第百七十二話 まだまだ不眠不休は続く その二
お疲れ様です。
後半部分の投稿なります。
漆黒の空に浮かぶ半月の怪しい光。それを装飾する煌びやかに瞬く幾億の星。
仕事を抱える身でなければ過ぎ行く時間を忘れ、温かい紅茶を片手に持ちながらずぅっと眺めていたくなる夜空を恨めし気に見上げながら宿屋へと到着した。
はぁ――……。やっと、帰って来れた。
今朝、重たい足を引きずって部屋を出発して帰還したのはもうどっぷりと暮れた夜を迎えてから。
これだけの時間があれば報告書はほぼ完成していたと考えると、頭が痛くなる。
大体さぁ、予定が過密過ぎるんだよ。
もっと余裕を持たせて仕事をさせて欲しいのが本音です。
「ただいまぁ」
おっと、今のは俺の声かい??
発した自分自身でさえも心配になる弱々しい声を上げて部屋の扉を開けた。
「レイドっ!! おか――えりっ!!」
「お帰りなさい」
「レイド様ぁぁああっ!! 首を長くしてお待ちしておりました!! ささ!! アオイと共に、ベッドであまぁい時間を……」
ルーとカエデが明るい声と共に帰りを迎えてくれ、見当違いな迎え方をするアオイの反応もそこそこにすると。
俺の視線はある一人の女性に釘付けになってしまった。
「よっ、久々。元気してた??」
「ユ、ユウ!!!!」
俺のベッドの右隣り。
いつもの定位置で寛ぐ彼女の下へ向かって一目散に駆け寄った。
「はは!! 何だよ!! 元気そうじゃないか!!」
肩まで伸びた深緑の髪、快活な笑みを漏らす顔はどんな時でも力を与えてくれる。
血の気の失せたあの時とは違い。
今は血色も良く、俺がまじまじと顔を見つめると更に健康的な色が頬に広がっていった。
良かった……。本当に元気そうだ。
「お、おぉ。そりゃどうも……。ってか、近いって」
「あ、ごめん」
ユウの一言で我を取り戻し、己のベッドに腰かけ改めてユウと対峙した。
「どうだった?? 向こうでの療養生活は」
「療養って言葉は相応しくないって。寧ろ、鍛錬とかしごきとかの方がしっくりきたよ」
「うん?? 師匠と組手でもしてたのか??」
「それもあるけど。ほらアレだよ、アレ」
アレ……。
凡そ思いつくのは、飯の事だけど。
「――――山ほど食わされたのか??」
「んっ。もう量が半端ないんだよ……。あたしはどこぞの誰かさんと違って、そこまで大食いじゃないって言ってもお構いなしだもん」
そう話すと、ベッドに俯せに倒れ。
枕にちょこんと横顔を乗せて大きく息を吐く。
「はは。でも、見た目以上に体は傷付いているかも知れないし。強ち、沢山食べるのは間違っていないかもな」
「ちょっと。どこぞの誰かさんって、誰の事よ」
こちらの会話に聞き耳を立てていたのか。
赤き龍がふわりと宙に浮き、そしてユウの脇腹に小さな足を乗せた。
「お前さん以外にいるのか??」
ユウが面倒くさそうにマイの翼を摘まんで話す。
「この中じゃ、まぁ……。私くらいかも??」
「かも、じゃなくて。断定してやるよっと」
朱の翼を摘まんだまま、ルーの方へと小さき体をぽぉんっと放り投げる。
「ぬぅっ!? ふんっ!! 今日も着地は完璧ね!!」
「ちょっと――。マイちゃん、私の尻尾踏まないでよ」
「それは兎も角、元気そうで何よりだ」
「へへ。ありがとうね」
あの時は本当にどうなる事かと思ったよ。
鉱山内でのユウの痛々しい姿が頭の中を過って行くと、今でも背筋が凍ってしまう。
俺が無茶をして力を解放しなかったら……。この素敵な笑みが失われたのかも知れないんだよな??
