」



「おう!! 今日も勝っちゃうからな!!」



 がばっと起き上がったユウと、パチンっと手を合わせ。



 ぐっすりと惰眠を貪る龍に恐る恐る接近。




 抜き足差し足で……。


 決して足音を、そして気配を気付かれたら駄目だからな……。



「んにゃらぁ……」



 手の平で水を掬う様に、そっと優しく布団から彼女を手の平へと移し終えた。



 第一関門、突破ぁ!!



 眠るコイツを起こさぬ為には、口元に指。若しくは体の一部を接近させるのは御法度なのです。



 どうしてかって??


 それは至極簡単な答えです。


 食べ物と勘違いされて、食いつかれちまうからね!!




『いいぞぉ、移動開始だ……』



 小声へと変化したユウの先導で外へと移動。



 第二関門突破……。


 歩く振動で起きる可能性も否定出来ないからね……。




『用意は出来ています』



 外へ出る事に成功すると。


 雲丹さんが広い桶に水を張った状態で待機してくれていた。




 流石です、カエデさん。


 水深もバッチリですね。




『ふぅ――。カエデ、ユウ。準備はいいな??』


『…………』



 左右の二人が静かに一つ頷き、最終確認を終え。





「いい加減に起きろ――――――!!!! 起きないと、朝飯抜きだぞ――――――――!!!!」



 大絶叫を放つと共に。


 太った雀を桶の中へと投入してやった!!!!







 ど――――か!! お願いします!!!!


 今日こそはユウ、若しくはカエデに襲い掛かりますように!!!!




「はっぷ!? はぁっっぷ!! た、たすけ!! 溺れちゃ………………」



 ちんまりした翼とちいちゃい御手手をわちゃわちゃと動かし、水面で藻掻く深紅の龍。



 しかし、それは刹那の出来事。




「………………っ????」




 水深が浅い事に気付き、パチパチと瞬きをしてじぃっと己が足元を見つめる。



 そして……。



 自分が置かれている状況に気付き、瞬時に激情が心の中で噴火。




「グルルルルルルゥゥゥゥゥ!!!!」



 鼻に深い皺を刻み、我等三名に対し。今にも襲い掛かろうと腰を落とした!!




「「せ――のっ!!!!」」




 やったのはコイツです!!




 三名が三名、自分がとばっちりを受けない様に誰かを指差す。




 ユウは……。やはり俺か!! ニッコリ満面の笑みで俺を指差し。


 カエデは……。



「……」



 えぇっ!?


 自分!?



 やれるものならやってみろと言わんばかりに己を指し。



 俺は勿論、ユウを指差してやった。





「っ!?!?!?!? ぇっ!?!?」



 寝起き。


 同数投票。


 重なる条件に混乱を極め、狼狽え。


 俺達の顔の間を忙しなく右往左往する恐ろしい顔。




 これならいけるか!?


 今日は勝てると確信したが……。




「グルルルゥ!! ガアアアアアアアアアァ!!!!!!」



 俺の顔に右往左往する怒りで歪んだ顔がピタっと止まってしまった。




 え、えぇ!?


 同票ですよ!? 




「い、いやああああ!! あぶちっ!?」



 結局、俺かよ!!!!



 赤い光の筋が顎下から襲い掛かり、跳ね上がった顔が青く澄み渡った空を捉えてしまった。



 怒りの矛先は本日も俺の顎となりましたね……。



「て、てめぇ。性懲りもなくまた私を水の中に沈めて……。楽しいぃのかぁ?? えぇ??」



 胸元に胡坐を掻き、今にも追撃を行わなんとする龍が俺を見下ろす。



「ひ、ひえ。モアさん達が中々起きないと苦情を受けて、身を切る思いで実行したのであります……。それに、六時起床ですので俺達は致し方なく。そしてやむを得ない事情が」



「言語道断!! 朝飯食えなくしてやらぁああああああ!!」


「止めてっ!!!! せめて!! 平手打ちにしてくださぁぁぁああい!!」








「――――。は、はは。中々面白い起こし方だな??」



 メアが呆れた笑みであたしに話し掛けて来る。



「だろ?? でも朝に相応しいとは思わない??」



 一日の始まりは楽しく、明るく!!


 それが最高な一日になる為のコツさ!!




 小さな龍に顔を踏みつけられ、拳で殴られ。乾いた音が空の下に響く。


 うんっ。


 今日も良い日になりそう……。



「あの――」



「どうした?? モア」



 クルリと振り返ると、モアが神妙な面持ちであたしを見つめていた。



「えっと……。アオイさんが……」



「アオイが??」



 どうしたんだろう。


 アオイは結構寝起き良い筈なんだけど、まだ眠っているのかな??


























「レイドさんの布団の中に蝸牛みたいに閉じ籠って。布団を内太腿に挟んで擦り合わせ。



『はぁん……。このイケナイ香りが私を狂わせてしまうのですぅ……』



 っと、妄想に耽っているのですが……。あれは一体どうすれば……」



「はぁ…………。分かった。あたしが何とかするよ」



 折角!! 楽しい一日の始まりかと思ったのに!!



 ガシガシと後頭部を掻き。


 両手に拳を作り、全ての指間接の指を鳴らしつつ。


 モアの話していた通り、妄想の斜め上を行く発言を喚き続ける布団へ。



『早くそこから出ないと、エライ目に遭うぞ』 と。



 敢えて大袈裟な歩みで警戒音を奏でながら、堂々たる足取りで向かって行った。


お疲れ様でした!!


最後まで御覧頂き有難うございました!!

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