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第百四十六話 第二分隊戦闘開始 その一

皆様、一週間お疲れ様でした。


週末の深夜にそっと投稿を添えさせて頂きます。


それでは御覧下さい。




「びゃっぃ!?」



 びゃっぃ??


 雷狼のお嬢さん?? 現在作戦行動中ですので突如として奇声を放つのは了承出来ませんよ??


 後方から発せられた突然の奇声に肩をびくりと動かしてしまう。


 そりゃいきなり変な声が飛び出て来たら誰だって驚くだろうさ。



「どうした?? ルー」



 若干訝し気な顔で何やら肩を擦っている彼女に問う。



「い、いやね?? 悪寒が走ったとでも言えば分かるかな??」


「悪寒?? この先に何かいるのか??」



 再び正面を捉えて目を凝らすが……。



 見えて来るのは剥き出しの岩肌と、地面を這う荷台用の線路。そして土砂が崩れない様に通路をがっしりと支える木の枠。無造作に置かれたつるはしに、使用用途の分からない壊れかけた何かの残骸。


 人が感じるであろう悪寒の正体の元は見当たらなかった。


 まぁ強いて言えばこの先の暗闇が悪寒の最たる原因なのかもね。


 先の見えない闇というのは心に不安を与えるものですから。



「ううん。そういう事じゃなくてね?? 昔の嫌な思い出が頭の中をふと過った。そう言えば分かるのかな」



 嫌な思い出ねぇ……。



「肉を食べ過ぎて、夜中に吐いちゃったとか??」


「ううん。ちが――う」



 フルフルと首を横に振る。



「ん――……。ネイトさんにこっぴどく叱られたとか」


「それもちがう――」


「じゃあ何だよ」



 俺の隣を歩くユウがこの愉快なやり取りに堪らず突っ込む。




「昔ね?? リューとお母さんがお父さんの稽古をさぼった折檻の為に私を擽りの刑に処したんだ。縦横無尽に駆け回る二十本の指。激しく暴れて抵抗しても二人に抑え付けられちゃって気を失うまで擽られたんだぁ」



「……気絶??」



 擽りで気絶などするものなのか??


 そこまでの擽りを受けた事が無いので要領が分からん。



「あ――。今、擽りなんかで失神しないでしょ。って思ったよね!!」


「「正解」」



 ユウと声を合わせて言ってやった。



「一回リューの擽りを受けてみたら分かるよ。あれ、本当にヤバイんだから!!」



 ふんっと鼻息を荒げて話す。



「そういう状況に陥る事が稀だろうなぁ……」


 リューヴはそういう事をする印象は無いし。


「じゃあ私が擽ろうか!?」


「結構です」



 後ろからにゅっと伸びて来る腕をやんわりと振り払ってあげた。



「ちょっと。先程から喧しいですわよ?? ここは敵地です。これじゃあ、私達はここにいますよ――と、敵に伝えている様なものではありませんか」



 アオイの苦言が通路内に響く。



「え――。黙っていたらなんか気分暗くなるじゃん。只でさえ暗いってのに」



 可愛らしくむぅっと唇を尖らす。



「気分どうこうの問題ではありません。相手の索敵に引っ掛かるのは了承出来ないと申しているのです」


「索敵ねぇ……。ん――。チッ!!!!」



 おぅ?? 突然の舌打ちですね??


 アオイの言葉が癪に障ったのかな。



「ちょ、ちょっと。今のはどういう了見です?? 私のありがたい言葉に対して舌打ちなんて……」



 そりゃ怒るよな。会話の途中で舌打ちされたら。


 これがアイツの場合。



『あぁんっ!? テメェ、他人様が喋っているってのに何舌打ちしてんだゴラァ!!』 と。



 歴戦の兵士でさえも武器を放棄して踵を返す恐ろしい表情を浮かべて向かって来るのだろう。



「違うよ――。舌打ちしたら乾いた音が出るでしょ?? その反響音?? だっけ。それを聞いて大体の地形を把握してぇ。歪な音の曲がりとかおかしな反響が無いかを確認したんだ――」



「「「…………。はい??」」」



 今度はルーを除く全員が見事に声を合わせた。



「え?? 私、何か変な事言った??」



 金色の瞳がきゅっと開かれる。



「ルーの意外な特技を知って驚いているんだ」


「どんな耳してんだよ」


「世の中には珍妙な生物が存在するのだと、改めて認識したのですわ」



 三者三様の感想がルーを襲う。



「レイドの言ってくれた事は嬉しいけど。後の二人の言葉はちょ――っと嬉しくないかなぁ。リューには出来なくて、私には出来る特技なんだよ??」



「と、いう事は。全く同じ体なのに『聴覚』 だけは、リューヴを越えているって事か」



 ユウさん??


