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第九十一話 羞恥に塗れる訓練場 その二

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 陽気な狼の口から容赦無しに放たれてしまった己の失態から自ずと生まれる羞恥心。そして両足から絶え間なく蓄積される疲労との戦い。


 同時に二つの強敵を相手取るのは本当に骨が折れましたよ。


 正に壮絶な死闘と位置付けても差し支えない戦を終え、井戸の水を汲み上げて乾いた喉を新鮮な水で潤す。



「んっ、んっ……。はぁ――!! 生き返った!!」



 短距離ながらも全力で五十回も走れば流石に喉も乾くでしょう。


 乾ききった大地に恵みの雨が降り注ぐと活力の芽がそっと咲いた。



 さて、早朝の稽古はこれにて終了。お次は……。悪魔の御馳走との駆け引きか。


 師匠との組手よりも今から始まるであろう狂宴の方がよっぽど恐ろしいさ。



 あの形容し難い物体を第三者に譲渡すれば恐ろしい瞳を持つ狐さんに速攻で発見されて無理矢理口の奥に捻じ込まれ。


 さり気なく席を立とうとすれば鋭い切れ味の包丁が宙を舞い、お腹が一杯だとふざけた台詞を放てば鼻の穴から直接胃袋へ流し込まれる。



 どう足掻いても目を覆いたくなる絶望が俺を待ち構えている。


 そんな憐れな俺に残された最後の手段は我儘な幸運の女神様へ祈る事だけだ。


 可能であれば俺以外の誰かがアレを口にしますようにっ。



 俺達が井戸の周囲で日常会話を続けて休んでいると。



「これ――。まだ終わっておらぬぞ――」



 訓練場と土手の境目から放たれた師匠の声が此方へ届いた。



「え――。今から朝ご飯じゃないの――??」


「そうそう。お腹空いちゃったよ――」


「喧しい!! つべこべ言わずにはよぉ来い!!!!」


「ちっ、しゃあねぇなぁ……」



 マイとルーがやれやれといった感じで重い腰を上げて歩き出す。


 俺達もそれに続いて訓練場へと足を運び、軽快に三本の尻尾をピッコピコと揺らす師匠の前へ並んだ。



「んで?? お次は何をすればいいのかしら??」



 マイが腕を組み楽しそうに尻尾を揺らす師匠へ向かって尋ねた。



「マイ、ユウ、カエデ。そして、アオイ、ルー、リューヴの三人一組で組め」



 三人一組??


 何をするんだろう??



「これが終わったら朝食じゃ。集中せいよ??」



 師匠の御言葉を受けると指定された三名が集まる。


 しかし……。一人取り残された俺は一体何を??



