表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
501/1237

第百八話 役得なのか、貧乏くじなのか

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 普遍的に流れ行く時間の中で本日も変わりなく空は茜に染まり、清らかに晴れ渡った空を横切る鳥達が若干呆れた歌声を呟きながら小隊の頭上を通過して行く。


 そして地上で生活する鳥……。


 基、ハーピーさん達も驚きを隠せないといった感じで危険な森から無事に生還した俺達を迎えてくれた。



 ある者は。


『酷い怪我ですね。やはり食人の森は恐ろしい場所でしたか……』


 と、盛大に目を見開いて言葉を放ち。またある者は。


『よくぞ御無事で!! 何か収穫はありましたか!?』


 と、女王様の容体が依然芳しくない事を仄めかしつつ俺の怪我を見て驚きの声を上げていた。



 ハーピーの里の人々に対し危険を乗り越えて勝ち取った朗報と怪我の具合を的確に伝えつつ。


 巨人用の馬鹿げた大きさの足枷を嵌められたかの様な重さに変化してしまった両足を懸命に前へと動かして女王様が休まれる屋敷へと向かっていた。



「レイド、大丈夫か??」



 ユウが心配そうな瞳を浮かべてこちらを覗き込む。



「これが大丈夫そうに見えるの??」



 右腕には龍の力による爪痕が残り今も白い布を巻いている。


 そして額、左上腕にも同じく布を巻き齷齪とハーピーの里の通りを歩きながら若干ぶっきらぼうに答えてあげた。



 まぁ、龍の力及び戦闘による負傷は分かりますよ?? 自分の不甲斐なさが招いた結果ですから。


 しかしですね……。



「怪我の大半はあっちの所為だよなぁ」


「無きにしも非ずと言っておこう」



 ユウが呆れた視線を送るその先。この怪我の大本の原因が堂々と小隊の先頭を歩き俺達を誘導していた。



「はぁ――。臭くなくて助かるわぁ」


「貴様!! いい加減しつこいぞ!?」



 人知れず人間を助けてくれていた事には感謝を伝えましたよ?? その事に対して本当に驚きもしたし、改めて尊敬もしましたからね。


 しかし。


 理不尽な暴力で一人の男を不必要なまで痛めつけるのは了承出来ないと思うのですよ。


 これが指導なら喜んで負傷します。ですが……。



「乱痴気騒ぎに巻き込まれてこの怪我だもんなぁ」


「俺は何も悪くないぞ」



 友人の分の荷物を背負い大変羨ましい足取りで進むユウを睨んでやる。



「あたし、何も言っていないよ??」



 ヘヘっと。


 ユウらしい快活な笑みを浮かべて俺の憎悪を受け流す。


 小麦色に焼けた肌に大変良く似合う笑み。


 こんな状況じゃなければ今の笑みで丼三杯は軽く食べれますけども。



「はぁ……。まぁいいや。取り敢えず問題は解決の流れだし」



 この憤怒を継続させるのもそれ相応の体力を消耗してしまう。怪我の治りが遅くなればそれこそ次の任務に支障をきたしてしまうし。


 そろそろ気持ちを切り替えよう。


 大きく息を吸い込み新鮮な空気を肺に取り込むと幾分か気分も楽になってきた。



「流れ、だけどさ。レイドはこれから寝ずの看病だろ?? その怪我で大丈夫??」


「余裕だよ、よゆ――。アハハ」



 乾いた笑いを放ち、四肢を襲い続ける痛みを誤魔化す。



「顔こわっ」


「ユウも理不尽な大怪我を負ったら分かるさ」


「あたし、大怪我した事ないからなぁ」



 でしょうね。呆れた頑丈さだもんね――?? そして無意味に殴られる事もないでしょうからね――!!



 い、いかん。取り乱すな……。


 ここからが本番だぞ。俺の看病如何ではアレクシアさんの容体が悪化してしまう恐れもある。


 弛んだ気持ちを引き締め、誠心誠意を籠めて看病を務めましょう。



 自分に厳しくそう言い聞かせるとアレクシアさんの屋敷が見えて来た。



 茜色に染まる背の高い木造建築物は当然ながら無表情で俺達を迎えるのだが、今日だけは何だか呆れにも似た顔を浮かべて俺を見下ろしている様に見えるのは気の所為でしょうかね??