 そこを強調しなくても宜しくてよ??



「んふっふ――。ユウちゃん、凄いでしょ?? もっと褒めていいんだよ!?」



 皮肉、なんだけどなぁ。


 まぁ嬉しそうに表情を崩しているから良しとしますか。



 カエデ達の班と別れ、警戒を強めながら通路を進んでいるが……。会敵する様子は見受けられない。


 一つ、二つ、三つ目の部屋を通過しても敵は現れる事は無く、肩透かしを食らい続け今もこうして足を動かしている訳だ。


 けど、さっき通過した三つ目の部屋で会敵しなくて正解だったな。


 あの部屋は崩れ易いと教えられた場所だったし……。



「んっふ――ふっ――。ルンッタタ――」


「今度は鼻歌ですか?? 少々耳障りですのでお止めになって」


「え――。やだ」


「レイド様ぁ。お惚け狼がアオイの言う事を聞かないのですぅ……」



 後方から甘い香りを纏った腕がしゅるりと首に纏わり付く。



「ルー、もうちょっと警戒心を強めて。後、アオイ。歩き難いから離れて」



 細い腕の拘束を解いて言ってやった。



「はいは――い!!」


「アオイの香り。如何でございましたか??」


「汗臭かったぞ」


「ちょ、ちょっと!! ユウ!! 何て事を仰るのですか!? いつどんな時でもレイド様がお抱きになられても良い様に、私の体は清潔を保っているのですわよ!?」


「どれどれぇ……。フンフンッ……。むぅ……。ユウちゃんが言う通り、ちょぉっと汗臭いかなぁ??」


「こ、このケダモノめっ!! 離れなさい!!!!」



 はぁ――――……。


 皆様もう少し緊張感を持って下さいよ。


 長い溜息を漏らし、項垂れていると……。




「……ッ」



 空気を切り裂く乾いた音が頭上を通過して行った。


 ん?? 何だ?? 今の音は……。



「皆!! 待ち伏せだよ!!」



 ルーの言葉を受けて刹那に顔を正面に上げると、前方数十メートル先の闇の中に怪しい光を放つ点が幾つも揺れ動き獰猛な気配が蠢いていた。


 って事は、今の乾いた音って……。




「矢か!!」



 あっぶねぇ!! 脳天を穿たれる所だった!!



「皆!! 身を隠せ!!」



 俺が叫ぶとほぼ同時に無数の矢が恐ろしい音を伴って襲い掛かって来やがった。



「ちょっと!! ルー!! 索敵を忘れているじゃありませんか!!」


「アオイちゃんだって感知魔法使って無かったじゃん!!」



 四名が慌てて通路の脇に逸れ、襲い掛かる矢から身を隠す。



「そっちは怪我をしていないか!?」



 大きな木の枠に身を寄せ、反対側の通路で突出した岩肌に身を隠しているアオイへ問うた。



「大丈夫――!!」


「問題ありませんわ」



 よし、奇襲は上手く躱せたな。



「よぉ、どうする??」



 直ぐ後ろからユウの声が届く。



「様子を窺ってから行動に移ろう」



 木の枠からそ――っと目元だけを覗かせて様子を窺う。



「「「……ウルルゥ」」」



 俺達を待ち伏せしていた敵は正面奥に陣取り、今の所動く気配は見当たらない。


 恐らく、ジリ貧になって飛び出して来るのを待ち構えているのだろう。


 奴らの思惑通りに飛び出して行ったら矢の雨が体を穿ち、このまま此処で待機していたら前衛の武器を持った奴等が襲い掛かり。


 そして背を見せて下がれば武器と矢の餌食。


 進もうが、留まろうが、引こうがどの道苦戦は必至。



 ちくしょう……。地の利を生かした戦法を取りやがって。



「微妙にしか見えないが前衛と後衛に上手く分かれて陣取っている。多分、というか。相手は確実に俺達が飛び出て来るのを待ってい……。あっぶね!!」



 耳元を掠めて行った矢の音に一つ肩を揺れ動かして木枠に身を顰めた。



「成程ねぇ。前に進もうが、後ろに下がろうが確実にあたし達をれる布陣で待ち構えているって訳か」



「そうだろうな。さて、ユウさんやい。こういう時はどうすればいいのかお分かりかしら??」



 マイとのいつもの下りを再現してやる。


 すると。



「レイドさんやい。勿論、お分かりで御座いますわよ??」



 いつもの快活な笑みで俺の悪巧みにノってくれた。


 退散も駄目、様子見は論外。


 つまり活路は後ろでは無く前にあるのみ。


 そして俺達には策を凌駕する力技が残されているのさ!!



