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第九十八話 己が魂にこびり付く獣

お疲れ様です。


帰宅時間が遅れた為、投稿時間が遅れてしまいました。


それでは御覧下さい。




 浴びる様に酒を飲んだ翌日に罹患する二日酔いの症状に酷似した気怠さ、そして激しい運動を継続させた後に襲い掛かって来る激しい筋肉の痛みに思わず顔を顰めてしまう。



 何でこんなに筋肉が痛いんだ……??


 あれ?? 稽古の途中だっけ??



 この症状の原因を探る為にとても深い記憶の海に飛び込むが、体の状況並びに朦朧とした状態がそれを阻害。


 このままでは埒が明かないと判断した頭は状況確認の為に随分と重たい瞼をそっと開けた。



 視界が捉えたそこは黒が目立つ森の中。



 焚火が小気味の良い音を立て周囲を微かに照らし、星で埋め尽くされた空が俺の目覚めを祝福してくれていた。



 森……。そう言えばアレクシアさんの治療方法を探しに来たんだっけ。それから……。


 あぁ!! そうだ!! 思い出したぞ!!



「いっでぇぇええ――――ッ!!!!」



 師匠との稽古と悲惨な光景を同時に思い出し、いつもの癖で右手を頼りに立ち上がろうとすると激痛が体を駆け巡り予想だにしていなかった痛みに自然と声が漏れてしまった。



「主!! 起きたか!!」


「レイド様ぁっ!!」



 焚火の前に集まっていた面々が俺の声を受け取ると、慌てて此方へと向かって来てくれる。



「いてて……。怪我の治療の途中で……。気を失ったみたいだね??」


「そうですわ。余り動かないで下さいまし。傷口が開いてしまいますわ」



 アオイの言葉を受けて尋常じゃない痛みが迸る己の右腕を見下ろす。


 おぉ……。こりゃまた痛そうに布が巻いてありますな。



 右腕には何重にも布が巻かれており出血は収まっていたが、布に重々しい出血が染み込みまだ安心は出来ないと伝えてくれていた。


 応急処置は終わったけどまだ痛みがあるって事は完全に塞がっていないのか……。


 こりゃ完璧に治療が終わるまでの間は大人しくしていた方が賢明だな。



「ありがとうね。治療してくれて」



 大事に俺の腕を手に取るアオイへ感謝の言葉を述べる。



「い、いえ。当然の事をしたまでですわ」


「これで貸しは百を越えましたよ??」



 カエデが冗談交じりにそう話す。



「百で足りるか??」


「ふふ。足りないかもしれませんね」



 俺の返す冗談に笑みを浮かべてくれた。


 カエデの様子から察するに、どうやら窮地は脱したようだ。


 あの優しい笑みが多くを語らずとも物語っていた。



「レイド。何が起こったのか、詳しく聞かせて??」



 エルザードが何とも無しに右隣りに座り俺の右腕の様子を窺う。



「そうそう。あたし達も気になって眠れない所だったんだよ」


「そうだよ――。もう夜中なのにぃ……」



 金色の瞳の狼が眠そうにグシグシと前足で両の眼を擦る。


 夜中って事は痛みで気を失ってからかなりの時間が経過しているな。


 冬の夜は夏のそれを比べて長い。


 ひょっとしたら夜中と呼ぶよりも明け方に近いのかも知れない。



「んっと。順を追って話すよ」



 俺が口を開くと皆が大きく頷き。



「「「……っ」」」



 百花繚乱の瞳の数々が俺の顔を確と捉えてしまった。


 あ、あのぉ……。


 余り真剣な目で見つめられると、緊張してしまうのですけど??



「魔力の源を発現させて……」


「「「発言させて??」」」



 ぐいぃぃっと端整な顔達が目前にまで迫り来る。



「いや、近いから」


「んぅ、いいじゃない。これくらい……」



 微かな鼻息を感じ取れてしまう距離に詰め寄った淫魔の女王様の顔をそっと押し退けてあげた。



「師匠に言われた通り、利き腕の右腕に魔力の欠片を移動させ始めた時。声がしたんだ」


「「「声??」」」



 その場にいる全員が口を揃えた。



「そう。えぇっとなんだっけなぁ……」



 頭の中に響いた声は何て言った??



