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第百四十九話 最終地点へ到達

お疲れ様です。


本日の投稿になります。


それでは御覧下さい。




 食事を楽しむ軽快な咀嚼音と束の間の心湧く会話の音が途切れると、どこからともなく響く形容し難い環境音が食後の余韻に浸る俺達の合間を静かに通り抜けて行く。


 リレスタさん達が作ってくれたおにぎりの御蔭様で腹も満たされ失った体力も回復、蜘蛛の御姫様から少々横着な悪戯を受けた肩の傷の痛みも無い。


 そして皆の表情も若干の緊張感は混ざっているが概ね良好だ。



「……よし。そろそろ向かおうか」



 各々の体調が万全であると確認して立ち上がり、誰とも無しに声を上げた。



「向かわれますので??」



 アオイがふっと顔を上げる。



「向こうの班の動きも気になる。早急に敵を排除して合流を果たしたいからね」


 それと。


「カエデ達から状況を確認する念話が一度も届いていない。余程の事が無い限り大丈夫だとは思うけど……」



 恐ろしい力を持った強敵の出現、張り巡らされた敵の罠による負傷、狂暴な龍の不必要な行動によって分隊長殿の機嫌が損なわれる。


 三つ目は蛇足であるが万が一、億が一にカエデ達が苦戦している可能性も捨てきれない。


 互いの状況が不明瞭になるだけでかなりの心理的不安を与えるんだな。



「リューも、マイちゃんもいるし。大丈夫だって」


「そりゃそうだけど……。早く杞憂を払拭したいのが本音かな?? それに狭い天井より突き抜ける空の方が見たいだろ??」



 天井を指し、楽観的な考えのルーへと話す。



「だね――。ほっと!! ん――!! 御飯も美味しかったし。うん!! 元気出た!!」



 軽く弾む様に立ち上がると軽快に体を動かす。



「あいよ――。もうちょっと頑張れば最奥まで到着するし……っと!!」



 ユウもルーに倣って立ち上がると肩を一つ回す。


 皆の体調も万全で体力並びに士気の陰りもみられない。この調子で奥へと進みましょうかね。



「レ、レイド様」


「どした??」



 鞄を肩に掛け、今もお淑やかに座るアオイを見下ろした。



「足がぁ。痺れてしまって……。立てませんのぉ」



 何だ。そんな事か。



「ほい。手、貸すよ」


 何気無く彼女に対して右手を差し出す。


「んふっ。では、失礼しますわ」



 そして細く頼りない手を掴んで男らしい筋力で立たせてやった。



「あ――んっ。引っ張り過ぎですわぁ」


「っと……」



 少々強く引っ張り過ぎた所為か。


 男の性をグンっと擽る香りとイケナイ柔らかさを兼ね備えた柔肉の塊がすっぽりと腕の中に収まる。



「受け止めて頂き有難う御座います……。レイド様っ」



 しっとりと潤み艶やかな唇が眼下に映る。


 それとこの甘い香り。何で男と違って女性は良い香りがするんだろう??


