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第百八十四話 彼女一人に圧し掛かる責任と行動の始まり

お疲れ様です。


本日の投稿なります。




 カエデの体から迸る魔力の波動が収まり目も開けていられない光量が消失すると、彼女は肩の力を抜いてふぅっと小さく息を漏らす。


 私はボケナスの存在が消えた空間を横になったまま少々寂しい感情を抱いたままじぃっと眺めていた。



 暫くの間、アイツの阿保面も見られなくなると思うとちょっとだけ寂しく感じちゃうわね。


 本当は首根っこ掴んで無理矢理私達に帯同させてやってもいいんだけど……。


 アイツにはアイツの、そして私達には私達に与えられた責務を全うしなきゃいけないんだし。それは叶わぬとは分かっている。


 そして何より、馬鹿真面目なボケナスの事だ。選抜試験とやらに合格したのなら世の為人の為と大それた事を口走ってそっちを優先するでしょうね。


 頑張って行ってきなさいよ?? あんたが帰って来るまで私達は待っててあげるからさ。



「はぁぁ。レイド様がいらっしゃらないこの空間の虚無たるや。もう既に寂しくて死んでしまいそうですわぁ……」



 そうですか――っと。


 それならさっさと火の池にも飛び込んであの世へ行っちまえ。


 いつも通りの気色悪い声と動作でアイツの居なくなった空間を見つめる蜘蛛に向かって軽い舌打ちを放ってやった。



「さて、お主らも出発の準備をせいよ?? 間も無く出発じゃからな」



 平屋の戸へと向かいつつイスハがそう話し、私達の様子を改めて見ると鼻で笑いながら陽の下へと出て行った。



「う、動けるかな……」



 ユウはぷっくりと膨らんだ腹を抑えて唸り。



「同感だ。食べねばと思い、必要以上に詰め過ぎてしまった……」



 リューヴは狼の姿のままで苦しそうに四本の足をワチャワチャと動かしている。



 大体、あんたらは胃袋が貧弱なのよ。


 常日頃から鍛えていないからそうなるって、私が何度もしつこく言っても聞きやしないんだから。



「うぅ――。やっと回復してきたぁ。はぁ――。朝から沢山食べるのも辛いよねぇ」


「ルーは全然食べてなかったじゃない。駄目よ?? 馬鹿みたいに食べなきゃ」



 四つ子が入っているんじゃないかと錯覚させるお腹に刺激を与えぬ様、そ――っと寝返りを打ってルーを視界に捉える。



「馬鹿みたいにねぇ。それよりさ、リュー」


「何だ」



 話すのも面倒だ。


 そんな雰囲気を醸し出して翡翠の瞳でお惚け狼を睨む。



「睨んでも怖くないよ?? お父さん達、元気にしているか気にならない??」


「里の様子が気になるのは確かだな。この季節だ、もう随分と冷えるだろう」



 リューヴ達の里はこの大陸の北に位置しているので冬になると冷たい雪がシンシンと降り積もるって言ってたっけ。


 私は寒さにそこまで抵抗は無いけど、他の面々はどうかしらね。



「寒いのですか??」


 カエデが自分の荷物を纏める手を止めて二頭の狼の方へと視線を向ける。