「ん――。え――っと……」


「ほれ。さっさと思い出さぬか」



 真正面で腕を組んで俺を見下ろす師匠が厳しい瞳を俺に向ける。



「うろ覚えですけど。確か……。君には似合わない、かな??」


「「「…………??」」」



 俺の発言に要領がいかないのか、狐と淫魔の女王様以外の者が首を傾げた。


 そりゃそうなるよね、俺も訳が分からないからさ。



「ふぅん。成程ねぇ」

「そうか。もうその段階まで来ておるのか……」


「ちょっと。あんた達だけ納得していないで、こっちにも説明してよ」



 マイが堪らず二人に苦言を呈す。



「周知の事実じゃが。お主達、そして儂らの血には先祖の記憶や想いが脈々と受け継がれておる。それが具現化して外に現れたのが継承召喚じゃ」



 師匠が腕を組んだまま俺と同じ倒木に背を預けて話す。



「それがどうしたってのよ」


「マイ、話はまだ途中じゃぞ」


「レイドが瀕死の時、ガイノス大陸に行ったの覚えているわよね??」



 エルザードの声に全員がフンフンと大きく頷く。


 こういう所は息が合うのですね。


 日常でもその協調性を大事にして頂けたら幸いで御座います。



「その時、グシフォスから色々と龍の契約について聞いておいたの」


 あれま、いつの間に??


「龍の契約。それは他者に自分の力を分け与える。そうグシフォスから教わったのよね??」



 マイを正面に捉えて言う。



「そうよ?? 現にこいつの体。馬鹿みたいに頑丈になってんじゃん」


「馬鹿は余分だ」



 呆れた声で言ってやる。


 全く……。言葉使いをもう少し考えなさいよね。



「力や耐久力、そして寿命だけじゃなくて他にも分け与えた物があるのよ」


「他にも?? それは何だ??」



 魔力。とか、かな??


 そうじゃなきゃ俺が魔力を扱えるのは可笑しな話だものね。



「それは……。受け継がれた血脈の中に眠る記憶よ」


「記憶?? 俺は別にマイの記憶なんて頭の中に入っていないぞ??」



 要領を得ないな。



「マイの記憶じゃなくて、先祖の記憶よ。あんた達契約する時に血を交わしたわよね??」


「血?? …………あぁ。腹を貫通した槍伝いに、多分」



 当時の光景を思い出すと幻痛が腹部に蘇る。


 徐々に消失していく五感、刻一刻と生命の温かさが失われ死という冷酷な冷たさが全身を覆い尽くす。


 あれは死を覚悟する程、本当に痛かった。


 マイが咄嗟の判断で契約を交わさなければ俺は今頃森の大地の養分となっていた事だろう。



「交わった血を契機にマイは龍の契約を発動。私の夫は命が助かった訳なんだけど……。龍族以外の者が力の譲渡を受けた場合、本来なら龍の力に体が耐えきれずにそのまま息絶えちゃうのよ」


