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第五十八話 温泉と彼女達と大魔王様達と

お疲れ様です!! 本日の投稿になります。


狐の女王様が住まわれる施設説明として本来であれば、彼が単独で向う予定でしたが……。


何はともあれ、御覧下さい。




 狭い室内で繰り広げられた激戦を辛くも勝利で収め、前線に突貫し頑張り過ぎた私は常識を覆す量を滞りなく体内に収めたものの。



 は、腹が……。


 はち切れそうだ……。



 勝利の代償として畳の上で腹を抑え、悶え打っていた。



 最強を自負するこの胃袋も私の頑張りを認めてはくれたが、ちょっとだけ不機嫌に顔を顰め。


 流石にやり過ぎだぞ?? と。私を叱り続けていた。



 私が常軌を逸した頑張りを見せたのは情けない胃袋を持つ連中の所為もある。




 たった丼七杯で降参した貧弱な海竜ちゃん。


 蜘蛛が食った数は知らねぇけど、どうせ二桁も届いていないでしょうね。


 ユウは十三杯に、ボケナスは十四杯とふつ――の数。


 それに比べ!! 私は二十杯もの大盛御飯を平らげたのだ!!


 そりゃあ苦しくて悶え打つのは道理に適っているとは思わないかい??




 嬉しい苦しさを誤魔化そうと体が考えたのか。


 ふと、私の体ちゃんがお水を欲してしまった。



「ユ、ユウ……。み、水を取って」



 畳の上でコロンっと横になり腹を抑えつつ。


 私同様……。じゃあ無いな。


 もっと酷い顔を浮かべているユウへと懇願を放つ。



「自分で取れ」



 辛辣っ!!



 いつもなら、ヤレヤレといった感じで動いてくれるのに!!



「し、仕方ねぇなぁ。じ、自分で。ウ、ウプぅ!! 取ってやるわ……」



 地を這う芋虫さんの動きを模倣し、お水さんがたっぷりと入ったやかんを手に入れ。



「ぜぇ……。ぜぇ……。んぐっ!!」



 お腹ちゃんが求めていたお水さんを与えると、幾分か気分が楽になった。



「はぁっ……。は――……。食ったなぁ……」



 若干乱雑に木製のコップを畳の上に置き、再び染みが目立つ天井を仰ぎ見た。



 私が此処まで満腹感を覚えるのはいつぶりだろうか??


 ひょっとしたらこっちの大陸に到着して以来、初めての事かも。



 移動中は食べ過ぎやら、おやつは食べるなだとか。


 真面目二人組からの文句が多いし、量の制限もあった。



 それに比べここはどうよ??



 嫌と言われても食べなきゃいけないなんて……。


 まさに天国と呼んでも相応しい場所かもねぇ。



 只、それは私だけがそう考えている様で。



「うぅぅ……。もう嫌だ……」



 私に喧嘩を売って惨敗したボケナスが腹を抑え。


 二度と私に喧嘩を売らないと誓った情けない背中を此方に見せ、畳の上に転がり。



「お腹が……。これはきっとレイド様の御子……」



 蜘蛛は無視。



「…………」



 カエデに至っては茫然自失として、只一点を見つめていた。


 ハハ、カエデが一番辛そうね。



 お腹が一杯になり過ぎると、頭が考える事を止めちゃうし。



 皆が嬉しい地獄の苦しみを味わっていると、メアが軽快な声を上げて平屋に入って来た。



「お――い、女連中。温泉入って、汗を流してこ――い」


「お、温泉だと!?」



 腹一杯食えて、しかも御風呂と寝床もついているなんて!!!!


 至れり尽くせり此処に極まれり!!



「何処にあるの!?」



 温泉の一言で苦しさが霧散。



「私が案内してやるよ。ほら、起きて」



「ユウ!! 温泉行くわよ!!」



 情けない連中を叩き起こす為、大部屋の中を忙しなく移動を開始した。



「わ、分かったから……。体を揺するな……」



 文句を言いつつも、私の行動にヤレヤレといった感じで答えてくれる。


 私はユウのこういう所が大好きだ!!