『こ、この馬鹿弟子が!! あれ程力に飲まれるなと言ったじゃろうが!!!!』
龍の力を解放した事については、師匠にこっぴどく叱られ。
『後先考えずに力を開放する。今回は偶々上手くいったかも知れませんが、レイド自身の体が形状崩壊してしまう可能性もありました。私の了承無しにあの力を解放する事は今後一切許しませんからねっ』
怪我と行動については、カエデにぐうの音が出ない程説かれてしまった。
でも、ユウが無事でさえいてくれれば俺は喜んで何百時間でも叱られ、怒られ続けよう。
かけがいのないたった一つの命を守る為なら俺の疲労と怪我なんて安いものさ。
「それよりどうしたの。その目の下のクマ」
「仕事が山積しててね?? 昨日の夜からずっとあの紙と戦っていたんだよ」
机の隅。
今も多くの紙を乗せて満面の笑みを岡部て俺に手招きしている机を指して言ってやった。
「徹夜したの!? あれまぁ……」
「そして、恐らく今日も眠れない夜になりそうなんだ」
今から戦うであろう紙と時間。
そして長い夜の事を考えると一気に気持ちが削られてしまう。
「レイド様ぁ。無理は駄目ですわよ?? 私と一緒に休みましょうよぉ」
天井から一匹の蜘蛛が糸を伝い、俺の右肩に着地する。
「後半は認められないけど。前半の部分は感謝するよ」
「んふっ。アオイはいつでも待っていますからね?? 夜這いで孕ませてくれても宜しいですわよ??」
「その元気を分けて欲しいのが、本音かな。――――カエデ。ちょっといいか??」
くるりと背後へ振り返り、いつもと変わらず本を楽し気に読む彼女に話し掛けた。
「何??」
本から視線を外さずに答える。
「実は、イル教の皇聖シエルさんから俺宛てに手紙が届いたんだ」
「…………レイドに??」
イル教。そしてシエルさん。
二つの単語が彼女の機嫌を損ねてしまったのか、楽しい表情から一転。鷹も慄く鋭い瞳に変容してこちらを見つめた。
「俺を睨んでも駄目だぞ。何でも、一緒に食事でも如何ですかって。ほら、この手紙に書いてあるよ」
鞄の中から一通の手紙を取り出し、カエデに渡してやる。
「まぁ!! レイド様と甘い一時を過ごそうなど、断じて許しはしませんわよ!?」
「ずっるい!! 私も読みたい!!」
「主、いいや。私達と敵対するかも知れぬ相手だ。筆跡を見ておいても損は無い」
「お――。じゃああたしも見ようかな」
「おらぁ!! 私にも見せろ!!」
あれまぁ。
狭いベッドに狼が二頭、蜘蛛が一匹、人一人。おまけに龍が一頭。
それに囲まれたカエデは肩をぎゅうっと縮こまらせ、頭の上に一匹の蜘蛛を乗せ。
挙句の果てには彼女の左肩から金色の瞳を宿す狼のデカイ顔がにゅっと生えていた。
動物に囲まれ四苦八苦する飼い主って感じだな。
「へぇ。あの姉ちゃんこんな字を書くのねぇ」
「マイちゃんより達筆じゃないの??」
「あんた、私の筆跡見た事あるの」
「無いね!!」
「ほぅほぅ。明日の夕方六時頃に屋敷で御待ちしております、か。レイドも隅に置けないなぁ!!」
「ユウ、俺の状態を見ての発言か?? この状態で伺っても真面に会話出来るかさえ怪しいものさ。俺が聞きたいのは、どうしてこの手紙を送ってきたか。その理由だよ」
マイ達魔物の事なのか。
それとも今回受けようとしている任務について。又は先の任務についてなのか。
考えが悪い方向に向かってばかりで余り良い気持ちがしないのは確かだ。
「理由、か。主が達成した任務についての質問を兼ねているのでは無いか??」
「俺もリューヴの意見と一緒だよ。只、魔物の事についても詮索したいんじゃないのかな」
「そうですわねぇ。レイド様を厭らしい毒牙に掛けようとしているのは間違いないとは思いますが……」
いやいや。
論点ずれまくっていますよ?? アオイさん。
「毒牙?? ふんふんっ……。別に変な匂いはしないよ??」
「そういう意味じゃないって」
ユウが大きく溜息を漏らしながら話す。
「じゃあどういう意味なのっ!!」
「お子様には分からなくても構いませんのよ」
「子供じゃないもんっ!!!!」
「一番手っ取り早いのが、あんたがこの誘いに乗って屋敷に行く事じゃない?? これ、あんたの本部宛てに届いたんでしょ??」