 ふと疑問に考えてしまう。



「どう致しまして。さっ、出発しようか」



 彼女を受けて止めている両腕を刹那に解除。


 恥ずかしさを誤魔化す様に後頭部をぶっきらぼうに掻き、奥の通路へと向かって行った。



「アオイちゃん?? 足、普通に動いているよ??」


「おやぁ?? 不思議で御座いますわねぇ。もう痺れが取れてしまいましたわ。これもきっとレイド様の愛のお力なのですっ!!」


「ふぅ――ん。良く分からないけど治りが早いんだね――」



 今出発した部屋が分岐点から数えて四つ目。


 最奥まで残り三つか。先程の伏兵も考えられるし、集中して進もう。



「ねぇねぇ。レイドっ」


「ん?? どした??」



 いつもの軽い笑みを浮かべたルーが隣に並ぶ。



「面白いお話してよ」


「また急だな」


「只歩くのも暇だしさぁ――」


「あのね?? 今もこの先に敵が待ち構えているのかもしれないんですよ?? 集中しよ??」



 軽快な笑みを継続させる彼女へ説く様に話してやる。



「大丈夫だって。私がちょいちょい音で確認しているし。それにぃ……」



 灰色の髪をフルっと揺らして背後へ振り返り、アオイに向かって視線を移す。



「御安心下さい、レイド様。暫くの間、敵の存在は感知出来ませんので」


「……だってさ??」



 俺の顔を捉えると、眠る前のお伽噺を所望する頑是ない子供の様にニコッと笑みを浮かべた。



「私もレイド様のお話には興味ありますので」


「だな――。あたしも聞いてみたいし??」



 はいはい、皆様のお暇を潰させて頂きますよ――っと。


 話さなきゃいけない雰囲気が漂い始めたので正面奥の闇をじぃっと見つめ、頭の中の深い底にある記憶を手繰り寄せた。




「…………俺が子供の時の話なんだけどさ」



 闇をぼうっと見つめていると。


 もう思い出すのも困難になった、遠い遠い昔のとある不思議な体験が頭の中を過って行った。



「何々!? 聞かせて!!」



 お嬢さん?? 距離感間違っていますよ??



「今から話す思い出話は孤児院の皆で東の海へ遠足に行った時の不思議な話なんだ。当時の俺はまだ世の仕組みも、簡単な乗算も理解出来ていない子供でさ。時間を見つけては色んな遊びを試し、泥を被っては怪我をしてオルテ先生を困らせていたんだ」



 ググっと迫って来たルーの肩をそっと押し退けて記憶の海から目的の情景を拾い上げていく。



「へぇ。レイドもそんな時期があったのか」



 意外。


 そんな声色をユウが放つ。



「誰だってそんな時分があるだろ??」


「そうだねぇ。私も毎日里の周囲の森で遊んでたなぁ」


「あなたは今も変わりませんわよ??」


「アオイちゃん!! 酷いよ!?」




「……まぁ、そんな折。海へ遠足に出掛けるって話が出てさ。それはもう滅茶苦茶に盛り上がったよ。生まれて此の方、あの大海を視界に入れた事は無かったし。海の水はしょっぱい事も本でしか知り得なかった。等間隔に鳴り響くさざ波の音、永遠に浜へと押し寄せる白波、熱砂で焼ける足の裏の痛覚。どれも未体験でその日が来る事を指折り数えて眠りに就いたんだ」



 そうそう。


 確か、眠れなくて深夜の廊下をうろうろしていたらオルテ先生に叱られたっけ。


『こら!! あんた今何時だとおもってんだい!?』


 顔はあんまり怒っていなかったから恐らく。ヤレヤレ、このワンパク坊主めと考えていたのでしょう。




「いざ出発の日。人数は…………、確か先生達を含めて十名だったな。荷馬車に荷物を載せ、まだ子供の足では遠い距離を歩き、代わる代わる荷馬車に乗って足を休めながら進んだんだ。足に肉刺が出来て顔を顰める頃、やっとあの素晴らしく青い光景が目に飛び込んで来たんよ」



 あの光景だけは忘れはしない。


 何処までも続く大海原、その上に広がる巨大な青い空、そして鼻腔を擽る塩気のある匂い。


 どんな素晴らしい風景画を見つめてもあの日の光景の感動を越える事は出来ぬだろう。




「塩の香りに鼻をひくつかせ、足の裏を攫う波の感触に歓喜の声を上げ、海水を口に含んで盛大に吹き出す。それはもう……、はは。うん、楽しかった」


「初めての海だもんねぇ。そりゃ気分は盛り上がるよ」



 五つ目の部屋に侵入し、敵がいない事を受けて警戒を解除したルーが話す。



「海釣りに、海水浴。凡そ思いつく事は全てやり尽くして泥の様に眠ったんだ」


「遊び疲れて眠っちまったのか」



「そう、ユウが話した通りだ。そして天幕の中でぐっすり休んでいるとさ。ふと、真夜中に目が醒めちゃったんだよ」


「どうしてです??」


 アオイがこちらに問う。




「それが今でも分からないんだ。ふと目が醒めた俺は天幕の外に出て、満天の星空の下に身を置いていた。手を伸ばせば届きそうな星々。星が今にでも降って来そうな夜だったな……。天幕は陽射しから避ける為、海辺の側の森の淵に設置していたんだけどね?? 天幕へと帰る為。夜空から森の中に視線を送ると……。猛烈に探検心が湧いて来ちゃったんだ」