 そんな辟易した顔とナリで女王の領域に足を踏み入れるな。



 無表情で佇む彼からの鋭い忠告を確と受け取り、一族を纏める女王様との謁見に相応しい表情に切り替えた。



「さぁ皆さん!! 行きましょう!!」



 ピナさんが屋敷の扉を勢い良く開き中に進んで行くと。



「皆様、お帰りなさいませ」



 ランドルトさんが俺達の労を労う様に優しい面持ちを浮かべて迎えてくれた。



「ランドルトさん!! 女王様の容体、何とかなりそうですよ!!」



 ピナさんが喜々として彼に近寄り、誰よりも早く口を開く。



「真で御座いますか??」


「はいっ!! この薬を飲んで頂き。レイドさんが一晩看病すれば治るそうです!!」



 喜々とした表情を浮かべるピナさんから俺へ向かって視線を移すと同時。



「レイド様お一人で?? えっと……。その御怪我で看病を??」


「え、えぇ。まぁ……」



 心配というよりも、あの状態ではあからさまに不可能であろうと決めつけてしまう瞳を浮かべてしまった。



 そりゃそうでしょう。


 まるで戦地帰りの姿ですものね。



「そ、それはそうと。食人の森は如何で御座いましたか??」


「すっごい怖かったよ!!」



 ルーが軽快な言葉で、大雑把な感想を述べる。


 素晴らしく的確に的を射てはいるが……。


 端的に話し過ぎですよ??



「詳しい事は後で説明します!! 皆さん!! アレクシア様の様子を見に行きましょう!!」



 居ても立っても居られないのか。ピナさんが大股で階段へと進む。



「レイド様。後で毛布と……。そうですね。お食事等必要な物をお持ち致します。」


「っと……。ありがとうございます」



 ランドルトさんの声を受けて一人歩みを止めた。



「アレクシア様の事、宜しくお願いします」


「それは、はい。全力で看病します」



 全力の看病とは一体どういう状態の事を指すのか分からないが……。


 まぁ、この場に合った雰囲気の言葉でしょう。



「怪我の状態が芳しく無ければ休まれても構いませんよ??」


「体の丈夫さには定評があるので御心配なく」



 例え痛みで倒れても、そして過労によって意識を失ったとしても疲弊する体に鞭を打ち。奥歯を噛み砕く勢いで噛み締めて立ち上がり真心を込めて看病に務めさせて頂きます!!


 それは流石に大袈裟と言われるかも知れないが、それ位の気概を持たないと一分も経たない内に倒れてしまいそうなのですよ。


 心の中で激しく燃え盛る忠誠心とは対照的に口元を柔らかくして彼へそう伝えた。



「左様で御座いますか。では、私は色々と御用意する事が御座いますので失礼しますね」


「あ、はい」



 背を正し、綺麗なお辞儀を残して奥の通路へと姿を消して行った。


 うぅむ……。一切ブレる事のない体の芯、そして気配を消失させる事を可能とした歩法。


 ランドルトさんってやっぱり武の心得があるよな?? それもとびきりに凄い奴。


 師匠は黒翼の騎士と呼んでいらっしゃったし、しかもアレクシアさんの先戦闘指南まで受け持っていると移動中にピナさんから伝え聞いた。



 この一件が片付き、時間がある様ならば一度指南して頂こうかしら??




