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第八十五話 見えている罠

皆様、お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 多種多様な文明を奏でる人の匂いと土埃が舞う埃っぽく乾いた空気から一転。


 王都の西門を潜り抜けると天然由来の自然溢れる香りがそっと体を撫でて通り過ぎてゆく。


 夏の力漲る香りとは対照的に冬の寂しさが籠められた香りに少しだけの寂しさを感じてしまう。


 この香りを嗅ぐと我が物顔で人の肩を窄ませてしまう寒さが堂々と大陸に訪れ、年末に備えて人々を忙しなく動かすのだ。



 一昔前、この寂しい香りが漂う孤児院で俺もそしてオルテ先生達も額に汗を浮かべて右往左往していたものさ。



『レイド!! パン屋に挨拶は済ませたのかい!? それと廊下の大掃除とそれから……』



 極悪非道の限りを尽くした囚人でさえも黙って彼女の命令に従ってしまう程の圧を放って皆に指示を出していたなぁ……。


 冬の名物を思い出しながら整備された土の街道をゆるりとした速度で進んでいた。



「レイド様!! こちらですわ!!」


「――――。早いね」



 街道から外れたいつもの小高い丘の麓。


 夏のそれと比べて少し頼りない陽の光の下でアオイ、カエデ、リューヴの三名が荷物を携えて此方を待ち構えていた。



「レイド様をお待たせする訳にはいきませんから」



 真冬の白雪も嫉妬する美しい白き髪が微風で揺れ動き、それを手で抑えながら笑みを零す。



「そっか。…………で?? お惚け三人衆はまだ来ないの??」



 周囲をくるりと見渡すが、マイ達の姿は当然見当たらず。元気の無い背の低い雑草がただ風に揺られて動いていた。



「宿へ荷物を受け取りに来たが……。マイの奴が買い残した物があると抜かして再び出て行った。それからは分からん」



 むすっとした表情でリューヴが話す。



「ん――、まぁ……。特別急ぐ用事がある訳じゃないし。ゆっくり待とうか」



 今回の訪問は偶に出来た空き時間を利用しての行動。


 師匠やエルザードに呼ばれている訳でも無いし焦る事もあるまいよ。



 人の波に揉まれながら勝ち取った師匠への手土産を一箇所に纏めてある荷物の傍らに置き、腰を下ろして己の背を荷物に預けた。


 地面の硬い土の感触、その上に敷かれた草の柔らかい感触が心地良いね。



「レイド。それ、何??」


「ん?? あぁ、師匠への手土産。美味しい物を見付けてさ。贈答用に丁度いいかと思ってね。月見餅って名前の焼き菓子」



 少し離れた所で俺と同じ姿勢で本を読むカエデに言ってやる。



「月見餅?? …………ほぅ。確かに良い匂いだな」



 狼、では無く。


 リューヴが人の姿で物珍し気に木箱を持ち、何やら端整な鼻をヒクヒクと動かして木箱から溢れる匂いを嗅いでいる。



「食べちゃ駄目だよ?? 師匠に渡して、余ったら皆で食べようか」


「ふんっ。どこぞの龍と一緒にするな」


「一応の確認だって。所で……。アオイは一体何をしているのかな??」


「え?? 頭が重いのでレイド様に支えて頂こうかと??」



 俺の右肩に甘い香りを放つ頭をそっと乗せて、一体何を言っているのだ??


