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第五十話 おやすみなさいを伝えたくて

引き続きの投稿になります!!


それでは、どうぞ!!




 月明かりが私達の進むべき道を正しく示し、遠くに見える人の営みを感じ取れる場所へと向かい。大変踏み心地の良い草の上を進む。



 お腹も膨れ、体に纏わり付く疲労を落とした所為か。


 私の前を歩く彼女は大変上機嫌な御様子ですね。




「くはぁ――!! 今日も良いお湯だったわぁ――!! カエデ、有難うねぇ――!!」



 背に届く艶々の深紅の髪を揺らして此方に振り返る。



「いえ。所で、マイ。申し訳ありませんがもう少々声量を落として頂けますか?? 幾ら人の姿が見えないと言っても。街からそう離れていないのです。何処で、誰が私達を見ているのか分からないので」




 この点に付いては本当に注意を払って欲しい。


 私達は人間の姿をしていますが、人間達にとっては異形の存在なのですからね。


 私達だけならまだしも。


 彼にまで迷惑を掛けたくないのです。




「大丈夫だって――!! そうでしょ!? ユウ!!」



 マイの右隣りを歩くユウの丸みを帯びたお尻をピシャリと叩く。


 今のは、良い音ですね。


 会心の音でした。



「カエデの意見に賛成だ。あたし達が魔物だってバレたらレイドに迷惑が掛かるだろ」



 うんっ。


 その通りですよ、ユウ。



 場の空気に流されそうで流されない彼女の性格は見ていて気持ちが良いです。




「バレても別にいいじゃん。ほら、アイツをこっち側に引き込めばいいんだし」


「お?? そういう考え方もあったかぁ!!」



 おっと。


 いけません。


 悪魔の甘言に誘惑されているではありませんか。




 私が注意を促そうとすると、アオイが徐に口を開いた。




「ユウ。戯言に耳を傾ける必要はありませんわよ?? 今は時期尚早ですが。レイド様は我々と人間とを紡ぐ御方になるやも知れません。私達には慎重な行動が求められている事を忘れない様に」



 彼女が短い溜息を吐いた後。


 嬉しい言葉を発してくれた。



 もしも、この認識阻害が解けなければ。レイドは魔物と人間との繋がりを構築出来る唯一の人物になる可能性を秘めているのだ。



 今日の状況を鑑みて、未だその事を人に話すべきではないけれど。


 魔女を倒し、この大陸に真の平和が訪れたのなら行動を試みてもいいでしょう。



 冷静に時期を見極めなければならないのです。




「マイ、聞いたか??」


「聞こえね――」



 マイとアオイって……。水と油、だよね??



 出会って最初の言葉が不味かったのかな。


 気色悪いと言われれば誰だって顔を顰めますものね……。




「胸も無ければ、耳も悪い。はぁ……。レイド様はどうしてあの様な傍若無人且傲岸不遜な者を連れて歩けるのでしょうか……。きっと、海よりも広い御心を御持ちになっているのでしょう。あぁ……。疲弊してしまった御心を私の体で癒して差し上げたいですわぁ……」



 そう話すと。



 しっとりと水気を含んだ艶々の頬に両手を添え、彼の体を想像したのか。


 嬉しそうに嫌々と顔を横に振った。



「――――。きっしょ。一生妄想してろや」


「カエデ!! 聞こえました!?」


「何を??」



 びっくりしたな。


 急に声を張り上げないで下さい。



「女性なら誰しもが持つべきであろう丸みを帯びた湾曲では無く、直角に聳え立つ嘆きの壁が喋りましたわぁ!! きっと我々を憂いているのでしょう。持たざる者は持つ者を忌み嫌うと言いますし」



 はぁ……。また始まるのかな。



「てめぇも……。嘆きの壁の前で懺悔させてやらあぁあああああああああ!!」



 ほら、始まった。



 マイが振り返ると同時に、常軌を逸した速度でアオイへと襲い掛かり。



「遅いですわぁ。欠伸が出てしまいますわね」



 それをサラリと躱し、更に余計な一言を放つ。



 何気無く避けたけど、今のってかなり素晴らしい体の使い方ですよね??


