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第百五十六話 事後報告は慎重に

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 獰猛な肉食獣の爪を突き立てられた様な痛みを継続的に放つ利き腕を正常な体の部位で庇い、その影響を受けた拙い足元で硬い大地を確かめる様に一歩ずつ捉え正確に歩みを進めて行く。


 自重及び運搬中の荷物の重量が右足にずんっと圧し掛かり倒れまいとして大腿直筋で支え。左足を前に出して同手順を踏む。



 たかが歩くだけの行為がこんなにも辛い作業であるとは思わなかったな……。


 人生初の解放複雑骨折の影響を多大に受けつつ額から零れる汗を手の甲で大きく拭った。



 下山中。


 慣れない所作の所為か何度も躓きそうになり利き腕を前に出して体を支えようとしてしまった。


 上半身のブレ、かなぁ。


 利き腕を使用出来ないだけであぁも動き難くなるとはね。まっ、これも人生経験の一つとして捉えましょう。


 普段使っていない筋力で凝った体を解き解し。


 小一時間程前に下山した山へ向かって振り返った。



「ん?? レイド、どしたの??」



 ルーがこちらへ振り返り何とも無しに話す。



「色々あったなぁって考えていたんだ」



 天高く聳えるクレイ山脈から正面遠くに見えて来た街の影に視線を移して答える。



「そうねぇ。二人の負傷を除けば御の字って結果だったからね」


「起きていたのか??」



 いつもの左の胸ポケットからマイの声が届く。


 坑道内の荷物を纏めて入り口付近まで持って来てくれたのは正直ありがたい。


 だが、君は俺と違って五体満足の体なのだ。


 荷物の一つや二つ持ち運んでくれても罰は当たらないと思いますよ??



「寝過ごしてそのまま街を通過したら鍛冶姉ちゃん達に怪しまれるでしょ?? 街に到着するまで起きていなきゃいけないじゃない」



 お前さんはそんな事も分からない程に馬鹿なのか?? と。


 ポケットの中から小さな赤い頭がにゅっと現れて、いつも通り片眉らしき箇所をクイっと上げて俺を見上げる。



「それなら人の姿のままで下山しろよ。少量とは言え怪我をしたままお前さんを運ぶ俺の立場も考えろ」



 俺は怪我人だし、お前さんは健康的な体の人もびっくり仰天する程の健康体。


 十中八九、いいや。百中九十九の人は本来であれば君は助ける側に回るべきと口を揃えて話すであろう。


 鞄やら弓やら、軽い物でもいいから持ってくれてもいいじゃないか。



「嫌よ!! 素敵な朝食の余韻を楽しまなきゃいけなかったし!!」



 はいはいっと。


 もう抗う事は止めます。唯我独尊、猪突猛進、自分勝手な君には道理を説いてもどうせ徒労に終わってしまいますから。



「まぁ、礼は言うわ。御苦労だったわね?? ほいっと!!」


「へいへい」



 ポケットから抜け出し、人の姿に戻ったマイが礼を述べているとは到底思えない姿勢で謝意を表した。



「カエデ。そう言えばさ、クレヴィスが居たって言ってたけど。あいつ、どういった目的でここの鉱山を利用してたの?? 想像通りならオークの使役の為だと思うけど」



 分隊の少し前。


 物理法則の枠外に存在する寝癖を完治させ、普段の煌びやかな藍色の髪を揺らす彼女の背中へと問うた。



「レイドの想像通りですね。水晶を採取していたのは部隊統率の為でした」


「ふぅん。まぁ、アイツの事だ。ぽろっと真意を漏らしたんでしょ??」


「良く分かったわね」



 マイがきゅっと目を見開く。



「残念な性格だからな」



 いや。残念な頭、というべきか。


 ちょっとした意思疎通を図るのにも多大なる労力を犠牲にしそうですもねぇ。



「ね――。そのクレヴィスって人。強いんでしょ??」


「いいえ?? 多少頑丈な結界を張る事以外は酷く残念な人です。現時点で彼女単騎の戦力では我々の脅威にはなり得ないでしょう」



 カエデさん??


