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第百一話 不意に課せられた課題 ~来訪者様達へ贈る細やかな問い掛け~

お疲れ様です。


本日の投稿になります。


題名に記した通り、彼等にはある問いが課せられます。皆様も彼等視点で考えて頂ければ幸いです。


それでは御覧下さい。




 大量の触手との激しい戦闘を終えてもまだまだ隊には余力があるのか。



「次の部屋はどんな仕掛けが待っているのかしらね!!」


「お前さんは元気だなぁ――。あたしは平穏に過ごしたいから何事も無い事を祈るよ」


「わ、私もユウさんに同意します。あんな化け物がうじゃうじゃ襲い掛かって来たら身が持ちませんって」


「はぁ――っ?? それを楽しまなきゃ意味が無いじゃん!! 何の為に此処へ来たのよ!!」



 緑の壁に挟まれた通路内ではうら若き乙女達の軽快な声が乱反射していた。



 右に大きく曲がったり、半ば強制的に左折させられたりと。先程通って来た通路に比べるとやけに湾曲しているな。


 少々喧しい彼女達の会話をおかずにして母なる大地の鼓動を掴み取れる茶の土を何とも無しに踏み続けながら進み続けて行く。



 そして龍族の超問題児さんよ。俺達は植物の化け物と戯れに来たのでは無く、アレクシアさんを救う手立てを請いに来たのでそこを履き違えないで下さい。



 果たしてこの通路の先に待ち構えているのは何か。願わくば平穏が待ち構えている事を願おう。



 此処へ来る前に四方向に別れる道があると聞いたから、お次に現れるのは別々の方角に咲く四つの花かと思いきや……。



「はぁっ!? ここって入り口じゃない!!」



 俺達は悪い意味で期待を裏切られ、元来た入口へと舞い戻ってしまった。



 マイが驚くのも無理はない。


 だが、現にこうして。


 青緑、紫、赤の花が俺達を見下ろしているのだ。



「ふぅむ?? 一体どういう事じゃ」


「どういう事も何も……。赤が不正解なのよ」


「先生。何か分かりましたか??」


「ぜ――んぜん。ちょっと!! マウル!! 悪戯が過ぎるわよ!!」



 エルザードが憤りの声を空に向かって叫ぶ。



『ほっほっ――。すまぬすまぬ。偶には変わった余興も一考かと思ってのぉ。お茶目な儂からの贈り物じゃて』



『余計な事を……』



 師匠とエルザードを含む数名が宙を睨んだ。



「マウルさん。正しい色を辿って行くのは分かります。宜しければ何か助言を頂けますでしょうか??」



 カエデが空へ向かっていつもの優しい口調……。じゃあないな。


 ちょっとだけ怒気が含まれている声色を放つ。



『助言のぉ。賢き海竜の子よ。教えてやらんでもないぞ??』


「おや。私の事も御存じで??」



「そりゃそうよ。マウルはテスラの先生だからね」



 えぇっ!? テスラさんの先生!?



「えっ?? お父さんの……??」



 これにはカエデも驚きを隠せぬ様だ。


 丸い目を更に大きく丸めエルザードを見つめていた。


 それだけ開くと目、疲れない??