 そんな惚けた表情でこちらを見上げて来る。



「あのね。首が据わっていない赤ん坊じゃないんだから」


「いいではありませんか。仲睦まじい夫婦の様に親しく交流を深めるのも」


「違う方法で交流は深めていきたいね」



 何気無い日常会話とか、普段の付き合いとか。


 信頼や友情はそうして小さな積み重ねで太い絆へと変化していくのだから。



「えぇっ!? ここで夫婦の愛を交わすのですか!? わ、私は構いませんが……。出来れば初めては二人っきりの時にしたいです」


「違う!! 会話で、交流を深めたいって意味だよ!!」



 もう一人の俺へ手を伸ばそうとする横着な腕を若干強めにピシャリと叩いて言ってやった。


 全く。白昼堂々と何て事を言うんだ。



「冗談ですわ。ねぇ、レイド様ぁ」


「何??」



 偶に御主人へ甘える猫みたいな声を止めなさいよ。



「向こうに到着しましたら、直ぐに帰りましょうよ」


「ん――、どうだろう。積もる話もあるだろうしそれに。稽古も少し付けて貰いたいと考えているんだ」



 折角の機会だし。


 先の任務で訓練生の熱に当てられた事もあってか、無性に体を動かしたい熱気が内側に篭っている。



「何泊かお泊りの御予定で??」


「師匠のお許しが出ればね。出なかったら日帰りだよ」


「お布団はぁ。アオイとぉ。一緒がいいですわぁ……」



 細くしなやかな指先を右大腿部に這わせると、何とも言えない感触に思わず背の肌が泡立ってしまった。



「それはまたの機会で」


 それをそっと押し退けて言ってやる。


「んもぅ。据え膳食わぬは男の恥ですわよ??」




「……………………。据え膳どころか。テメェみたいな黒くてキショイ蜘蛛なんか誰も食わないわよ」

「ちっ」



 正面からドスが効きに効いた声が届いたのでそちらへ視線を向けた。



「遅かったな」


「ごめんごめん。ちょっと買い忘れた物があってさ」



 屈託の無い笑みを浮かべ、深紅の髪を軽快に揺らしながらマイが此方へやって来る。



「ごめ――ん!! 待ったぁ??」


「遅いぞ、ルー」


「リューが早過ぎるんだって」


「レイド悪い!! こいつらの御守りしていたら遅れた!!」



 遅れてやって来たユウがバツが悪そうに両手を合わせて謝意を表してくれた。



「別にいいって。よし、全員揃ったな!! 荷物を持って丘の裏手に移動しよう!!」


「う――い。ルー、あんたそっちの荷物を持ちなさい」


「重そうだから嫌っ!! 買い物付き合ったんだからマイちゃんが持ってよ」



 いつも通りギャアギャアと騒ぐ彼女達を尻目に、手短な荷物を出来るだけ多く背負い、なだらかな斜面を登って下る。


 そして、街道から死角になる位置へ移動を果たすと分隊長殿へ尋ねた。



「カエデ、行けそう??」


「問題無い。けど、かなりの魔力を消費するから向こうで少し休ませてね」


「それは勿論。心行くまで休んでくれ」


「先生達が五月蠅くしてそれは叶いそうにありませんけど……」


「はは。それはそうだな」



 師匠とエルザード。


 水と油。白と黒。犬と猿。


 相容れぬ性格と人格だよなぁ。


 エルザード曰く、師匠の所によくいる理由は。



『ここってマナの濃度が濃いから快適なのよねぇ』


『儂は大いに不快じゃぞ??』


『あっそ。だったらあんたがどっか行けばいいじゃん』


『儂の家に貴様が居座っておるのじゃろうが!!!!』



 と、尤もらしい理由を以前伺った。


 マナの濃度が濃く無ければ、態々仲の悪い者の所へ居座ろうとは思うまい。


 いや、なんだかんだ言って意外と仲が良いのかもな。


 普通に話している時もあるし、それに喧しく何の遠慮も無く揶揄い合う仲でもある。


 まぁ……。その揶揄い合いが発展すると小さな山位なら瞬く間に消失してしまう程の力が発生してしまうのですよね。


 良い大人なのだからそこは分別を付けて割り切って欲しいものです。




「皆さん、準備が出来ました。出発しますよ」


「は――い!! カエデちゃん、宜しくね――!!」



 周囲に人の気配が無い事を確認すると、カエデの体から深い青の魔力の波動が滲み出て来る。


 目を開けていられない程の光量が刹那に周囲へ広がり、俺達の足元に巨大な魔法陣が現れた。



「うっへ。すんげぇ魔力」



 ユウが目を丸めて足元の魔法陣を見下ろす。


 彼女が放つ魔力によって地面の上に横たわる矮小な砂と石が細かく揺れ動き。そして、微かに大気も振動している。


 同じ大魔である彼女達が素直に驚愕の表情を浮かべる魔力、か。


 それを正確に掴み取れない俺でさえもカエデが放つ常軌を逸した力は容易に理解出来ますよ。



「行きます!!」



 カエデが藍色の目を力強く見開くと周囲に白い靄が掛かりそれは秒を追う毎に深くなる。


 そして、目を開けていられない程の光量が迸り瞼をぎゅっと閉じた。




「……………………。ふぅっ、到着です」




 カエデの声を受けて強く閉ざしていた瞼をそっと開けると……。


 そこは平地に出来た小高い丘の麓では無く、何度も辛酸を嘗めて這いつくばったギト山中腹の広い訓練場であった。



「おぉ。あっと言う間だな」



 素直な感想を述べて冬が深まり所々寂しそうな表情している木々に視線を送る。



「ってか。ちょっと寒いわね」



 マイが話す通り、以前に比べると山の空気はひんやりと冷たい物に変わっていた。


 ここも例に漏れず冬が深まっているって訳だな。



「じゃあ、取り敢えず荷物を平屋に置いて師匠の所へ向かおうか。カエデ、荷物持つよ」


「お願いします」



 いつも無理させて御免ね??