 もう少し包んでお話しすべきですよ??



「そっかぁ、ちょっと見てみたかったけど。また今度でいいかな」


「今度??」



 人間の二本足で歩くルーに尋ねた。



「ほら。どうせこの大陸で色々と悪さしているんでしょ?? それなら会う機会もあるかなぁ――って」


「そういう機会はあって欲しくないものだ。アイツら、此処から水晶をどうやって運んでいたんだろう??」



 ふと疑問に思った事を口に出す。



「採取した水晶は正体不明の者が空間転移で運び出していたようです」


「正体不明?? 空間転移って高度な魔法だろ?? おいそれとは詠唱出来ないだろうし。向こうにも俺達以上の使い手がいると考えた方が賢明か」



 会いたいような、会いたくないような。


 師匠達を越える敵は存在して欲しく無いのが本音です。



「何処へ運んでいるのかは私も分かりませんね。クレヴィスと会敵する機会があれば、拘束して惨たらしい拷問を与えて口を割らせてみます??」



 可愛い顔してさり気なく怖い事言いますね。



「あれじゃない?? 多分、大陸南南西に構えている魔女の居城へ運んでいるのよ」


「マイ。どうしてそう考えるのです??」


「龍の勘よ」



 女の勘、じゃないんだ。


 そして勘で大切な話をされても困ります。



「でも、それは一理あるかもな。オークの総数は不明だけど、それなりの数を使役しようとするのなら。それなりの場所も、人手も必要になるし」


「――――。オークが人を攫ったという事例はありますか??」



 やっぱりそれを考えるよね。



「無いね。オークに見つかり次第、人は例外無く命を断たれているよ」



 糞忌々しい奴らめ。


 俺達人間を好き勝手に殺戮しやがって。この報いは必ず受けさせてやる。


 一匹残らずこの世から消し去り、地獄の業火の海へ叩き落としてやるぞ。



「攫われた人間が奴隷の様に働かされている線は無い。と、なると……。誰が嵌め込んでいるのでしょうか??」



「ん――。憶測の範囲を出ないけど、魔法で一気苛烈に突き刺しているんじゃない?? わざわざ手作業でやるよりもそちらの方が効率的だし」



 唇に指を当て考え込む仕草を取る彼女の隣に並び、自分なりの考えを提案してみた。



「そう、ですね。その線が濃いと思います」


「水晶の在庫が無くなったらまた戻ってくるんじゃない??」



 そう、マイが話す通りそれが心配の種だ。



「こっぴどく折檻したので、そうそう戻って来ないでしょう。それに彼女は去り際、もうここには用は無いと叫んでいましたので」


「折檻??」



 カエデの声に首を傾げる。



「あのデカイ尻をぴしゃりと叩いてやったのよ!! 聞かせてやりたかったなぁ。あの乾いた良い音!!」



 尻叩きって。


 子供にやるお仕置きじゃないんだから。



「あのまま放っておいたらリューヴが殺しちゃったかもしれなかったし。あの馬鹿には相応しい折檻よ」


「リューヴ。クレヴィスと対峙したの??」



 斜め後方。


 少々疲れた表情を浮かべている彼女へ尋ねた。



「あぁ。厄介な結界を切り裂き、これから我が黒爪で女の柔肉の感触を味わってやる。そんな時にマイとカエデが私を止めたのだ」



 残念そうに話すなぁ。


 美味しそうな獲物を目の前にして逃げられちゃったのね。



「あんたねぇ。話しが通じる相手を殺す事もないでしょ?? アイツは馬鹿だし、あわよくば向こうの情報を漏らしてくれるから生かしておいた方が得なのよ」


「お前の口からそんな言葉が出て来るとは思わなかったよ」



 計算するって感じじゃないし。


