第百七十七話 古代から現代まで続く執着 その一
お早うございます。
休日の朝にそっと投稿を添えさせて頂きますね。
山の空気は平地と比べ随分と冷たく、服の合間から微かに露出している肌を悪戯に刺激する。標高が高い事と恐らく土埃や塵が街のそれと比べ少ない事も少なからず影響しているのであろう。
清く澄んだ空気を胸一杯に吸うと肺がピリっと引き締まる感覚を覚えて思わず頷いてしまった
いいよなぁ、山の新鮮な空気って。
リューヴが助言してくれた通り療養には持って来いの空気だ。
澄んだ青空を横切って行く鳥。靡く風に揺られて夏のそれと比べて元気の無い草々の乾いた音に耳を澄ませて体を弛緩させていたが……。
「こっちじゃ――!! はよぉ来い――!!」
師匠の怒号が山の中腹にこだますれば自ずと身も引き締まろう。
少しだけ傷が目立つ平屋へと続く斜面の天辺で腰に手を当てて俺達の到着を今か今かと待ち構えていた。
「うっさいわねぇ。どうして年寄りってこうせっかちなんだろう……」
訓練場の中央から見慣れた平屋へと移動を始めた刹那。右隣りのエルザードが渋い声を淡々と上げる。
「あんたもイスハと同年代でしょ?? それはあんたにも当て嵌まるって事になっちゃうわよ??」
分隊の先頭を行くマイが振り返らずに話す。
「まさか。私はちゃあんと気を長くして待てるし、どんな物事にも思考を張り巡らせて考えるもん。ねっ??」
「ね?? じゃあ、ありません」
しゅるりと絡み付く腕から脱出を図るが。
しかし、この腕は特大の吸盤を備えた蛸の触手の様に吸着力が強く。思う様に脱出出来ないでいた。
我が師の手前。こうした情けない姿を晒すのは余り宜しくない。
「腕を放さぬかぁああ――ッ!! 脂肪の塊がぁぁああ!!!!」
ほらぁ、こうなる。
先程の怒号を超える雄叫びを放つと、山の新鮮な空気が巨大な噴火を予兆させる様に微かに震えた。
「師匠の御怒りで山が吹き飛びかねん。これ以上揉め事は了承し難いので放してくれると助かります」
「はぁ。仕方が無いわね――。後の楽しみにしようかなっ」
後って何?? もうこれ以上不必要な怪我は負いたくないのですけども……。
自分の身の丈よりも大きな杞憂を胸に抱きつつなだらかな傾斜の階段へと足を掛けた。
「おっ。良く見ればその服温かそうだな??」
「あ、これ?? 王都の服屋で偶々見付けちゃってさ、温かそうで。しかも!! 可愛い栗鼠ちゃんが刺繍されていたから買っちゃったんだ」
厚手の黒の布の中には恐らく羽毛だと思われる物がかなりの量詰められており、冷たい空気の侵入を防ぎ且体温を逃さぬ構造に感心してしまう。
「いや、栗鼠はどうでもいいけど。優秀な機能性に着眼点を置いたんだ」
何気無くエルザードの肩付近の布地に手を当てるが……。
うむ、材質も良さそうだ。
「栗鼠が大事なんじゃない。この刺繍が施されていなかったら買わなかったわよ??」
淫魔の女王様の目は節穴だな。
服を選ぶコツは機能性、この手に限る。
「――――。師匠、お久しぶりです。到着が遅れてしまい申し訳ありませんでした」
久々って言っても、十五日程度なんだけどね。
階段を登り切り、にぱっと笑みを浮かべ金色の髪を揺らす師匠へ頭を垂れた。
「なはは!! 構わん構わん!! ほれ、立ち話もなんじゃし。平屋に入って話をするぞ!!」
師匠がフルンっと三本の尻尾を振って此方へ背を見せると。その内の中央の一本の尻尾が左腕を掴み、師匠の小さな体の方へ俺の体を手繰り寄せてしまう。
「……っと。ちゃんと歩けますよ??」
「べ、別に良いじゃろ!! 儂なりにお主の怪我の容体を心配しておるのじゃよ!!」
そうなのか……。
「お心遣い、感謝します」
不出来な弟子で申し訳ありません。
仲間にも迷惑を掛けてしまい、剰え我が師にも迷惑を掛けてしまう。不甲斐ない己の実力に慙愧に耐えない思いを感じつつ、平屋の戸を潜る。
