表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/1235

第五十一話 待ち構える強力な女香

お疲れ様です!! お待たせしました!!


本日の投稿になります!!


それでは、どうぞ!!




 人は己の欲求を満たすとどうなるのか。



 それは満たした自己の欲求の種類にもよる。




 ある人は金を追い求め、金銀財宝を己が手中に収めると誰にも渡すまいと堅牢な金庫の中に閉じ込め。


 ある男は女を追い求め、世の男性が羨む美女を手に入れれば美しいドレスを贈りその可憐な姿に目尻を下げる。


 ある人は音を求め、至高の音を奏でるヴァイオリンを手に入れると万人の耳と心を惚けさせる。





 では……。積もり積もった日中の労を癒す為。


 食欲を満たしたらどうなるのか??





 これは凡その人は容易く想像出来るであろう。



 空腹を満たされた体はだらしなく弛緩して地面に、くにゃりと溶け落ち。




「ふがらぁ……」




 仰向けになって空を見上げた御口は、食した食物の味を思い出しては舌なめずりを始め。




「ジュルリッ。んふっ……」




 果てはこんもりと膨れた腹を満足気に撫で、満点の夜空を仰ぎ見て翌朝まで幸せな時間を過ごすのだ。




「にひぃっ。お腹いっぱぁい……」




 正に万人が想像しうる姿をアイツが体現していると、何故だか……。



 何処にもぶつけようの無い憤りが湧いてしまうのは気の所為でしょうかね??




 ハドレーの街を出発し、四日。


 明日には任務地に着くまでの場所に到着し、野営地の中で一人寂しく食器類を洗い続けているとそんな気持ちも湧こうさ。




 大体!!!!



 いっつも俺が飯を作っているってのに!!


 後片付けもしないんだぞ!? せめて!! 少し位は手伝ってくれてもいいんじゃないの!?



 洗い終えた木製の皿、並びに包丁に付着した水分を拭いていると。




「お?? 終わった?? ごくろ――。明日も早いんだし、早く寝ろよ――」



 っと。


 己はぐぅたら亭主か!! と叫びたくなる台詞を太った雀が吐く。


 これも憤りが募る一因なのだろう……。




「よいしょっと……」



 片づけを継続させつつアイツの行動を視線で追う。



 毛布の上でコロンと仰向けで休んでいるユウのお腹の上へと、何の遠慮も無しに移動し。



「ん――……。もうちょっと硬めの枕がいいんだけども……」



 彼女の双丘の麓へ腰を下ろし、ちっちゃな両手でフニフニと柔らかさを確認。



「まっ、この際。無い物強請りはしないわ。いや……。有る物強請り、か??」



 どうでもいい下らない台詞を述べて彼女の右胸へと背を預けて足を組み。



「ふわぁぁぁっ。やわらけぇ――。 カエデも使ってみなよ!! 持たれ心地、最高だからさ!!」



 ふわぁっと大きな欠伸を放った後、コクッコクッと眠たそうに首を縦に動かしている海竜さんを誘った。




「いえ、結構です。窒息したくないので」



「気を付けていれば大丈夫よ??」



 人の胸を何だと思っているのだ、アイツは……。


 ユウも迷惑だろうなぁ。


 五月蠅い奴が体の上に居座ると。




「なぁ??」


「ん――?? 何??」




「あたしの胸。お前さんにとっては背もたれ代わりなの??」


「そうよ?? 完璧とは言え無いけども、食後の余韻を楽しむには持って来いのフニフニ感だもん。私が男だったらずっと揉んでそうだし。いや、今も……」



 太った雀が立ち上がり、麓のお肉さんに左腕を埋めていると。




「はい、いらっしゃい」


「どわっ!?!? な、何をする!?!?」



 ユウが太った雀の小さな右手を掴み、魔境の谷へと誘い始めた。




 あ、あそこに……。


 吸い込まれた一巻の終わりだぞ……。



「や、止めて!!」


「あたしの胸を弄った罰だ。なぁぁに、安心しろって。翌朝までぐっすり!! 眠れるからぁ……」



「眠れるじゃねぇ!! 失神だろ!! ひ、ひぃっ!! や、やだ!! ボケナス!! 助けろや!!」



 徐々に肉の合間へと消えゆく深紅を他所目に立ち上がり、一箇所に纏めてある荷物の下へと移動を開始した。



 人に助けを請う態度じゃあありませんのでね。


 お前さんはそこで頭を冷やすがいいさ。



「んぐぅっ!?!?」


「よぉ、レイド。どうしたの??」



 上下左右に有り得ない動きを見せる胸を、両手で抑え込みながらユウが話す。



 それ、一体どうなってんの??



