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第八十八話 第二の鼓動

お疲れ様です。


週末の深夜にそっと投稿を添えさせて頂きます。




 体中至る所に刻まれた打撃痕から発生する猛烈な熱を帯びた痛み、風邪を罹患した時の様に頭はボーっとして何だか額も熱い。


 カエデに有難い治療して施して貰っても指導という名の絶戦から受けた痛みは未だ強烈な余韻を残していた。



 赤く染まった顔で平屋の大部屋の中央で大の字で寝転がり一切の動きを停止。


 きっと今の俺の状態は傍から見れば死人、若しくは超重傷患者の様に見えてしまうであろうさ。


 だが、体に感じる痛みもどこか心地良いものであった。



 師匠から頂いた激烈な稽古。



 体に発生している熱がそれを反芻させて心の中で何度も師匠の御言葉をそしてあの強烈な技の幻影を復唱し続けて至らない俺に言い聞かせる。


 訓練生達へ施した指導はお子様用にみえる程、今日の稽古は一段と酷かった。


 久々に死を覚悟する程にぶん殴られたし。でも、これでこそ鍛えているって感じですよ。




「どうしたの?? 何か嬉しそうにゃね??」


「え?? あぁ。やっぱり、俺は指導される側の方が似合っているってね」


「先日、後輩に御指導をされていたようですが……。余り気が進まなかったので??」


「そう言う訳じゃないけど。鍛えている方が性に合うって言うべきかな」



 俺の腹の上に乗る一匹と一羽に素直な感想を述べてあげた。



「私も疲れた――。オーウェン先生、厳しいんだもん」


「あの黒猫か。エルザードの使い魔だろ??」


「そうそう!! 厳しいけど、偶に遊びに付き合ってくれるの!!」



 そうなんだ。


 使い魔は主人の性格の一部を反映されて生まれると聞いた。


 つまり、オーウェンの性格が真面目なのは淫魔の女王様の性格の中に存在するその部分が矢面に出た訳だ。


 こう言っては失礼ですけども、エルザードの使い魔にしては少しだけ不釣り合いに映りますよね。



「そっちはどうだった??」



 静かに目を瞑り大分落ち着いた様子を醸し出す東雲に聞いてやる。



「あの黒犬。攻撃力は目を見張る物がありましたが、所詮は獣。私の体には掠りもしませんでした」



 烏は獣じゃないのかな??