「カエデ!! 行くわよ!?」


「――――。少し、黙って頂けませんか??」



 お、おぉ。


 そんな冷たい目で見られると流石の私でもちょっと慄いちゃうわね。



「私は、レ、レイド様と共にお湯を頂きますので……。先に……」



 萎びたうぜぇ蜘蛛がボケナスの下へと這って行こうと画策するが。



「は――いはいはい。行きましょうね――」



「ユウ!! お止めなさい!!」



 蜘蛛の白くてきしょい右足をユウがむんずっと掴み。



「あ――んっ。レイド様ぁ――。私、誘拐されてしまいますぅ――」



 と、いつもみたく気持ちの悪い声でボケナスへと見つめる。



「…………。いってらっしゃい」



 まぁ、私の予想通り。


 あの情けない背中じゃあ構う余裕はないわな。



「レイド様っ!? 子を身籠っている妻が誘拐されてしまうのですよ!? 大切な二人の命を失う事に何の心配も無いのですか!?」



 あ――、もう。うるせぇなぁ……。



 耳を塞ぎ、近場へ移動する為に用意してくれた草履を履き。


 気の所為か。


 いつもよりも星の瞬きが強く感じる星空の下へと躍り出た。




「んぉ――。綺麗じゃん……」



 流石、我が友よ。


 同じ事を想ってくれているなんて嬉しい限りだわ。



「空気が平地よりも澄んでいますからね。綺麗に見えて当然です」



 顔色と比例して弱々しい足取りの海竜ちゃんがそう話す。



「ふぅん。ねぇ、メア――。何処行くのよ――」



 馬鹿みたいにポカンと口を開けて夜空を仰ぎ見ている私達を他所に。


 出入口から向かって、左方向へと向かってサクサク進み。



「裏にあるんだよ。ほれ、付いて来い」



 黒き髪を揺らして、裏手へと姿を消してしまった。



「行こうか」



 ユウの一言を受け、丁度良い塩梅に冷えた夜の山の空気の中を進む。



 此処を左に曲がれば良いのか。



 狐さんの先導に従い、踏み心地の良い土で出来た道に沿って進んで行くと。





 青い月明かりに照らされ、馨しい香りを放つ花畑が現れた。



 中央には赤やピンクの薔薇が美しく咲き誇り、それを囲う様にそこかしこで色とりどりの芍薬が咲き並び。



『こんばんは』



 と、己の花弁を揺らしながら馨しい香りを漂わせていた。



「うん、綺麗ね」



 花よりも食い物を取る私であるが。


 今だけはこの景色に魅入られていた。


 私の中の女性らしい一部が顔を覗かせたとでも言えば良いのかしらね。



 …………。



 らしい、じゃなくて。


 嫋やかな女心だ。


 私は一人の女性なのですぅ!!



「まぁ……。美しい芍薬ですわねぇ……」



 蜘蛛が花弁にほっせぇ指を添えて、クンクンと香りを嗅ぐ。



「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花……。うふふ……。私に誂えた言葉だとは思いません??」



「それ、どういう意味??」



 ユウがカクンっと首を傾げて問う。




「御覧の通り、芍薬はすらりと伸びた茎の先端に綺麗な花を咲かせます。牡丹は枝分かれして横向きの枝に花を付けますわ。そして、百合は流れる風を受けて揺れる様が美しいのです……」




