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第百九話 過去の失態は土に植えて笑いの種として育てましょう

お疲れ様です。


本日の投稿になります。


それでは御覧下さい。




 鳥姉ちゃんの部屋を出て一階に到着すると、変態植物共が蠢く森へ出発前する前に立ち寄った大部屋へと案内される。


 私は続々と入室を果たして行く色とりどりの花達の後に続いて、若干後ろ髪引かれる思いで入室を果たした。



 後ろ髪を目に見えない馬鹿野郎にグイグイと引かれてしまう主な要因はあの駄犬の存在よね……。


 アイツも一人の男、そういった行為に及ぼうとする可能性はもしかして、万が一にもあるのだよ。


 私達と行動している時もたまぁに何かをグッ!! と堪えている仕草を見せるしっ。


 それは健全な男である証拠であり、私達に対してもそういった欲求を持っているのは絶対言えないけども……。まぁ悪い気はしない。


 女に見られていないよりかは女に見られている方がマシだからね。



 百歩譲って今回はアイツに看病を任せたが、もし不穏な気配を米粒程度にも感じたら速攻で三階へと飛翔。


 暗闇に浮かぶ月を背景に窓を蹴破り、超絶華麗に登場して行為に及ぼうとする大馬鹿野郎へ怒りの鉄槌を捻じ込み。一生拭い去れぬ恐怖をふかぁく体に刻み込んでやろう……。



 私の、いいや。私達の鋭い感知能力から逃れる事は出来ぬのだよ。



 無駄に体がデケェ猪の鼻息を超える荒々しい鼻息を放ち、大きな円を描く机。


 それを囲む様に置かれているまぁまぁ座り易い椅子に腰を下ろして一息ついた。



「はぁ……。疲れたわね」



 宙を仰ぎ、誰とも無しにそう話す。


 森の中を働きアリ宜しく齷齪歩き続けて訳の分からん森に到着すれば、摩訶不思議な植物に襲われてしかも頭を悩ましてしまう謎解きも提示された。


 まっ、私のすんばらしい頭脳のお陰で難題は快刀乱麻を断つ勢いで解決。


 こうして朗報を携えて戻ってきた訳なのだが……。今日一日の食べる量が少な過ぎたのか、体ちゃんがドップリ疲れているのよねぇ。


 飯を食えば速攻で回復するとは思うのだが、その飯が出て来る気配は無い。


 おやつも食い尽くしてしまったので今出来る事は我慢の一択。


 あの強そうな執事さんは食い物を持って来てくれるのかしら?? 不機嫌なお腹ちゃんもそろそろ限界だと雄叫びを上げてしまいそうだし……。


 それに……。



「普通に暮らしている分には知る由も無かった事を経験出来たし。それにアレクシアの容体も何とかなりそうだから御の字じゃない??」



 隣の親友が私の言葉を拾ってくれる。


 それ自体は物凄く嬉しいのだが、ユウの双丘が大変美味そうな饅頭に見えて来てしまった。


 我慢よ、私。我慢すればする程御飯は美味しくなるのだから。



「そうね」



 態々私達を頼って来た程だ。


 仲間を……。いや、友人を見捨てる事は出来ないし。これは心地の良い疲れと言うべきかしらね。



「では私は食事の用意を手伝って参りますので。少々お待ち下さいね??」



 ピナがカピカピに渇いた私の心を潤す言葉を残して立ち去っていく。


 ほぅ!! やっぱり食事が出るのかね!?



「あの蜂蜜が出て来るのかしら!?」



 女王だけが特別に食す事を許された蜂蜜。言わば天下無双の蜜っ!!!!


 馨しい花の香りが鼻腔を擽り、食べればあらあら不思議。体中に力が漲るではありませんか!!


 以前食した時、度肝を抜かれた超逸品だ。


 今まで生きて来た人生の中で美味い物を挙げろと言われたら間違いなく五指に入る品。


 これで心が逸らない者がいれば是非ともその心構えを説いて欲しいものさっ。



「そんなに美味しいの??」



 ルーが興味津々といった様子で問うてくる。



「美味しい……。そんな安い言葉じゃ表せないわ。あれは、そう!! 芸術の域に達していると言っても過言ではないわ!!」



「大袈裟ですわねぇ……」



 あいつは一々私の言葉に突っかかってこないと気が済まないのか??


 まぁ。当然!! 無視だけど!!



「そんな事より」



 リューヴ。そんな事とはどういう了見かしら??


 私はちみ達にあの蜂蜜の偉大さを今から説こうとしているところなのよ??