伊草の香りと仄かに漂う矮小な埃の香りが鼻腔を擽り、少しばかり痛んだ木の天井と壁がわびさびを醸し出す。畳の上の染みも情緒溢れる情景に良い刺激を与えていた。
落ち着く雰囲気だよなぁ。
豪華な家具や装飾品に囲まれていたら心休まる処か、肩が強張ってしまいそうだし。
俺みたいな庶民にはこうしたありふれた家の雰囲気が最適なのだと、心と体が数舜で理解してしまった。
「師匠」
「ん――。何じゃ??」
靴を脱ぎ、踏み心地の良い畳の上に足の裏を乗せて話す。
「本日はどういった御用件で俺達を召集したのですか??」
「話せば長くなる。ほれ、座れ」
「失礼します」
尻尾の拘束から解かれ畳の上に正座するが。
「これっ、座りにくい。足を崩せ」
師匠の爪先が綺麗に折り畳んでいるふとももをちょんと突いてしまった。
「え?? 自分はこれでも構いませんけど……」
「いいから足を崩すのじゃ!!」
「は、はい!!」
師匠の剣幕に押され足を崩して胡坐をかいて座り直す。
「うむっ!! よっこいしょ……っと!!」
師匠が背を向けたかと思うと、こちらの足の上に何の遠慮も無しにぽすんっと座る。
目の前には三本の尻尾が左右にピッコピッコと揺れ動き花の香りを周囲へとばら撒いていた。
「――――いやいや。自分は座布団ではありませんよ??」
器用に揺れ動く三本の尻尾の合間を縫い、頭頂部から土筆みたいにぴょこんと生える獣耳に向かって話す。
可愛い形のお耳に勢い余って触れたくなりますが、ここは己の欲を堪えてグっと我慢です。
了承を得ずに触れようものなら顎の骨が砕かれてしまいますからね。
「長話になるからのぉ。少しでも座り易い所に座る方がいいじゃろ??」
俺の質問に対する答えじゃありませんけど……。
ここで反抗するもんなら手痛い仕返しが待っているので黙って座布団になりましょうか。
「あ――!! イスハさんいいなぁ――!! レイドを座布団にしてる!!」
師匠の目の前に座ったルーが眉を顰めて若干の憤りが籠った声を放つ。
ふわふわの尻尾が邪魔で正面は見えないから、彼女達の姿はあくまでも想像の域を出ないんだけどさ。
「なはは!! いいじゃろう?? 中々の座り心地じゃて!!」
「おら、クソ狐。何勝手に私の男に乗ってんのよ」
俺が師匠の座布団になる上でこれがもっとも厄介な問題だ。
どちらが肉の座布団を使用するかで絶対揉めると思ってたもん。
――――。
いやいや、それ以前に人を座布団扱いしちゃ駄目だからね??
「弟子は師匠の言う事を聞くもんじゃ。のぉ??」
「あ、あの――。出来れば自分もマイ達と同じく師匠達に対峙する形で座りたいのですが……」
「う――ん?? もう一度、言うてみ??」
「っ!!」
俺の言葉を伺うと同時に尻尾が五本に増えてその内の二本が俺の首にやんわりと絡み付く。
そして二本の尻尾は俺にこう言っていた。
『命が惜しければ、従えよ??』 と。
「失礼しました!! このままで結構です!!」
「なはは!! 流石、儂の弟子じゃ。これが阿吽の呼吸という奴じゃて。どこぞのくっさい脂肪の塊とは違うからのぉ」
「はぁっ?? それ、私に言ってんの??」
やっべぇ!!
師匠の御言葉を受けてしまった淫魔の女王の魔力がぐんっと跳ね上がる。
体内の臓物を万力で握り潰されてしまう様なこの感覚。
魔力の扱いを学び始めて間もない俺でもエルザードの魔力がどれだけ常軌を逸しているか理解出来てしまう。
ここで喧嘩を始めないで下さいよ……。
「さぁのぉ――。さて、全員揃った所で。お主達を呼び出した理由を伝える!!」
師匠が可愛くコホンと一つ咳払いをして口を開く。
「おい。まだ話は途中よ??」
「エ、エルザード!! 先ずは理由だけを聞かせてくれ!! 話は後で聞くから!!」
気を失う前にどうしても理由だけは聞いておきたかった。
どうして気を失うのが分かるって??