「え――っと。つまりぃ、花を女性と見立てて。芍薬は立って見るのが良くて、牡丹は座って眺め、百合は揺れ動く姿が一番綺麗って意味か」




「正解ですわ。ふふ……。本当に綺麗ですわねぇ。一輪、胸に差して。レイド様に御覧頂きましょうかねぇ……」



 そんな所に差したらぜってぇみねぇし。


 寧ろ、そっちはユウの独壇場ですよ――っと。



「あっちの小さな小屋は??」



 面倒くせぇ雰囲気を払拭する為。


 進行方向から向かって右側、花で彩られた道の先にある縁側付きの一階建ての小屋を指す。



「あそこがイスハ様の母屋だよ。今はあそこで休まれているから邪魔するなよ?? んで、あっち側に続く道の先に私達が住んでいる家があるんだ」



 母屋の反対側の先の暗闇を指で指しつつ、メアが満足気に説明を終えた。



 へぇ、あそこがねぇ。



 何んと言いますか。


 随分と普遍的な家に住んでいるわね。


 里を治める者なのだからもっと大きな家に住んでいるかと思ったのに。



「随分と控えめな家に住んでいるんだな??」



 奥へと進み始めたメアに続き、ユウがその背中に話し掛ける。



「イスハ様は余り豪華な物を好まないからね。食事も私達と同じ物を召し上がっているよ」


「上に立つ者でありながら、皆と変わらぬ立場に身を置く。ふむ、素敵な考えですね」



「大袈裟だって。イスハ様は普通が好きなのさ、普通が」




 絢爛豪華な温かな屋敷に住み、舌が溶け落ちてしまう豪勢な食事よりも。


 隙間風が襖の奥から吹き、農家の皆様が汗を掻いて御作りになられた米を食う。



 百人にどちらかが良いかと問うたら、恐らく。


 半分以上は前者を取るでしょうね。



 私は…………。



 う――ん……。



 どんなに贅を尽くした食事でも一人だと美味さが五割減なのよねぇ。


 気の合う友人達と飯を食らえば、美味さは数十倍以上に感じてしまう。つまり!! 私は、どんな状況下でも友人さえいればいいのだ。



「あら……。硫黄の香りがしますわね」



 アイツは友人と認めないけどね!!



 最後方で静かに歩くきしょい蜘蛛の言葉を流し、文字通り。硫黄の香りが漂うなだらかな土作りの階段を上がると。



 あそこは脱衣所、だろうか。


 こじんまりとした木造の建物の裏手から今も、もうもうと白い蒸気が立ち昇っていた。



「あそこが脱衣所。部屋の中に籠が入っているからそこに今着用している服を入れて。 んで、新しい服装はもう籠の中に入れてあるからそれに着替えたら寝ろ。洗濯は私達がしておくから安心しなよ」



 なんと!!


 洗濯までして頂けるだと!?



「ありがとね!! 助かるわ!!」



 メアの肩をパチンと叩き、勢いそのまま。



 脱衣所の戸を開けた。




 ふぅむ……。


 四畳半の狭い室内。


 籠を入れておく棚が壁沿いに設置され、棚には籠が五つ寂しそうに私を見つめていた。


 これがさっき言っていた奴ね!!



 先ずは己の体躯に合った服の籠を探す。



 私の奴はどれかなぁ――っと。



「狭いな――」


「ユウ――。これ、あんたのサイズよ」



 一番でけぇし、これは直ぐに分かった。



「おう、ありがとう!!」


「んで、カエデはこれね――」



 私よりもちょい大きく、だっせぇ訓練着が入った籠を渡す。



「どうもです」



「もう少し、広く建てれば宜しかったのに」



 蜘蛛は無視して、私の籠を手に取り。



「とうっ!!」



 皆が上半身のシャツを脱ぐ前に、生まれたままの姿になってやった。


 着替えは昔から得意なのよね。



 さて!!


 いざ突入開始ぃいい!!


 籠の中に入っていた一枚の手拭いを手に……。


























「ひぃっ!!!!」



 取ろうとしたらとんでもねぇもんが視界に飛び込んで来やがった!!



「ん――?? 何??」



 恐怖の双子の大魔王様が大変窮屈な場所に閉じ込められていた事に憤りを覚えていたのか。



 深い緑色の下着を外した刹那、勝手気まま御自由に大暴れされていた。



 たわぁんっと上下に揺れ動けば。



「よっと……」



 ユウが服を乱雑に籠の中に入れると、左右へブンッ!! っと動かれ。



 二つの鋭い瞳が私を捉えると。




『貴様か!? 我々を拘束していたのは!!!!』




 と、大変恐ろしい姿で咆哮された。




 め、め、め、滅相もございません!!


 貴女様方を拘束していたのは、あちらの下着という愚か者で御座いますぅ……。



 頭を垂れ、地面に擦り付け。心の中で謝罪を述べてしまいましたとさ。




 こ、こえぇぇ……。


 同じ女だってのに、あんな物がぶら下がっているのかよ……。



 拘束具から解き放たれた大魔王様達は大変ご満悦な御様子で??