 まぁこの際気にしないけど。



「アオイと似て避けるのが上手なんだな」


「まさか。アオイ様と比べる等烏滸がましいです。足元にも及びませんよ」


「謙遜するなって」



 そう話しながら顎下を撫でてやる。


 お、けっこうふわふわしてますね……。。



「あぁ……。至福の一時……」


「ちょっと!! こっちも撫でて!!」


「はいはい」


「ニャゴロロ……」



 二人、基。


 俺の手の先に居る一匹と一羽が気持ち良さそうに目を瞑って喉を鳴らす。


 何か……。この二頭の飼い主になった気分だな。



「ふぃ――。さっぱりした!! 次は御飯よ、御飯っ!!」


「ただいま――!! おぉ?? 動物と戯れているねぇ」



 温泉から一足早く帰って来たマイとルーが手拭いで塗れた髪を拭きながら平屋へと入って来る。


 女性陣は稽古が終わった後、汗を流したいと言い温泉へと出掛けた。


 俺は一人寂しく蝋燭の明かりが揺らめく大部屋で休んでいた訳なのです。まぁ正確に言えば休むでは無くて動けなかったと言えば良いのかしら。


 師匠から受け取った烈華七星拳。


 あの強烈な痛みが今も尾を引いていますもの。



「動物じゃないニャ!! 使い魔!!」


「そうですよ、ルー殿。私はれっきとしたアオイ様の分身なのですから」



 二頭仲良くルーの方を睨む。



「どっちでもいいじゃん。ちょっとのぼせちゃったから休憩――」


「ちゃんと髪の毛を乾かさないと風邪引くぞ??」



 少し離れた場所で横になるルーへ忠告を放つ。


 彼女の体の頑丈さ並びに血筋を考慮すればそれは有り得ないと思うけど一応ね。



「大丈夫だって――。生まれてこのかた風邪引いた事ないし??」


「馬鹿は風邪引かないのよ」


「じゃあマイちゃんも……」


「それ以上言ったら。テメェの乳もぎ取って虫の餌にすんぞ??」



 人の姿で随分と楽な姿勢で横たわっているルーへマイが今にも噛みつきそうな視線を送る。



「くっ……。はぁ、やっと動けるようになった」



 丹田に力を籠め、必死の思いで上体を起こすと。



「っとと……。急に起きたら落ちちゃうにゃ」


「無理は良くありませんよ??」



 ペロが膝の上にずり落ち、東雲は翼を巧みに動かして俺の右肩に留まった。



「今日は一段とキツイ稽古だったみたいね??」



 マイが豪快に足を投げ出して口を開く。



「死なない程度に手加減はされたけど。正直、何度か死を覚悟したよ」


「何でまたそんなに厳しくしたの??」


「あぁ。実は……」



 本日の稽古の内容を伝えようとすると。



「主。動けるようになったか??」


「怪我の具合は如何です??」


「お――!! 生き返ったか!!」


「レイド様ぁ!! 大丈夫で御座いますか!?」



 残りの面々が温泉から帰って来て話が中断されてしまった。


 大部屋に漂う伊草の香りが瞬時に女性の香に変わり何とも言えない匂いが漂い、心の奥底に仕舞い込んだ封印が解かれてしまいそうですよ。



『んっ?? もしかして、俺様の出番??』



 いいえ、違います。


 貴方の出番は暫くありませんので静かにそこで休んでて下さい。



「大丈夫。一応、ね」



 首を擡げて出現しようとした男の性をぐぐっと心の底へ押し付け、普段と然程変わらぬ口調で安否を伝えた。



「東雲。ちゃんとレイド様の様子を見ていましたか??」


「勿論です、アオイ様」



 翼を羽ばたかせふわりと浮き、アオイの肩へと帰って行く。



「それで?? 話の続きを聞かせなさいよ」


「実は魔力の使用方法についての稽古だったんだ。師匠が使う極光無双流は魔力を己の拳に宿して敵を打ち倒す。それを自分の体に『分かり易い様に』 教えてくれていたんだよ」



 今もその名残が体中に残っている。


 少し体を動かすだけでズキンとした痛みが発生。至る所の関節も痛みに顔を顰めてさっさと休んで体を治せと頭に命令を送っていた。



「ふぅん。あれか、私が譲渡した龍の契約の中に魔力の根源が含まれていたのね」


「多分な」



 魔力の使用と言ってもなぁ……。正直、ピンっと来ないのが本音だ。



『魔力を使用する第一歩は、相手の力の源を探る事と知れ』



 師匠に言われた言葉を咀嚼して噛み砕いているが依然分からずにいた。


 こういう事はカエデに頼めば教えてくれるとは思うけど。


 常日頃から頼り切っているし、それに治療の件もあって向こうも疲れているだろうから頼みにくい。


 それなら……。



「アオイ。ちょっといいか??」



 重い腰を上げ、部屋の壁に寄り添い体を休めている彼女の下へ歩み寄って話した。



「どうかなされました??」



 いつもの黒い着物では無く素敵な訓練着に身を包む彼女が此方を見上げる。


 普段とは少し違う姿に違和感を覚えますけど、訓練着から覗く可憐さは相も変わらず。


 御風呂上りもあってか白き髪は艶を帯び、少しだけ蒸気した頬が心に再びイケイナイ感情をもたらそうとしてしまう。



「一つ頼みたい事があるんだ」


「頼み事??」



 そんな彼女が不思議そうに眼をパチクリとして此方を見つめる。



「その……。疲れているとは思うけど魔力の根源。その位置の在処、それと魔力の使用方法を教えてくれないか??」


「も、も、勿論ですわ!!」



 キョトンとした表情から一転。


 大炎も思わずうわ!! っと。顔を背けてしまう程の明るい笑みを浮かべて立ち上がり俺の手を取り。



「早速私が手取り足取り御教授させて頂きます!! ささ。こちらへ!!」


「ちょ、ちょっと!!」



 大股で大部屋を横切り外が見える縁側に肩を並べて座った。



 空には漆黒が広がりそれを舞台にして星達の絢爛豪華な舞いが行われ、山の冷涼な風が傷付き熱を帯びた体を冷ましてくれた。



「レイド様が……。私を頼って下さるなんて。これは夢じゃ無いかしら??」


「夢でも無く、紛れも無い現実だよ」


「ふふ、そうですわね」



 美しい白の髪を耳に掛けて嬉しそうに吐息を零す。



「じゃあ早速、教えて貰おうかな」



 改めて腰を据えて彼女の方を向いた。



「魔力云々のお話をする前に。この世界に満ちているマナについてご説明させて頂きますわ」


「あれだろ?? 魔力の元になるって奴でしょ??」


「その通りですわ。そのマナは至る所に満ちています。空、土、風、空気。森羅万象、遍く存在にその根源はあるのです」


「成程。そこからマナを体に取り込み、己の魔力に変換して魔法を発動させるんだな??」



 多分、そういう事でしょう。



「魔法の威力によって消費する魔力は異なります。強力な魔法であればそれだけの魔力を消費し、足りない分はマナを取り込んで己の魔力に足して詠唱します。更にマナには便利な一面もありまして……」