「イスハ殿。一つ質問をしても構わないか??」


「んぅ――?? 何じゃ??」


「昔、父上達と戦いを繰り広げていたと聞いたが……。その、具体的にどこで。どんな戦いをしたのだ??」



 少しばかり、控えめな声で話す。


 それは私も興味はあるわね。



「そうじゃのぉ。場所は毎回……ん?? 毎回では無かったか??」



 ちょっと。しっかりして??


 あんたの頭の中は大切な記憶が残らない程に容量が少ないの??



「戦いはこの大陸の方々で発生したわ。北はネイト達のコールド地方。南はルミナの海上。中央はギト山北付近かしらね」



 エルザードがポンコツ狐の代わりに口を開く。



「海上で?? どうやって戦ったのよ」



 泳ぎながら戦うって訳でも無さそうだし。



「ふふん?? 知りたいぃ??」



 うわっ、うざっ!!


 その偉そうな目は何よ!! ちょっと人より綺麗で胸がデカイからって偉い訳じゃねぇからな!?



「グシフォス達は海竜の背に乗り。あ、海竜はテスラの事じゃな」


「お父さんの背中、ですか」



 カエデがぽつりと話す。



「何?? 海竜ってそんなにデカイの??」



 カエデが海竜の姿に変身している姿は何度か見たことあるけど……。育ち盛りのやんちゃな蛇って感じでそこまでデカイとは思わなかったけど。



「この里の大通り。海竜はそれを優に超える長さの体長にまで成長します」


「「「えぇっ!?」」」



 私を含む何人かが大変仲良く驚きの声を上げた。



「ちょ、ちょっと待った。じゃあカエデもいつかそうなるって事??」


「はい。今はその……。余り大きくありませんが。将来的にはそうなると考えられますね」



 はぁ……。あのカエデが巨大にねぇ……。


 いや。


 カエデ自体がデカくなる訳じゃ無い。魔物の姿になったら巨大になるのだ。



「あ、でも。大きさはある程度制御できますので御安心下さい」



 それを早く言いなさいよ。


 驚いて無駄にお腹が減っちゃったじゃん。



「んで、儂達がフィロの背に乗り戦ったのじゃよ」


「母さんのかぁ……。乗り心地はどうだった??」



 小さい頃、あの母親クソババアが無駄に機嫌が良い時に何度か乗せて貰った事があるけど。


 正直乗り心地は良いと思えなかったわね。いや、死を覚悟したと呼ぶべきか……。



 歳柄にもなく燥いで空を縦横無尽に駆け巡り、分厚い雲を吹き飛ばして地上に降り注ぐ雨を防いで植物さん達からのお叱りの声を受けても馬鹿げた飛翔は留まる事を知らず。


 そして何を考えたのか知らんが、私を背に乗せたままずぅぅっと空高く舞い上がり続けていくと深い青からじんわり黒へと変化。


 息を吸う事も、目を開けていられる事も困難になる高さまで昇ると……。




『か、母さん。カ、カヒュッ……。い、い、息がっ!!』


『さぁ……って。マイちゃんには天才と称された私の得意技の一つ。超高高度落下ヘイロースパイクを経験させてあげるっ!!!!』


『や、やめっ……。ギィィヤァァアアアアア――――ッ!!!!』



 娘の懇願を当たり前の様に無視すると、常軌を逸した飛翔速度と自由落下を合わせた速度で地上へ向かって突撃を開始。


 それがまぁ――おっそろしく速い事で。


 母さんの皮膚が摩擦熱?? だっけ。それでチリチリと燃え始め、目ん玉が頭蓋骨の奥に引っ張られ、鳥姉ちゃんのアノ馬鹿げた飛翔と変わらぬ速度で地上が迫って来ると……。




『おぉっと!! 我が家を破壊する訳にはいかないわね!!』


『オゲブッ!?!?』



 大空を従える巨大な翼を広げて急停止。


 母親クソババアの背中にしがみ付いていた私はその停止の勢いに耐えきれず、我が家の中庭にものすげぇ勢いで叩きつけられてしまったのだ。



『あはは!! マイちゃん、火の扱いに失敗した鍛冶屋さんの髪の毛みたいになっているわよ??』


『て、テメェが馬鹿げた速度で飛ぶからだろうが!!!!』


『テメェ?? あらあらまぁまぁ、この子はいつから親に向かってそんな口を利く様になったのかしらぁ??』


『ケ、ケヒュ……。じ、実の娘を中庭でこ、殺す気かっ!?』


『殺すのならもうとっくにヤっているわよ。さ、ごめんなさいしましょうね――??』



 ド太い龍の腕で首を絞められた日には流石の私も死を覚悟したわね。


 そうやって考えると……。母さんはいつか私が光と変わらぬ速度で飛ぶ事を見越して、あの速度を経験させたのかしら??