「じゃあ、何で俺は生きているんだ?? 後、さり気なく夫とか言わないで」


「さぁ?? 頑丈だから助かったんじゃない??」



 何て適当な……。


 グシフォスさんからもうちょっと詳しく聞いておいて欲しかったですね。



「龍族と交わった血。その中に眠る記憶が呼び醒まされ、前回の暴走が起きたの。そして……今回も」



 エルザードが俺の右腕を痛々しそうに見下ろす。



「ちょ、ちょっと待ってよ。じゃあさ。レイドも私達同様に継承召喚が出来るようになるって事??」



 ルーが慌てる様に後ろ足で一つぴょんと跳ねて話す。



「それはありえぬわ。あくまでも継承召喚を発現出来るのは限られた者のみじゃて」


「成程……。じゃあ、俺はこれからその龍の記憶とやらと向かい合って行かなきゃいけないんですね??」



 端的に言うとこうだろう。



「正解っ。それは今、深い所で眠っているわ。あのクソ蛇」



 クソ蛇……。ミルフレアさんの事であろう。


 袂を別ったとはいえ、言い方ってものがあるでしょうに。



「クソ蛇から受けた毒みたいに、何が原因で覚醒するか分からない。今回は魔力の移動が原因で僅かに覚醒したけど。それの代償が……。この有様ね」



「確かに……。傷口を見ると、何となくどんな攻撃を受けたか分かるな」


「リューヴ。どういう事だ??」



 思い出す様に、宙を見つめている彼女に聞いてみた。



「ほら。マイが龍の姿の時、手の指は四本であろう?? 主が受けた傷口は『四か所』 裂けている。つまり……。そういう事だ」



 龍族の手は四本指。つまりそれが指し示す事は……。



「爪で引き裂かれたのか」



 恐らくそういう事だろうな。



「おかしくないか?? 姿形の無い奴に物理的攻撃を受けるのなんて」



 ユウが要領を得ない様に首を傾げる。



「心身一如。心と体は表裏一体じゃ。ほれ。龍の力の暴走の時、お主らも嫌という程見たであろう??」



「「「…………」」」



 師匠の言葉を受け悲惨な記憶が蘇ったのか、全員が伏目がちに頷く。



「クソ蛇の毒による暴走。それ以降、貴方の中に眠る龍の記憶。言うなれば力の源ね。それが不安定になっているのよ」



「…………。いつ恐ろしい力が、己が想定していない時に発動するか分からない。つまり、暴走。ですね??」



「カエデの言う通りよ。レイド。声が聞こえたって事は深い所から這い上がって来ている証拠なの。何がきっかけで再び暴走するか分からない。それが今の状況よ」



 強力な力を付与してくれる代わりにいつ本人に牙を剥き暴走するかも知れない代物。


 正に諸刃の剣だな。


 いつ自分に厄災が降りかかって来るのか分からないのだから。



「対策はあるのか??」



 制御不能に陥って自分が傷付くのならまだしも、仲間を傷付ける訳にはいかない。


 出来る事なら早めに手を打っておきたい所だ。



「ん――。分かんない」


「即答しないでよね」



 俺もマイの言葉に同情する。


 無理強いはしないけど、もう少し思考を繰り広げて下さい。



「あのねぇ。私は龍族じゃないし。詳しい事はグシフォスにでも聞きなさいよ」


「…………。あ、そうだ」



 ピナさんが何かを思いついたかの様に口を開いた。



「森の賢者さんに聞いてみればいいんじゃないですか??」


「おぉ!! そうだ!!」


「ピナ!! 鳥頭の癖に賢いじゃない!!」



 ユウとマイがピナさんの頼りない肩を豪快に叩く。



「ちょっと!! 痛いですって!! 後、鳥頭ってなんですか!!」


「ふぅむ。あ奴なら何かしっておるかもしれぬのぉ」


「そうね。知識だけは呆れる程持っているし……」


「アレクシアさんと俺の症状。一石二鳥って事ですね??」


「うむ、そうじゃの」



 アレクシアさんの解決方法を伺うついでみたいになっちゃったけど……。


 この原因が分かれば御の字って所だな。



「さて、夜も大分更けておるし。今日はもう休め」


「そうさせて頂きます。明日に響くといけませんので」



 今から休んで、回復すればいいけど……。


 翌朝起きて傷が痛む様だったらアオイかカエデに治療に頼もう。



「んで?? あたし達はどっちの天幕で休めばいいんだ??」


「「「……」」」



 ユウが何気なく発した一言で妙な空気が一瞬だけ張りつめる。


 うん??