「アオイ!! 俺達の前に結界を張る事は可能か!?」



 反対側の通路。


 突出した岩肌に身を隠しているアオイに問うた。



「普段の結界を張るとこちらの壁を悪戯に傷付ける可能性がありますので、極小の結界しか張れませんわ。矢を数撃穿たれたら剥がれてしまいます。後、ユウ!! レイド様に近付き過ぎですわ!!」


「へへ――んっ。いいだろ――」



 よし!! それならいけるぞ!!



「それでも構わない!! ユウと俺の前に張ってくれ!! ユウ、敵陣営に突っ込んで弓兵を叩くぞ!!」



 直ぐ後方に位置するユウへ指示を送る。


 そして、柔らかい感触を背に受け取ってしまったのでさり気なぁく一歩前に前進してあげた。



「おうよ!!」


「アオイ、準備が出来たら言ってくれ!!」


「分かりましたわ」



「ユウちゃん!! レイド!! 敵の数は大体…………。ん――。二十って所かな?? 弓兵とこわぁい武器を持ったオークが半々ってとこ――。んで、武器を持ったオークがゆぅっくりこっちに向かって歩いて来てて、弓兵は一番後ろだよ――!!」



 アオイの後方から微妙に通路側へ頭を出して前方を覗いているルーが敵戦力の情報を伝えてくれる。



「おう!! 了解だ!! …………。ってか顔、危なくない??」



 だろうなぁ。


 ルーはアオイの照明の真下に居る訳だし。


 暗い通路の中では格好の的だよな。



「大丈夫だって――。向こうもそこまで弓の腕が上手い……。びゃっ!!!!」



 あらまぁ、耳元を掠ったな。



「ふぅ――。あぶなかったぁ――」



 慌てて顔を引っ込め、ふぅっと胸を撫でおろした。



「ユウ、レイド様。手筈が整いましたわ。いつでもいけます……」


「よし!! ユウ、前衛を突破して後方の弓兵の懐に潜り込むぞ!! ルーとアオイは敵陣が揺らいだ後、前衛を叩いてくれ!!」



 簡易的な作戦の主旨を皆に伝えた。



「ユウ、悪いな。危険な橋を渡らせて」


「んだよ。あたしの心配は無用。どっちかって言うとレイドの方が心配??」



 にっといつもの軽快な笑みを浮かべて俺の肩に手を置く。



「そんなに頼りないか??」



 同じくふっと笑みを浮かべ、綺麗な緑の瞳を見返してやった。



「冗談だって。さて、行きますか??」


「了解。…………、ふぅ」



 呼吸を整えて脚に力を籠める。


 行くぞ……。集中しろよ??




「アオイ!! 出るぞ!!」


「畏まりましたわ!!」



 ユウと共に通路へ身を出すと同時に前方に薄い桜色の壁が張られる。


 刹那。


 多数の矢が結界に突き刺さり、綻びを生じさせた。



「やっべぇ!! もつか!?」



 右隣りを共に駆けるユウが話す。



「足を止めるなよ!! 止めたら矢の餌食だからな!!」


「分かってるって!!」



「「「グアァアゥッ!!!!」」」



 見えたぞ!!


 前衛のオーク共が俺とユウの姿を見付けるなり、雄叫びを上げて己の武器をこれ見よがしに掲げる。



「ユウ!! 突破するぞ!! くらえぇ!!」



 龍の力を解放して右の正拳を正面の一体に放ち。



「おぉう!! だああぁあぁっ!! しゃあぁっ!!!」



 ユウも同じく力の塊を正面の一体にぶち込んだ。



「「ギャアアァアァ!!!!」」


「「「ッ!?」」」



 よし!! 突破口が開いたぞ!!


 二体が後方へと吹き飛び、弓兵達の士気が揺らぐ。


 これを見逃す俺達じゃない!!!!


 勢いを保ったまま開いた穴から突入を開始、瞬く合間に弓兵達の懐に侵入した。



「ガッ!! グアァ!!!!」



 弓から剣に持ち変えるその刹那……。


 それが命取りだぞ!!



「貰ったぁ!!」


 短剣を抜剣し、鋭い一閃を首に放つ。


「グゥゥ……ゥ」



 よし!! 二つ!!