「師匠。自分はどうすればいいので??」


「お主は儂と組む」



 あ、成程ね。



「では、説明するぞ。一人が……」



 師匠が言葉を放つと。



「ふわぁん。おはよ――。朝から頑張るわねぇ……」



 眠気眼の淫魔の女王様が訓練場へと降臨してしまった。



 眠さの余韻が残った目元、覇気の無い体躯に男心をイイ感じに擽る乱れた寝間着、そしてムニャムニャと波打つ口元。


 汗を流して完全覚醒した俺達とは真逆である朝一番の姿に何だか気が抜けてしまいますよ。


 そして、可能であればもう少しキチンと寝間着を着用して下さい。


 ちょっとだけ大胆に開いた胸元が気になってしまうので。



「ふんっ、呼んでもおらぬのに来おって。一人がうつ伏せになり、そいつの両足を一人が持て。マイ、ユウ。ちょっと見本を見せてやれ」



「はいはい。ユウ――。足持って――」


「ん――」



 うつ伏せになった彼女の足の踝辺りをユウが掴んで軽々と持ち上げる。



「マイ、そのまま腕の力だけで起き上がり。地面と体を平行にさせろ」


「んしょっ。これでいい??」


「うむっ。そして……、カエデ。マイの背中に乗れ」



「うぇっ!?」


「宜しいので??」


「構わん。お主の体重じゃビクともせんて」


「では、マイ。失礼しますよ」



 カエデがマイの背中に足を横腹から投げ出す形でちょこんと座り、姿勢を正してこちらを見つめた。


 何だか上流階級の二人乗りの乗馬って感じに見えますね。



「お――、上出来じゃ。この姿勢を保ちつつ訓練場の外周を腕力のみで一周して来い。一人一周。つまり、三周して朝の稽古はお終いじゃ」



「え――。これ、結構辛いわよ??」



 マイが眉を顰めて苦言を呈す。



「キツイからやるのじゃよ。ほれ、さっさと行ってこい!!」


「へいへい。ユウ、ちゃんと足持っていなさいよ??」


「おうよ」



 ユウがそのままマイの足を持ち、上流階級の女性を背に乗せたまま外周を進んで行く。



「楽しそうだね!! 私最初にやるよ!!」


「では、私が足を持とう」


「乗って差し上げますわ」



 向こうはルーが先頭か。


 置いて行かれてしまう前に此方も出発しましょうかね!!



「師匠。宜しくお願いします」


「うむっ。ほれ、うつ伏せになれ」


「はいっ!!」



 やるからには全力だ。


 それに腕の筋力を鍛えるには持って来いの稽古じゃないか。


 腕の筋力を作動させて体を持ち上げ、重力に従って大地へ落下する体を支える。


 おぉ……。結構堪えるぞ、これ。



「では、師匠。いきま……」

「ねぇ――。楽しそう、だね??」



 いざ進もうとすると、エルザードが目の前ににちょこんと座り。俺の顔を覗き込んで通せんぼをしてしまった。



 あ、ちょっとだけ寝癖ついているな。


 濃い桜色の長髪の先端にクルンっと丸みを帯びた箇所を捉えてしまう。



「エルザードもやるか?? 腕の筋力の鍛錬に持って来いだぞ??」



 魔法を主戦とする彼女でも戦いではそれ相応の筋力は必要になりますからね。



「や――よ。私はぁ……。男の上に乗って調教するのが好きなのっ」

「んぐっ!!」



 柔らかく、そして温かい感触が背に広がるのと同時に重みが一気に両腕へ降りて来た。



「誰が乗ってよいと言った!!!!」


「だって不公平じゃない。マイ達は背中に人一人乗せて鍛えているってのに」



 いつもなら時を待たずして師匠とほぼ同じ意味の言葉を叫ぶのですが。


 今回の場合は淫魔の女王様の意見に肯定出来るな。



「降りぬか!!」


「嫌ッ。レイド――。私、乗ってていいよね??」


「師匠、エルザードの言う事は一理あります。これで皆と同じ状況ですので」


「ちぃっ……。ほれ、出発せい!!」



 はぁ。良かった。


 何とかお許しをくれたようだ。



「では、行きます!!」


「それっ、あんよが上手。あんよが上手っ」



 歯を食いしばって外周を進んで行くと背中から声援?? 揶揄?? の黄色い声が響き何とも言えない気持ちが心の中に広がって行く。



「――――。エルザード、声を出してくれるのはありがたいが……。その、もう少しマシな声援してくれないか??」


「マシ?? ん――……。レイド――私を孕ませて――。今日の私の下着の色は――薄紫よ――」


「却下!!」



 こいつは全く……。


 朝から何てこと口走るんだよ。まぁ、朝以外でも駄目ですけども!!