 どちからと言えば、暴力で相手を屈服させる方が様になっている。



「はぁ!? それ、どういう意味よ!?」


「いっでぇ!! 右腕、揺らすなって!!」



 背から通り抜けていった刺激が右腕に伝わり至る箇所に激痛が走る。


 くっつかなくなったらどうしてくれるんだ……。


 目に浮かぶ涙を拭かずに睨み返してやった。



「ふんっ!! 自業自得よ!!」


「ったく……。まぁ、アイツらが戻って来たら。また連絡してくれればいいさ。それに、軍も黙っちゃいないだろうし。その噂は直ぐに耳に入るから心配ないだろう」



 問題はその後、だな。


 パルチザンを大いに牛耳るイル教の連中が気掛かりなのですよねぇ。


 今回は俺達が単独で撃退する事に成功したけど、次はどうなるか分からない。


 軍が押し寄せ、鉱山を制圧。


 この街の人達も軍同様に牛耳られてしまうんじゃないのか??



「おぉ!! リレスタさんが待ってるよ!!」



 あら?? もう街に到着したのかしら??


 考え事をして俯きがちだった視線をふっと上げると。



「お――い!! お帰り――――!!!!」



 満面の笑みを浮かべている陽気な鍛冶師さんが俺達に向かって大袈裟に右手を振り、帰還を祝ってくれていた。


 良く晴れ渡った空の下で揺れ動くえんじ色の髪もどこか嬉し気だ。



「リレスタさんへ任務の詳細を報告して旅館で荷物を受け取り。ウマ子を引取ってからこの街を出よう。んで、こちらの姿が見えなくなる所まで移動してから空間転移。それでいいかな??」


『えぇ、構いませんよ』


 おっ。


 流石、カエデ。念話への切り替えが早いな。



「ちゃちゃっと報告しなさいよ?? ユウが心配なんだから」


「了解。ってか、早いとこ念話に切り替えてくれ」



 今この時でも誰が聞き耳を立てているかもしれませんからね。


 呑気に歩いているマイへ言ってやった。



「お帰り!! いやぁ――、レイド達の帰りを待っていたよ!!」


 街の北口で俺達を迎えてくれると快活な笑みを浮かべるが。


「お、おいおい……。酷い怪我じゃないか」



 俺の右手を捉えると刹那に表情が曇ってしまった。



「戦闘中に負傷してしまいまして。数日経てば治りますよ」



 ちょっとだけ距離感を間違えてしまった鍛冶師さんから距離を取って話す。



『治る訳ありません。本来ならユウと肩を並べて寝ていなきゃいけない程の重症なんですよ?? レイドの任務に支障が出ると考えたから連れて来たのですからねっ』


『……はい。申し訳ありません』



 主治医さんの耳に痛い言葉が突き刺さる。


 冷たいなぁ、もう少し優しく忠告してくれてもいいじゃないか。



「それで!? 鉱山はどうなった!?」


「えぇっと……。先ず、一歩下がりましょうか??」



 ニッコニコの笑みを浮かべたリレスタさんが正常な距離感を保とうと努力する俺の労をあっさりと粉砕。


 冬特有の乾燥して冷たい空気の中にほんのりと甘い香りを捉えられてしまう距離感から再び下がって口を開く。



「お、悪い悪い」



 へへっと笑うのは良いですけどね??


 そういう態度は私の臀部が危機に陥るから宜しく無いのですよ。


 さり気なく臀部を抑えて三百六十度。一切の死角を作らぬ様にマイ達から少し離れて様子を窺っていた。



「では、改めまして報告させて頂きます」


「うんうんっ!!」


「先ず、坑道入り口前で跋扈していた群体を殲滅。入り口の安全を確保した後に坑道へ突入。そして……」


「ほうほう!!」



 首、疲れません??