「あぁ、こことは比べ物にならない程にな。カエデとアオイは寒さに弱いのだろう??」



「苦手」


「そうですわ。本来であれば寒さから逃れる為にレイド様の懐に潜り。馨しい香りを感じつつ暖を取る予定でしたのにぃ……」



「カエデ。いつもの服にもう一枚着込みなさいよ?? あんたが風邪でも引かれたら困るし」



 ウネウネと体をくねらす蜘蛛を盛大に無視しつつカエデに一応の忠告を放つ。



「分かりました。ふぅむ、一枚……」



 何を着ようか。


 そんな感じで己の鞄を漁り、長袖や厚手の服を比べている。



「ふんがっ!! はぁ、やっ――と立てた。カエデあたしの上着貸そうか??」



 己の体にこれでもかと気合を注入してユウが立つと、カエデの隣に座り背嚢の中から己の上着を取り出す。



「寸法、合いませんよ」


「まぁまぁ、物は試しだって。ほれ、どうぞ」


「では……」



 白の長いローブを脱ぎ、ユウの厚手の茶の上着を羽織るが。



「「…………」」



 カエデの話した通りどこからどう見ても寸法があべこべであった。


 大いに余った袖。ブカブカの肩回り。


 訝し気な表情を浮かべて、そ――っと前を閉じるも。



「……ッ」



 胸部分の大いにすっぽりと空いてしまった空間を見下ろし、巨大な憤りを籠めた溜息を吐き捨てるとユウをジロリと睨んだ。



「――――自慢する為に。私に着させたのですか??」


「な、何を??」



 恐ろしい言葉に対し、二度瞬きをして返事をする。



「あはは!! 安心してよ、カエデちゃん!! 私も胸部分は絶望的に足りないからさ!!」


「いいです。いつか、ユウみたいにおっきくなる予定ですから……」



 むぅっと眉を寄せ、若干乱雑に上着を脱いでユウへ渡した。



 いやいや。あれに追いつこうなんて絶対無理だからね??


 矮小な蟻が人に勝てぬ様に。


 この世にはどうしても覆せない道理があるのよ。



 私も?? 一応??


 発展途上だから、うすぅい望みは残っているのは内緒だけどね!!




「なぁ、もっと厚い奴持ってないの??」


「先日、実家の自室へ空間転移した際に置いて来てしまいました」


「あっ、そっか。あたし達の荷物も確か置いてくれたよな。ン――……。じゃあ、これなんかどう!?」


「ですから、寸法が合わないと何度言えば理解出来るのですか??」


「カエデちゃん!! 私の服も着てい――よ!!」


「灰色の毛が付着するから遠慮します」


「えぇっ!? そこまで抜け毛付いていなよ!?!?」



 カエデの一枚の服にあ――でもない、こ――でもないとユウ達が助言を放っていると。



「ふわぁぁ。はよぉ――……」



 朝の気怠さそのものを引っ提げて淫魔の女王が畳の部屋に現れた。


 微妙に直っていない寝癖、中途半端に開いた瞼。そして、これまた中途半端に開いた胸元が絶妙に私の憤りを刺激してしまった。



 くっそう。


 あの見事に育った二つの果実……。万力でもぎ取ってどっかに投げ捨ててやりたいわ!!