「嬉しくないの?? 世界最高の美女の下着の色を教えて貰って」


「全く嬉しく無いです。大体なぁ、今は稽古の途中だぞ。そんな邪な考えは捨て去るべきだ」



 煩悩、妬み、嫉み等々。


 邪な感情は全て捨て去り、昨日の自分よりも強くなるという向上心を胸に抱いて稽古に臨む。


 病は気から。


 そう言われている様に己の心持ち次第で体の出来、そして技の完成度も変わって来るのだから。



 背中に乗る大変柔らかいお肉へ正論を放ってやった。



「何よぉ。私が恥じを忍んで教えてあげたのにぃ。あ、そっか……。んしょ。これ、なぁんだ??」



 随分と遠くに居るマイ達を視界に捉えて歯を食いしばって進んで行くと。



「は?? ぶはっ!!!!」



 目の前に薄紫色の物体が何の遠慮も無しに現れ視界を防いでしまった。


 咄嗟の出来事に焦点が合わず、最初は何事かと思ったが……。


 その正体は女性物の、上の下着そのものであった。



「貴様!! 汚物をさっさとしまわぬかぁぁああ――!!!!」


「うっさいわね。こうやってご褒美を目の前に晒せば男は頑張るものなのよ。ほら、馬も目の前に人参をぶら下げたら走るじゃない」


「んな訳あるか!! 師匠の仰る通りだ!! しまってくれ!!」


「師弟揃ってクソ真面目ねぇ……」



 やれやれと言った声が響くと、薄紫色が視界から消えてくれる。


 はぁ……。エルザードの体は軽くて稽古自体は完遂出来そうですけども、このままだと違う意味で疲れそうだよ。



「あ!! そっか!! 下の方が見たい、じゃなくて嗅ぎた……」


「そこまで!!!! それ以上は流石に駄目だ」



 ふわっと腰を浮かそうとする淫らな女王様へ釘を差してやった。



「んぅっ……。残念っ」


「そう言えば、師匠。アレクシアさんが来るって仰っていましたけど。いつ頃来るので??」



 イケナイ方向へ向かおうとする空気の流れを無理矢理変えようと、俺の足を持ってくれている師匠へ尋ねた。



「そうじゃのぉ……。いつもは朝食が済んだ後じゃから……。二時間後位じゃろうて」



 成程ね。


 俺達が稽古を終えて、一休みしたら到着するのか。



「なぁにぃ?? あの子が気になるのぉ??」


「気にならないと言えば嘘になるな。カエデがお世話になったらしいし。そのお礼を言っておきたいからね」


「何だ。そんな事か」


 それ以外に何かあるのかしらね。


「あ奴はお主達より向上心に満ちておるわ」


「女王ですものね。歳も俺達と変わらないであろうに、良くやりますよ」



 それに、女王の感じる重責は想像以上であろう。


 里の仕事は多岐に渡るみたいだし……。疲労で倒れなきゃいいけど。



「ちょっと――。私も女王よ??」


「あぁ、そうだったな」



 エルザードがそう言うものの。


 普段の生活態度を見ても、何んと言うか……。女王の気概を余り感じないんだよなぁ。


 見えない所で頑張っているとは思うけど。



「あ、ひっどい。私傷ついちゃったなぁ??」


「はは、申し訳無い。謝るよ」


「んふふぅ……。どうしよっかなぁ??」



 何やら意味深な声色が途絶えたかと思うと。



「――――。フッ」

「んごぅっ!?」



 エルザードの甘い吐息が右耳から直接脳内へと侵入して腕の力が抜けてしまいそうだった。


 崩れ落ちてしまいそうになる両腕に全身全霊の筋力を籠めて何んとか耐え凌いだ。



「あはっ!! レイド、耳弱いよねぇ」


「誰だっていきなりそんな事されたら驚くだろ!!」


「レイドになら。私はいきなりでも無茶苦茶にされたいわよ??」


「そんな事しません」



 いきなりか弱い……。弱くは無いか。


 いきなり女性へ襲い掛かったら犯罪じゃないですか。仮に俺が襲い掛かったとしても二秒も経たずにこの世から髪の毛一本残さず消滅させられそうだし。