「これ。はよぉ来い」


「あ、はい。只今!!」



 階段の上方から師匠の声が響く。声量からしてもう二階を上がっていった所か。



 出発前のアレクシアさんの容体は正直、芳しく無かった。


 あれから三日。今はどうなっているのだろう……。


 彼女の苦しむ様子が俺の足を速め、温かな木の香りが漂う階段を昇り始めた。


 そして女王様の御部屋へ続く廊下に到着すると。



「アレクシア様……。ピナです!!」



 ピナさんが丁度扉を優しく叩く所であった。


 神妙な面持ちでそっと静かに扉を開くと、いつもよりも速足で薄暗い部屋へと姿を消してしまう。



「私達も入りましょうか」


「分かった」



 エルザードに続いて各々が静かに部屋に入ると。



「アレクシア様!! 只今戻りましたよ!!」



 彼女は人目も憚らず駆け出して今もベッドの上で荒々しく呼吸を続ける女王の下へと参じた。




「…………」



 ピナさんの問い掛けにも応じず、苦悶の表情を浮かべて苦しそうな呼吸を続けている。


 額には大粒の汗を浮かべ、体内から湧き起こる熱で頬が上気し、濡れた薄い桜色の前髪が症状の重さを包み隠さずに他者へと知らせていた。


 出発する前と殆ど変わっていないな。


 マウルさんから貰った液体が効けばいいけど……。




「まだ熱が……。アレクシア様。お辛いと思いますが、これを御飲みください!!」



 ピナさんが優しく彼女を抱きかかえようとすると。



「手伝うわよ??」


「よっと。こっちも準備出来たぞ」


「ありがとうございます!!」



 マイとユウがアレクシアさんの体を両脇から支える。



「ゆっくりでいいので……。御飲みください……」



 透明な小瓶の封を開けて慎重にアレクシアさんの小さな唇へと運ぶ。



「…………」

「そうです……。頑張って飲み込んで下さい」



 混濁した意識の中。


 ピナさんの言葉を頼りにして懸命に液体を喉の奥へと流し込む。


 細かい汗で濡れた喉がゆるりと上下し、外部からでも液体が滞りなく体内へと流れ込んだ事を確認した。



 これで、いいんだよな??



「ふぅ……。飲みました、よね??」


 ピナさんが小瓶を仕舞い、静かに横たわるアレクシアさんの様子を覗き込む。


「ん――。特に変化があるって訳じゃないし」


「マイ。いきなり良くなる訳ないだろ?? 後は経過観察を続ければいいんじゃない??」



 ユウが誰とも無しに声を上げた。



「でしょうね。はぁ――い。私達に出来るのはここまで。後は……ちょっと歯痒いけど。レイド、彼女の側についてあげなさい」


「了解だ」



 エルザードの声を受け、ベッド脇に置かれているしっかりとした作りの椅子へ腰掛けた。



「これから暗くなるし……。よっと」



 エルザードが指を鳴らすと……。



「おっ。助かるよ」



 部屋の蝋燭に火が灯り柔らかい橙の色が部屋を照らした。



「それとその無粋な装備。マイ達に預けなさい」


「お、おう」



 肩から抗魔の弓を外し、腰に装備していた短剣二刀を近くのリューヴへと素早く預けた。



「主、預かるぞ」


「頼む。それじゃ、何か変化があったら呼びに行くよ」


「ん――。了解」



 マイが右手を上げ、その足で部屋を出て行こうとするが……。



「…………。手ぇ、出すなよ??」



 扉の前で振り返り、恐ろしく尖った深紅の瞳で釘を差して来た。



「ば、馬鹿じゃないのか!? 病人に対してそんな事する訳ないだろ!!」



 こ、これは流石に心外だ。


 俺はそこまで落ちぶれてもいないし、それに弱っている人に対してそういった行為を及ぼうとする程クズでも無い!!


 一体全体君は今まで俺の何を見てきたんだ!?


 小一時間程説教してやりたい気分ですよ!!




「分からないわよ?? あんたの事だし??」


「そ――そ――。端整な顔に誘われて――。ってか??」


「はいはい。アレクシアさんの体に障る。早く出て行けって」



 俺を揶揄う深紅と深緑へ向かって早く出て行けと手であしらってやった。



「ふんっ。ユウ、行くわよ」


「ん――」


「レイド様!? くれぐれも変な気を起こさぬ様に!! 良いですわね!?」



 横着者二人を先頭に色とりどりの花達が部屋から出て行くと、病人が享受すべき本来の静寂が訪れてくれる。



 はぁ……。喧しくて申し訳ありませんでしたね?? 静かに休んで下さい。


 ベッドの上に眠る麗しき一人の女王へと心の中で呟いた。



「おっと……」



 手拭いを変えるか……。


 ベッド脇の水桶に手拭いを浸し、しっかりと水気を切ってアレクシアさんの額へと乗せてあげる。


 うん!! 看病はこうじゃなきゃな。



「ん……」



 この冷たさが心地良かったのか、鶯も思わずエッ!? と。二度見する美しい声が静かに漏れた。



 濡れた前髪の間から覗く汗に濡れて上気した顔、体の中に籠る熱を逃す為に微かに開いた胸元が男のイケナイ部分を多大に刺激。



『すぅ――。ふぅぅ――……。うっし!! 準備完了っとぉ!!!!』



 …………。


 駄目だぞ、俺。変な気は起こすなよ??