 何?? この空気。



「そうじゃのぉ。レイドの様子を見るのは……。カエデ、アオイ、そして儂じゃ。他の者はそっちの天幕で休め。ほれ。行くぞ??」



 師匠が立ち上がり、俺を催促するが。



「勝手に決めないでよ。あんた治癒魔法使えないでしょ?? いざという時、対処できる者が傍にいないと。ね――??」


「ね――。じゃあ、ありません」



 さり気なく体を密着させる女王様の体を左手で押し退けてやった。



「お主はいらん。ドブ臭くてかなわんからのぉ」


「はぁ?? 獣臭いよりましじゃない。それに?? 役立たずがいても足を引っ張るだけだしさぁ」


「誰が役立たずじゃ!!」


「あんたに決まってんじゃん」



 あ――。もう……。


 こんな時まで喧嘩しないで下さいよ。


 失った体力と血の所為か、猛烈に眠たいので早く眠らせて欲しいのが本音です。




「ん――。私はエルザードの意見に賛成よ。あんた達は同じ天幕に入れる訳にはいかないし」


「マイ!! 貴様……。脂肪の味方か!?」


「そ――そ――。混ぜると危険だしなぁ」


「ユウ!! 貴様も……」


「はぁい。そんな訳で、失礼しま――す。レイド、いこっ??」



 俺の腕を強引に取ると桜色の髪を嬉しそうにフルっと揺らして歩み出す。



「あ、おい……。師匠、お先に休ませて頂きます」


「ぬぁ!! 待たぬか!!」


「駄目だって!!」

「言う事聞け!!!!」



 師匠が強引に歩み出すのをマイとユウが羽交い絞めにして抑える。


 あの二人の拘束を物ともせずに引きずり、行動するお力には目を見張りますけど……。


 落ち着いて下さい。お願いしますから……。




「毛布は天幕の中に用意してありますので。御安心下さいね――」



 ピナさんの声がもう遠くから聞こえて来る。


 強引に引っ張るなよ……。まだまだ痛みが筋肉の奥に残っているんだし。



「だって?? ふふっ。一緒に寝よ――ね??」


「それは了承しかねるな。ある程度の距離を保って休ませて貰うよ」


「え――――。折角、可愛い下着履いているのにぃ……」


「何が折角だよ。こっちは怪我人なの。動いたら治る怪我も治らないって」


「ん?? あ――……。私が『上』 で動けばいいの??」


「勝手に解釈を広げるな!!!!」



 怪我とは別の意味で心配になってきたぞ……。


 天幕の端に毛布を敷いて、いざとなったら直ぐにでも脱出出来る様に準備しておこう。


 男の癖に何を情けないと数多多くの雄達は口を揃えて叫ぶだろうが、相手は淫魔の女王様。


 もしも、万が一。億が一にでも関係を持ってしまったら淫魔の里へ強引に拉致され、己に課された使命を果たせぬままそこで一生繋がれて良い様に扱われてしまう可能性が高いのだ。



『よっ!! ほっ!! う――し……。ちょいと不安が残る体力だけど、まっ!! 何んとかなるっしょ!!』



 いいえ、何ともなりません。


 性欲さんには申し訳ありませんが、当面出番は無いので悪しからず。



『そ、そうだよ!! 今日は僕の方が優勢なんだからね!!』


『けっ!! 調子に乗りやがって……。テメェは俺様に勝てない事を分からせてやるよ!!』


『こ、来い!! 僕は負けないぞ!!』



 頼りない剣を構えている理性君へと向かって性欲さんが急襲。


 普段ならビックリする程に弱い理性君ですが、本日の勝負は拮抗しているので大丈夫でしょう。


 欲求に対して馬鹿正直なもう一人の暴走を心配しなくていいのは助かります。


 後は猛烈な眠気を越える程の刺激が襲って来ない様に願うばかりだ……。



















 ――――。




 私の溢れる愛が籠った治療によってレイド様がお気づきになられた事は大変喜ばしい事です。


 あれ程の出血と怪我の深さからして、翌朝まで……。いいえ。


 もしかすると一日や二日は目を覚まさないかと思われましたが、流石はレイド様ですわ。


 逞しい御体と素晴らしい治癒力によってたった数時間で動けるまでに回復されましたわね。


 経過の良好具合に胸を撫で下ろして安心したいのですが……。



「ちょ、ちょっと!! 近いって!!」


「んふっ。これでい――のっ」



 正妻である私を差し置いて他の女性と不必要に接近するのは如何かと思いませんか!?



「うぐぐ……。私のレイド様と仲睦まじく腕を組んで!!」



 体を支えるのなら百歩譲りましょう!!


 し、しかし!! しかしですよ!?


 どうして私のレイド様の左腕にお胸を密着させる必要があるのですか!?



 これは本当に由々しき問題ですわ。


 こうなったらレイド様が他の女性へ目移りする前に、以前里へ帰った時に母様から教わった秘技……。


 舌技撚糸冥獄耽ぜつぎねんしみょうごくたんを是非とも味わって頂きませんと!!






『――――。そうすれば殿方はきっと極楽の心地良さで昇天なさる事でしょう』


『フォレイン様。それはつまり……。我々の糸でそ、その。男性の……』


『えぇ、そうよ。我々の糸はある程度の粘度を操作できます。先程説明したあまぁい所作で男性の御柱おんばしらの準備を整え、そして好機と捉えたのならこの技を使用なさい』



『な、成程……。参考になります』


『さ、流石ですわ!! 母様!! レイド様にぜ、是非とも存分に味わって頂きたいですわ!!』



『うふふ……。蜘蛛族の女の味を一度覚えてしまった殿方は他の女に興味を示さないとも言われております。良いですか、二人共。必ずやレイドさんを骨抜きにするのですよ??』



『畏まりました、フォレイン様』


『シオンは結構ですわ!! レイド様は私だけのレイド様なのですっ!!』



 全く……。母様は酷いですわ。


 何もシオンにまで秘伝の奥義を教えなくても宜しいのに。


 レイド様は私だけを見つめていれば良いのですっ!!