「してよ……。ほら、本能の赴くまま私を抱きしめて貪り食って……」



 か細い指がツツ――っと背を伝うと体中の肌が泡立ってしまう。



「お止めなさい!! 稽古中です!!」


「いいじゃない。構やしないわ……」


「そっちは構わなくても、俺は構うの!!」



 お願いしますから稽古に集中させて下さいよ……。



「…………。さっきから黙って聞いておれば」


「何よ」


「稽古中じゃぞ!!!! 気色悪い声色で話すな!! それと!! 勝手に儂の弟子に触れるでない!!」



 ごもっともです、師匠。


 そしてもっとキツク言ってやって下さい。俺の話なんかこれっぽっちも聞きやしないんだから。



「や――よ。男は女のやわらかぁいお肉の感触を楽しみたいものなのよ。ね――レイド??」



 俺の背中をひしと抱き締め、彼女の胸元に備わった凶悪な二つの武器を強制的に背中へ密着させてしまう。



「ちょっ!! 離して!!」


「しばき倒すぞ!! この腐れ淫魔めがぁ!!!!」


「あんたこそどっか行きなさいよ!! 私は今から受胎するんだから!!」


「こ、この馬鹿弟子が!! 胸の一つや二つでたぶらかされるな!!」


「うぶぐぇっ!?」



 師匠の強烈な蹴りがみぞおちへ直撃すると、空っぽの胃袋に残った液体が喉元を通って視線な空気を吸おうと画策してしまう。



 い、いきなり人間の急所を蹴らないで下さいよ……。



「くっ……。うぅっ!!」



 それでも倒れまいと、両腕の筋力を駆使して体を支えた。



「よ――し。よく耐え……」


「や――んっ。可哀想な私のレイド。さ……。痛い所はどこかしらぁ??」



 今は大人しく眠っているもう一人の自分を呼び醒まそうとして、横着な女王様の御手手がそこへ向かって伸びて行く。



「お、お止めなさい!! 変な所へ手を伸ばすな!!!!」


「こ、このっ!! 貴様等二人共地獄へ送り届けてやるわぁぁああ――!!!!」


「し、師匠!! お止めに……。はごぶっ!?」



 視界の外から突如として伸びて来た一本の尻尾が俺の頬を急襲。


 体の耐久値を大幅に上回る攻撃力ビンタによって遂に地面へ倒れ込んでしまった。



 もう嫌……。


 何で朝も早くからこんな酷い目に遭わなきゃならんのだ。


 お願いしますから誰かこの人達を止めて下さいよ。

















 ――――。




 早くも一周を終えた私の尻の下には化け物級の腕力を持つユウが乳牛の散歩の様にノッシノッシと大地を進み、そしてその怪物の両足をカエデが持って二周目へと突入。


 目の前を流れて行く光景をおかずにして腕の筋力を解していると。




「あ――んっ。倒れた勢いで体が絡まっちゃった――」


「えふざーど!! どいふぇ!! ふぁなして!!」


「弟子から離れろ!! このアバズレがぁっ!!!!」


「あんたこそ下がりなさいよ。くっさい尻尾近付けないでくれる??」


「ふぃふぉうの言う通りふぁ!!」


「やんッ!! も、もぅ――。私の弱い所をいきなり攻めちゃ駄目だゾ??」


「死ねぇぇええ――――!!!!」




 朝っぱらからよくもまぁあそこまで派手に喧嘩が出来ますなぁと、感心にも呆れにも捉えられる感情が湧いてしまう光景を捉えた。



「うはぁ。朝から派手にブチかましていますなぁ――」


「朝からよくやるわよ。ほら、遅れているわよ?? リューヴに追いつかれちゃう!!」



「リュー!! ユウちゃん達見えて来たよ!!」


「あぁ、その様だな」



 後方から徐々に此方との距離を詰めている彼女達を捉えて尻の下のユウへ言ってやった。



「何!? それは許せんな!!」