「危ないよ――?? 子供なのに」



「はは、そうだな。当時の俺は抑えきれない冒険心に駆られ。暗闇に映る木々、どこからともなく響く夜鳥の歌声に誘われる様に森の奥へと入って行ってしまったんだ。勿論、何の装備も持たずにね」


「おいおい。正気じゃないな??」


「だろ?? 大馬鹿野郎だったのさ」



 背後へと振り返りながら言ってやる。




「無策で奥へ、奥へと進み。気が付けば周囲は人の気配すら感じられぬ、野生が蔓延る森だった。行く手を阻む生い茂った草々、背の低い木の枝が皮膚を裂き、漆黒の闇が方向感覚を狂わせる。大自然の前じゃ人間の力なんてちっぽけなもんさ。幼い俺は案の定、ふかぁい森の中で遭難しちゃった訳」



 よし、この部屋の安全は確保されたな。


 五つ目の部屋を出る際、隅々にまで視線を送り両の目でキチンと確認を済ませてから奥へ続く通路へと足を進めた。



「えぇ!? どうやって帰って来たの!?」



 まぁ、そこは気になるよね。



「夜通し歩くのは危険と判断してさ。夜が明けるまで、木の根元で仮眠を取ったんだ。んで、視界が十分に確保できる日中になってから行動を再開させたんだけど……」



「「だけど??」」



 ユウとルーが前のめりになって声を合わせた。


 相変わらず仲が良いね??



「どこへ向かっても数時間後には同じ場所に戻って来ちゃうんだ。試しに、東西南北。至る方向に向かって進んでみても結果は変わらなかった」


「人は目標となる物を定めずに進むと、円を描く様に進むらしいですわよ??」



「アオイが話す通りかもね。ぐるぐる同じ所を永遠と進み。途轍もない空腹と、足が岩の様に重く感じて、喉の奥に砂を捻じ込まれた様な乾きが襲い始めてさ。遭難三日目の朝に動けなくなっちゃったんだ」


「子供の体力と、体を考えると……。妥当だよな」



 ユウが一つ大きく頷いて話す。




「空の上から鳥の歌声が虚しく響き、土の上を這う蟻をぼぅっとした視界で無気力なまま眺めていた。夕暮れが近付き、茜色の木漏れ日が差した時。あぁ、俺はここで誰にも見付けられる事は無く。一人で死ぬんだ。子供ながらにそう理解しちゃうと、瞳から温い水がぽとりと一滴流れ落ちたよ」



「レイドぉ。言ってくれれば助けに行ったのに……」


「いやいや。昔の話だし、そこまで感情移入しなくても……」



 ちょっとだけ大きな涙を瞳に浮かべるルーにそう言ってやった。




「涙で歪んだ景色に見慣れた頃。草の合間を何かが通る、乾いた音が響いたんだ。誰かが助けに来てくれたのかな?? そんな都合の良い事を考え、音のした方角に視線を送ったんだけど……。待てど暮らせど人の姿は現れなかった。何だ、空耳か。死の間際に聞こえる幻聴なんだなぁって首を傾げていたらさ。ひょっこりと草の合間から白い何かが飛び出て来たんだ」



「「「白い何か??」」」



 今度は俺を除く全員が声を合わせた。




「そう。白い何か。今でもそれは何か分からないよ?? 形容し難い形でさ。その白の先端は三角形の頂点の様にちょっと尖っていたんだ」



「ふむ……。動物の尻尾かも知れませんわね」


「かもな。六つ目の部屋に入るけど、索敵は大丈夫??」


「少々お待ち下さい」



 アオイが淡い光を放つ魔法陣を手に浮かべて前に翳す。



「――――。御安心下さい。このまま最奥まで敵の姿は確認出来ませんわ」


「ん、ありがとう。警戒を続けながら進もう」


「レイド――。話、途中だよ――??」



 クイクイ、と。


 ルーが右の袖を引っ張りながら話す。



「……。最後まで話さなきゃ駄目??」



 間も無く最終地点に到達する予定ですので集中力を高めたいのですけども……。



「駄目!!!! 気になって夜眠れなくなりそうだもん!!」



 はいはい。


 了解しましたよっと。




「じぃっと無気力な瞳でその白を見つめていたんだ。でも、一向にその先が姿を現さなくてね?? 気になった俺は体に残る力を振り絞って立ち上がり、その白の下へと歩き始めたんだ。もう少しで白を掴める位置に足を置くと、するりと草の合間に白が引っ込んじまったんだよ」