「便利な部分??」



「失った魔力を補う為にマナを取り込んで自身の魔力を回復させる事も。そして、マナを触媒にして魔力を増幅させて魔法を発動する事も可能で御座います。魔法の規模、威力。それによって取り込む量も増えます」



 何だかややこしくなって来たぞ。



「えっと。つまり……。カエデやアオイが詠唱している強力な魔法は己の魔力と、マナを足した物であって。マナがなければ魔法は詠唱出来ない、と??」



「ん――。細かく言うとそれは間違っていますわ。己に秘める魔力だけでも魔法の詠唱は可能です。只、イスハさんから教わったと思いますが魔力の容量が尽きてしまうと絶命に至ります」



 おぉ、それは聞いたぞ。



「マナは己の魔力を補填する為、若しくは魔力を増幅させる為に存在しているんだな」


「正解ですわ!! 流石、レイド様。飲み込みが早くて助かります」



 どういたしまして。


 アオイの教え方上手くて助かりますよ。



「マナを触媒にして強力な魔法を詠唱。己の魔力が減少すれば己の魔力に変換。これがマナの正体です」


「ふむ……。成程ね。じゃあさ、俺はどうやったら魔力を己の拳に宿す事が出来るんだ??」



 マナの存在を理解した所で本音を問うてみた。



「それには先ずレイド様が魔力の根源がどこに存在するのかを理解して頂く必要がありますわ。心臓から流れ出る血液の様に、魔力も魔力の根源から体中へ流転しているのです」


「えっと……。どうすればその魔力の位置を把握出来るの??」



「大切なのは集中力ですわ。忌々しい龍の力を発現される時に集中されていますでしょ?? その要領です」



 龍の力を発動する時は……。



「体の奥底に眠る龍の力に触れて。ゆっくりと力を引き出す感じだね」


「それと同じ事ですわ。百聞は一見に如かず。先ずは実際に触れてみて感じて頂きましょうか」



 触れる??


 物理的に見られる物なのか??