 私の声に反応した馬役の怪力爆乳娘がけたたましく腕を動かし、小走りで進むのと変わらない速さで進んで行く。



 お、おぉっ。


 自分で走るのと違って跨りながら速さを体感するのはちょっとビックリするわね。


 ユウが激しく進む度に体がポンポンと上下に揺れ、不安定な姿勢を支える為に両足の太腿で彼女の横腹をきゅっと抑えてやった。




「相変わらずの腕力ですね」


「まだ速く出来るけど??」


「結構です。私の腕がもちそうにありませんから」



 ユウのムチっとした太腿の先。


 丁度踝辺りを掴むほっせぇ腕が細かくプルプル震えている。



 むぅ――……。


 魔法の威力、種類は世界最強の私でも思わず舌を巻くのだが。事肉体に関しては及第点もあげられないわね。



 素人が無駄に頑張って捏ねて切って茹でたうどんの失敗作みたいに細い腕じゃん。


 もう少し肉体を鍛える事に力を入れて欲しいのが本音かしらね。




「カエデ――。駄目よ?? 頭ばかり鍛えていたら」


「分相応。適材適所、ですよ」



 力仕事は私達、頭を使う仕事はカエデが請け負う。


 ま、そっちの方が前線で暴れ回る私としては気が楽だけどさ。



「なぁ、アレクシアとどこに出掛けたんだ??」



 ユウが特に疲れを見せない声色で話す。


 ってか、ごめん。


 あんたの二つの大魔王様がさっきから勢い良く暴れ出して私の脹脛ふくらはぎの横っ面をペチペチ叩いているのよ。


 揺らすのならもう少しお淑やかに揺らしなさいよね。下品ったらありゃしない。



「色々ですよ。本屋でしたり、屋台群でしたり。美味しい物を食べて楽しい会話を続ける。本当に楽しいお出掛けでした」


「それは楽しそうね!!!!」



 いかん。


 私の楽園であり魂の故郷である屋台群が脳裏に浮かぶと急激に腹が減って来てしまう。


 抑えろよぉ?? 私の食欲ちゃん。


 もう直ぐ朝食なんだから……。その時に炸裂させればいいんだからねっ??



「彼女も私同様に楽しんでいましたよ?? 後、マイ達とも会いたがっていました」


「おっ。いいね――。アレクシアに会うのはレイドの一件以来か」



 あの時は本当に世話になったわね。


 鳥姉ちゃんがいなければ向こうの大陸までもたなかったかも知れないし……。


 お礼としていつか皇帝さんの死体を持って行ってやろうかしら??



 まぁ、多分……。



『な、何ですか!? これは!! 要りませんからさっさと持ち帰って下さい!!』



 目ん玉ひん剥いて拒絶されるだろうさ。


 こっちの大陸の飛蝗はあそこまで大きくないからなぁ、ビビるのは当然かもしれんけども。


 カラカラに乾燥させて屋敷の前か里に飾っておけば格好良く映るんだけどねぇ……。



「今日此処に来るんでしょ?? 一丁揉んでやろうかしら」


「逆にやられちまうぞ。あたし達向こうで殺されかけただろ」



 ユウが話す様に操られていたアレクシアに対して私達は四人掛かりで辛くも勝利を収めた。


 あの時、カエデの機転が利かなければどうなっていた事やら。



「ほら、私達も成長したし?? 今なら十分張り合えると思うのよねぇ」


「マイの言う通りです。以前と違う強くなった私達の姿を披露しましょう」



 ふんすっ!! と鼻息を荒げて得意気に胸を張る。



 ほぉん、珍しくカエデがやる気じゃない。


 鳥姉ちゃんとの組手の一番手は譲ってやろうかしらね。


 まぁその後は私やら強面狼やら牛娘の相手を務める破目になるだろうし。



『皆さん少しは手加減して下さいよ――!!!!』



 きっとピィピィ泣いて傷付いた翼を労わるのだろうさ。


 鳥姉ちゃんの泣き姿を想像してワクワクしていると。



「ユウちゃん!! 追いつくぞ――!!」



 お惚け狼の軽快な声が近付いて来やがった!!