「まぁね」
「だったら消されたとしても証拠は残っているんだし、少なくとも手を掛けようとは考えていないでしょ」
殺される前提で話すのは止めて貰えないだろうか。
カエデの右肩に留まり、腕を組んで話すマイをちょっとだけ睨んでやった。
「レイド様、私は反対ですわ。レイド様がもしも、他所の女に子種を渡そうと…………」
「カエデはどう思う?? 率直な意見を聞かせてくれ」
八つの足でカエデの頭をがっしりと捕まえているアオイを無視して問うてみた。
「率直な意見、ですか」
「うん。ずばっと言ってくれ」
「では、何の遠慮も無しに言わせて頂きます」
「「ふんふん!!」」
ルーとマイが同時に頷く。
「…………狭いので。退いて頂けますか!?」
ベッドの上に蔓延る大魔達を退かそうとして細い両の腕をしっちゃかめっちゃかに振り回す。
「おっとぉ!! へへ――。カエデちゃん?? 私に当てようとするのには、速さが足りないよ――」
「あぁ、もう少し鍛錬に励むべきだな」
狼二頭が颯爽と躱せば。
「うひょう!! 惜しいわね――。もう少しで、私の可愛い顎ちゃんに当てられそうだったわよ??」
当然、赤き龍も躱す。
「はは。カエデ――。あたしを退かしたければ、もっと力を出さないと」
「……」
ユウの飄々とした発言にむっとした表情を見せ、そのまま頼りない右手で彼女の肩をポカンと叩くが。
「お――。気持ち良い。もっと肩叩いてくれ。最近、肩が凝っちゃってさ――」
どこ吹く風と言った感じで、カエデの暴力?? を気持ち良さそうに享受した。
「あんたはデカすぎる西瓜の所為で肩が凝るんで……しょっ!!!!」
「いてっ。だから、いつも叩くなって言ってるだろ」
「――――へ?? あ、あぁ。うん。そう、ね……」
どうして、いつも君はユウの胸を叩くとびっくりした表情で己の手を見つめるんだい??
凡その理由は分かるけど、問いません。
「はぁ――。もういいです。暴れるのも疲れました」
意気揚々と戻って来た狼二頭の顔を見て、やる気を削がれたのか。
大きく溜息を吐いて、再び五人の大魔に大人しく?? 囲まれてしまった。
「私は行くべきかと考えます。相手の意図が見えて来ませんが恐らく、レイドが今回受ける任務について。又、今日の面談についての事を伺いたいのでしょう。それも含めて相手の意図を知る良い機会ですからね」
「面談について?? どうして俺が大佐と面談を受ける事を知っているんだ??」
「イル教はパルチザンへ資金提供を行っているのですよね?? それに、情報も筒抜け」
机の上に置いてある報告書へ視線を移して話す。
「それと、機会を伺ったかの様に手紙が送られて来ている事がその良い証拠です。シエル皇聖は何らかの理由でレイドと大佐さんが面談を行った事を知った。そして、そこでどんな内容を話ていたのかが気になっている御様子です。恩を売っておくのは悪く無い考えですよ??」
「恩って……。あぁ、そう言えば。今日面談を受けた、特殊作戦課ってさ。シエルさんが皇聖の座に就いてから設立されたらしんだ。時間に換算すると凡そ五年前かな。創設を提言したのがシエルさんで、最終的に判断を下したのはマークス総司令だよ」
危ない。
伝えるのを忘れる所であった。
疲れと寝不足から来る注意散漫だぞ。しっかりしろ、俺。
「ふぅむ。そうなると、その特殊作戦課という部署は他の部署とは大分毛色が違いますね」
「と、言うと??」
「イル教の息が掛かった部署という事ですよ、それも強烈に。ひょっとしたら、その部署はイル教の指示で動いているかも」
「まさか。あくまで、あいつらは資金面だけで協力しているだけであって。俺達を意のままに指示出来る立場じゃないだろ」
「表面上はそうでしょうね。民事が公的な組織に介入するのはとてもじゃありませんが市井の人々からは好感触は得られません」
血税で賄っている軍費がイル教の連中の指示に使われているとなると確実に反感を買うだろうなぁ。
それを逆手に取って、反抗出来ないものだろうか。
「だったらさ。公的な組織に介入している証拠を掴めば、反抗出来るんじゃないのか??」