「ん?? フォレインさんから頂いた抗魔の弓の試し撃ちをしようかと考えていてね」



 頂いて以来、実は一度も弦を引いていないのですよ。




 彼女曰く。


 使用者の体力を消耗して矢を構築するらしいのですが……。


 どの程度の体力が一射で消耗されるのか。その確認をしておきたいのです。


 実戦でいきなり使用する程、俺は肝が据わっていませんのでね。




 荷物の上。


 夜空を寂しそうに見上げている灰色の大弓を手に取り、柔らかい橙の明かりを放つ焚火を囲む皆から離れた。



 正確に言えば。



「レイド様っ。私が補佐しましょうか??」



 右肩に今日も留まる彼女からは離れていませんけどね。



 漆黒の複眼で此方を見上げ、二本の前足をわっと上げた。



「大丈夫。えっと……。標的は……」



 手頃な標的を探し。顔を左右に動かすと、前方約十メートル先に何の変哲もない木を捉えた。



 丁度良いや。あの木に向かって射ってみるか。



 両足を肩幅に開き、重心を中央に落とし。



 太い灰色の樹木を左手で掴み、弦を力強く引くと。



「まぁ……。赤き矢が現れましたわねぇ」



 漆黒の複眼を赤く照らす矢が出現した。



「これ、どういった仕組みで矢が現れるのか分かる??」



 木の幹に狙いを定めつつアオイに問う。



「さぁ……。この世に生を受け今年で二十一年になりますが……。この様な物が私達の里に存在した事自体知りませんでしたので」



「え?? アオイって二十一なの??」



 矢の仕組み云々よりもそっちの方に興味が湧いてしまった。


 俺達と同年代位であろうと考えていたけど、落ち着いた雰囲気だからひょっとしたら俺より年上かと考えていたので。



 あ、でも。


 マイと下らない乱痴気騒ぎを行う事を加味すれば年相応の女性ってのも頷けるな。




「そうで御座いますわよ??」



「あたし達は移動中に聞いたぞ――」



 ユウがいつもの快活な笑みを浮かべて此方へと歩み来る。



「そうなんだ。――――――――。所で。マイは??」



 いつもの落ち着きを取り戻して……。はいないけども。


 上下にタユンっと揺れ続ける呆れた大きさを誇るソレから視線を外して話す。



「ん」



 ユウがクイっと背後に親指を指し、何気なくそこへ視線を送ると。



「…………」



 あぁ、失神したのか。


 ピクッ、ピクッと両足を痙攣させ。


 深紅の瞳は白目へと変化し。自称、岩をも砕く牙の隙間からは粘度の高い液体を零して地面に横たわっていた。



「起きていても、失神していてもおぞましい姿ですわねぇ……」



「そう言いなさんな。さて!! 撃ってみますか!!」



 随分と太い弦なので、強く引くだけでも指が千切れてしまいそうなのです。



 右腕の力を籠め、左手で照準を定め。



「ふぅ……」



 大きく息を吐き出すと同時に、赤き矢を放った。




 赤き矢は空気の抵抗、並びに重力の影響を受ける事なく一直線に木の幹へと美しい軌道を描いて飛翔。


 空気を切り裂く甲高い音が鼓膜を楽しませた後、離れた位置から正確に矢が着弾した太い音が響いた。




「うおっ!! 命中じゃん!!」


「お見事ですわっ!! レイド様…………??」



「あ、あぁ。有難う……」



 な、なんだこりゃ!?!?



 たった一射放っただけで体力をごっそり持っていかれたぞ!?