『弱虫テスラの子は随分と立派じゃのぉ。どうやら母親の影響が強そうじゃ』



 大魔が一人を弱虫扱いですか……。



「ありがとうございます。話が逸れました。助言を一つ頂いても宜しいですか??」


『ふぅむ……。そうじゃのぉ……。ここは食人の森と呼ばれておるのは知っておるな??』


「はい。ピナさんから御伺いしました」


『うむ。食人の森以外にも捕食の森とも呼ばれておる』



 捕食、か。


 あの瓢箪擬きが俺達を餌として認識したのも捕食と言われれば素直に納得出来るな。


 うじゃうじゃと蠢いてちょっと気持ち悪かったのが素直な感想です。



『捕食の森。食人の森。様々な言い方があるのは言葉の面白さじゃよ』


「それは肯定出来ます」



 カエデがコクリと頷く。



『助言は以上じゃ』


「はぁっ!?!? ちょ、ちょっと待った!! そんなんが助言!?」



 マイが慌てて声を荒げた。



『喧しいのぉ、龍の子よ。これ以上は高望みじゃて』


「高望みも何も……。日常会話しかしていないじゃん!!」



『思考を凝らせ、胸の薄い大馬鹿者』


「あ゛ぁっ!? 誰が薄いだごらぁっ!! そこで待ってろよ!? 後で服全部ひん剥いてテメェのきったねぇケツを二百回ブッ叩い……。ングッ!?」



 これ以上の狼藉は俺達の寿命を縮めてしまう恐れがある。


 そう考えて大馬鹿野郎の口を後ろから塞いでやった。



「ふぁにんすんのよ!!」

『し――っ!! ここはカエデに任せろって』



 何やら深く思考を繰り広げている彼女へと指を差して馬鹿野郎の耳元で囁いてやる。



「――――。マウルさんの下へ行くのには、後何回選択をすれば宜しいでしょうか??」



 カエデが続け様に問う。



『此処を含め七回じゃよ。あ、そうそう。先程戦闘を繰り広げたようじゃがな?? 進むにつれて戦う相手も強くなるから精々気を付けるのじゃぞ。では、首をなが――くして到着を待っておる』



 そう話すと希望していない静寂が訪れた。


 後七回も正しい色を選択しなければならないのか。


 それに不正解ならあの瓢箪擬き以上の強さを有する植物を相手にしなきゃいけない。


 これは想像以上に腰が折れそうだ。



「あのクソ爺。厄介な事して……」



 脇目も振らずに舌打ちを放ち宙をキッと睨む。



『混沌!! 聞こえておるぞ!!』


「あ――。はいはい。申し訳ございませんでした――」


『全く貴様はという奴は……。まぁいい。早く選択をしないと何か困った事になるのでは無いか??』


「そ、そうですよ!! アレクシアの容体が心配です!! 早く選びましょうよ!!」



 マウルさんの声を受け、ピナさんが慌ただしく口を開く。



「気持ちは分からないでも無いけど。ここは慎重に選びましょう」



 ピナさんの気持ちは痛い程理解できる、しかしこの場合エルザードの意見には賛成だ。


 俺達の最終目標はあくまでもマウルさんの下へ到達する事。


 これ以上無意味に戦闘を繰り返して悪戯に体力を消耗して彼の下へ到達出来なくなるのは憚れるからね。



「たった七回正しい選択をすればいいのじゃろ?? 簡単じゃて」


「ば――か。そのたった一回であの糞爺の下に辿り着くの、どれだけ確率が低いと思ってんのよ」


「ぐっ!! この脂肪め……。正解する確率じゃろ?? ん――」



 三本の尻尾が左右にピコピコと揺れ動き、腕を組んで考える仕草を取る。


 話は大分変りますけども、あの尻尾の可愛い動きを見ているだけで癒されますよね。



「十に一つ?? くらい??」



 いや、流石にそれは……。


 賽子で二回連続で同じ目が出る確率よりも低くなっていますよ??



「はぁぁぁ――……。カエデ」



 どうやら己の口で話すのも面倒なようだ。


 後は任せたといった感じで生徒へ丸投げして通路の上に咲く花を見つめた。



「赤は外れ。ここは二択となりました。その後、六回連続で四分の一を当てるので……。たった一度でマウルさんの下へ辿り着く確率は八千百九十二回に一つですね」



 うぇ、ほぼ万に一回の確率って事か。



「ほ、ほぉ。楽勝じゃなぁ……」



 師匠、声が上擦っていますよ??



「ここは二択じゃろ?? 赤は外れた訳じゃし。正解の部屋に入る迄戦い続ければ良い事じゃろうが」



「あんたねぇ……。マウルの話、聞いていたでしょ?? ここから先は敵も強くなるし、慎重に進んで行きたいのよ。それにアレクシアの容体の事もあるの。一々戦闘を繰り返していたら間に合うものも間に合わないわよ。大体ねぇ、あんたが良くても周りが迷惑するの。戦闘を避けて、正解の花を選ぶ為に思考を繰り広げる。その頭、何が入っているか一度綺麗にカチ割って見てみたいわ。後……」