「んげっ!! リューヴ!! こけろ!!」



 四足歩行に慣れている所為か。さ、流石に速いわね!!


 猛追を仕掛けて来る強面狼へ向かって叫んでやった。



「負ける訳には……。いかんのでな!!!!」



 ちぃっ!!


 例え稽古だとしても負けるのは何だか癪に障るのよ!!




「ユウ!! 負けるな!!」



 馬役のユウへ気合を入れてやる為、意外と小振りの尻をぴしゃりとブッ叩いてやった。



 ン゛ッ!!!! 良い音!!!!


 この乾いた強烈な炸裂音……。私の心に闘志を灯すには余りある音色じゃあないか!!



「いっでぇ!! あたしは馬じゃない!! 尻を叩くな!!」


「向こうに負けてもいいの!?」


「それは……。御免だね!!!! はぁっ!!」



 後方からのリューヴの猛追、そして私の気合注入が功を奏したのか。ユウが筋力を全開放した。


 そしてその常軌を逸した筋力が大地を捉えると、その余波が私達を大きく揺らしてしまう。



 あ、暴れ馬に乗る気持ちってこんな感じよね。気を抜くと振り落とされてしまいそうだ。



「ユ、ユウ。は、速過ぎます……」



 騎手役は私、そして馬の後ろ足役にあたるカエデが顔を顰めて前足に速度を落とせと懇願するが……。



「大丈夫だって!! おらぁ!! 行くぞ!!」



 前足は後ろ足の指示を無視して暴走。



「その通りっ!!!! はいやぁぁああ――――!! ゆけぇ!! 先頭の景色は何者にも譲らんっ!! 人馬一体となった私達は無敵だぁぁああ――!!!!」


「尻を叩くな!! だが!! あたしの腕力に敵う奴はいねぇぇええ―――-ッ!!!!」



 騎手役である私の愛の鞭を受け取ると更に前足が加速。



「きゃぁぁああああ――――ッ!!」



 カエデの可愛い悲鳴を背に、牛……。


 基、ミノタウロスが地を轟かせる咆哮を上げて爆進して行く。


 カエデも可哀想よねぇ。こんな暴れ馬の後ろ足役を任されて。



「せいっ!! はぁっ!! さぁ……。残り半周だ。気合入れて行くわよ――!!!!」


「次、あたしの尻を叩いたら張り倒す!!!!」


「ユウ!! お、お願いですからもう少しゆっくり進んで下さい!! 腕が千切れてしまいます!!!!」



 海竜ちゃんの可愛い叫び声を受けても私はそれを全て無視。


 後方から追い縋ろうとする馬の心をへし折る為、爆乳馬の闘争心と羞恥心を利用して加速させる為に叩き心地の良いお尻ちゃんを何度も執拗にペチペチと叩き続けてやったのだった。




最後まで御覧頂き有難うございました。



本日の執筆の御供は……。


雄の香りを放つ鉄の塊が時空の裂け目から現れた怪獣と戦うスーパーロボット映画。


『パシフィックリム』 でした!!


この映画の素晴らしい所は重厚感溢れるスーパーロボットの活躍に尽きますね!! 機械なのに雄の香りを放つって一体どんな形してんだよと思われる方もいらっしゃるかと思います。しかし、この映画を見れば。


あぁ、確かに雄の香りを放っているじゃないか。と頷いて頂けるかと思います!!


日本語吹き替え版にもこだわりがありまして。英語ですと、『エルボーロケット!!』 と叫んで必殺技を放つのですが。


日本語吹き替え版では超有名スーパーロボットの必殺技である、『ロケットパ――ンチッ!!』 と叫ぶのです!!


他にも見どころ満載でロボットと雄が好きな方は一見の価値がありますね。



いいねをして頂き、そしてブックマークをして頂き有難う御座います!!


疲労が積もる週の半ば、大変嬉しい励みとなりました!!



それでは皆様、お休みなさいませ。

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