今しがた思いついた案をさらりと口に出してみた。
しかし、賢い海竜さんは。
「……??」
この人は一体何を言い出すのだろう。
そんな風に首を傾げてしまっていた。
「レイド達パルチザンの活動資金はイル教から流れて来ているのですよ?? 今、それを断てばどうなるか。分からない訳でも無いですよね??」
「え、えぇ。だけどさ、このまま何もしないで良い様に扱われるより。反旗を翻すじゃないけど、公的に介入出来ない様には出来るのかなぁって」
「無理です。証拠を揃えたとしても確実に揉み消され、レイド自身に身の危険が迫ります。仲間から命を狙われたくないですよね」
「勿論。――――はぁ。結局、顎でこき使われるのが俺達の使命って事か」
ぽつりと重たい言葉を零し、そのままベッドの上に仰向けになってやった。
何だか、納得いかないな。
結論的に俺達の活動が世を平和に導く事は理解している。でもその方法というか、順序というか……。
恐らく。俺自身がアイツらに良い様に扱われているのが気に食わないのだろう。
結局の所、俺一人の力はあの団体の前では矮小過ぎてなぁんの問題にもならないって事でしょうね。
何だか一気に気が抜けちゃったよ。
「よぅ。大丈夫??」
ベッドで横になり、染みが目立つ天井を仰ぎ見ているとユウの顔が横からにゅっと生えて来た。
「大丈夫……と言いたいけど。これから襲い掛かるだろう疲労を考えると、気が滅入ってしまうのが本音です」
「はは。無理して倒れるなよ??」
「そりゃどうも。さて、と。そろそろ始めようとしますかね」
腹筋を総動員して上体を起こしてやる。
たかが一回の腹筋運動がこれ程堪えるとは……。
俺が思っている以上に、体は悲鳴を上げているのかも知れない。
「レイド、そう言えばさ。イスハがあたし達の事を呼び出しているんだ」
机に向かい席に着くとユウの声が飛んで来る。
「師匠が??」
「そ。二日後に迎えの者を寄越すって」
「了解。――――迎えの者って、エルザードかな」
『じゃじゃ――んっ!! 私、華麗に参上っ!!』
三度の飯より横着が大好きな淫魔の女王様。
一度街を歩けば男共の視線を独占し、女でさえ色を覚えてしまう程の美貌を持つ。
外見は男女問わず満場一致で美人と判断するのだろうけど。
その内面ときたら……。
絶対言いませんよ??
厄介な事になるだろうし、それに人の言う事を聞かない性格だもん。
「そうだろうね。まっ、選抜試験とやらが四日後だっけ?? 休みが取れる様なら、向こうで休んだら?? 怪我もまだ完全に癒えていないだろう」
「ん――。考慮しとくかな。まだ完全な予定は聞かされていないし」
「了解――」
「ありがとうな。伝えてくれて」
机からくるりと振り返り、ユウを見つめて言ってやった。
「どういたしまして。仕事で疲れたらあたしのベッドに来いよ。優しく癒してやるからさ」
さぁかかって来い!!
そんな感じで両手を大きく広げる。
「優しく?? 似合わない台詞だな」
「お?? 一丁いっとくか??」
「勘弁して下さい」
「「…………あはは!!」」
いつものやりとりが妙に心地良い。
それは、多分。ユウの存在が物凄く大きいからだろう。
いつもの『七人』 がやっと揃ったんだ。欠けていた物がぴったりと嵌り、俺達はこれで一つの塊なのだと改めて認識した。
いや。
俺自身がユウの事を大切に思っているから、心地良いのかな??
頭が回らないから良く分からん。
「ねぇ。レイド――」
「何??」
作業を始めたその時。
机の端から灰色の狼の頭が生えて来た。
「邪魔しないから、見ていてもいい??」
「見るだけならね。朝みたいにちょっかい出すなよ??」
「へへ!! やったね!!」
「――――レイド様はお疲れですのよ?? 口喧しい狼はあちらへ行きなさい」
おや??
いつの間に右肩に留まったのですかね。
黒の甲殻を身に纏うアオイが二本の前足を器用に動かし、あちらに行けと指示を送る。
「え――。アオイちゃんの方が五月蠅いじゃん」
「まぁ!! 何ですって!? あれだけ厳しいお仕置きをしたと言うのに。あなたはまだ御自分の立場というのを弁えていないのですか!?」
お仕置き??