 俺の報告を受けて何度も素早く動く首を見て要らぬ心配がそっと湧いてしまう。



「――――。坑道内及び、坑道出入口付近のオークを殲滅する事に成功しました。しかし、一体の魔物の恐るべき力によって右側の坑道内の最奥の部屋が崩落。我々の力が及ばず、この街の財産である鉱山の一部を失ってしまい誠に申し訳ありませんでした」



 街の代表者である彼女に対して深々と頭を下げて此方の非を詫びた。


 あの崩落さえなければほぼ完璧な作戦だったんだけど……。起きてしまった事態は取り返しがつきませんからね。



「まぁ、崩落は仕方ないよ。元々崩れやすい場所もあったし。ある程度の覚悟はしていたさ。でも!! 流石は私が見込んだ男なだけあるね!!!!」


「ちょ、ちょっと!!」



 彼女のカッコいい右腕が首に絡みつき、あっと言う間の早業でリレスタさんの脇へと抱えられてしまう。


 何んと言うか。


 左頬に当たるホニホニとした柔らかい感触が大変宜しくありませんね。



「じ、自分だけでの力では到底達成出来ませんでしたので。彼女達の力があってこその成功ですよ」



 慣れない左手で拘束を解き、マイ達へ手を指して言う。



「分かってるよ。ありがとね?? 本当、助かったよ」



 柔和な声を上げてマイ達に深々と頭を下げる。


 俺にもそうやって礼儀正しいお辞儀をして欲しかったのは秘密にしておこう。



「ん?? あれ?? 緑の子と白い子がいないじゃん」



 あ、ユウ達の事か。



「緑の髪の子はその……。作戦行動中に負傷してしまいまして、作戦に同行させる訳にはいかないと判断して先に下山させました。白い髪の子が帯同して街のずうっと外で待機していますよ」



 これなら矛盾しないでしょ。



「――――。ふぅん…………、そっか」



 一瞬の間を置き、特に不思議がる様子も無く頷いてくれた。


 よし、上手く誤魔化せたぞ。



「ね。今日も泊まっていくんでしょ??」


「いいえ?? 仲間が外で待っていますので。それに、今直ぐにでも此処を発たないと任務期間中に戻れませんので」


「え――!! 一日くらい良いじゃん!! 御馳走もあるし、それに……。ふんふん……」



『ご、ご、御馳走ッ!?』



 覇王の娘さん?? そこだけに食いつくのはいけませんよ??


 峠を越えたとはいえ、まだまだユウの容体が心配だから早く立ち去るべきなのです。



「何です??」



 こちらの肩口に鼻を当ててスンスンと匂いを嗅ぐ。



「ちょっと汗臭いし。悪い事は言わないからさぁ。ね??」


「汗臭いのは仕方がありませんよ。何から何まで本当にお世話になりました」



 半ば強引に会話を区切ろうと画策して礼儀正しい角度で頭を下げてやった。



「まぁ――、しょうがないか。仕事だもんね??」


「そういう事です」



 互いに気持ちの良い笑みを浮かべ、ふっと肩の力を抜いていると。



「おぉ!! レイドじゃん!! 何々!? 今帰って来たの??」



 今度は若女将の登場ですか。


 黒い髪を嬉しそうに揺らし、軽快な足取りでこちらへと向かって来た。



「えぇ、先程到着しました」


「レイド達。ちゃんとアイツらを退治したんだってさ」



 リレスタさんがそう話すと。



「ありがとうね!! ねぇ――?? レイドぉ??」



 意味深な笑みを浮かべてルーティーさんが小声で此方を窺う。



「はい?? 何です??」


「実はさぁ。リレの奴、レイド達の事が心配だったらしくてね?? 夜通しここから山を見上げていたんだよ」


「えっ?? 夜通し、ですか??」



 雪は降っていなくても山から吹き降りて来る風は肌を刺す痛みを伴う。


 そんな中、此方の様子を心配して一晩中山を見上げてくれていたのか。


 鉱山の解放はこの街の死活問題。


 街を仕切る者として居ても立っても居られない状態だったのでしょう。


 心中お察しします。



「お、おい!! 見てたのか!?」



「もっちろ――ん。寒かったのと途中で飽きたものあるけど、物陰から途中までじぃっと見てたんだ。『あぁ!! 愛しのレイドが私の為に……。あそこで戦っているのね……』 『リレ。俺は、君の為に勝利を掴んだ。さぁ……共に。子を成そうじゃないか!!』 『は、はい!! 私、一人目は男の子がいいです……』 ってな感じで頬を染めてたよ」