 筋力運動を終えて良い感じに体を解して何かの準備を整えた大馬鹿野郎を尻目に自分を戒め。



『え、えぇっ!? ここまできてそれはねぇよぉ!! 一回!! 一回だけだって!!』



 その一回の過ちがアレクシアさん達との清らかな関係を崩してしまうので了承出来ませんよっと。



 ムンムンと熱気を放つ性欲の言葉を無視して窓の近くへと移動を開始した。



「……」



 茜に染まっていた空を黒が覆い始め、眼下に広がる家々から橙の明かりが漏れ始める。


 人の営みが確実に行われている様子にどこかほっと息を漏らす。


 ハーピーの人達って夕食はどんな物を食べるんだろう??


 パン?? 米??


 里を解放した時、宴を共にしたけど家族団欒の姿は見た事が無いし。


 どこにでもある普遍的な夕食の風景を思い浮かべていると胃袋が庶民的な味を思い出してしまったのか。大変苦い顔で不機嫌な声を出す。



「今日は殆ど何も口にしていないからな……」



 朝一番からの移動、捕食の森での度重なる戦闘に横着者達の保護観察。


 栄養を補給する時間が取れなかったのが悔やまれますね。



 腹が減っているのは分かる。


 けどな?? 俺は看病をしているんだ。


 栄養を欲する胃袋へ向かって強く言い聞かせていると扉を叩く乾いた音が響いた。



「はい。どうぞ」



 アレクシアさんは床に伏せていますし、彼女の代わりに声を上げても構わないでしょう。



「失礼します」



 扉から現れたのはランドルトさんであった。


 右手に盆、左の脇に温かそうな毛布を抱えている。


 盆の上には美味そうな蒸気を上げて早く手を取りなさいと手招きしている器と、粘度の高い琥珀色の液体が詰まった瓶。そして食欲を湧かせてくれる小麦色のパンが乗せられていた。



 胃袋よ。絶対卑しい声を出すなよ??



「あ、態々どうも」


 自制心を最大限に高めて声を出した。


「アレクシア様の容体は如何でございますか??」



 以前此処でアレクシアさんと共に食を過ごした机の上に盆を乗せて素敵な声量で口を開く。



「先程、マウルさん……。森の賢者から頂いた薬を飲ませた所です。まだ……変化はありませんね」



 ランドルトさんから彼女へと視線を移す。



「そう、ですか。毛布はこちらに置いておきますね」



 先程まで着席していた椅子に毛布を静かに置いてくれる。


 何から何まで用意して頂いて本当に申し訳ありません。



「どうも。マイ達にも食事を??」


「はい。これからで御座います」



 おっと。それなら幾つか注意点を伝えておかなきゃな。



「その……。申し上げ難いのですが。アイツらは常軌を逸した食欲でありまして……。お代わりを必ず強請ると思いますが、分を弁えた量で満足するように言ってやって下さい」



 他人様の、しかも女王様が暮らす屋敷で際限なく食い散らかすのは……。


 流石に、ね。



「ふふ。それしきの事で御座いますか。安心して下さい。皆様は大変疲れていると思われます。疲弊した体を癒すのは食。命の危機に瀕してまで薬を取りに向かってくれた恩を返さなければいけませんので」



 俺の怪我を労わる様に見つめて話す。


 この傷の大半は身内から受けた物ですよ??


 そう言いたいのをぐっと堪えた。



「一応、忠告しましたからね??」


「ありがとうございます。レイド様のお食事はこちらで御座います。冷めてしまう前に頂いて下さい」


「態々すいません」



 今にも駆け出してしまいそうになる体を宥めてやる。


 俺はどこぞの卑しい龍か。



「蜂蜜はここだけの話。特別な物を用意させて頂きました」


「特別??」


「女王様のみが口にする事が出来る蜂蜜で御座いますよ」



 あ、あれか!!!!


 素敵な味を思い出したら、口の中が唾液の洪水に見舞われてしまった。



「内緒ですよ??」



 片目を瞑り、周囲に聞こえぬ様呟く。



「重ね重ね申し訳ありません」


「一晩中看病されるのですからね。栄養の摂取は怠らない様にしませんと。では、私は食事の用意が御座いますので失礼しますね」



 手本にしたくなる礼儀正しいお辞儀をすると、足音を立てずに部屋から出て行ってしまった。


 静かに歩くなぁ。


 うちの仲間も見習って貰いたいものだよ。


 それはさて置き……。



「食事の時間ですね!!!!」



 浮足立つのを堪えて静かな足取りで机の前に到着すると、姿勢を正して椅子に腰掛け本日初めての真面な食事と相対した。



「おぉ……」



 美しい白磁の陶器の中で泳ぐ根菜達がこちらを見上げて手招きをしている。


 うふふ。そう逸らなくても直ぐに掬ってあげますからね??