 必要最低限の動きで相手を躱すのって難しいですから。




「折角汗を流したのにまた汗掻いてどうすんだよ」


「その通りです。ユウ、行きましょうか」


「ん――」



 後方で大燥ぎするお馬鹿さん達を置き、ユウと肩を並べて心地良い風が吹く大地を踏みしめ。街の方角へと進み出す。


 中々鳴り止まない傍迷惑な音に、夜空に浮かぶ月さんも。



『いい加減にしなさい』



 と、呆れた顔を浮かべていた。






 ◇






 耳を澄ませば家の中からは生活音が聞き取れますが、道沿いの松明の明かりが消えた街は何処か寂し気に映りますね。



 人影が消失した道を静かに歩き、宿兼食事処の扉を開いた。



「んっふふ――ん。ふふんっ」



 ユウが鼻歌を歌いつつ、一階の広間を突き抜け。二階へと続く階段へと進む。



「ユウ、上機嫌じゃない」


「ベッドで寝るのは久々だからなぁ。それに?? お腹も膨れたし、こりゃきっといい夢を見られる筈だからな」



 きぃっと軋む音を奏でる階段を昇りつつマイとユウが会話を交わす。



「私は辟易しておりますわよ……」


「どうして??」



 私の後ろに続くアオイに問う。



「どうしてって……。レイド様と相部屋では無いからですわ!! カエデ!! 私と代わりなさい!!」



 今から遡る事一時間前かな??




 部屋決めの為のクジを引いて、私は彼と同室となった。


 嬉しく無い訳じゃないけど……。


 ちょっと緊張しているのが本音ですね。


 私も一人の女性。


 そして、彼は大人の男性ですので……。



 真摯な彼ですからその……。そういった事は起こり得ないと考えていますけど。



 ほら、一応。ね??




「カエデなら安心して任せられるからなぁ――。アオイと同室じゃあレイドも休めないだろうし」


「まぁ!! ユウ!! あなたは間違っていますわ!!」



 私の脇を抜け、彼女の背後に付いて声を上げる。



「何が??」



「体を重ね合わせ、魂をも蕩けさせる夜を提供すれば殿方は満足して眠れるのです!! そして、私はその資格を持つ女性。レイド様もきっと私を望んでいる筈です!!」



「自分で筈って言ってんじゃん」



 二階の床に足を乗せ、奥へと続く通路を進みながらユウが話す。



「うふっ。言葉の綾ですわ。さて、カエデ?? 鍵を渡しなさい」



 にっこりと。


 満面の笑みを浮かべつつ、私に向かって手を差し出した。



「お断りします。では、皆さん。お休みなさい」



 四部屋ある内。


 一番手前の扉の前でちょこんとお辞儀を放った。



 実の所。


 早く眠りたいのが本音です。


 先程からずっと欠伸を堪えていますのでね。




「まぁ!! 私の言う事が聞けませんの!? 大体、カエデは……」


「そこまで。カエデ、お休み――」



 ユウがアオイと肩を組むと。



「ユ、ユウ!! こ、この!! 放しなさい!! 馬鹿力め!!」


「馬鹿は余分だっつ――の」


「あ――ん!! レイド様ぁ!! アオイは待っていますわよぉ――!!」



 怪力無双のミノタウロスさんにずるずると引きずられて行ってしまった。



 一度掴まれたら最後。


 ユウは放してくれませんからね……。



 あの谷間で受けた苦しさを思い出すと、私の肺が大変苦い顔を浮かべてしまった。




 さて。


 彼女達を見送った事ですので、私も一日の疲れを落としましょうか。



 鍵穴に鍵を差し込み、乾いた音を立ててお部屋へとお邪魔した。





 正面に両開きの窓が添えられ、外から入って来る微風がカーテンをゆっくりと気持ち良さそうに揺らす。



 二つある内、彼は此方から向かって左側のベッド使用していた。




「ただいま」



 窓から入って来た風で蝋燭が消えたのか。


 青白い月明かりが差し込む美しい室内で蟻の声よりも小さな声で到着を告げてあげた。




 ――――――――。




 あれ??