「じゃかましぃいっ!!!! クドクド長ったらしい説明をしおって!!」



 エルザードの説教を喧噪で断ち切る。


 申し訳ありませんが、今のはエルザードの意見に賛成です。


 この右腕、連戦に耐えられそうに無いし……。



「見ておれ!!!! 儂がパパっと正解の花を選んでやるわ!!」



 青緑と紫の花と睨めっこをし、腕を組んでどちらの部屋に進もうか考えている。


 何だろう……。このモヤモヤした気持ちは……。



 強いて言い表すのであれば、この世の道理を理解していない頑是ない子供が危険な物に触れてしまいそうになるのを捉えてしまった両親の気持ちかな。


 俺の父性が全力で師匠の行動を引き止めろと叫んでいるが。



「決めた!! 紫じゃ!!」



 ほぼ即断に近い形で紫色の花の下へ大股で進んでしまう。



「いってらっしゃ――い。私達はもうちょっとここで考察を重ねるわ」


「ふんっ!! 先の分岐点で待っておるぞ!!!!」



 大丈夫かなぁ……。


 大股で肩で風を切り、新しく現れた通路へと一片の迷いも無く突き進んで行ってしまった。



「エルザード。師匠一人で大丈夫かな??」



 腕を組み、頭の中で何かを思い描いている彼女へと聞いてみた。



「大丈夫大丈夫。寧ろ、いない方が清々するわ。五月蠅く無くて助かるし」


「いや……。まぁ……。そうだけど……」



 あれま。通路、閉じちゃった。


 緑の蔦が閉じて師匠の小さい背中が視界から消えてしまった。


 派手に暴れて森を傷付けなきゃいいけど。



「ねぇ、カエデちゃん。何か分かった??」


 ルーが眉を寄せて苦い顔を浮かべるカエデに問う。


「いえ、全く」


「カエデが分からないのなら私達には無理ね。ユウ!! パン取って!!」


「はいはいっと……」



 ユウが荷物の中から拳大の大きさのパンをマイへと放り投げる。



「マイ達も参加しろって」


「これたふぇてからね――!!」



 左様で御座いますかっと。



「マウルさんが言っていたさ、言葉の面白み。そこに何か含まれているんじゃないのか??」



 誰とも無しに言葉を宙に放つ。


 それ以外目立った言葉は無かったし。



「言葉の面白み……。ですか」



 カエデがちらりとこちらへ端整な顔を向ける。


 綺麗な藍色の瞳に見つめられて悪い気分にはなりませんが、眉の角度をもう少し柔和にしてくれます??



「冗談とか!? それなら私結構得意だよ!?」


「ルー。少し口を閉じてろ」


「リュー、もう少し包んで言ってよね――」



 冗談、か。


 そういう事を含めて、面白いと解釈していいのだろうか??



「冗談ですか。人に陽性な感情を湧かせる言葉としては最適ですね」


「ん――。私もそこが気になったんだ。何が面白いのかってね」


「何が面白い?? エルザード、どういう事だ」



「ほら、言葉ってさ色んな意味があるじゃない?? 人によって受け取り方が違う解釈にもなれば、同じ解釈にも出来るし」



「解釈の違い、ねぇ……。あ――。分からん!!」



 ユウがガシガシと頭を掻いて話す。



「時間も限られている。出来るだけ早く正解に辿り着きたいが…………。うん??」



 そこまで話すと突如として鼻腔を激しく、そして無慈悲に貫く腐敗臭が部屋に満ち溢れる。


 思わず胃の中の物を吐き出してしまいそうな腐臭に皆一様に顔を顰めた。



 うっ!! くっさ!!!!


 何だ!? この匂いは!?!?

































「――――――。紫は外れじゃった」



 我が師のシュンっとした声を受けて振り返ると。



「し、し、し、師匠!?!?」



 我が目を疑う程の凄惨な光景がそこに浮かんでいた。



 美しい金の髪は粘度の高い紫色の液体で汚れ、白を基調とした道着も紫に浸蝕され、ふわふわで最高な手触りの尻尾は液体により地面へと情けなく垂れ。彼女が歩いて来たと断言できる痕跡が入り口である通路の奥へ点々と続いていた。