「で、では!! 失礼致しますわぁ……」


「ちょ、ちょっと!!」



 縁側の外に出す足の上にフニっとした柔らかい感触がのしかかる。



「背中が不安ですわ。支えて下さいまし……」



 俺の膝元にちょこんと座り、思わず魅入ってしまう端整な顔が此方を見上げて甘い声色で俺の手を誘う。



「あ、あのねぇ。ふざけないの」


「ふざけてはいませんわ。試しに左手を私の背に。右手で腹部を触って下さい」


「分かったよ。…………。これでいい??」



 言われるがままおずおずとその形を取る。


 妙に柔らかい感触が少々邪魔ですが、これはあくまでも指導。


 そう割り切って恥を忍んで彼女の言う通りに倣ってあげた。



「完璧ですわ。では、私の魔力の根源。感じて下さいまし」



 アオイが目を瞑り静かに集中し始めると。



「――――。おおっ!!」



 彼女の腹部の奥から淡い光が漏れて来た。


 淡い白の発光が瞬き、それは夏の夜の蛍の光を彷彿とさせる。



「これが……。魔力の根源??」


「はい、私の第二の心臓とでも言いましょうか。これが敵の攻撃によって破壊されれば私は絶命に至ります」



 左右の手の平に温かく柔らかい感触が広がる。それはまるで春の陽気に触れているようであった。



「柔らかくて。本当に温かいな」



 今感じている素直な感想を包み隠さずに話す。



「ふふ。嬉しい……」


「嬉しい??」


「レイド様が私を受け入れてくれる。それだけで私は天にも昇る程、嬉しい気持ちで満たされるのですわ」



 少しばかり潤んだ瞳が俺を捉えた。



「何を今更。ずっと前からアオイ達の事は認めているし、尊敬しているよ」


「レイド様……」



 女性らしい腕を体に巻き付け、か細い体を密着させる。



「こ、こら。魔法の授業中ですよ」


「…………ふふ。そうでしたわね」



 そう話すと、柔らかい発光が収まり周囲に再び暗闇が訪れた。


 あらら、消えちゃった。



「今御覧になられた様にレイド様にも魔力の根源が存在します。私が御手伝い致しますのでゆっくりとその欠片を覗いて見ましょうか」



 そう話すと俺の腹部にそっと手を添える。



「そんな事が出来るの??」


「勿論ですわ。私もシオンからそうやって教わりましたので」



 へぇ、それは初耳だな。



「教育熱心なシオンさんだ。随分と手厳しく教わったんじゃない??」


「御想像にお任せ致します。では、始めましょう。先ずは目を瞑って頂き、呼吸を整えて下さい。丁度眠る前の呼吸の様にゆっくりと、大きく……。体中に空気を取り込む呼吸でお願いしますわ」



「了解。…………ふぅ」



 男心を擽る彼女の香がちょっとだけ集中力を阻害させてしまうが、アオイに言われるがまま目を瞑って遅々とした呼吸を開始した。



「落ち着きましたか??」


「うん。大分体が楽になってきたよ」


「ではそのまま頭の中で……。そうですわね。心が落ち着く風景を思い描いて下さい」



 落ち着く、か。


 そうだな……。海辺なんかいいかも。


 さざ波が押し寄せて一定間隔で鳴り響く波音。真っ青な空に白い砂浜。


 波打ち際に立てば波が砂を大海に引き寄せ、得も言われぬ感覚が足の裏を襲う。




「それでは思い描いた風景に球体を出現させて下さい」



 きゅ、球体??


 この海辺のどこに出現させればいいんだ。



「どんな球体でも構いませんわ。思い描いた球体の中を探る様に、そっと手を触れて下さいまし」



 取り敢えず砂浜に座ろうかな。


 細かい砂粒の上に腰を下ろして彼方に広がる目の前の青を見つめた。


 どんな球体でも構わない、か。


 それじゃあ両手にすっぽり収まる大きさの球体を思い描きましょうかね。


 想像の中の自分に黒色の球体を持たせてやる。



「球体を思い描きましたのなら、そこからじわりと滲み出る力を感じて下さい」



 じわりと滲む??


 ん――。何かが漏れ出している感じで良いのかな??


 思い描いている球体から淡く白い色の付いた靄が漏れ出ている所を想像した。



「その力を、触れている手を通して体の中に取り込むのですわ」



 こ、これを取り込むの??


 まぁ、想像だから容易く吸収出来ると思うけども……。


 手の平から腕へ、そして腕から体の中央へと靄が染み入り流れ込んで行く。


 我ながら想像力が豊富だな。


 砂浜に座る己の体が白を吸収していくと徐々に光り輝き、そしてそれは靄を取り込む度に大きく強くなって発現する。



「…………まぁ。素晴らしいですわ」



 素晴らしい?? 何の事だろう。


 ってか。先程から妙に腹が熱い。


 師匠に蹴られた所が疼いているのだろうか……。



「レイド様。目を開けて下さいまし」


「ん。……………………。えっ!? な、何これ!?!?」



 思わず声を大にして己の腹部を見下ろしてしまった。


 それもその筈。


 アオイとは比べ物にならないけど、小さな光が腹の奥から外へと滲み出ていたからだ。


 これが熱さの正体か??