「マイ!! 行くぞ!!」



 彼女が温泉へと続く戸を開けると。



『ほぅ?? これはまた素晴らしき場所ではないか』



 上機嫌に御体を激しく、情熱的に動かされた。


 機嫌が直られて光栄で御座います。



「え、えぇ。入りましょうか……」



 一糸纏わぬ体のまま、星空の下へと躍り出ると。



「「おおおおおおおお!!!!」」




 美しい白濁の湯が私達を迎えてくれた。


 柔らかい風が常軌を揺らすと形容し難い形に変わり、風に漂って流れれば。


 初夏の香りと微かな硫黄の香りが混ざり合い、心を温めてくれる。


 良質な湯質だと物言わずとも理解出来るが、だだっ広く奥まで続く面積が解放感を与えてくれた。




「おっ。あそこが洗い場か。ふんふ――ん。ふふんっ」



 ユウが手拭いを肩に掛け、堂々たる歩みでちょっとだけ痛んだ桶さん達が転がる奥へと進む。



「先ずは……。体に掛けてっと」



 木製の腰掛に張りのあるお尻ちゃんを下ろし。


 桶に白濁の湯を掬い、健康的に焼けた肌に恐る恐る掛けた。



「うんっ!! いい湯だぞ!!」


「そ、そうね。いいお湯よね……」



 大魔王様ばかりに視線が行きがちだけども、ユウって実はすっげぇ整った体付きしてるのよねぇ。



「石鹸で泡立てて――。ほらっ、もうこんなに泡立ったぞ??」



 ニッ!! っと満面の笑みで泡々の手拭いを此方に見せてくれる。


 その笑みたるや……。


 貴族が持つ宝石よりも価値があるでしょう。羨ましい限りだわ。




 さぁ、最初はいつも通りなら……。右腕の筈。


 己の体を洗いつつ、彼女の所作に注目した。



「ん――ふふん。あはは――んっと」



 ほら、正解!!


 腕に泡を擦り付けてお次に向かう先は……。確か、首だったかしら??



「明日って、何時起きだっけ??」


「むっ!? そう、言えば聞いていないわね」



 違ったぞ!?


 足ちゃんに向かってしまった!!



 長い足ちゃんに白い泡が付着すればどうでしょう。


 やたら淫靡に映りませんかね??



「帰ったらレイドに聞いてみっか」



 足の次は背中だ。


 うんっ、いつも通り……。



「ほっ……。よいしょ……っと」



 またまた外しただとぉお!?



 い、いきなり大魔王様の御体を洗い始めるではありませんか!!


 しかも!!


 大切に御体を持ち上げているし!!




「――――――――。なぁ」


「ん!?!? な、何??」


「毎回毎回、あたしが胸を洗う度に変な顔するの止めない??」



「そ、それは無理な注文よ……。も、も、持ち上げて洗う奴なんて……。滅多に居ないもん」


「そうか?? あたしの里ではまぁまぁ居るけどな」



 イカレタ胸のミノタウロスの女性達と、我々普遍的な体を持つ種族との差をまざまざと見せつけられるとどうだろう??


 あっちが普通なのかしらと可笑しな考えに辿り着きませんかね??



 まぁ……。


 絶対、こっちが普通なんだけどね。



「ユウの母ちゃんも馬鹿みたいにデカイもんねぇ……。ほっ!!!!」



 洗い終えた体にお湯を掛け、ついでと言わんばかりに頭から湯を被り!!



「一番風呂だぁあああい!!」



 桶をポイっと投げ捨て、至高のお湯へと飛び込んでやった。



 おひょ――!!!!


 きんもち良い――!!



 ちょいと熱めの湯が肌を刺すものの。


 サラサラの湯質が肌に染み込み、私の体は速攻で合格点を叩き出してしまった。



「温泉は静かに入るもんだぞ――」


「それは一人の場合よ!! 友達と入る時は喧しく入るものなの!!」


「そういうもんかね。お――、カエデ。アオイ――!! 洗い場はこっちだぞ――!!」



 私はもう湯に浸かっているというのに……。やっと入って来たのか。


 藍色と白色の花が遅くも無く、速くも無い速さでユウの下へと歩んで行く。



「筋肉が痛過ぎて、着替えるのに時間がかかりました」



 ちょいと長めの手拭いで体の前を隠して歩く海竜ちゃん。


 音を立てずに彼女の背を確認出来る場所へ、泳いで行くと。



「んがっ!?!?」



 この世の全ての桃の湾曲を全否定してしまう、美しい丸みを帯びた湾曲を二つも捉えてしまった!!



 カエデって恥ずかしがり屋だからあんまり見せてくれないけど。


 あ、あんな綺麗な桃尻だったのか!?