 いや、それはねぇな。


 あの母親クソババアはその時のノリで指導方針を決めるし。


 しっかし……。母さんは重力を味方につけて速く飛んでいたけど、鳥姉ちゃんは風と重力に逆らって母さんと同じ速度……。いや、それ以上に速い速度で飛んだのか。


 自称最速の言葉に嘘偽りは無いかもね。あ、勿論短距離なら私に分があるわよ??


 別に負けず嫌いを発動する訳じゃないけど、鳥姉ちゃんに負けっぱなしなのは癪なので一応……、ね??



「えっとぉ。そのぉ……。まぁ、悪くは無かったわよ??」


「じゃ、じゃな。悪くは無かった」



 昔から最悪だったんだ。


 母さんの性格を考慮すれば容易に窺えるわ。


 相手に対して激昂して、空を裂き、雲を薙ぎ払い、海を割ったんでしょう。



「そこでの勝敗は??」



 ユウが興味津々といった感じで二人に問う。



「そこでも引き分けじゃよ」


「両者譲らず。って感じね。グシフォスが龍の姿になって暴れ狂い私達はそれを迎撃して海に叩き落としたの。んで、テスラを気絶させちゃったのよ」



 うはっ。


 あんた達ならやりそ――。



「お父さんが気絶……。ふふ。意外です」



 おっ。珍しいカエデの笑い顔、頂きましたっと。


 憎たらしい程可愛いわねぇ。



「フィロの鋭い平手……。右の拳がグシフォスの顎を捉えてね?? 海上に叩きつけられたのよ。それを受け止めようとしたネイト達が巻き添えを食らって……」


「何よ。それじゃあエルザード達の勝ちじゃない」



 若しくは。


 母さんの一人勝ち、かな??



「刹那の勝利に儂らも多大な犠牲を被ったのじゃよ……」



 多大??



「ん――。今から話す事はフィロに内緒にしてくれる??」



 この含み笑い。


 妙に、興味をそそるわね。



「勿論。母さんには内緒にするわよ」



「ふふん。グシフォスが龍に変身して上空へと舞い上がり。私達が魔法と刀、そして拳でそれを迎撃して戦いが始まった」



 ほうほう。


 これは大方予想通りね。



「海上からテスラ達の援護魔法と時折飛び掛かって来る雷狼とミノタウロス、目の前には覇王。それはもう私でも死を覚悟した程よ」


「あそこの戦いはとりわけ、熾烈じゃったな」



 この二人が言う程だ。


 余程の激戦だったんだろう。



「どれ位続いたのかしら。一晩??」



 まぁ血気盛んな母さんがそれ程で収まる訳ないが。



「いや。二晩は続いたのぉ」



 ほらね??



「血を流して魔力が底を尽きかけ、それでも私達は死力を尽くした」


「覇王が怒り狂い、空が荒ぶる」


「フィロはそれでも翼を休める事なく、私達を乗せ続け覇王に対抗していたわ」



 イスハとエルザードが珍しく息を合わせて会話を続ける。


 母さんやるなぁ。父さんと一対一タイマン張れる奴なんて早々いやしないのに。




「で、でも……ね?? ぷっくくっ……」


「そ、そう……。じゃなっ……」



 二人が湧き上がる笑いを堪えて腹筋に力を籠めている。


 何よ、二人して気持ちわりぃ顔して。



「あ――駄目。ちょっとあんたが言いなさい。思い出すだけで笑い死にしそうよ」


「わ、儂も無理じゃて……」


「ちょっと――。頑張りなさいよ」



 早く続きを聞きたいんだけど??



「はぁ……。落ち着いた。戦いは一進一退の攻防が続いて、二晩目に突入したの。グシフォスの激烈な尾の薙ぎ払いをこの狐が蹴り返して天に轟く轟音が空に響いた」



「その時じゃな。フィロが妙に顔を顰めたのは」



 母さんが顔を顰める?? 何だろう?? お腹が空いた……とか??



「フィロが。『イスハ、そ、その……。衝撃波を発生させないで欲しいの』 と言うのじゃ」



「当然、私達はそれどころじゃないから全会一致で無理っ!! って伝えたわ。朝日が昇ろうとして東の空が白み出す頃。フィロの動きが随分と鈍り始めたの」



 怪我、かな??