「だらぁ!!」


 ユウが弓兵の一体の顔を掴み。


「もう一丁!!!!」


 更にもう一体の顔を掴む。


 そして……。



「どぉぉっせぇぇいっ!!!!」



 猛牛の突進を受けて慌てふためく残りのオークへと、二体を掴んだまま突撃。



「「ギィィヤァアアア――――ッ!!!!」」



 硬い地面の岩肌に計四体ものオークを突き刺してしまった。


 うへぇ、何んと言う力技。


 ユウの剛力でこの硬い地面に叩きつけられたらと思うと……。


 想像するだけで幻痛が駆け巡り全身の筋肉が悲鳴を上げてしまう。



 俺も彼女に負けない様、せっせと敵戦力を削りましょうかね!!



「ガァッ!!」


「遅いぞ!!」



 水平に切り払われる長剣を屈んで躱し。



「であぁっ!!」


 伸びる体を利用して顎下から短剣を穿つ。


「カッハッ…………」



 短剣を引き抜くと踏鞴を踏んで後退。そして首元を苦しそうに抑え土へと還って行った。


 これで三つ!!



「ガアァアアアアァ!!!!」

「っ!!」



 うおっ!! あぶねぇ!!


 背後からの一閃に対して前方へと飛び退いて回避。


 数舜で態勢を整えて俺の体を両断しようと画策した個体と対峙する。



「良く避けたな!!」


「これだけ殺気を放っていたら誰でも分かるって!! こいつは……お返しだぁ!!」


「ガフッ!!!!」



 真正面で構える醜い豚の鼻頭へ力の限りに拳を捻じ込むと、拳に心地良い硬さの感触が広がって行った。


 どうだ!? 手応えは十分だぞ!?


 惨たらしく地面に横たわり、変な角度に曲がった首を懸命に擡げるが……。



「ア……。アグゥ……」



 それは叶うことは無く土へと還ってしまった。


 四つ!! さぁ、次は誰だ!?


