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第百九十話 突撃ッ!! 奈落の遺産!!

お疲れ様です。


本日の投稿になります。


それでは御覧下さい。




 自然現象に足がニュっと生えて恐れ戦く表情を浮かべる事は決して有り得ないが、一日に一度だけ訪れる夜もこの常闇を捉えたら裸足で逃げ出すのでは無いか??


 そんな下らない妄想を連想させてしまう程の深い闇が私達を包囲していた。


 視界は恐らくカエデが放つ光球が無ければ零であろう。


 彼女が放つ明かりを頼りに、地下深くへと続く階段を踏み外さない様に慎重に下って行く。


 各々が階段を踏み鳴らす音が壁に乱反射して耳へと届き、鼻腔にはカビ特有のジメっとした匂いと若干の埃っぽさが侵入する。


 地上と然程と変わらぬマナの濃度といつまでも変わらないくらぁい光景に若干の苛立ちを覚えながら只管階段を下っていた。



 このまま下りていったらさ。



『へっ!? いやいやいやいや!! お前さん達何処から来たの!?』 と。



 亡者達に厳しい拷問を続けている悪魔さん達が占拠する地獄に到着しちゃうんじゃないの??



『頼むから正規の道順で来てくださいよっ!!』



 右手に持つ拷問器具を驚きの余りポロっと零してしまう彼等の姿が容易く想像出来てしまった。



 ってか、正規の道順って何?? 死んでから来いって事かしらね??



「ねぇ。どこまで下ればいいのよ」



 五本の尻尾をふっさふさと揺らしながら先頭を堂々と歩くイスハの背に声を掛けた。



 五本??


 珍しいわね。いつもは三本なのに。



「それが分かったら苦労はせん。今は進み続ける事が正解なのじゃ」


「安心して。この先、罠らしい設置魔法は感知出来ないから」



 おっ。それは助かるわね。


 イスハの直ぐ後ろ。


 ここに足を踏み入れた瞬間から片時も警戒を解いていないエルザードが話す。



「先生、代わりましょうか??」


「んっ、大丈夫。ありがとうね」



 生徒の心配が嬉しかったのか。突入を開始してから初めての笑みを漏らした。



「後ろも問題無い」



 分隊の殿を務めるのはリューヴか。それなら安心ね。



「先生。かなり警戒していますが……。こういった場所に足を踏み入れた経験があるのですか??」


「ん――……。まぁ、教えても良いでしょう。数か月前に私の夫の勤め先である軍事拠点地に化け物が襲撃した事件を覚えているわよね??」



 あ――、はいはい!!


 蟷螂の腕と蛸みたいない触腕。そしてゴッツイ体と背に翼が生えた化け物ね。攻撃の多様性も然ることながら、呆れんばかりの回復力に目を見張ったわ。


 何度も攻撃を与え続け、最後には私のすんばらしい一撃を食らって天に滅して事件は解決したのだ。



「私達と一緒に行動する前に戦ったって言っていたよね。良かったぁ、私は戦わなくって」


「中々の強敵だと聞いた。一戦交えてみたかったが……。残念だな」



 二頭の狼がほぼ同じ面で全然違う感想を述べる。



「えぇ、勿論です。途中からの参戦でしたがあの常軌を逸した回復力、そして複雑な生物の構造に驚きました。後、彼は未婚ですので勝手に事実を捏造しないで下さい」


「もう直ぐ事実になるからいいのよ。奴は奈落の遺産(アビスプロパティ)から出現したと教えたわよね?? その奈落の遺産の一つが……。ここなのよ」



「「「えぇっ!?!?」」」



 私を含めた数名が驚きの声を上げる。



「じゃ、じゃあ!! あのゴツゴツ回復お化けが沢山出て来るっての!?」



 あの当時の私達がそれなりに苦労して倒したのだ。


 一体や二体なら兎も角、複数体出て来たらと考えると流石の私も億劫になっちゃうわよ。



「それは分からないわ。突入できたのは幸運とでもいいましょうかね。入り口は直ぐに消失してしまうのが常なんだけど。稀にこうして長期間開いている時もあるの。全ての入り口が同じ場所に繋がっているのかは不明。以前、フィロ達と突入した時は全然違った場所に足を踏み入れたから、恐らくそれぞれが別の場所に繋がっている可能性が高いわね」



「母さん達と突入した時はどんな場所だったのよ」



「今下っている様な階段がずぅっと地下まで続き、確認出来た場所は一階から五階層じゃ。その中には特にこれといった化け物が潜んでおる訳では無く。強いて言うのであればだだっ広い無人の地下施設じゃった」



 先頭を歩くイスハが普段通りの口調で話す。



「ふ、む……。では先の無人島で発見した恐ろしい筍擬きが出現した理由は奈落の遺産が長期間出現していた可能性がありますね。この原始の気体を浴び続けて変異してしまったのでしょう。あの島に居続けて居たら再び入り口に出会える可能性もありますよね??」



 お、おいおい。


 折角筍退治したってのにまた退治しに行かなきゃいけないの??