「あ、勿論怪我とかじゃなくてね??」



 違うのか。



「覇王の攻撃に後れを取り始め鈍った動きの所為か。海上からの攻撃にも鈍重で」


「それにのぉ。ククッ、足を内股で擦り合わせておったわ。覇王の攻撃を食らい始め、でも何故か。胴体への攻撃は全て完璧に防いでおったわ」



 体調不良かなぁ??


 でも母さん、馬鹿だから体調崩した事ないし。



「いよいよ朝日が昇り、戦いは三日目に突入しようとした。覇王が放つ灼熱の炎が私達の目の前に放たれた」


「妙に弱ったフィロには避ける術は無く。儂達が全魔力を解放し、それを跳ねのけた」


「爆煙が残る空、それを突き破って覇王が私達の目の前に現れ。フィロの体に己の鋭い爪を突き立てようと天高く振り上げたの」



 父さんの一撃かぁ。


 想像するだけで寒気がするわね。



「初撃は躱せた。しかしのぉ。続く二撃がフィロの胴体を襲ったのじゃ。体を襲う激震。それは波紋の様に広がり背に乗る儂達もその余波を受けて足元から崩れた。フィロからは悲鳴にも近い悲痛な絶叫が漏れ、儂達はいよいよかと覚悟を決めた」



「迎撃態勢が整わない私達に勝利を確信した覇王が右の爪をフィロの首に叩き込もうとした刹那。フィロが泣き叫んだの。 『も、も、もう無理ぃぃいいっ!!!!!!』 ってね」



 無理?? 戦えないって事??



「フィロの体の中に残る魔力、気力、体力が刹那に弾け。右の拳に全てを乗せて覇王の顔に叩き込み、海上へと叩き落とした。その時ね。テスラが気絶したのは」



「お父さんなら仲間を庇う為に多分、そうするかと」



「辛くも勝利を収め、儂達はホっと息をつこうとしたのじゃが……。何を思ったのか。フィロは血相を変えて大陸の方へと常軌を逸した速さで飛び立つではないか。儂達は当然、面食らい。呆気に取られ背に乗っておった」



 うん??


 どうしたんだろう。



「暫くすると大陸が見え、陸地に降ろしてくれるかなぁって思ってたらさ」


「儂らを背に乗せたまま海に飛び込んだのじゃよ。丁度この季節の海じゃったから、随分と冷たかったのぉ……」


「それで?? 母さんは何で海に飛び込んだのよ」



 感慨深く、しみじみと話すイスハに言った。



「海水をたらふく飲まされた儂達は当然海面に出るなり文句を言ったわ。これ!! 陸地に降ろさぬか!! っとな」


「ここらが傑作なのよ」



 傑作??




「海は足も付かぬ深さでな?? 儂達は冷やっこい海の中でフィロを睨みつけた。しかし、あ奴は……。あ奴は……。くくくっ……!! 海面から龍の顔を出して、天を仰ぎ、この世の幸福をいっぺんに享受した様な。それはそれは幸せそうな顔を浮かべておった」



「ぷっ……くくっ!! はぁ……。肩を小刻みに振るわせて幸せそうな顔を浮かべているのよ?? こっちは何が起こったか分からないじゃない??」



 まぁ……、激戦の後を考えるとそうなるわよね。



「途方に暮れ、その幸せそうな顔を見ておると……………………。突如として海水が温くなり始めおった」



 楽しそうな表情から一転。


 イスハの顔が途端に曇り始めた。



「あんた達にとってはトラウマよねぇ――??」


「ふんっ。貴様は空に浮いておったからな」


「…………。ちょっと待って下さい。先生、空に浮けるのですか??」



 カエデが数舜で食らいつく。



「え?? うん。重力操作と風の付与魔法で飛べるけど。アレ?? 言ってなかったっけ??」



 ほぅ、ドスケベ姉ちゃんは空を飛べるのか。それは初耳だ。



「初耳です。後でその魔法の術式……」


「や――よ。これは私が数年掛けて完成させた術式だもんっ」


「それは先生の主観です。私は先生の生徒であり指導を受ける義務があります。そして、先生にもその義務は少なからず発生する訳で……」


「あ、あぁ。うん。ま、また今度ね……」



 グイグイと迫る海竜にたじろぐ淫魔。


 ボケナスと狐とは大違いの関係性よね。



「ミルフレア、フォレイン、儂。皆同じく首を傾げておったが……。その温さを受け、刹那に己の置かれた状況を理解したわ」


「「っ??」」



 私達が仲良く首を傾げていると、鼻息の荒い海竜から逃げ遂せたエルザードが衝撃の事実を語り始めた。










































「よく考えてみなさい。長時間の戦闘、突然動きが鈍る、胴体への衝撃を嫌がる、戦闘を強制終了、温かくなった海水。これが示す事は……」



 う、うっそ。


 まさかそれって……!!!!