「ば、馬鹿じゃないのか!! 私がそんな事を想う訳ないだろう!!」



 ――――。


 あっ、今のは俺の声真似か。


 似ていなさ過ぎでしょ。


 俺の声はもっと低くて歴戦の勇士も思わず頷く程に渋く、それはもう雄の香りがふんだんに含まれて猛々しい声色の……、筈。



「うっそ――。あの目は恋する乙女って感じだったじゃん」


「暗くてそこまで見えるか!!」


「同じ女だから分かるんですぅ――」



 若い女性二人があっちに行ったり、こっちに行ったり。


 忙しなく動く様を視線で追い続けていたら何だか目が疲れてしまった。



「と、兎に角。自分達はそろそろ出発しますので……」



 いつまでも終わらぬ乱痴気騒ぎを見ている訳にはいかぬ。


 そう考えてこの陽気な御遊戯会に終止符を打ってあげた。



「あ、もう行くの?? 部屋、用意してあるよ??」



 またその説明をしなきゃ駄目かしらね。



「レイド達は先を急いでいるんだよ。私も一泊していったらって言ったけど、さ」


「レイド、一発ぶちかませる好機よ。これを逃す手は無いわね」



 ぶちかます??


 何を?? そして誰に??



「ば、馬鹿!! お前って奴は昔っから本当に揶揄ってばかりだなっ!!」


「だって楽しいもんっ」


「はぁ……。もう疲れたから絡むのも面倒だ。レイド、旅館までついて行くよ」


「ベッドの上の絡みは歓迎なんでしょ??」


「喧しいっ!!」



 何だか……。目だけじゃなくて聞いている耳も疲れて来ちゃったな。



「お、オホン。さて、レイド。ちょっと耳を貸してくれるか??」


「はい??」



 野鼠達もあっと驚く速さの動きの乱痴気騒ぎを終えると。


 耳打ちする仕草を取るので、それに従う様に右耳をリレスタさんへ傾けてやった。




『あの子達…………。訳ありなのは分かってるよ。多分、さ。魔物って奴だよね??』


「ッ!?」



 う、嘘でしょ??


 バレる様な仕草や言葉は発していない筈……。



『…………フフ。その反応で確信したよ』



 はぁ――。


 もうちょっと己の感情と表情を殺す鍛錬に励まないといけませんね……。



『詳細は言えませんが、リレスタさんの御想像にお任せします』



 これが今言える精一杯の言い訳です。



『安心して。私だけの胸の奥にしまっておくからさ』


『了解しました』



 すっと顔を離すと、柔和な笑みで俺を見つめる。


 そりゃ不思議がるのも当然か。


 この街の住民総出で倒せなかった奴らをたった七人で、しかも数百体のオークを一体も残さず殲滅するんだもんな。



「色々あったけど、さ。本当にありがとうね?? この街の住民はレイド達がしてくれた事を決して忘れないよ」



「どういたしまして。本来はお互いの利益の為、という理由でお受けしましたけど。リレスタさん達の安心した顔を窺う事が出来て本望でした」



 今も浮かべる笑みへ向かって正直な想いを伝えた。


 アオイにも、そしてユウにもこの笑みを見せてあげたかったな。


 ここにいないのが残念だよ。



「お陰様でやっとこさ受け負った仕事を再開出来るってもんだ。レイモンドのパルチザンへ伝令鳥を送っておくよ。生産再開の目途が立ちましたので、武器防具の製造を再開させて頂きますってね」