 あ、でも。今はカエデの空間転移で直ぐに行けるし対処方法も確立されてるから安心か。それにぃ、あそこの魚は大変美味かったから調査の名目で長期間居座るのいいかもっ。



 釣った魚をボケナスに捌いて貰い、気の合う友人達とどんちゃん騒ぎか。


 おっと……。美味しい魚の味を想像したらちょいとお腹が減ってしまったわ。


 まだ移動中だし、我慢我慢っと。



「ううん、それは肯定出来ないわ。必ずしも同じ場所に出現するとは言えないから」



「それは残念です。今回の調査理由は滅魔の存在である事は理解していますが、以前突入した時は一体何を調べに突入したのですか??」



「ん――……。似たような目的と言えば分かり易いかしらね。地下深くから力の胎動を掴み取って入ったのは良いんだけども。結局何も見付からなくて出て来たのよ」



 ふぅ――む……。何か歯に引っ掛かる言い方よねぇ。


 全てを知らせる訳でも無いが、全く知らせない訳でも無い。そんな中途半端な含意だ。



「そう、ですか」



 カエデも私と同じ気持ちなのか。


 これ以上聞いても良いのか、それとも此処で留まるべきなのか。その難しい判断に苛まれている表情であった。



「奈落の遺産の入り口の発生条件、この不思議な空間が何故出来たのかそして何の目的で作られたのか。そして、以前先生が教えてくれた通りであればこれらの事象が千年以上前から続いている事になります。古代から続く厄災。その謎は深まるばかりですよね」



「それを含めての調査かしらね。長い時間を掛けて幾つもの欠片を集めてそれを纏めて一つの形にする。全てを究明したいからこうして行動を続けて居るの。私が何でも知っていると思ったら大間違いよ??」



 エルザードがカエデのきゃわいい頬をちょんっと突く。



「ふふ、そうですね。正直、今回の調査に帯同出来て興奮しています。この世の謎に触れる機会はそうそうありませんからっ」



 カエデが藍色の髪をフルっと揺れ動かしつつ、その勢いで今も突いている淫魔の手を何の遠慮も無しに叩き落とした。



 その謎に触れて火傷しなきゃいいけどさ。


 火傷ならまだしも取り返しのつかない大怪我を負う事になったら洒落にならん。


 私達の前を行くイスハもその事を理解しているのか。一時たりとも警戒心を解いていないし。



「はぁ――……。暗いし、ジトジトするし。もう帰りたいなぁ――」



 隣で文句を垂れているお惚け狼とは雲泥の差よ。



「あたしも――。なぁんか、嫌な予感が止まらないんだよなぁ」


「何よ、ユウ。らしくないじゃん」



 目の前で階段をトントンと軽快に下り続けているユウの後頭部をポンっと叩く。



「何んと言うか……。ほら、雰囲気あるじゃん?? これだけ暗くて、しかも不気味な闇がこの先も続くんだし。あの先から化け物が今にでも出て来そうじゃん」


「ちょっと――。ユウちゃん止めてよ」



 ルーが眉をヘニャっと下げ、弱々しい声で答える。



「化け物ならいいじゃない。ぶん殴れば倒せるんだし」



 幾ら世界最強の私でも実体を持たぬ化け物には抗う術を持たぬ。以前、あのお化け屋敷で出会った鏡の中の色白姉ちゃんが良い例さ。


 だが、実体を持つ野郎ならば例え微々たる攻撃しか与えられ無くてもいつかは倒せる筈。


 そ、それに?? ゆ、幽霊とか?? そういった類にビビっている訳じゃないけども!!


 そういった連中よりも膝から崩れ落ちてしまう程の圧を放つ化け物を相手にしていた方が千倍マシって意味さ!!



「――――皆さん。こういうふかぁい闇には注意した方が良いですよ??」



 この闇に乗じてカエデがちょいと喜々とした感情を含めた声を漏らす。


 はいっ。


 嫌な予感がぷんぷんしますっ!!