 木の匙で恥ずかしがり屋さんを掬い、口の中へ迎えてあげた。



「うっま!!」



 体から流れ出てしまった汗を補う塩気が舌を喜ばせてくれる。


 ジャガイモのほくりとした感触が咀嚼を促し、人参の仄かな甘味が味全体をより良いものへと昇華。


 はぁ……。いいねぇ。


 塩分を失った体に持って来いの品だ。


 ですが!!


 これの存在の前では例え王宮の料理人が魂を籠めて作ったスープでさえも霞んでしまう事であろう。



「よっと……」



 瓶を開封すると蜜蜂さん達が滝の様な汗を流し、苦労して集めた花の香りが部屋中に充満した。


 う、嘘でしょ??


 蓋を開けただけで、これ??


 匂いを嗅ぐだけでもう既に心が満たされ、美しい花が方々で満開に咲き乱れる野原に佇んでいる錯覚に囚われてしまった。



 役得というべきか……。


 この場にアイツがいなくて助かったよ。


 居たら間違いなく、俺から瓶をふんだくって行った事だろう。



 悪いね。俺だけ食べちゃって。



 匙でトロリと食欲を誘う液体を掬い、拳大のパンにかけていく。


 甘い物が少し苦手な俺でも全然食べられちゃうもんね――。



「うぉぉ……」



 な、何て事だ。世の中にこれ程贅沢なパンがあるだろうか??


 琥珀色と小麦色が織り成す、相乗効果。


 視覚が、嗅覚が……。


 いや。五感全てが震える程歓喜の声を上げている。



「い、頂きます……」



 恐る恐る口を開けて芸術品を一口。


 そう、たった一口だけ齧った。



「……。くぁっ!?」



 う、嘘だろ!?


 花の香りが脳天を突き抜け、手の先から足の爪先まで一瞬で駆け巡って行った。


 全身の部位で花の香りを感じるって……。さ、流石にそれはおかしいでしょう!?



 世界は広く、俺がまだ知らぬ場所は無数に存在するだろうが。この味を超える蜂蜜は無い。


 そう自ずと理解して徐々に減りつつあるパンを惜しむ様に、大切に咀嚼を続けながら素敵な食事を続けていった。



最後まで御覧頂き有難う御座いました。


先日の体調不良から徐々に快方へ向かっているのですが、今日も大変暑かったですよね。


この体には随分と堪えてしまう暑さですよ……。


さて、本日の執筆の御供は。


this time its war のキャッチコピーを引っ提げ前作からパワーアップして帰って来た『ALIENS 邦題名 エイリアン2』 です!!!!


この映画はもう最高の一言に尽きます。


恐らく私が人生の中で一番鑑賞した映画では無いでしょうか??


前作は閉鎖的な空間でのサバイバルホラー。そして二作目は宇宙海兵隊員達と大量のゼノモーフとの死闘。


見どころ満載の作品に仕上がっており、今でも飽きないで見る事が出来ます!!


中でもお気に入りのシーンは、主人公が幼女を救いに敵のハイブ(巣)へ向かいエレベーターで下りて行くシーンですね。


一人静かに武器に弾薬を詰め、恐ろしいまでの緊張感を誤魔化す様にとても大きく息を吸い込むシーンは本当に上手いなぁっと思ってしまいます。


主人公は戦いを生業とした者では無く、一人の女性。そして敵は圧倒的な物量で海兵隊員を軽く凌駕する戦力を持っています。きっと本心では本当に恐ろしくて足が竦んでしまう事でしょう。


しかし、呼吸を整えるとその恐怖心は消失して戦士の目と映り代わり敵の本陣へと突撃を開始するのです!!!!


強き戦士と強き母親。


この二つの顔を同時に表現した演者さんの演技力には正直脱帽ものですよ。



まだまだ語りたいシーンは山程ありますが、そんな事を書いている暇があればプロットを書けという読者様の鋭い指摘が光る画面越しに聞こえてきましたので本日は此処までとします。



それでは皆様、お休みなさいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