 無言、ですか。



 お帰りの一言を頂きたかったのですが。



「レイド。眠ってるの??」



 自分でも小さいな。


 と肯定できる声を上げて彼の下へと進んだ。





 仰向けに横たわり、ちょっとだけ寝相の悪い姿勢。シーツを邪険に打ち払い、心地良さそうに眠りを享受している。



 初夏を迎えた季節ですけど夜は少々冷えます。



 風がふっと彼の体を撫でて行くと。



「んっ……」



 予想通り。彼がちょっとだけ顔を顰めてしまった。



 寒い、のかな??



「風邪を引きますよ」



 シーツを手に取り、彼の体の上に優しくふわっと掛けてあげると。



「…………」



 顰めっ面が途端に弛緩。


 大変羨ましい寝顔へと変化してしまった。



 きっと素敵な夢を見ているのだろう。


 羨ましい寝顔ですね。



 ベッドの脇にちょこんと両膝を付け、彼の寝顔を観察していると。



「んっ!!」




 今度は暑くなって来たのか。


 私に向かってシーツを投げてしまう。




「…………。横着者ですね」



 頭からすっぽりと被ってしまったシーツを取り、改めて彼の寝顔を確認すると。



「――――っ」




 私の中の何かがトクンっと小さく鳴り響いた。




 此方に向かって寝返りを打ち、怪しい月明かりを受けた彼の寝顔は女のナニかを多大に刺激する破壊力を備えている。



 彼から伝わる男の香。


 そして、甘い吐息が私の手を無意識の内に誘う。




 駄目だと分かっていても手が勝手に動いてしまうというべきでしょうか。




「いつもお疲れ様。レイドは頑張っているよ??」



 彼の頭をいい子、いい子と撫でてあげると。



「…………」



 口角が注意していないと分からない程にきゅうっと上がった。




 私が撫でている事に気付いているのかな??


 それとも違う夢で満足しているのかな??



 私、を。夢の中で見ているのかな……。



 彼の黒い髪に指を絡ませ、指に絡まった髪の毛から何か形容し難い力が流れて来る。




 きっとこの力に私は多大なる影響を受けているのでしょう。




「明日からも頑張ろうね」




 このままでは不味い。


 そう考え、彼に今一度優しくシーツを掛け。


 しっかりと窓と扉に施錠して己のベッドへと横たわり、眠る前に相応しい言葉を彼に対して掛けてあげた。





「聞こえていないと思うけど、一応言うね?? おやすみ、レイド」




 いい夢を見れますように、と。彼の弛緩してしまった寝顔を視覚に焼き付け。


 大分重たくなってしまった瞳をきゅっと閉じ。




 本当にこのままでいいのか?? 後悔して知らないぞ??



 そんな風にずぅっと頭の中で問いかけて来るイケナイ感情を無視して、襲い掛かる睡魔に身を委ねたのだった。


お疲れ様でした。


さて、此処でこの御話を読んで下さっている皆様に一つお知らせが御座います。



もう間も無く第二章に突入する訳なのですが……。


そのプロットが全く出来ていない状況なのです……。


プロット作成の為に土日のどちらかを執筆に回す為、暫くの間は土日に関して。一日投稿が出来ない状況になります。


何を甘えている!! とお叱りになるお気持ちも理解出来ますが……。平日はこれまで通り体調を崩さぬ限り投稿させて頂きますので、どうか御理解を頂けると嬉しいです。


それでは、良い週末をお過ごし下さい。

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