 道、間違えたんですね……。


 と、いうかそれ以前に。




「くっさ!!!! ちょっと!! あんた何したのよ!?」



 エルザードが鼻を摘まみ、師匠からかなりの距離を取る。



「な、何だ!? この匂い!?」


「あ、あぁ……。常軌を逸しているぞ」



 ユウとリューヴも彼女に倣う。


 当然、鼻の良い赤き龍は。



「おぅぇっ!! 吐き気を催す物、連れてくんな!!」



 等と、腐敗臭も肩を窄めてしまう程の汚い言葉を師匠へと投げかけてしまう。



「鼻が取れちゃう――!!」



 ルーは鼻を押さえて地面の上を転げ回り。



「その……。イスハさん?? 臭過ぎますので離れて頂いても宜しいでしょうか??」



 アオイは黒の着物の袖で自身の顔を覆い尽くしてしまった。



 いや、皆さん。


 言い方、それと態度を改めましょうか。



「し、師匠……。何があったか教えて下さい」



 出来るだけ鼻で呼吸をしないように師匠へ、『近付いて』 話す。



「先程と同じじゃよ……」


「同じ??」



 消え入りそうな声に思わず問うてしまった。



「通路を進んで行ったら……。訳の分からん植物が待ち構えておって……」


「訳の分からない。さっきみたいな、うぷっ。瓢箪状の奴ですかね??」



 あぶねぇ。


 鼻で一呼吸したら吐瀉物を周囲に撒き散らす所であった。


 これは一体何の液体だ??



「違う。もっと丸くて大きかった……」



 俯き、項垂れ。


 普段は体から燦々と放たれる輝きは失われ、極限にまで落胆している一人の女性がぽつりと話す。



「儂に向かって来たから。容赦せず殴り倒した」


「そして??」


「爆ぜて、中身が周囲に飛び出て……」



 あ、そういう事ですか。


 返り討ちにしたらとんでもない仕返しが待っていたんですね??


 お疲れ様です……。



「そ、そうですか。と、取り敢えず……。はいっ!! 自分の着替えがありますのでこれに御着替え下さい!!」


「うむ…………」



 荷物に駆け寄り、己の黒のシャツと茶のズボン。


 そして革のベルトと手拭いを師匠へ渡した。


 多分。皆は近寄るのを嫌がって渡さないだろうからね。



「カエデ!! 申し訳無いけど、師匠のこ……うぶっ!! この粘着質な液体を洗い流してやってくれ!!」



 カエデの顔を捉えて頼むが。



「…………」



 当の彼女はエルザードの陰にスっと隠れ、無言で首を嫌々と横に振り。確実にこちらへ拒否の意志を示した。



「頼むよ!! このままじゃ可哀想だろ!?」


「可哀想……?? 儂、可哀想じゃよなぁ……。なはは……」



 ほらぁ。


 こうやって拗ねるんだから。



「はぁ……。分かりました」



 エルザードの影から姿を現していつもと違う声色でそう話す。


 恐らく、口呼吸のみに絞ったな。



「お待たせしました。イスハさん、奥の通路で着替えましょう」


「うん……」



 うんって。


 余程堪えたみたいだなぁ。


 元来た通路をトボトボと歩いて行く小さい背中を僅かながらの憐れみを含んだ瞳で見送ってあげた。



「まだ臭いわねぇ……」



 周囲を睨んでマイが話す。



「マイには堪えるんじゃないのか??」


「堪えるもなにも。今しがた食ったパンを吐き出す所だったわよ」



 よく耐えたな。


 パンを食した直後にあの匂いを嗅いで我慢出来る自信は俺には無いよ。



「あの馬鹿狐。後先考えずに行動するから酷い目に遭うのよ」


「そう言うなって。でも、恐ろしいよな?? 強さだけじゃなくてあぁして厄介な攻撃を仕掛けて来る植物もいるのだから」



 強さだけなら、ここにいる大魔達が捻じ伏せよう。


 しかし。


 匂いや、他にも特殊な攻撃を仕掛けて来る個体がいるかもしれない。


 エルザードの言葉通り、慎重に事を進めた方が賢明だな。


 これ以上被害者を出す訳にはいかん。



「ま、でもあれね」


「どうした??」


「尊い犠牲のお陰で、正しい道は分かったんだし」



 エルザードが青緑の花を見つめる。


 いや、勝手に我が師を亡き者にしないで下さい。



「赤、じゃなくて『青緑の花』 が正解か。取り敢えず、正解の通路に進んで様子を見た方が良さそうだな。次の分岐点でどんな花が咲いているのか確認もしたいし」


「そうねぇ。あのくっさい女は置いて行きましょ」



 そんな事したら激昂したまま俺達の命を刈り取りに来るって。



「臭いは余計じゃ!!!!」



 背後から再び師匠のお声が響く。


 ぶかぶかの黒のシャツの袖を捲り、緩んだズボンの腰回りを革のベルトで必死に抑えている。


 美しい金の髪と尻尾は元通り……とまではいかず。


 水気をたっぷり含んでおり、まるで風呂上りの様子だ。



 だが問題なのは師匠の麗しい金色が損なわれた事では無く、匂いですね。


 申し訳ありませんが、進んで鼻呼吸をする勇気はまだありません……。



「着替え、済みました??」



 師匠へある程度距離を詰めて話す。


 勿論、鼻では呼吸をしていない。



「うむっ。申し訳無いが、ズボンに穴を開けたぞ」



 くるりとこちらに背を見せ、丸みを帯びた臀部と細い腰。その中間辺りから生えている尻尾を見せてくれた。



 申し訳ありませんが……。フリフリと尻尾を揺らすのは止めて頂けませんか??