「ど、どうしてかな??」



 私と同じくそれを察知したのか。


 口の端っこを微かに震わせながらルーが問うた。



「聞きたいですか??」


「な、何を??」



「あれは……。そう。こんな暗闇が包む森の中の出来事でした……。一人の男性が体中から血を漏らし続けて歩いている時……」



「「「結構ですっ!!」」」



 この場に居る数名が声を揃えて、カエデお得意の怖い話をものの数秒で完結させてやった。


 止めてよね。この状況下で。


 見たくも無いモノが見えたらどうしてくれるのよ。



「おや?? 残念です。大変面白い話ですのに」


「あんたねぇ。鉱山の中でも私とリューヴに怖い話したのに、全く懲りないわね??」


「御話が好きなだけですよ」



 絶対嘘だしっ!!


 恐れ慄く私とリューヴを見て楽しんでいたじゃん!!



「御話かぁ。そう言えばさぁ――。最近毎日同じ本読んでるけど、アレってカエデちゃんの気に入ってる本だよね??」



 そう言えば、そうね。


 毎日夜が更けるまで一人嬉しそうに目元を緩めて読み続けているし。


 あの煌びやかな目をしてたら、次の日に響くわよ――って言うのも憚れたのよねぇ。



「そうですよ」


「見た事無い題名だから、新刊なのかな??」


「勿論です。聞きたいですか?? 粗筋」


「うんっ!! 丁度暇だったからさ!!」



 進み続ける事が暇なのか??


 まぁ皆まで言うまい。



「男の主人公は知っていますよね」


「知ってるよ!! 出来の悪い探偵さんだよね!!」



「事件を解決するのはいつも通りなのですが。主人公の相方である女性と、もう一人の主要登場人物の女性とで。主人公を含めた丁度良い距離感の恋の三角関係に進展があったのですよ」


「へぇ!! どっちがどうなったの!?」



 もう興味津々じゃない。


 いつの間にかカエデの横に立ち、興奮気味にフンフンと大きく頷いている。



「それは……。今度本を貸すので自分の目で確かめて下さい」



 興味が湧いてしょうがないルーと相対的にいつも通りの冷静な声色で話した。



「え――!! そこまで言ったのなら教えてよ!!」


「粗筋と言いましたよ?? 事の顛末は己の目で確かめるものです」



 三角関係ねぇ。


 そういう状況に陥った事が無いから良く分からんが、あれでしょ?? ヤキモキする気持ちって奴よね。



 そう言えばさ……。



 あの馬鹿タレが自分の好みの事を同期の女に聞かれて、奴がカエデって言った時。


 妙に心が落ち着かなかったわよね?? あの感情に似ているんじゃないのかしら。ヤキモキする気持ちって。


 するってぇと……。


 私が心の中で乱雑に積まれている荷物の山を額に汗を浮かべて必死に整理整頓をしていると。




「おぉ――。広い空間に出たのぉ」



 イスハが暗い闇の中には少々不釣り合いな陽性な声を上げた。



 見上げると首が痛くなる程高い天井は闇に覆われてその全貌を現さず、闇の中へこの部屋を支える太い石柱が突き伸びていく。正面遠くに見える古ぼけた壁はずぅっと左右に続いて行き暗い闇に阻まれて終着点が見えない。


 狐の女王様が話す通り、私達はどこまでも広がる空間に降り立った。



「おい、脂肪。暗い。この空間全てを照らす光を出せ」



 人へ物事を頼む時にはそれなりの態度ってもんがあるとは思う。


 私も礼儀に関してはそこまで精通している訳ではないけど、もうちょ――っと遜ってもいいんじゃない??



「はぁ?? それが人に物を頼む態度??」



 はい、予想通り。


 腕を組み、あからさまに嫌そうな顔で答える。



「先生。私がやりましょうか??」


「いいわ、やってあげる。そぉ――れぇ――ッ!!!!」



 エルザードが右手を大きく掲げると暗い部屋に昼間の太陽が現れた。



「眩しっ!! ちょっと!! 目が痛い!!」



 目を開ける事が困難になる程の光量に思わず噛みつく。



「近くを見るからそうなるのよ。ほら、向こうとあっち。道が二手に分かれてるわよ??」



 二手ぇ??