 大量の小麦粉を目の前に用意され。


『さぁ、今から両腕の力だけでうどんを捏ねろ』


 と、耳を疑う発言を受けて馬鹿正直に捏ね続けた疲労感が腕を襲い。





 両足に大量の重りを括り付けられ。


『それを付けて数キロ全力疾走して来い』


 指導教官も顔を真っ青に染める訓練指導を受けた後、焦燥しきった気怠さが双肩に圧し掛かった。



「大丈夫で御座いますか!?」



「あ、あぁ。大丈夫……」



 フォレインさんは数射可能だと申していたが……。


 本当に可能なのだろうか??


 一日の終わりで体力が残っていない事を加味しても、実戦で使用出来るのは精々……。



 二射程度か。



 実戦で使用する際には体力配分を考えないとな。




「レイド!! あたしにも撃たせて!!」


「どうぞ……」



 額から零れ落ちる汗を拭う暇もなく、ユウが俺から弓を手に取り。



「んふふ――。弓の訓練も受けた事があるんだぞ??」



 得意気に体を斜に構え、左手で照準を定めた。



 へぇ。


 訓練を受けた事があるのは本当みたいだな。


 逞しい背中からは弓の名手たる香りが放たれていたが……。



「弦を引いてぇ……。んっ!? んんっ!? 何だこれ!? 全然引けないんだけど!!」



 太く黒い弦は決して湾曲する事は無く。


 しっかりと直線を模っていた。



「いやいや。力を籠めて引けば大丈夫だから」



 俺が引けたのだ。


 怪力無双の彼女が引けぬわけがなかろうて。



「ぐぬぬぬぬぅ!! うごけぇえええ!!」



 額に血管が浮き出る程に力を籠めるが……。



『あなたの力はその程度かしら??』



 弦は飄々とした表情を浮かべ、彼女を見上げていた。



「ユウ、壊れるから……」



 フォレインさんの御好意で頂いた物を実戦で使用する前に破壊されたら堪らん。



「はぁっ!! くっそう!! 返す!!」


「どうやら……。弦を引くコツは力では無い様ですわねぇ」



「俺は普通に引けるけどね」



 荒々しい呼吸が戻り、再び構えてみると。



「ほらね?? 引けたぞ」



 再び赤き矢が出現した。



「じゃあ、レイドも思いっきり弦を引いてみてよ」



 力一杯で??



 先程は五割程度の力を籠めて弦を引いたから……。


 十割で引いてみますか!!



「分かった。全力で引いてみる!!」



 上腕二頭筋の力を最大解放して弦を目一杯手前に引き、震える弦を指力で抑え付けてやった。



 弦に出現した矢も俺の力に呼応し、先程とは比べられない太さへと変化する。




「何だ、そりゃ!!」


「通常の矢の三倍程度の太さで御座いますわね。レイド様、腕の筋力は如何程で御座いますか??」



「腕の筋力が捻じ切れそうだ……」



 弦が元に戻ろうとする張力。


 そして、それに抗う指力と腕力。



 両者が黒き弦の上でせめぎ合うが……。先に降参したのは此方でした。



 これ以上保っていられない!!