 悪臭を撒き散らしてしまう恐れがありますので。



「構いませんよ。カエデもありがとうね。助けてくれて」


「洗い落とすの大変だった」



 でしょうね。


 あの液体ドロドロで粘着質っぽかったし。



「ほれ?? 嗅いでみ??」



 まだ少し湿っている尻尾を器用に動かしてこちらに向けて来る。


 俺は今、これが死神の鎌にしか見えない。



「あ、大丈夫です」



 速攻で右手を上げ、やんわりと断る。



「嗅げと言っておろうが!!」


「わ、分かりました……」



 恐る恐る鼻を近付けるが……。



「…………。くっ!!」



 刺激臭が鼻をツンと突き刺し、その後にあの腐敗臭が襲い掛かって来た。



「何じゃ!! 臭いのか!!」


「は、はい。まだ毛の芯に染み込んでいるというか……。奥深くにずんと腰を据えていますよ」



 あ、あっぶねぇ。


 吐く所だった。



「自分の臭い匂いは分からないのよ。さ、皆。臭い奴とは距離を取って進むわよ――」


「「「はぁ――い」」」



 ルーを含む数名が呑気な声を上げ、師匠と大分距離を取って青緑の花の通路へと進んで行く。



「ふんっ。どうせ儂は短絡で能天気で……。おまけに臭い奴じゃよ……」


「そんなに気を落とさないで下さい。少しの我慢ですからね」



 師匠と肩を並べて歩き、肩下のいじける狐の大魔へと言葉を掛けてあげた。



「持つべきものは良き弟子じゃなぁ……」



 師匠の瞳の中に咲く向日葵は夏の通り雨によって濡れてしまい、見ている者に憐憫足る気持ちを湧かせてくれる。


 しかし、ここで甘い顔をしてはいけません。


 お父さんの言う事を聞かないからそうなったんだぞ?? と。お叱りの声を投げ掛けてあげたい気持ちですよ。



 涙目の師匠が尻尾を此方へと向けて来るので。



「あ、尻尾は御遠慮下さい」



 湿った数本の尻尾をやんわりと押し退けてあげた。


 衣服に匂いが染みついたら取れなさそうだし。



「お、お主も臭いと言うのか!?」


「い、言ってないじゃないですか!! というか、尻尾で体を掴まないで下さい!!」



 ぎゅぅっと体に纏わり付く尻尾がアレを体中に染み込ませて来る。



「嫌じゃ!! 離さんぞ!!」


「勘弁して下さいよ!!」


「はぁ……。ほら、行くわよ」



 エルザードが俺達の様子を呆れた目で見つめ、大きな溜息を付いて新しく現れた通路へと進んで行く。


 師匠、お願いします。


 これからは軽率な行動は控えて下さいね。


 腹に巻き付いた尻尾から湧き上がって来るスッパイ匂いと、師匠の肩口からやんわりと漂う腐敗臭と格闘を繰り広げ。遠くに見える背達を追って新たなる通路へと足を運んで行った。




お疲れ様でした。


森の賢者から課せらた問い。その正解は話の中で発表されますので今暫くお待ち下さいませ。



さて、本日の執筆の御供は……。


先日、漸くデッドスペース1をクリア致しまして。今日はその続編であるデッドスペース2と、プロット執筆を交互に繰り返していました。


久々にプレイした感想なのですが……。


アレ?? こんなに難しかったっけ?? でしたね。


次から次へと襲い掛かって来るネクロモーフ。それを工具で撃退する主人公。


プレイする中でワクワクするのが、主人公が着用するスーツの着替えシーンですね!! 重低音と共に新しいスーツに着替え終えた主人公が登場するのですが……。それがまたカッコいいんですよ。


ネクロモーフの撃退に疲れたら光る箱の前に座って執筆を続け、話が止まったらまた怪物退治。


それを続けいたらいつの間にか深夜になっていました。恐怖耐性がある御方は是非とも一度プレイしてみては如何でしょうか??



それでは皆様、お休みなさいませ。

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