 あぁ、お待ち下さい。レイド様ぁ。


 私がレイド様の熱き血潮を鎮めて差し上げますからね……。そ、そして。


 ふ、ふふ……。蜘蛛一族の新たなる世継ぎをアオイのお腹にっ!!



「先生の気紛れはいつもの事。それに、『もしも』 の事があった場合。私の魔法で一帯を吹き飛ばします」



 おっと、いけませんわ。


 少しだけ独りよがりの世界へ旅立ってしまっていたようですわね。



「存外。貴女が一番恐ろしいかもしれませんわねぇ……」



 カエデの声を受けて我に返り、正直な感想を彼女へ伝えてあげた。



「倫理観、秩序。風紀の乱れは心の乱れ。私が是正しないで誰がするのですか??」


「いや、まぁ……。そうですわね」



 カエデが厳しい瞳の色で私を見上げる。


 いつもは澄んだ優しい藍色の瞳なのに今は地獄の炎も生温い温度の黒炎が渦巻いていますわね。


 う、うぅむ。


 これだけの人数の隙を見出して、冬の肌寒さも裸足で逃げ出す熱き一夜を過ごすのは難しいかしら??


 カエデとエルザードさん。


 特にこの二人を相手取るのは手厳しいですし……。



「ほらぁ。二人共――。入るわよ――」


「アオイ、行くよ??」


「分かりましたわ」



 いっその事治療と称して天幕を抜け出して……。森の中であま――い時間を過ごす事は出来ませんかねぇ。



「ちょっと!! 近いって!!!!」


「や――。もう――。どこ触ってるのよぉ??」


「そっちが勝手に触らせたのでしょう!?」



 天幕の中から嬉しそうに嫌がる声と悲鳴にも似た声が漏れ出す。



「こうしてはいられませんわ!! 私達が御傍にいませんと、レイド様の貞操が危いですわ」



「放すのじゃぁぁああああ――――ッ!!!!」


「お、落ち着け!! この馬鹿力!!」


「リューヴ!! あたし達だけじゃ無理だ!!」


「イスハ殿!! 気を確かに!!」



 あら?? まな板とユウだけではイスハさんを御す事が出来ずにリューヴまで参加ですか。


 向こうも向こうで大変そうですわねぇ。



「貞操より命が危ないかも」



 烈火の瞳を宿して猛牛の突進をも越える膂力溢れる歩みで進み続けるイスハさんの方へ振り返り、若干呆れた声でカエデがそう話す。



「えへへ。これ何かなぁ――??」


「お、お止めなさい!! ってか、何!! コレ!? 柔らか過ぎて怖いんだけど!?」



「腐れ淫魔がぁぁああ――!! 待っておれぇ!! 貴様の腸を引きずり出して犬の餌にしてくれるわぁぁああ!!」


「「「どわぁっ!?!?」」」


「ひぃぃぃ!! イスハさん!! 駄目ですよ――!!」



 あらあら。分隊の前衛三名で御せずにピナさんまで出動ですか。


 レイド様にはしっかりと休養を取って貰いたいのに……。


 もう既に心配の種がつきませんわ。


 激昂の声を背に受けながら私達は喜々とした声と狼狽した声が漏れる天幕へと向かって行ったのだった。





お疲れ様でした。


本日の執筆の御供は……。


ある日、極寒の大地である南極の観測隊の下へ一頭の犬が訪れます。その犬を追って来た男性は何故か銃を手にを持ち、翻訳不可能な外国語を叫び犬へと向かって射撃。


観測隊の隊員が自己防衛の為にその男性を射殺してしまい、犬は観測隊に無事保護されました。


それが…………。地獄の始まりだと知らずに。




SFホラーの金字塔、そして私の大好きな映画の一つ。


『遊星からの物体X 原題THE THING』 が本日の御供でした!!



いや、この映画を始めて見た時の衝撃は今でも忘れられません。CGを一切使用しないの現代と遜色ない映像美。グロテクスでもあり、その嫌悪が寧ろ心地良くも感じてしまうクリーチャーの形状。


詳しく話すとネタバレになってしまうので余り多くは語れませんが、SFホラーが好きな方が居れば是非とも御覧頂きたい作品ですね!!


余りにも見過ぎた所為でDVDが再生出来ない程に経年劣化してしまい、今の部屋にあるのは二代目です。


その二代目もそろそろお役御免になるまで傷付いてしまっています。


あ、それと。ちょっと刺激が強い場面もあるので心臓が弱い方は余りお薦めしませんので予めその点を留意して御覧下さい。




それでは皆様、お休みなさいませ。

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