「えぇ、宜しくお願いします。…………それと」



 今度は俺が耳打ちする仕草を取る。



「ん??」



『くれぐれも彼女達の事は手紙に書かないで下さいね?? 自分とこの街の住民達が一致団結して鉱山を制圧したと報告して下さい。念を押す様で申し訳ありませんが……』



 軍の後ろにはあのイル教が存在する。


 弱みを握られたくないし何より、マイ達に危害が及ぶのは了承出来ん。


 ここは釘を差しておかないとね。



「勿論、そこは理解してるよ」


「ありがとうございます。では、そろそろ行きますね??」


「うん!! さぁ一緒に行こうか!!」



 俺の肩を軽快にパチンと叩くと街の中央へと向かって行くと一切の陰りが見えない笑みを放つ。


 季節外れに咲く満開の向日葵の笑みが眩しい。


 リレスタさんってあんな無邪気な笑みを浮かべるんだな。きっとあの笑みは全て事が丸く収まって安堵した笑みなのだろう。


 そうだ……。俺は人の笑みで溢れる世界を求めてこの世界に飛び込んで来たんじゃないか。


 彼女が放った屈託の無い笑みが初心を思い出させてくれた。


 この大陸に住む人々が素敵な笑みを浮かべられる様にこれからも精進するとしますかね。



「本当に今日帰っちゃうのか?? 一日くらいゆっくりしてもいいじゃない」


「この街から王都までの長い道のり、そして上官へ提出する報告書の作成。やるべき事が山積みですので時間が惜しいのです」


「リレがしつこく誘うって事はぁ――。んふふ――、やっぱり美味しく頂こうとしているんでしょ!?」


「しないわ!!」



 はは。


 この二人はこれから年をとってもあぁやって揶揄い合い続けるのだろう。


 本当に絵になるからいつまでも見ていたくなりますよね。



 陽気な声と笑みを受け、何の気兼ねも無く街の通りを歩く。


 これでこの街にも活気が戻って来ると思うと、こう……。


 やり遂げたって気持ちになるよな。


 後はユウの容体の回復を待つのみ。師匠の所で時間一杯まで見舞ってやろう。



 太陽が完全に昇り、突き抜ける青の下。


 ふぅっと大きく息を漏らして上空から零れ落ちて来る冬らしからぬ強き光を見上げていた。



『おい!! いつまで腹が膨れた牛みたいにぼけぇ――っと突っ立ってんだ!! こちらとら早くユウに会いたいから時間が惜しいんだよ!!』



 眩しさに嬉しく顔を顰めていると、この美しい空に少々不釣り合いな罵声に近い怒号が頭に響くので。慌てて顔を正面に戻して駆け出した。



 ユウ、もう直ぐ五月蠅い連中を連れて戻るけど。心労祟って酷くなるなよ??


 正面で待つ色とりどりに咲き乱れる花達の下へ駆けながらそんな事を考えていたのだった。




お疲れ様でした。


さて、今回の御使いも予定では残り一話となりましたが……。この御話を読んで頂いている読者様達へ感謝の気持ちを籠めて追加エピソードを一話追加させて頂きます。


残す所後二話で次の御使いが始まりますので今暫くお待ち下さいませ。



話は変わりますが……。皆さんのスマホのストレージは如何程で御座いましょうか??


先日、友人と食事中にストレージの話となり。久しぶりに自分のスマホのストーレジを確認したのですが……。


256GB中、何んと20GBも使用しておりました。


その事を友人に伝えると。


『え?? マジ??』 そんな感じで呆気に取られた顔を浮かべていましたね。


もう少し使用しなければいけないと思いつつも、特に使用する機会が無い為全然増えていかないのですよ。


これからは写真やらアプリやら、スマホを最大限活かせるように頑張ろうとしております。



それでは皆様、お休みなさいませ。

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