何だろう。
「アオイ」
「はいっ!! 何ですか!? レイド様ぁ!!」
「ルーにお仕置きって、何かしたの?? 後。毛がくすぐったい」
左手でやんわりと腹の毛を擦り付けて来る蜘蛛の体を退けてやった。
「ふふ。知りたいですか?? 朝、レイド様が出発した後。ルーの体を糸で拘束したのですよ」
「穏やかじゃないな」
「ここからが面白いのですわ!! 恥辱を与える為、ありとあらゆる……。ちょっと!! どこを噛んでいますの!?」
一頭の狼が大きな口を開け、蜘蛛の胴体をすっぽりと口で覆い空高く掲げた。
「それ以上言っちゃヤダ!! 恥ずかしいもん!!」
「それが恥辱というものですわ。それはもう……フフ。臀部を惜しげもなく曝け出し、秘所という秘所を……」
「わぁぁああぁぁ!!!!」
女性の恥辱に塗れた叫び声が鳴り響き、何事かと振り返れば。
ルーがアオイの体を力の限りに吹き飛ばし、彼女の体は燕が描く軌跡にも似た軌道でユウの方へと飛んで行ってしまった。
「こら。暴れないの」
軽い拳骨を作り、ルーの頭の天辺へ落としてやる。
「いたっ。アオイちゃんが悪いんだよ?? 恥ずかしい恰好の事言おうとしたんだし」
「まぁ、それもそうか」
「――――そして。凌辱に耐えかねた体は震え、解放を望んだ瞳からは一筋が零れ落ちて懇願するのです。私は卑しい雌豚です。アオイ様の僕になりますから。どうか、どうか!! 解放して下さい!! と」
「そんな事言って無いもん!! もう怒った!! いくらアオイちゃんだからって言っていい事と悪い事があるもん!!」
さぁ、始まるぞ。
「いってぇ!! ルー!! あたしの胸、踏んだぞ!!」
狼が蜘蛛を追いかけ疾走すると、ユウの憤怒の声が上がる。
「て、てめぇ!! 誰のベッドにきったねぇ足乗せてんだ!!」
蜘蛛が八つの足を龍の領域に乗せれば、怒号が発せられ。
「貴様ら!! 静かにしろ!! 主が困っているだろう!!」
そして、当然とばかりに翡翠の瞳を宿した狼が咆哮する。
これまで何百と繰り広げられた喧噪と乱痴気騒ぎに、もう既に襲い掛かっている頭痛に拍車が掛かってしまった。
お願いします。
どうか、頼むから静かにしてくれ。
決して叶わぬ願いを心の中で浮かべ、人知れず静寂を司る神に祈りを捧げた。
だが、神は俺の願いを叶える事は無く。
これはまるで俺に与えられた試練だと言わんばかりに、時間が経つにつれて騒音の音量が跳ね上がっていく。
時折誰かが俺の頭を踏み台にしてどこかへ飛び去って行く時。自暴自棄に陥りひっそりと呟いた。
もう好きにして下さい……と。
静寂を司る神はこの願いだけを無慈悲に成就させてしまった。そして俺の疲労を他所に、夜更かしが得意な月が呆れた顔を浮かべる時刻まで騒音は鳴りやむ事は無かったのだった。
お疲れ様でした。
現在、台風が接近しております。日本海側を北上する軌道ですが油断はいけません。細心の注意を払って安全に過ごして下さいね。
本日の夕食は執筆を続けながらカップ焼きそばを頂いておりました。
たまぁに食べるのですが、これが結構美味しいんですよね。その中でも!! 私が一番好きな味は一平ちゃんです。
いやいや、UFOだろ。は?? ペヤングだし。等々。皆様の好みはありますでしょうが、私的はこれが一番舌に合うのです。
付属されている辛子だけでは足りないので、冷蔵庫から追い辛子を取り出してマヨネーズと合わせる。そうすればあら不思議、妙に咽てしまう焼きそばが完成するではありませんか。
食後の冷たい御茶をグビっと飲み、後はひたすら光る画面に向かって文字を打つ。そんな夜のひと時を過ごしてしました。
それでは皆様、お休みなさいませ。