 すっげぇツルツルしているし!! きっと触り心地も最高なんだろうなぁ……。



「どうされました??」


 私の声に気付いたカエデが此方に振り向く。


「へ!? あ、いや――。いい湯だなぁ――って」



 私の嘘を聞き終えると、そうですかと小さく呟き。


 これまた小さな木の腰掛に、あの桃を乗せて肌理の細かい肌を洗い始めた。



「お先ぃっ!!」


「ちょ、ユウ!! お止めなさい!!」



 蜘蛛の制止を振り払い。


 私同様、お湯の中へと満点の飛び込みを見ると。



「はっは――!! くぅ――!! 最高!!」



 四肢を四方向にこれでもかと伸ばして仰向けに浮かんだ。


 うむっ。


 ユウ、見事な所作だ。褒めてしんぜよう。



 だが……。


 胸は仕舞えや、この野郎。


 これ見よがしにお披露目しやがって。




「貴女と言う人は……。もう一度洗い直しではありませんか」


「後で説教ですね」



 厳しい瞳でウンウンと頷く私に対し。


 頭から白濁の湯をすっぽりと被った二人はしかめっ面で深緑を睨んでいた。




「いや――。本当にいい湯だよな――」


「そうね。疲れが……。くはぁ……。溶け落ちちゃいそうよ……」


 岩肌に背を預け、星空をおかずにして湯に浸かる。



「はぁ。いい湯……」



 そして、隣には友人が浮かべる最高の笑み。



 文句無しに最高の湯だ。



 只一点を除けばね。



「ね、ねぇ」


「ん――??」


「申し訳無いんだけどさ。手拭いで、ソレ。隠して??」




 頼む。


 これ以上視界に入れていたら正気が失われてしまいそうなのよ……。




 ぷかぁっと浮かぶ二つの大魔王様を指差して言ってやった。




「隠す?? こんな感じ??」


「ぶぶっふ!!!!」



 手拭いをちょこんと胸元へ置くと、沈む処か。



『よいしょっと。ここで腰かけるか』



 と、手拭いさんが沈まずにあの二つを腰かけ代わりに使うではありませんか!!



「沈まねぇの??」



 水分をたっぷりと含んだ手拭いはそれ相応の重量がある。


 沈まないって事はそれだけの重量を支える浮力があるのだ。



「沈まないな」


「沈めや!!!!!!!!」



 くそう!!


 腹立たしい!!


 な、何で私だけがこ、こんな。ちんまりした丘なのよ!!!!



 憤怒を籠めた右手で、肉の腰掛を思いっきり叩いてやった。



 刹那。



「いって。もう少し優しく叩けよ。おい、聞いてんの??」



「はぇ?? え、えぇ……。う、うん……」



 いつもの倍以上に跳ね返されたのは気の所為かしら……??



 ま、まさか!?


 こ奴!?



「ユ、ユウ。最近、いつも以上に肩が凝るなぁって感じた事は??」



「はぁ?? ん――……。実は、さ」



 ほう、聞きましょう??



「なんか知らないけどね。皆と行動を続けている内に、さ。ちょっとだけ大きくなったんだよ。今使っている下着の大きさが合わなくなって困っていたんだ――」



「こ、こ、このっ!! 破廉恥な胸めっ!!!!」



 平手じゃ足りん!!


 拳を捻じ込んでやらぁ!!



 ぎゅうっと握った拳を放つが……。



「おぉっと。外れだな」



 双子の大魔王様の合間へと吸い込まれてしまった!!


 温泉を含んだお肉様は大変肌触りが良く、モチモチプルプルのすんばらしい御体になっていましたとさ。



「ちっ。ってかさ、この温泉。すっごい肌が綺麗になるんじゃない??」



 私のお肌も時間の経過と共にツルツルになっている気がするし。



「イスハ達の肌が綺麗なのもこの温泉の効能なのかもね」



 あぁ、成程……。


 只、ちょいとお湯の温度が高いのが気になる。



「よっと……」



 岩の上にちょこんと腰かけ、上半身を外気へと晒し。


 小休憩を開始した。



「明日も今日みたいに走らされるのかしらね」



 満天の星空さんを仰ぎ見ながらユウに話し掛ける。


 体を冷ましてくれる風が気持ち良いや。



「そうだろうなぁ」



 やっぱりそうかぁ……。


 体を鍛えるのに走るのは持って来いの運動なんだけど、もうちょっと変わった運動も付け加えて欲しいものさ。



「あたしは走る云々よりも、食う方が辛いな」


「はぁ?? 何言ってのよ。最高じゃん、さいこ――。どれだけ食っても御咎め無しなのよ??」



「お前さんは食い過ぎなんだよ。普通の胃袋を持つ者は大抵、辟易した顔を浮かべちまうさ。そうだろ?? カエデ」



 カエデ??