 光球を直視した目が闇に慣れて来ると、ずぅっと向こうに存在する穴を視界が捉えた。


 それが右と左に一つずつ。恐らくこの部屋を起点にして二つの道に分岐しているのでしょうね。



「本当ね」


「でしょ?? 私の美しさで目が眩んじゃったのねぇ??」



 はいはい、言ってなさい。



「マイ、ルー、リューヴ。入り口から漏れ出る匂いを嗅いで来るのじゃ」


「は?? 何でよ」


「お主らは鼻が良い。ひょっとしたらあの入り口付近から漏れて来る匂いから何か情報が掴めるやもしれぬからな」



 あぁ、そういう事。



「んじゃ、私はこっちに行くわ。あんたらは右の方を頼むわね」



「はいは――い!!」

「了承した。ルー、行くぞ」



 イスハに言われた通り、特に警戒する事無く普段通りの足で左の入り口へと向かう。



「まぁまぁ……。あれ程の無警戒。ここがどういう所か理解しているのか、甚だ怪しいものですわねぇ」



 うっせぇなぁ。地面に落ちている石でも投げつけてやろうか。


 蜘蛛の鬱陶しい声を無視して数十秒後。


 目的地である入り口に到着した。



 ふぅむ……。これと言って怪しい所は無いわね。



 垂直に聳え立つ石壁の中にポッカリと開いている背の高い入り口。


 入り口の奥までは光が届かないが、恐らくこの道がずっと奥へ続いているのだろう。


 どぉれっ、匂いはあるのかなぁ??


 目を瞑り、視界を断絶させて嗅覚に全神経を集中させた。



「…………。うぇっ」



 何よ……。この匂い。


 形容し難い臭いが鼻腔の奥へ駆け抜けて行き、史上最高の頭脳ちゃんがこれ以上この匂いを強く嗅ぐなと顰め面を浮かべてしまった。


 真夏のあっつぅい部屋の中に数十日以上放置してぐっちゃぐちゃに腐った水に鼻を突っ込んだみたいな感じだ。



『マイ。どうです??』



 私の様子を遠くから伺っていたカエデが念話で尋ねて来た。



『何て言うのかなぁ。体を洗っていない山育ちの獣臭にも似てるし、腹ペコの犬も興味を示さない腐った卵の匂いにも似てる。要は今まで嗅いだ事が無い匂いね』



 要約するとこうでしょう。



『無機物的ではない、と』


『そうねぇ。生物が発する匂いだとは思うわ』



 入り口からクルっと機敏に踵を返して話す。



『ルー、リューヴー!! そっちはどうだぁ――!!』



 ユウが私と反対方向にいる二人に問う。



『ん――……。んぅ?? 何だろう、この匂い』


『刺激臭とでも言えばいいのか。鼻の奥に鋭く突き刺さる、そんな匂いだ』



 刺激臭??


 こっちと似た匂いなのかしら。



『生物らしき匂いはしますか??』


『え――?? するような、しないようなぁ……』



 しっかりしなさいよね。


 仮にも鼻が利く狼なんだし。



『生物的だと言われれば肯定しよう。しかし、無機物だと言われれば否定する』



 おっ。


 リューヴの方が分かり易いわね。



『分かりました。御二人共、お疲れ様です。戻って来て下さい』


『は――い!!』



 さぁて、さてさて。


 これからどうすのかしら。


 元居た場所に戻り、問題児を一手に纏める隊長の意見を待った。



「ただいま!!」

「戻ったぞ」


「御苦労じゃったな、二人共」



 イスハが素早く駆けて来た二頭の狼に労いの言葉を掛ける。



「ねぇ、今思ったんだけどさ。感知魔法使えば良かったんじゃないの??」



 そうすれば態々匂いを嗅ぎに行く事もなかっただろうに。



「使えないのよ。ここの部屋に入った瞬間からね」


「そんな事、一言も言ってなかったじゃない」


「言わなかったもんっ」



 もんっ。じゃない!!


 情報の共有は大切なのよ??


 全く。



「――――。あれ?? ねぇ、イスハ」


「何じゃ。今班分けを考えておるのじゃから話し掛けるな」



 むぅっと眉を顰めて目を瞑っている彼女に問う。



「エルザードが感知魔法使えないって知ってたの??」


「知る訳なかろう」


「じゃあどうしてそれを理解して。私達に様子を探らせたのよ」


「はぁ?? こ奴が言わないって事は、つまりそういう事なのじゃ」



 当然だろ??