「逃げちゃったんだね!!」



 ルーが楽しそうにピョンっと一つ跳ねて話す。



「何とか正体を掴んでやろうと白の後を追い、草と木々の合間を頼りない足取りで進み出した。疲労と空腹で歩みは蝸牛も心配になる程遅かったけど、不思議とその白は俺の歩みに合わせてくれてね?? 木の根っこで転んだ時もぴたりと止まって、待ってくれたんだ」


「それって……。幻覚じゃないのか?? ほら、意識が朦朧とした時に見えるって奴」



 ユウが眉を顰めて話す。



「俺も今ではそう考えるけど、当時の光景は……。妙に現実味があったんだよ。いつしかその白が一縷の望みと勝手に解釈して。物凄く頼り甲斐のある大人の後ろ姿にも見えて来たんだ。数えるのも面倒なだけ転び、幾度と無く両膝を地面に着け、この森の一部になってしまおうと大地に身を預けても白は俺の前から消えなかった。寧ろ……。物言わずとも励ましてくれている様にも見えた、かな??」



「それだけ意識が朦朧としていたのですわね……。レイド様。私が支えるからにはもう二度とその様な苦しい思いはさせませんからね」



「ありがとう。……それで」


「あぁ――んっ。辛辣ですぅ――」



 左腕に絡みつく女体をやんわりと押し退け、再び口を開いた。




「歩いているのか、這っているのか。それすらも理解出来ないくらいに意識が混濁した中。霞む視界の中に緑が消え失せ、土の匂いを感じなくなって……。それでも消失しない白を目印に追い続けた。目標である白が霞み意識が途切れそうになると、慣れ親しんだ声がふと耳に届いたんだ。これも幻聴なんだろう。どうせ、幻聴なら。最後の足掻きでそこに向かって行ってやる。砂粒程度に残った体力を使って、茂みを越えると。オルテ先生が顔をクシャクシャにして、俺を抱きしめてくれた。あぁ……。これが幻覚でありませんように。俺はそう願い、オルテ先生の腕の中で意識を失ったんだよ」



「へぇ!! 森を抜け出せたんだね!!」




「お陰様でね。それでさ、意識を取り戻したらオルテ先生の拳骨が飛んで来たんだ。 『馬鹿!! 勝手に行動して!! もしもの事があったらどうするんだ!!』 ってな感じでね。頭に感じた痛みが、これは現実であると理解したら止めどなく涙が溢れて来た。あぁ、生きて帰って来れたんだなぁって。それから腹の虫が盛大に鳴り響き、先生と一緒に笑ったんだよ。あの時食べたパン。滅茶苦茶美味かったなぁ……」



 今でも覚えているぞ。あのクルミパンの味。


 この世のどんなパンよりも美味く感じたもの。



「何個目か分からないパンを食べている最中。オルテ先生がこう言ったんだ。 『レイド。あんたが帰って来れたのはね?? 森の精霊さんが帰してくれたんだよ』 『そんな馬鹿な』 そう言ったらまた拳骨が飛んで来て舌を噛んじまった。続け様に、さ。 『森の精霊さんは良い子にしか見えない。レイド、あんたは良い子なんだよ?? 馬鹿な事をしてもいい。間違えても私がその間違いを教えてあげる。だけど、命を粗末にする事だけはするな。レイドの本当の親にはなってあげられないけど、家族にはなってあげられる。誰だって家族が欠けたら嫌でしょ?? 私の方がレイドより先に逝くんだから。それまでは私の家族でいなさい』 子供の時に聞いた言葉だけど、今でもはっきり覚えているよ。いやぁ。あの言葉は、本当に嬉しかった」