この二人が目の前で何の遠慮も無しに力を解放して暴れれば、意識を保つ事が出来るのは精々一分足らずだからね。
「ちっ……。さっさと話なさいよね。鈍亀」
「はぁっ!?!? 誰が亀じゃ!! 儂は狐じゃぞ!!」
「ば――かっ。そう言う意味じゃないのよ――」
「「「はぁ――――…………」」」
正面。
マイ達が座る方角から数名の溜息の音がこちらに届いた。
「誰じゃ!! 溜息を付いたのは!!」
「誰でもいいでしょ。それより、その理由とやらを聞かせてよ。こちとら、朝飯も食べていないのにいきなり呼び出されてんだから」
マイさん??
も――うちょっと口調に気を付けよ??
俺はさながら凶悪犯に捕まった貧弱で憐れで不運な人質。
可憐でありながら暴力的な犯人の感情を少しでも逆撫でしたら首に絡みつく尻尾がこちらの矮小な命を刈り取りに来てしまうのですよ。
「そうそう!! お腹空いちゃったよね――」
「あたしは……。まぁ、程々かな??」
「二度寝したい気分」
「レイド様――。苦しかったら言って下さいまし――。直ぐにでもお助けに参りますので――」
「早く用件とやらを聞かせて貰おうか」
マイの言葉を狼煙に九祖の末裔達が口を揃えてやんややんやと明るい声を放つと。
「貴様ら……。目上の者を敬う事を知らぬのか……」
大きな溜息と共に師匠が項垂れてしまった。
「あんたの姿を見て誰が尊敬すんのよ。軽蔑ならするんじゃないの――??」
「張り倒すぞ!!!! この根暗女!!」
「んぶっ!? し、師匠。し、尻尾……。力入っています……」
師匠が怒号を放つと同時にぎゅうっと二本の尻尾に力が籠る。
俺の首、もつかな……。
「お、おぉ。すまぬすまぬ。さて、貴様らを呼び出した理由じゃが……」
「や――ね――。す――ぐそうやって暴力に訴える女って。とち狂ってんじゃないのぉ?? レイドぉ。私が癒してあげるから、こっちにおいでっ」
どこからともなく現れた右腕が俺の左腕を掴む。
「儂の弟子に触れるなぁ!! くっさい匂いが移るじゃろうがぁ!!」
「臭い?? レイドは良い匂いって言ってくれたもんねぇ――」
言ってねぇ!!
「これ馬鹿弟子や」
「は、はひ……」
気道が圧迫され、満足に空気を振動させられない声量で我が師へ言葉を送る。
「今の言葉。どういう意味、じゃ??」
「御言葉でありますが。自分はエルザードに対して、その様な言葉は一度たりとも申した事はありません」
「ほれみろ!!!! 貴様の嘘じゃろうが!!」
で、ですから!! 尻尾!!
く、苦しくて死んじゃいますって!!
降参の合図として手の平でタンタン!!と尻尾を叩き続けているが……。お構いなしにぎゅうぎゅうと締め付けて来る。
「え――。でもさぁ……。言葉で言わなくても、態度で分かるって奴があるじゃん。それよ、ソレ。今日も朝からぴったりとくっついちゃったし??」
さてと……。二度寝しないように気をしっかりと保ちましょうかね。
これから襲い掛かるであろう常軌を逸した師匠の怒りに備え、丹田に力を籠めた。
「き、貴様ぁっ!! 儂という立派な師を持ちながら。よりにもよって、あの脂肪の塊とあんな事やこんな事をしたと申すのか!?!?」
「ぎぃぃぐぅえぇえ……。し、師匠の考え過ぎですぅ……」
二本を超える三本の尻尾が首を圧迫。
残る二本は俺の脇腹をへし折ろうと胴に絡みつき、力自慢の熊も驚く程の力で締め付けていた。
備えても結局は無駄だったな……。とてもじゃないけど、耐えられそうに無い。
「しかもぉ……。ふふ。やっぱこの先はいわなぁ――いっ」
「はぁ!? おい!!!! ま、まさか。この雌豚と……。ま、ま、交わったのか!?」
「じでまぜん!!」
あぁ……。駄目だ。景色が白み始めた……。
「駄目っ。朝の事を思い出すと、体が熱くなっちゃう……。レイドったら意外と大胆でねぇ?? 私の可愛いお尻ちゃんをかぷってしちゃったの。きゃっ!! 私ったら……。言っちゃった」
逝っちゃったの間違いじゃないのか??