 大体、卑怯なのよ。


 淫魔だか何だか知らないけど。綺麗なくせに胸もデカイなんてインチキじゃない。



「先生。おはようございます」


「ん――。はよ――……。もう直ぐ出発だからちゃんと準備しておきなさいよ――……」



 荷物の山が置かれている部屋の隅へトコトコと移動し、抗魔の弓をきゅっと抱いて横になる。



「先生。それ、レイドの私物ですよ」


「知ってる――」


「勝手に触ったらいけません」


「ふぅん……。んっ……」



 こいつに小一時間程倫理観ってのを説いてやりたいわ。


 スベスベ肌の股に抗魔の弓を挟み、あろうことかムチムチの太ももを摺り寄せ。己の匂い全てを弓へと擦り付けていた。



「すっごぉい……。これ、きゅんきゅんしちゃぁう……」


「馬鹿な事していないで早く起きて下さい!! 空間転移で移動しますよ!!」



 カエデが弓の端っこを掴み、一気呵成に抜き取る。



「やんっ!!!! あっ……。もぅ――……。擦れ……」


「おら、そこまでだ。カエデの言う通りしゃきっとせい」



 これ以上は不味い。


 私はそう考えてお馬鹿な淫魔に横槍を入れてやった。



「今の衝撃でしゃきっとしちゃったもんっ。レイドが帰って来たら、続きしよ――っと」



 何の?? まぁ皆まで言うまい。


 軽々と立ち上がり、そして整った尻を揺れ動かしつつ平屋を出て行ってしまった。



「ねぇ、あんたの先生。頭、大丈夫??」


「恐らくこの世に生まれ落ちる際。母親の子宮の中に倫理観と貞操観念を置いて来てしまったのです。安心して下さい。追々修正していくつもりですので」



 修正、ねぇ。


 言って聞くならもう治っているって。



 テキパキと荷物を纏め、そして詰め込んで行くカエデの姿を随分と楽な姿勢で見つめる。


 さてと――、私もそろそろ用意しなきゃね。


 一生懸命な海竜の姿に触発されたのか。



「はぁ――。動くの面倒――……」


「あはは!! マイちゃん気持ち悪い動きしてるね!!」


「これが一番楽に移動出来る手段だからね――」



 陽気な狼の声を背に受けて芋虫の移動の如くヘッコヘッコと腰を器用に上下させ、ノロマで情けない速さで荷物の下へと這って行った。

























 ――――。




「遅い!! 走ってこぬかぁぁああ――!!」



 はいはい。そう叫ばなくても分かっていますよ――っと。



 爽快に晴れ渡るキラっと光る太陽の下。


 狐の女王様が訓練場の中央付近で堂々と腕を組み、私達のだらしない姿を捉えるとより一層顔が引き締まり。


 まるで火山の大噴火を彷彿とさせる怒号を私達に向けて解き放った。


 いつも三本の尻尾は怒りによって五本に増え。ピンっと天高く真っ直ぐに、垂直に……えぇっと。まだ何かあったっけ??



 あぁ、直線があったわ。


 兎に角。それだけあの狐の女王様は怒っているって事さっ。



「いや――。荷物を纏めるのに手間が掛かっちゃってね」



 急かされても特に焦らないのが私達の良い所。


 いつも通りの歩みでなだらかな斜面を下り、素敵な朝に相応しいゆぅっくりとした速さで悪びれる様子も無く狐の大魔の下へと到着した。



「走って来いと言うたじゃろ!!」


「だから悪いって言ってるじゃん」



 ぐぬぬと震える拳を握る狐さんへと話す。



「ぬぅ!! まぁいい!! ほれ、早く儂らを送らぬか!!」



 右隣り。


 ちょっと目が覚めて来たエルザードへと声を掛けるが。



「ふわぁぁ――……。は?? 何か言った??」



 当の彼女はどこ吹く風。


 飄々とした表情で宿敵を見つめた。



「じゃから!! 早く!! 送れと言っておるのじゃよ!!」


「やぁねぇ、年寄りって。どうしてこうもせっかちなのかしら……」


「貴様も儂と変わらぬ年じゃろうがぁ!!」


「うるさ。朝からそんなに叫んで疲れないの??」


「誰の所為じゃと思っておる!! フィロといい、貴様といい……。どうしてこうもいい加減なのじゃ……」



「ははっ。母さん昔もいい加減だったの??」



 今も……。まぁいい加減かな。



『あはは!! まぁ……。うんっ、大丈夫かな』



 グッチャグチャのブスブスに焦げた失敗作の御飯をあははと笑い飛ばして誤魔化し。



『それは一体何だ??』


『はい、あ――んっ』


『要らん。失敗したら自分で処理する様にいつも俺が……』


『あ――ンッ!!』


『ブグッ!?』



 恐れ戦く父さんの口へ失敗したナニカを無理矢理捻じ込み。



『ゥッ!? こ、こんな物!! 不味くて食えな……』


『吐き出したら歯が数本頬の内側から飛び出るケド??』


『ッ!!』



 咀嚼せずに吐こうとしようものなら人の正気度を狂わせる顔をもって咀嚼と嚥下えんかを強制させる。



『わははっ!! うん、今日は良く晴れて正に釣り日和だな!!』



 麦わら帽子、釣り道具一式。趣味全開の格好をして意気揚々と出掛けようとすると。



『今日は肩が凝っているからあなたは私の全身を隈なく揉む必要がありま――すっ』


『い、いやいや!! 昨日出掛けても構わないって』


『ハッ?? 誰にモノ言ってんの??』


『や、止めろ!! マイ!! お前も笑って見ていないで助け……』



 目に大粒の涙を浮かべた父親は大変ちゅめたい母親に襟を掴まれ、家の奥へズルズルと引きずられて行ってしまった。



 いやぁ、ふと懐かしい景色が過っていったわね。


 おっと、これはいい加減じゃないわね。恐妻家の良い例だったわ。


 まぁあの母親クソババアはいい加減且ものすげぇおっかないって事で!!