 夜空から温泉へと視線を移すと。



「全くその通りです。ユウよりも食べられない私はもっと辛いのですよ??」



 あんれまぁ……。


 一糸纏わぬ海竜ちゃんのお出ましかい。



 美麗な白磁の陶磁器も。



『きぃっ!!』



 っと。悔しさを滲ませてハンカチを噛んで羨む白い肌。相応に育った果実と調和され整った体から伸びる細い足。



 顔も然る事ながら、体付きも女らしいなんて卑怯過ぎるわよ。



 それに比べ……。私と来たら……。



「ふぅ――。いいお湯ですねぇ……」



 ユウの隣に腰かけ、お上品に吐息を漏らす。



 蒸気に染まった顔がまた可愛いのなんの。



「ねぇ、カエデ――」



「はい?? 何でしょうか??」



「海の幸を食べ尽くせば、カエデみたいに整った体になるの??」



 私がこうなったのもきっと、生まれた環境の所為だと思うのよ。


 つまり!!


 海の幸を食らって育ったカエデを見習えばそうなる筈!!



「それは……。分かりませんが。マイも綺麗だと思いますよ??」



 はい、お世辞頂きました――。



「世辞は要らないわよ――っと」



「そう不貞腐れるなって。あたしも、マイの足は綺麗だと思っているからさ」



「――――――――。ほぅ??」



 良い事を聞いた!!


 私の足が綺麗だと!?



 白濁の湯からあんよを引き抜き、温泉の水面と平行にしてにゅっと伸ばす。



 ふぅむ……。



 左右均等に付いた筋力に、肌理の細かい肌。


 そして程よく膨らんだ太腿ちゃん。



 言われて見れば……。まぁまぁの足よ、ね??



「でも、ユウ。足 『は』 って聞き捨てならない事さらっと言ったわよね??」


「あ?? あ――……。そう??」



 はい、惚けましたね???



「惚ける奴は……。こうだぁっ!!!!」



 ユウの背へと刹那に移動し、両手を背から真正面へと回し。



 肉の塊を思いっきり引っ張ってやった!!



「ぎゃははは!! な、何すんだよ!!」



 おっっっっも!!!!


 何じゃこりゃあ!?



 摘まんで、持ち上げたら御手手ちゃんが驚いちゃったじゃん!!



 全く……。


 ふざけた胸をしやがって……。



 捏ねくり回してやる。



「あはははは!!!! や、やめっ!!」


「私を揶揄った罰をその身で受けるがいいさ!!!! おらおらおらぁああ!!」



 揉み、持ち上げ、摘まむ。


 背後から出来る範囲でこれらの攻撃をねちっこく、粘着質に加え続けていると。



「んっ……!!!!」



 妙に色っぺぇ事と共に、大魔王様の御体が僅かに硬化されてしまった。



 ほっ??


 固体に変化、が??



「マイ、そのまま続けて下さい」


「ん?? 何で??」



 ユウの背中越しにカエデに問う。



「今、大変女性っぽい顔を浮かべていますので。ユウの表情の中では先ず見られない代物ですから」



 ほお!!


 良い報告、頂きました!!



「マ、マイ!! 止めろ!! それ以上は駄目だ!!」


「駄目と言われてぇ……」



 両足を、ガッ!! とユウのお腹ちゃんに絡め。


 両手にこれでもかと力を籠めた。



「止める奴はいませんよ―――――――!!!!」


「いぃ!? きゃはははは!!!! わ、分かったぁ!! んっ!? 私が、はっ……。悪かったからぁ!!」



「ウェハハハハハハ!!!! 龍の恐ろしさを……。その身に刻んでやるわぁ!!!!」



 お湯の所為なのか、将又真っ赤っかに染まったユウの体の所為なのか。


 そのいずれかによって私の体温が上昇。


 湯あたりする一歩手前まで私は心行くまで、我が友人の巨岩を堪能し続けていた。


最後まで御覧頂き有難うございました!!


温泉に最近浸かっていないので、羨ましい限りです……。

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