「そうじゃよ。フィロは覇王をぶちのめし。剰え、儂らを巻き込み盛大に……」


「端的に言うと。イスハ達を巻き込んで冷たい海水温を上昇させる程の量を……」


「そ、そ、それってぇ」



 お、お願い!! ど――か私の考えが間違っていますようにっ!!!!



「うん。覇王を瞬殺したのは……………………。尿意を我慢出来なかったからなの」




「「「……………………ブッ!! あははははははは!!!!」」」



 残念無念。私の予想は悪い意味で裏切られたわね!!


 ちょっとか、母さん!!!! 止めてよ!!


 娘にまで恥をかかせんな!!!


 周囲が大笑いに包まれる中。私の顔は身内の大失態によって火が出る程熱くなってしまった。




「ぎゃはは!! す、凄いな!! マイの母さん!! 尿意に耐えられ無くて……。覇王をやっつけちゃうんだ!?」


 ユウが腹を抑えて笑い。


「あんな怖いお母さんでも……。あははっっ!!!! そうだよねぇ!! 駄目ぇ!! 腹筋取れちゃう!!!!」



 ルーは椅子から転げ落ちて、地面をのたうち回り。



「くっ……。便意は致し方ないが……」


「そ、そうですわねぇ……。くくっ。あのお強い方にも勝てぬ物があった事にしましょうか」



 リューヴは腹を抑えて机に伏し、蜘蛛は両手で笑いを抑え込む。



「海水温が上昇する程の量ですか……。ふふふ。あはは。せ、先生。怒らても知りませんよ??」



 何と、カエデまで口を開けて笑うではないか。



「これを知ったあなた達も共犯よ」


「で、でも。イスハ。あはは!! はぁ……。どうだった?? 温かい海水は??」



 ユウが目に浮かぶ巨大な涙を拭きながら、イスハに尋ねる。



「そうじゃのぉ…………。道着の隙間からぬるりと侵入し、何とも言えない温かさが包み。春の訪れを感じる暖かさじゃったなぁ……」



「「「ブフゥっ!! あはははは!!!!」」」



 しみじみと語る姿が多分に笑いを誘う。


 遂に私も堪え切れずに大口を開けて、体の中から陽性な感情を解き放ってやった。



「お主らなぁ。儂達の状況も考えてみろ。戦いで疲れ果てて、待ち受けていたのは……。体を包む妙な温かさじゃぞ?? ふふっ。確かに、それは面白い結末じゃがな??」



「だ、駄目だぁ!! あたし……。ぐくっ……。腹筋が捻じ切れる!!」


「はぁ……、はぁっ……。あはは――!! 駄目ぇ!! 笑い死んじゃう!! ユウちゃん助けてぇ!!」


「無理無理ぃ!! あ、あたしも死にそうだもんっ!!!! ギャハハ!!」



 大部屋が笑いの渦に包まれる中、一人の女性が何も知らずにすっと扉を開けて入って来る。



「お待たせしましたぁ……って。皆さん、どうしたんですか?? 笑い転げて??」



 小首を傾げるピナを尻目に、私達は心行くまで母さんの失態を堪能したのだった。






最後まで御覧頂き有難う御座いました。


日に日に暑くなっていく今日この頃、皆様は暑さに参っていませんか??


私の場合、漸く食欲が復活したので本日は愛して止まないサッポロ一番味噌ラーメンを頂きました。


暑い季節に涼しい部屋で熱いラーメンを食べる。これもまた乙なものとはおもいませんか??



さて、現在は次の御使い前の日常パートのプロットを作成しているのですが。それも佳境に入りお次は目的地までの御話に取り掛かる所です。


その道中、寄り道をしないのは彼等らしくないので後の話にも出て来る街へと立ち寄ります。


おいおい、いつも寄り道ばかりで全然話が進まないじゃねぇかと読者様は常々感じているかと思いますが……。彼等の冒険の詳細を少しでも読んで頂きたいと考えておりますので御了承下さいませ。




そして、ブックマークをして頂き有難う御座いました!!


暑さで枯れかけた執筆意欲に嬉しい励みとなります!!



それでは皆様、クーラーの適切利用を心掛けてお休み下さいね。

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