 そんな感じで目を開いて私を見つめる。


 長年連れ添った経験って奴か。



「ははぁん?? 何よぉ。何だかんだで、お互いの事理解し合ってるじゃんかぁ」



 ピコピコと揺れ動く尻尾を指でピンっと弾いてやる。



「勝手に触れるな!! ふ、ふん。ブヨブヨの脂肪の頭の中など理解しようとは思うておらぬわっ」


「それはこっちの台詞。早く班を決めなさいよね。ったく、鈍亀なんだから」


「なんじゃと!?」



 こうやって喧嘩するのも本当は照れ隠しなのかもねぇ。



「イスハさん、お静かに。我々の存在が確知されてしまう恐れがありますから」


「う、うむ。そうじゃったな」


「うっわ。だっさ。私の生徒に釘刺されてやんの――」


「ぶっ飛ばすぞ!? 腐れ淫魔がぁ!!」



 前言撤回。


 こりゃ本気の喧嘩だわ。



「まぁまぁ。班は決まったの??」



 二人の間に割って入る。



「ふんっ。決まったぞ。儂の班は、マイ、ユウ、カエデ。腐れ脂肪のドブ川の班は……」


「おい。汚い尻尾を焦がすわよ??」


「やれるものならやってみい」



 はぁ――…………。


 もう勘弁してよね。


 こんな所まで来て喧嘩の仲裁なんかやっていられないわ。



「ほら、続き」



 怒り狂う子供をあやす様に促してやる。



「脂肪の班は、ルー、リューヴ、アオイじゃ」


「残った者って言えば分かり易いのに。頭、足りてますかぁ――??」


「こ、この…………」


「イスハさん。この班分けの根拠は??」



 肩をプルプル震わせるイスハにカエデが問う。



「戦力を均衡に別けた結果じゃよ。何か不満でもあるのか??」


「…………いいえ。ありません」



 カエデが嫌がる理由。


 それは多分アレでしょうねぇ。



「可哀想な私の生徒。馬鹿で不運で能無しの隊長の班に組み込まれたら悪態の一つや二つもつきたくなるわよねぇ」



 不運だけは認めてあげようかな。


 イスハが道を選ぶと大抵ろくな事が無いのは食人の森で証明済みだ。


 最初に二分の一を外してエライ目に遭ったもんねぇ……。




「喧しいぞ!! 各々は儂と脂肪の命令に従い、行動をしろ!! 良いな!?」



「「「は――――い」」」


「語尾を伸ばすなぁ!!」


「それで?? あたし達はどっちに向かうんだ??」



 ユウが何気なく話す。



「ふぅむ……。匂いの感想からワクワクするのは……。こっちじゃな!!」



 そんな理由で道を選んでもいいのだろうか??


 イスハが早速勝手に決めた右の入り口へと尻尾を楽しそうに揺らしながら進み出すが。



「まっ、匂いだけじゃ分からないし。これだけは仕方が無いって。腹を括ろう」


「そうですね。では、私達は『こちら』 の入り口へ向かいます。先生達はあちらへどうぞ」


「そっちも気を付けなさいよね――」



 私達は当然と言わんばかりに左へと進み出した。



「馬鹿者ぉ!! 儂らはこっちじゃぞ――!!!!」



 遠い位置から御怒りの声が届く。



「なぁ、さっき言ってた匂いってどんな感じ??」


「だから説明したじゃない。獣臭とか、卵とか。生き物っぽい匂いよ」


「生物が果たして存在するのか。この状況下で存在する、生物。興味が湧くのは確かですね」



「隊長命令じゃぞぉぉおお――!!!! 人の話を聞けぇ――ッ!!」



 彼女の怒りがこれでもかと染み込んでいる山を揺るがす怒号を当然の如く無視。


 私達は普段と然程変わらぬ歩調と速度で左の入り口へと向かって進み続けて行った。




お疲れ様でした。


本文でも登場した通り、先ずは彼女達の調査から始まりますので。この御話が終わってから彼の調査へと移ります。


狂暴龍達が体験する危険を是非とも堪能して頂ければ幸いで御座います。



さて、本日の執筆の御供は……。


主戦場をジャングルから大都会に移して暴れまくる宇宙人と、それに立ち向かう強面刑事。


そう!! 『プレデター2』 でした!!


一作目は越えられないものの、ダニグルーバーの演技力が中々に光り見応えありの良作で御座います。


中でも好きなシーンがプレデターが洗面台で治療するシーンですね。


余りの痛さに扉をぶっ壊して出て行くのがまたいい味を出しているなぁっと、ウンウン頷いて見ていました。



それでは皆様、お休みなさいませ。

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