それは勿論、間もなく途切れるであろう俺の意識の事ですけどね。
「こ、この虚者がぁぁああ――――ッ!! 猛省して、その煩悩を落として来いぃい!!」
「いぶぐぅえっ!!」
顔中にわぁっとモコモコの毛が覆い被さり花の香りが全身を包む。
意識を失う刹那。
師匠の匂いってやっぱ花みたいに良い香りがするんだなぁっと下らない事を考えていたのだった。
◇
春の訪れを予感させる素敵な花の香りから一転。庶民的な伊草の香りを鼻腔に感じてふと目を醒ます。
「あらっ、レイド様。御目覚めになられました??」
「――――おはよう。アオイ」
安堵の表情に包まれた端整な顔がじっと俺を見下ろす。
「俺。何分位気を失っていた??」
「そうですわねぇ。五分程でしょうか」
五分か、案外早く目覚めたんだな。本来ならこのままぐっすりと二度寝をしたい所だけど……。
頭の後ろの柔らかい感触をいつまでも満喫していたら師匠やエルザードが黙っていないだろうし。
「もう起き上がるのですか?? アオイの側でずぅっと休まれていても宜しいですのに」
「膝枕、ありがとうね。もうこれ以上の『二度寝』 は御免だからさ」
残念そうな表情と声色を放つアオイへそう話した。
「お――、おはよう。大変そうだったな??」
「レイド――。おはよっ」
随分と寛いだ姿勢のユウとルーがこちらの姿を見付けて話す。
「おはよう。あれ?? 師匠とエルザードは??」
「アイツらなら雌雄を決する為に外で戯れているわよ」
ユウの隣。
この世の全ての怠惰を詰め込んだ姿で畳の上に横たわるマイが訓練場の方へ親指をクイっと向けた。
「ふぅん。それならもう直ぐ戻って来るか」
「それならいいんだけど。ねぇ――。ユウ――」
「ん――??」
「実は私ぃ超お腹空いているんだけど、何か食べる物持っていなぁい??」
「ある訳ないだろ。荷物だけしか持って来ていないんだし」
「ちっ。リューヴ――」
「持っていない」
「何よ!! まだ何も言っていないじゃない!!」
いや、会話の流れで分かるでしょう??
リューヴもそれを見越してか。狼の姿で丸まったままでさも面倒臭そうに答えた。
「…………。ぜぇ、ぜぇっ!!」
「あんた……しっつこいのよ!! いい加減認めなさいよね!! 私より劣っているって事に!!」
「貴様に負ける訳がなかろうが!! 容姿も性格も全てにおいて儂が勝っておるのじゃ!!」
おやおや。珍しく滝の様に汗を掻いていますね??
どうやら短期決戦を望んだらしく??