 血の繋がった家族のいない俺にとってあの時初めて、温かい家族が出来たと思えた瞬間だったんだよね。



「へぇ、あの先生。物凄く器が大きいんだなぁ」



 ユウがポツリと言葉を漏らす。



「あ、そっかぁ!! ユウちゃん達はレイドの故郷に寄った事があるから、知ってるんだ!! いいなぁ!!」


「そうで御座いますわよ。レイド様を御立派に育ててくれた御恩をいつか返さなければいけませんわねぇ」


「いやいや。アオイは返さなくてもいいから」



 人間と魔物が言葉を交わせるようになると、オルテ先生に余計な事を吹き込むかも知れないし。



「どうしてです??」



 きょとんとした表情を浮かべて首を傾げる。



「どうしてって……。アオイは仲間であり友人だからね。そこまで頼る訳にはいかないよ」


「まぁ!!!! アオイの事を俺の女と仰っていたではありませんか!!」



 まだ本気にしてたんだ。



「だから、それは咄嗟に思いついた嘘って説明しただろ??」


「いいえ!! アオイは聞いていませんっ!!」



 頬を膨らまし、両耳を塞いでそっぽを向いてしまった。


 どうしたもんやら……。


 可愛らしくぷんすかと怒る彼女を他所に正面奥の闇に視線を送り続けていると……。




「「「…………」」」



 憎悪に塗れた無数の赤い点が暗闇の中にぼぅっと浮かび上がった。



「…………さぁて。そろそろ終着点だし?? 一丁気合いれますか??」


「いいねぇ。ユウちゃんの乗りに合わせるよ??」



 奴等の力を感知した雷狼とミノタウロスが肩を並べて闘気を体中から滲ませる。


 喧嘩っ早いお嬢さんの事だ。この後直ぐ想像出来る行動と言えば……。



「母なる大地よ!! 我に、力を!! 来い!! タイ……」



 そう来ますよね!!



「待てい!!!!」


「っとぉ!! んだよ!! レイド!!」



 魔力を爆ぜさせる刹那に待ったの声を掛けてやった。



「はぁ――い。深呼吸してぇ?? ここ周辺は大変崩れ易くなっておりますので、そういった暴力の塊は使用を控えて頂けると幸いで御座います」



 猛る野獣へ、冷静さを取り戻させようと柔らかい口調で語り掛けた。



「レイド!! ノリが悪い!!」


「喧しい。生き埋めは御免って事だよ。第一、ユウ達なら素の状態でも倒せるだろ。我慢なさい」


「玩具を強請る子供じゃないもん!!」


「そうだそうだ!! 好きな様に殴らせろ!!!!」


「レイド様は私達の身を案じて仰っているのですよ?? それも分からないとは。もう少し成長したら如何……。ですか!!!!」



 アオイがユウとルーの合間に向かってクナイを突如として投擲。


 鋭い切っ先が空気を切り裂き、甲高い音を奏でて闇の中へと飛翔していく。



「…………。クァッ!?」



 こちらがあれこれと作戦を考えている合間に接近を許してしまったようだ。


 ルーとユウの後方に殺気を殺して詰め寄っていたオークの額のど真ん中にアオイのクナイが命中した。



「へ?? あ――。ありがとうねぇ!! アオイちゃん!!」


「どういたしまして。レイド様、ここが正念場ですわ。目と鼻の先に多数の魔力の存在が感知出来ます。恐らく、そこが終着点かと思われますわ」



「了解。ユウ!! ルー!! 聞いたか!? ここから一気に攻め込み、敵を殲滅させるぞ!!」



 既に戦闘態勢を整え終えた二人の頼もしい背に言ってやった。


 さぁ……。最後の仕上げだ!!


 ここを制圧して向こうの班と合流するぞ!!


 鞄を捨て置き、背の抗魔の弓を外して今も嘯く声を放つ醜い豚共へと向かって戦闘態勢を整えた。



お疲れ様でした。


いつかは彼がクルミパンを好きになった理由を書かなければと考えていたのですが……。そのタイミングが中々訪れ無くてこの御話を利用して書かせて頂きました。



そして先日後書きにも掲載させて頂いたのですが。これから数話は作品の雰囲気を乱さない為にも前書き、後書きは省略させて頂きます。予めご了承下さい。



暑い日が続いていますので体調管理には気を付けて下さいね。


それでは皆様、お休みなさいませ。


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