 戦闘態勢を維持したまま周囲を見渡すが。



「……」



 残りの敵戦力は既に土へと還り戦闘の熱気だけが坑道内に篭っていた。



「あれ?? 残りのオークは??」


「お疲れ――。あたしが片付けちゃったよ」



 へへっと快活な笑みを浮かべるユウの周囲には八つの黒き土嚢が地面に横たわっていた。



「お、おう。そうか」



 いつの間に。


 俺が四体で……。ユウが八体、か。


 一瞬の合間だったのに倍の差をつけられたら……。


 比べっこが好きな男の子にとっては少々悔しいのですよっと。この悔しさは胸に仕舞い、次の戦いの糧に繋げましょう。



「レイド様ぁ――!! こちらも終わりましたわぁ!!」


「お疲れ様――!! はい、レイド!! 鞄だよ――」



「二人共お疲れ様。ん、ありがとう」



 置き去りにした鞄を受け取り、肩から掛ける。



「ふぅ――。待ち伏せとは驚いたけど何てこと無かったな??」



 ユウが手の甲で額にじわりと浮かぶ汗を拭う。



「もう少し警戒を強め……。ん?? ユウ、怪我しているじゃないか」



 何気無くユウの剛腕に視線を移すと、左腕から一筋の赤い線が地面へと零れ落ちていた。



「あぁ、ちょっと掠っちゃったみたいだな。こんなもん、舐めときゃ治るって」


「駄目だぞ、怪我の放置は良く無い。ちょっと待ってろ」



 えっと。どこに仕舞ったっけ……。


 鞄を開き、清潔な布を探す。



「おぉ、あった。ほれ、見せてみろ」


「あ、うん……」



 すっと差し出された腕を注視する。



「ん――。ここ、か。上着脱げるか??」



 上腕部の服に亀裂が走りそこから出血しているようだ。



「へいへい。厳しいなぁ――。母上でもここまで細かくないぞ??」


「仲間が怪我をしたら治療するのが当然だろ。縛るぞ??」


「ん――」



 しゅるりと布を巻き、出血を抑える為少しだけキツク縛ってやった。



「これで、良し!!」


「へへ、ありがとうね??」



 いつもの眩しいユウの笑みが心地良いな。



「レイド様ぁ。私が治癒魔法で治しても宜しいのですわよ??」


「まだ先は長いからね。少しでも魔力の消費を抑えないと…………。ってか、抓らないで??」



 右腕に鋭い痛みが走る。



「ふんっ。ほら、先を急ぎますわよ!!」


「お、おい。引っ張るなって!!」



 アオイが右腕を取り、先へと急ぐものだから前のめりになってしまった。



「今のオーク……。待ち伏せしていたって事は。俺達の存在が向こうに感知されているって事だよな??」



 引き続き警戒を一層強めながら暗く湿った坑道を進む。


 一本道だし、下手に動くより息を顰めて待ち受けていた方が効率良く俺達を攻撃出来る。


 腹が立つ事に、実に理に適った行動だ。



「相手も愚かではありませんわ。レイド様が仰る通り、私達の存在は恐らく感知されております」


「だよね。……今、ふと考えたんだけど。理に適った行動をしていると思わない??」


「そうで御座いますわね。恐らく、あの水晶を介して指示を送っている者がこの坑道内のどこかに潜んでいるかと思われますわ」


「誰が指示を出しているのかなぁ??」



 直ぐ後ろからルーの気の抜けた声が届く。



「誰って……。ほら、変異種じゃない?? 魔法を使って来た奴いただろ??」


「そんなのもいたねぇ――。でも、そこまで頭が良さそうに見えなかったよ??」


「見た目より賢いのかも。お前さんとは違ってな??」


「酷いよ!! ユウちゃん!! こう見えて結構賢いんだからね!!」



 つまり、この先にオーク共を率いている親玉がいる可能性があるって事だよな??


 あ、いや。カエデ達の方に居る可能性もあるのか。


 その確率は二分の一。


 一体どんな奴がオークを率いているのか、そして水晶を採取している理由は??


 幾つもの考えが頭の中をグルグルと回り、何だか辟易してしまった。



「レイド様?? 難しい御顔をしていますわよ??」



 端整な顔がじっと、こちらを覗き込む。



「色々考え事をしていたんだ」



「まぁ……。私との将来の事ですわよね?? 私、子供は多い方が嬉しいですわ。生まれて来る子は女の子のみですが皆一様に愛し。レイド様と肩を並べて教育を施すのですわ。あ、お名前の事で苛まれていたのです?? ご、御安心下さい!! もう既に三番目までの名前の候補は考えてありますの!! 嫌ですわぁ、レイド様ぁ。仰って下されば直ぐにでも申しましたのにぃ……」



 俺の腕を話すときゅっと目を瞑り、モチモチの頬に両の手を当てて嬉しそうにイヤイヤと顔を横に振る。


 さてと……。壮大な妄想が始まってしまう気配がしますので先を急ぎましょうかね。


 こうしている間にもカエデ達の班も奥へ進んでいる。


 俺達の班が遅れを取る訳にはいかんのだ。




「アオイちゃん……」



「やはり蜘蛛に因んで、子は八人欲しいですわねぇ。勿論、私の体は出産に耐えられる様に鍛えてありますので御安心下さいまし。え?? あの洞窟では八人は狭い?? では、家族のみでどこかに引っ越しましょう!! 静かな湖畔が見える所ですか?? それとも、海が見える場所も宜しいですわね!! 時の流れが目に見える程の静寂を謳歌し、子の燥ぐ声が心を潤し、レイド様の寝息を浴びながら眠りに就く。はぁぁぁ……。これ以上無い、幸せですわぁ」



「アオイちゃん!!!!」



「…………何ですの?? 人が折角幸せな人生計画を申していると言うのに」


「レイドとユウちゃん、先に行っちゃってるよ??」


「へ?? あ――ん!! 幸せが逃げて行きますわぁ――!!」


「あれがなければかっこいいんだけどなぁ――」



 ルーが辟易にも似た溜息を吐き、颯爽と駆けていくアオイの後ろを遅々とした歩みで追って行った。



最後まで御覧頂き有難う御座いました。


数話後、作品の雰囲気を乱さない為に前書き並びに後書きを記載しない場合が御座います。


予めご了承下さいませ。



間も無くやって来るお盆休み。


皆様はどの様に過ごしますか??


友人と近場で遊ぶ、買い物に出掛ける等々。人それぞれの楽しみがあるかと思われます。私は……。そうですね。


先ずは部屋の掃除やら洗車等、厄介な事から先に片付けて買い物に出掛けようかと考えております。


新しい服、雑貨、靴、腕時計。このあたりを攻めようかなぁっと思っています。


勿論!! 投稿はさせて頂きますので御安心?? 下さいませ。



いいねをして頂き有難う御座いました!!


夏の暑さに負けじと頑張って執筆させて頂きますね!!



それでは皆様、お休みなさいませ。

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