「よし!! 撃つぞ!!」



 木の幹へ狙いを定め、第二射を鋭く放った。



「おわっ!! す、すっげぇ!! レイド!! あの木、木っ端微塵だぞ!!」



 ユウの燥ぐ声を受けると。


 足元の大地が消失した感覚に襲われると同時に、意識が朦朧と陰り出す。




 う、嘘だろ……。


 全力で穿つとこんな風になるのかよ……。




「まぁ!! レイド様!! お気を確かに!!」


「どうやら全力で撃つと体力が全部持っていかれていかれるみたいだな。レイド――。おやすみ――!!」



 おやすみ、と。


 彼女へ伝えようと口を開くと。土の香りが口内に優しく広がる。



 これからコイツを使用する時は力の塩梅に気を付けよう……。


 ジャリっと。


 御口の中に大変不快感を与える土を食みながらそう考えていた。








   ◇








 鳥達が此方に爽快感を与える歌を口ずさみつつ晴れ渡る空を横切って行く。


 その歌声を糧にして、雑草が生え広がる大地の上を気怠さが残る体に鞭を打ちつつ進む。あの鳥の様に俺も空を飛べたら楽だろうなぁ。



 こんなに疲労感を覚えるのは久々だよ……。


 それも、コイツの所為か。



 羨望の眼差しを空へと向けた後、右肩に掛けている抗魔の弓に視線を送る。



 昨晩。



 試し撃ちと称して全力を出した結果が、これだもの……。



 実戦で使用する前に効果を確認出来たのは良かったのだが、こうなる事を知っていたら恐らく。あそこで矢を放つ事は無かっただろう。



「ふぅ……」



 気怠さの欠片も見せないウマ子の尻尾を捉えつつ、足を止め。


 大きく息を吸い込んだ。



「レイド様。大丈夫ですか??」



 右肩に留まる彼女が前足で器用にちょんっと、首筋を突く。



「疲労感が体の芯にずんっと残るけども。うん、大丈夫」


「余り無理をしないで下さいまし。宜しければ休息したら如何です??」



「目的地まで後少しだからね。先ずは任務を優先、ですよっと」




 到着まで後少しですからね。


 気合を入れて行きましょう!!



 大変羨ましい足取りで進み続ける牝馬の尻尾目掛け、進み始めた。



「レイド。質問があります」



 ウマ子の手綱を引くカエデが歩みを遅らせ、此方に並ぶ。



「どうした??」


「任務地に到着する手前で私達は待機します。単独行動で任務に当たっているレイドが複数人も連れて移動していたら拠点地の方々も不思議に思うでしょう」



 あぁ、そうか。



「了解。じゃあ、そうしよ……」



「んっ!? ちょっと待って!! 何よ、アレ……」



 カエデの意見に肯定を伝えようとすると、ユウの頭の上で胡坐をかいていた深紅の龍が声を上げた。


 ちょっと気になる声色に従い、視線を正面に向けると。







「お、おいおい……。アレって……」



 深い霧を抜けなだらかな平地を歩き辿り着いた目的地は、円蓋状の薄い膜で覆われてしまっていた。


 薄いピンク色の膜とでも呼べばいいのか。


 上空から大地まですっぽりと覆われている様に声を上げずにはいられなかった。




「カ、カエデ。アレって結界じゃあないのか!?」



 つまり、アレが結界であるのなら拠点地が魔物に襲われている事を示す。



 こうしちゃいられない!!


 一刻も早く仲間を助けに行かないと!!



 足に力を籠め駆け出そうとすると。




「待って下さい」



 カエデが俺の右腕を掴んだ。



「仲間が襲われているのかも知れないんだぞ!? 早く行かないと!!」


「レイド様。少々お待ち下さいまし。あれは……。結界とは異なりますわ」



 結界では無い??