「ねぇ――。早く行こうよ――。お母さん達の顔、早く見たいもん」



 人の姿で荷物を背負うルーがエルザードの袖をクイクイと引っ張る。



「はいはい、そう急かさないの。カエデ、悪いけどちょっとだけ魔力譲渡してくれる??」


「分かりました」



 静かな歩みでエルザードの隣へ移動して彼女の右肩に手を乗せる。


 すると淡い光がカエデの体の奥底から湧き、細い手を通してエルザードの中へと流れ込んで行く。


 器用なもんねぇ。私じゃ絶対出来ないかも。



「あぁんっ。カエデ、すごぉい……」



 カエデの魔力を受け取りつつ、淫靡な顔と表情でお道化る。


 お止めなさいよ。うちの海竜はそうやってお道化るのが嫌いなんだから。



「先生、止めて」



 ね??


 普段良く見掛けるむすっとした表情で淫魔を見上げた。



「んぅっ。冗談なのにぃ」



 カエデのフニフニとした柔らかい頬っぺたをツンっと突っつくが。



「怒りますよ」



 空いてる反対の手でそれをピシャリと撃ち落とす。



「いたっ。ちょっとぉ。先生にそんな事していいのかなぁ――。もう魔法教えてあげないぞ――」


「そういう所が駄目なんですよ。先生は九祖の血を引く者です。皆の手本になり、導く存在にならなければならないのですよ?? それがどうですか。口を開けば卑猥な言葉。歩けば淫靡な空気を振り撒き世を混沌へ陥れる。見本処か、反面教師にすべきだと……」



「なはは!!!! 何じゃあぁ?? 生徒に良い様に言われているようじゃのぉ??」



 これに便乗するのがまた質が悪い。


 イスハが片眉をくいっと上げ、ピコピコと三本の尻尾を揺れ動かしてエルザードを揶揄う。



「うっさいわねぇ。そのくっさい尻尾。燃やすわよ??」



「お――?? 言い返せないのが悔しいようじゃなぁ?? 弟子に説かれたら世も末じゃな。それに比べて儂の弟子はまっこと素晴らしいわい。師を崇め、敬服し、儂の指導にも文句の一つも言わずに師事する。うむうむ……。あれぞ、弟子のあるべき姿じゃわ」



 あるべき姿ねぇ。


 力有る者を素直に尊敬するのはまぁ分かる。だけど、厳し過ぎる指導に文句の一つも言わず従うってのは疑問が残るわね。


 激烈な指導にいっつも口から血反吐垂らして、半分死体になりながら地面に這いつくばっているし。



 手加減はする必要は無いけど、もう少しやり方ってもんがあるとは思う。


 アイツを庇う訳じゃないけどね。



「良く言うわよ。その弟子と逢瀬もした事ないくせに」


「はぁ!? それは関係ない事じゃろうが!!」


「あ――。プッ、クスクス。ごめんなさいねぇ?? 私、彼と楽しくお出掛けしたもんねぇ。ほら、これ見えますかぁ??」



 前髪を留めている桜を模った銀細工の髪留めをこれ見よがしにイスハの前に出す。



「そ、そ、そ、それがどうしたのじゃ」



「レイドが、『私に』 くれたのよ。あぁ――。思い出すなぁ。くらぁい夜空の下。間も無く訪れる別れが惜しいのか。お互い体をぴったりとくっつけてねぇ……。んっ、駄目。思い出すだけで体が火照っちゃう」