「ありゃ。消えっちゃった」



 驚嘆の声を発すると同時。それは蛍の瞬きの様に静かに腹の奥へと消え失せた。



「集中力が切れたのですね。まさかたった一度で見られるとは思いませんでしたわ」


「今のが。俺の魔力の根源って奴??」


「そうですわ。まだか細く、拙く、頼りない存在ですがいずれは大きく膨らんで行くでしょう」



 カエデにも言われた事だが、真正面から言われると正直凹むな。


 でもまぁ……。


 アオイの言っている通り、これが大きくなっていくのなら今はまだ焦る必要は無いのかも知れない。



「アオイ達はさ」


「はい??」


「この集中力を維持したまま戦闘を続けていたんだろ??」


「物心付いた時から行っている事ですので。この発現が当たり前の様に可能となり、それから漸く魔力の使用へと繋がるのです。レイド様も回数を熟せば慣れますわよ」


「それまでに要する時間が途方も無く長く感じるよ」



 大きく息を漏らしながら話した。



「ふふ、安心して下さいまし。それまでアオイがずっと側で支えますから……」



 端整な御顔を胸元に埋めて甘い吐息を此方の体に染み込ませる。



「そ、それはどうも」


「それよりどうですか?? いっその事、私と二人でいつまでも共に……」



 腰に甘く両の腕を回して空気が入り込めない程体を密着させると、彼女の体温が直に伝わり俺の中の熱を沸騰させていく。


 ちょ、ちょっといけない雰囲気ですねぇ。


 これはれっきとした授業なのですからもう少し先生と、生徒との距離感を大事にして頂きたいです。


 か細い肩を押し返そうかそれとも親切丁寧に正しい男女の距離感を説くべきか。


 その判断に苛まれていると。



「…………。お――お――。さっきから黙って見ていれば、随分と楽しそうだなぁ?? んん??」




 この甘い雰囲気をぶち壊す御方が奥の部屋から縁側へと近づいて来た。


 その声の主は言わずもがな。


 憤怒の影響か深紅の髪がふわぁっと微かに浮かび上がり。悪魔も固唾を飲み込んでしまう鬼気迫る表情を浮かべ大股で床を踏み鳴らす。



「いや、これはその。ちょ、直接教えて貰っていたんだよ。魔法の云々を」


「アッ??」



 はい、黙ります。



「レイド様が『私』 に直接頼まれた事ですわ。部外者はどうぞ、あちらへ」



 お止めなさい!! それ以上龍を刺激するのは得策ではありませんよ!?


 これから襲い掛かるであろう痛みに早くも顔を顰めてしまった。



「ハハッ。中々面白い事を言うわね。気に入ったわ」



 綺麗に整った眉が頻繁にピクピクと動き、彼女の肩口からは深紅の魔力が滲み出す。今にも噴火寸前って感じですよね。


 さてと……。首の筋力を慣らして、奥歯をぎゅっと噛み締めてその時に備えましょう!!




「それはどうも。ほら、早く移動なさって。レイド様はそのような荒れ果てた荒野では満足されませんので。私の様な美しく豊潤な大地に興味があるのですよ」



 男心を擽るむにゅっとした柔らかい感触が胸に広がると。



「地獄の果てで……。一生仲良くやってろやぁぁああ――っ!!!!」


「マ、マイ!! 落ち着……。んぶぅっ!!」



 龍が放った正拳が右の頬に気持ち良く突き刺さってしまった。



 彼女の逆鱗か将又憤怒で増強された力により俺の体はいとも容易く軒先の更にその先へと吹き飛ばされてしまった。



「おらぁ!! ぶっ殺してやんよ!!」


「貴女には不可能だと何度言えば分かるのですか?? あ、その可哀想な頭では理解出来ないのですねぇ……」


「こ、このっ!! 取り敢えず百回くらい殺してやらぁぁああ――――っ!!!!」



 も、もう嫌……。


 何でこんな馬鹿げた暴力の塊を稽古以外で受けなきゃいけないんだよ。



 訓練場の乾いた大変苦い土を食み、口の中に砂利が一杯に広がると大変不快な感触を否応なし与えて来る。



「よけんなぁぁああ――!!!!」



 縁側から龍の怒号が響けば。



「いった!! マイちゃん私の尻尾踏んだよ!?」


「マイ!! あたしの胸を緩衝材代わりに使うんじゃねぇ!!!!」



 部屋の中から何の遠慮も無しに恐ろしい声が放たれ静かな山の中腹にこだまする。


 これ以上の負傷は翌日に響くと考えた俺は九祖の血を受け継ぐ龍と蜘蛛の乱痴気騒ぎが収まるまでの間。


 体の芯まで冷えてしまう冷涼な山の空気が漂う中、苛烈な戦場で横たわる惨たらしい死体を模倣して一切の動きを停止させ。熟年の夫婦も羨む密着具合で冷たい大地と熱い抱擁を交わし続けていた。




お疲れ様でした。


さて、私事なのですが……。少し嬉しい知らせがあったので此処で報告させて頂きたいと思います!!


何んと……。バイオハザード4、並びにデッドスペースがリメイクされて発売されるとのことです!!!!


いやぁ、もう興奮し過ぎて眠れるかどうか分かりませんね!!


またこいつは下らない事を……。そんな事を言っている暇があるのなら少しでも多くの文字を書けという厳しい声が光る画面越しに聞こえてきますので報告は此処までにさせて頂きます。



そして、いいねをして頂き有難う御座いました。


週末のプロット作成の嬉しい励みとなります!!



それでは皆様、良い週末をお過ごし下さいね。

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