「じゃあ、何だよ……」



「近付いて調べれば分かります」



 カエデが鋭い視線を前方に向けつつ話す。



「でも、人に見つかったら不味いんじゃあ」



「人の命は感じ取れますが……。人の動きは感じ取れませんわね。恐らく、あの卑猥な色の中で気を失っているかと」



 人の姿に戻り。


 細心の注意を払いつつ前方を注視するアオイが話すものの、気が気じゃ無かった。



 兵達の姿を確認出来ない限り安心出来ないからな。




「襲われているのだったらぶっ飛ばせば良いじゃん!! んで!! ちゃちゃっと助けて美味しい御馳走が待つデカイ街に向かう。うむっ。言う事は無いわね」


「お前さんは楽観視し過ぎだ。ほれ、到着するぞ」



 ユウの言葉を受け、遂に目的地へと到着を果たした。






 円状に木製の柵が設けられ、その中には物資を積んだ大きな木箱やら、柄の長い槍等を立て掛ける木製の衝立が置かれていた。



 簡易的に建てられた木造の兵舎が幾つも並び、此処はそれなりの規模である事が窺える。



 厩舎の中に居るであろう馬の嘶き声も届かなければ、五月蠅く飛び交う指示やそれに呼応する下士官の覇気ある返事も無い。




 一体……。


 皆は何処に行ったんだ……。




 薄いピンクの膜の前で茫然と立ち尽くしていると。





「――――――――。ようこそおいで下さいました」



 一人の女性が一切の足を立てずに膜の向こう側からやって来た。



 艶を帯びた黒き髪を揺らし、本来であれば男性が着用するべき執事服に身を包み。端整な顔立ちからは想像と少々異なった低い声で此方を迎える。



 膜を越え、此方の前に立つと美しい所作で静々と頭を垂れた。




「私の名は、グウェネス=コニエスタと申します。以後お見知りおきを」



 感情を読み取れぬ表情で話すものの、敵意は無い様だ。



「あ、あの。一体此処で何が起こっているのか。教えて頂けますか??」



 このおかしな状況の解明する為、回りくどい質問を避けて単刀直入で問うが……。



「ふぅ。最近の殿方は礼儀も弁えていないのですかね??」



 あ……。



「申し訳ありません。私の名は、レイド=ヘンリクセンと申します」



 黒髪の合間からジロリと睨んでくるグウェネスさんに向かい、彼女の所作に倣って頭を下げた。



 これで宜しいですか??



「はい、綺麗な挨拶ですね」



 ほっ。


 良かった、俺の所作も満更じゃないな。





 ――――――――――――。



 いやいや。


 違うから!!



「何馬鹿丁寧に挨拶してんのよ。よぉ、姉ちゃん。あんた、馬鹿みたいに強い魔力持ってるけど……。このきしょい膜はあんたの仕業??」



 人の姿に変わり、俺達の前に立つマイが話す。



「私ではありません。私達淫魔を統べる女王の御業で御座います」



 じょ、女王!?



 何でそんな位の高い人物がこんな所に居るんだよ!!



「ほぉん?? んで、その淫魔の女王とやらはナニしてんの??」



 マイがいつも通り、片眉をクイっと上げて問うと。


 彼女の口から耳を疑う言葉が発せられた。











「女王は現在、お食事中で御座います」



「「「食事中????」」」



 いつもの三人が首を同時に傾げ、これまた同時に口を開く。



「この膜の中で人間から生気を頂き、英気を養っている最中で御座います」


「ちょ、ちょっと待って下さい!! そんな事したら人間が……」




「御安心下さいませ、レイド様。我が女王は、見た目と言動と行動はアレですが……。大変思慮深い御方で御座います。命を奪うまではしません」




 いや、見た目と言動と行動って……。ほぼ全部では?? それは十分問題なのですけど。


 此処は各地へ人員を送る大切な拠点地の一つなのです。人員を送れないと各地の拠点に支障をきたしますので……。




 どう説明しようかと頭を回転させていると。




「女王が皆様に挨拶を述べたいそうです」



 グウェネスさんの眉が刹那にきゅっと中央へ寄せられ、少しだけ不機嫌な口調でそう話した。



「分かりました。状況の説明を伺う為、挨拶を交わさせて頂きます。皆、いいよな??」



 俺が皆に問うと。



「あいよ――」


「畏まりましたわ」


「分かった」



 三名は概ね予想通りの返事を頂けたのだが。



「え――。咽返る程の女の匂いがする場所に入らなきゃ駄目なの??」



 若干一名だけは苦い顔と、渋い言葉を発した。



「中に入るのは其方の五名だけでお願い致します。其方の馬は中に入るなり、女王の魔力を受け昏睡してしまいますので……」



「分かりました。ウマ子。いい子だから此処で待ってろよ??」



 俺が優しく彼女の横顔に手を添えると。


『あぁ、分かった。気を付けて行ってこい』


 此方の想いに答える様に一つ鼻を鳴らした。




「では、此方へ……」



「じゃあ皆行こうか」



 グウェネスさんの細い体の後を続き、薄いピンクの膜へと向かう。



「匂いが移ったら責任取ってよね!!」


「お前さん一人だけお留守番してろ」



 ユウがぽんっとマイの頭を叩き、前へと進む。



「それは断る!! 暇だもん!!」



 あなたは暇潰しで俺の任務に帯同しているのですか??


 首を傾げたくなる台詞を背に受け。


 此処からでも上等な女性が持つ、男の性を多大に刺激する香が漂う領域内へと突入……。


 じゃあないな。


 お邪魔させて頂く事にした。


お疲れ様でした。


昨日は投稿出来ずに申し訳ありません。誠心誠意プロットを執筆中ですのでお許しください……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