 体内から込み上げて来る何かを誤魔化す様に両の腕で己が体をひしと抱く。



「それでねぇ。彼が私を抱きしめてこう言ったの。『エルザード。俺の子を孕んでくれ』 キャッ!! 彼ったら大胆っ!!」



「う、嘘を言うな!! あ奴がそんな事言う訳なかろう!!」


「ほんとだも――ん。残念でしたぁ――。売れ残りの婆はみみっちく花壇の隅で花でも愛でていなさい」


「誰が売れ残りじゃ!! 張り倒すぞ!? こ、この腐れ淫魔がぁぁああ――――ッ!!!!」



「…………あ――あ。始まっちまった」



 右隣。


 ユウがとうとう始まってしまった狐と淫魔のじゃれ合いを見て溜息を漏らした。



「なぁ、マイ。止めて来いよ」


「嫌よ、面倒臭い。リューヴ。あんた行って来たら??」



 私の後ろでちょっとだけ興味津々といった感じでイスハの動きを目で追っている彼女に問うた。



「今の腹の状況では無理だな。もう少し時間が経てば追いつけそうだぞ」


「ふぅん、そう。ふわぁん……」



 地面へ乱雑に荷物を降ろし、それを背もたれ代わりにして足をだらしなく投げ出し。今日も好天に恵まれた空をおかずにして大欠伸を漏らした。



 はぁ――……。いい天気よねぇ。


 これで美味しい茶菓子と温かい御茶でもあれば最高なんだけど。



「おっ。気持ち良さそうだな。あたしも……。よっと……」



 我が親友も私と同じ格好をとり、束の間に訪れた冬の陽気を体一杯で感じ取る。



「あれが始まっちゃうと中々終わらないもんねぇ――。ほっ!!」



 ルーが宙へぽぉんと荷物を放り上げると。



「やっ!!」



 素早く宙へと舞い上がりクルンっと一回転して狼の姿に変身。



「どうだっ!!!!」



 荷物が地面にどさっと落ちるとその上にお座りの姿勢で着地した。


 まぁまぁの着地と身の熟しね、及第点をあげましょう。



「お――。器用に変身したなぁ」


「えへへ。ユウちゃんに褒められちゃった」


「ユウ、今の褒め言葉??」



 だらけた姿勢で休む親友に尋ねた。



「いんや。皮肉だよ」


「うっそ!! 褒めてくれないの!?」



 灰色の毛に覆われた両の耳がピンッ!! と垂直に立つ。



「あはは!! 冗談だって。そう尻尾垂れるなよ」


「垂れてないもん!!」


「はは、わっかり易い尻尾だこと。…………。カエデ――!! それ、終わったら教えて――!!」



 私達よりも訓練場の中央寄り。


 狐と淫魔のとばっちりを受けない様に分厚い結界を張り、二人のじゃれ合いをどう止めようか画策している彼女へ向かって叫んでやった。


 私の声が届くと。



『どうして私が』



 そんな冷たい目でこちらを睨む。



「睨んでも駄目よ――。先生の責任は生徒がとりなさ――い」



「うらぁああ――ッ!! 止めじゃああ――――!!」


「うっわ、おっそ。寝過ぎて体が阿保になってんじゃないの??」


「き、貴様にだけは言われたくないわ!!!!」



 さてと!!


 二人の大魔の乱痴気騒ぎは収まる気配は無いし。食後の余韻を楽しみつつ、二度寝しよっかな!!


 少しは軽くなったお腹ちゃんの機嫌を取りつつ、空を流れて行く雲をおかずにして体を完全に弛緩させた。



 ウトウトと気持ちの良い朝の微睡を感じて二度寝の体勢の整えると何やら海竜のドデカイ魔力の波動を受け取った。



 だが、私はそれでも動こうとしなかった。


 これから小一時間程海竜の説教が始まる事を体が自然と感じ取ったからであろう。


 春の陽気にも似た温かさを放つ太陽さんへ顔をきゅっと向けて、口をむにゃむにゃと動かして丸い空気を咀嚼。


 都会の生活で肺の中に溜まった土埃と山の澄んだ空気を交換しながら引き続き素敵な微睡を満喫する。



「これから出発するのにどうして御二人は余計な仕事を増やすのか、それを端的に説明して下さい」


「「え、えぇっと……」」


「ほら、早くして下さい。時間は無限ではなく、有限なのですからっ」



 そして、おっそろしい海竜の怒りのほとぼりが冷めるまで。私は流れる時間も忘れて惰眠を貪る事を固く決意したのだった。




お疲れ様でした。


本来であればもう一話と考えていましたが……。夏風邪はどうやら本当にしつこいようですね。治ったかと思いきや、薬を断って数日後に再発してしまい。体力的にもここまでが限界でした。


熱が出ていないのが幸いですよ。皆さんも体調管理には気を付けて下さいね。



ブックマークをして頂き有難う御座います!!


読者様達の期待に応えられる様にこれからも精進させて頂きますね!!



それでは皆様、お休みなさいませ。


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