一瞬で力を出し尽くしたのか、二人は肩で息をして額から零れ落ちる汗を拭いながら平屋へと戻って来た。
「師匠。お疲れ様です」
「お――。目が覚めたか。良く眠っておったのぉ」
御蔭様でぐっすりとはいきませんが。疲労が残る体に大変優しい睡眠を取らせて頂きました。
そう話したいのを堪えて、当たり障りの無い挨拶を交わす。
「どっかの誰かさんが気絶させちゃったもんね――。私なら、優しく寝かせてあげるわよ??」
いつの間にか黒の上着を脱いで目のやり場に困る薄着の胸元を摘まみ、世の男性垂涎物の肉質の良い胸元へ新鮮な空気をパタパタと送る彼女がそう話す。
双丘の麓に見える鮮やかな桜色がまぁ――目のやり場に困る事で。
「結構です。ってか、汗臭いぞ」
「そう??」
鼻を細い腕にあてがい匂いをスンスンと嗅ぐ。
「お主の体臭と一緒じゃのぉ――」
「はぁ?? 婆臭いあんたよりマシよ」
「誰が婆じゃ!!!!」
もう、嫌。
俺の力じゃ無理だから誰かこの二人を止めてくれ……。
「…………。先生、イスハさん。私達を召集した理由をお聞かせ願いますか??」
一撃必殺の間合い。
その間合いに身を置く両者へ冷たい海竜の言葉が突き刺さった。
「ふんっ。後で覚えておれよ??」
「それはこっちの台詞。早く説明しなさいよね、とろいんだから……」
「ぐ……ぬぬぬぬぅぅっ!!!!」
プルプルと肩を震わせて拳を握るが。
これ以上のじゃれ合いは体力の無駄。そう考え直してくれたのか、やっと話をしてくれる体勢を整える。
「ふぅ……。よしっ。では、話そうかのぉ」
師匠がちょこんと畳の上に座り一つ呼吸を置くと、俺達は彼女の前で横一列に並んで傾聴する準備を完了させた。
「お主達を召集したのは、この大陸の北北西に位置する場所へ調査に向かう為じゃよ」
「「「調査??」」」
俺を含む数名が声を揃える。
「具体的に、何を調査しに向かうのですか??」
読んでいた本を傍らに置き、カエデが興味津々といった感じで話す。
「んむぅ――……」
何だろう?? 言い難そうにしていますね。
本当に危険な場所へ向かうのか、それとも口で説明するのが難しい事態が待ち構えているのか。いずれにせよ、師匠が何かを言い淀んでいる姿が妙に心を騒めかせてしまう。
「あなた達。『滅魔』 って知ってる??」
師匠の代わり。
壁際で色っぽい座り方をしているエルザードが此方に向けて問う。
「滅魔?? う――ん。聞いた事が無いわね」
マイが腕を組んで首を捻ると。
「あたしも初耳かな」
「私もだよ!!」
ユウとルーも彼女に倣った。
「滅魔……ですか。初めて聞きますね」
あら、これは意外でしたね。
「カエデも知らないのか??」
「えぇ。勉強不足で申し訳ありませんねっ」
いやいや。
そういう意味で言ったんじゃないよ??
カエデが可愛らしくむっと眉を顰めてこちらをジロリと睨んだ。
「お主達。九祖は既に知っておるな??」
「はい。師匠達の御先祖様ですよね??」
「そうじゃ。その内の一人、亜人が対魔物用に造り出した生命体。それが滅魔じゃ」
ふぅんと納得するが、一瞬でおかしな事に気付く。
「ちょ、ちょっと待って下さい。九祖って、確かこの星の生命を生み出した始祖ですよね?? そんな大昔に造られた生命体が今も生き残っているって言うんですか!?」
この星が生まれたのはたかが数百年前って事はあるまい。恐らく数万、数億年以上の年月が経過している筈なのに……。
現代に存在している事自体が不可能じゃないのか??
「そうよ。アイツらは肉体が滅ぶと魂だけが現世に生き残り。時間さえ置けば何度でも復活する鬱陶しい存在なのよ」
「先生。どうしてそれを知っているのですか??」
「一つ、人から伝え聞いたから。ふたぁ――つ、実際に何度も出現した情報を知っているからよ」
順に指を立てて話す。
「肉体が滅んでも数百年後、或いは数千年後には復活を遂げて儂達大魔を付け狙って来る鬱陶しい存在なのじゃ」
「では、今回の調査はその滅魔の調査。それで合っていますよね??」
師匠にそう問う。
「正解じゃよ」
肉体が滅んでも魂が現世に残る限り何度も復活、か。まるで不死身の存在じゃないか。
この世の理から外れた強力な相手が存在する地へと向かう……。師匠が言い淀んでいたのも大いに理解出来てしまった。
お疲れ様でした。
実は昨日、何年ぶりかの夏風邪を罹患してしまいまして。思いの外キツかったので屍の様に眠っていました。
カロリーメイトチョコ味、チーズ味を阿保みたいに食べて。栄養ドリンクをがぶ飲みして、市販の風邪薬をゴックンと飲み込んで寝る。
風邪を引いた時のルーティーンを取ったお陰か幾分楽になりましたね。
まだまだ喉と倦怠感があるのですが、誤魔化していこうかなぁと考えております。
さて、今日これからは家事と所用を終えた後に。番外編と本編の編集作業に取り掛かります。本当はもう少し休むべきなのですけども、体力がある今の内にやっておくべきこそが最良の選択なのでしょう。
それでは皆様、引き続き素敵な休日をお過ごし下さいませ。