 少しばかり疲れの色が残る表情でそう話す彼女の荷物を持受け取ると訓練場を横断。平屋へと続くなだらかな階段を上がり、平屋の戸を開いて中へと足を入れた。



「誰もいないな」



 がらんと広がる平屋の大部屋には静寂が漂い、伊草の匂いだけがそこにいた。



「急な訪問だし、向こうも待ち構えていないだろう。よいしょっと」



 ユウが大荷物を部屋の隅に置いてそう話す。



「各自荷物を置いて、んで手土産を持って……。じゃあ、裏手に移動するぞ――」



 大事に両手で我が師へと贈る供物持ち、平屋を後にした。



「うん!? ちょっと、それって。ひょっとして月見姫じゃない??」



 マイが俺の隣に並んで煌びやかに目を輝かせて手元を見つめて来る。


 姫?? これと似た商品が売っていたのだろうか??



「これは月見餅って焼き菓子だ。中央屋台群で売っててさ。試食したら美味しくて、師匠への手土産として購入したんだ」


「あたし達も今朝、食ったぞ――」


「美味しかったよね!!」



 ほぅ、恐らくマイの先導で出会ったんだな。



「私が見付けたのよ!!」



 ほらね??



「ねぇ――。一個食べたいな――」



 マイが喜々とした表情で俺の右袖をクイクイとひっぱりながら話す。



「駄目に決まってんだろ。話聞いていたか?? 師匠への手土産って言っただろ」


「いいじゃん。一個くらいばれやしないって」


「駄目だ。先ずは師匠に。んで、余ったら貰え」



 甘さに流され一個を渡したらそれだけでは足りないと叫んで二個目を強請り、二個では私の腹は満たされないと俺の胸倉を掴んで三個目を強奪。


 挙句の果てには木箱全部をかっぱらって手元に残るのは理不尽な痛みと虚無感のみ。


 容易に想像出来る結末ですからね。コイツに渡す訳にはいかんのです。



「こ、この!! あんたは私に食料を常に提供する義務があるのよ!! それを拒絶するとは一体全体どういう了見なの!?!?」


「俺はお前の飯炊きでも無ければ、毎日美味しい御飯作ってくれるお母さんでもありません」


「むぎぎぃ……。一個!! 一個だけぇ!!」



 何んとか俺から月見餅を奪い取ろうとする横着者の素早い攻撃を回避しつつ平屋の裏手へと回り、素敵な花の香りで満ちている庭へと到着した。



「わぁ……。綺麗だね!!」


「あぁ。それに、花一つ一つの香りが心地良い」



 雷狼の御二人が花の美しい姿と香りに表情を緩める。


 青、橙、赤。美しく咲き誇る可憐な花達。


 その種類は分からずとも視覚と嗅覚を存分に楽しませてくれた。


 そして、その右後方。



「すぅ……。すぅ……」



 こじんまりとした建物の縁側に一人の女性が、上空から柔らかく降り注ぐ陽の光の下で気持ち良さそうにうたた寝を享受していた。



「師匠。起きて下さい」



 縁側に腰かけ、出来るだけ師匠の気分を害さない様優しい口調で語り掛ける。



「んぅ…………」



 俺の声には反応しているが、起きる気配は無い。


 寧ろ……。



「ふわぁん……」


「なぁんか。あんたの声で安心しきった顔になったわよ」



 そうマイが話す通り、口角が柔らかく曲がり昼寝?? 二度寝?? をより快適に昇華させてしまったようだ。


 さてと……。どうしたもんかね。


 此処で無理矢理起こしたら首が捻じ切れてしまう剛拳が襲い掛かる可能性が高い。このまま起こさずに師匠の可愛い寝顔を見ていたら時間を無駄に消費してしまう。



 し、しかし……。こう、何んと言いますか。



 齢三百を超えている御方なのに妙に父性を刺激してしまう寝姿ですよね。


 お尻の上からピョコンと外に出ているフワモコので金色の三本の尻尾。その中央の一本を股から通して体の正面へ伸ばし、それをきゅっと優しく抱いて眠る。


 寝息と同調して小さな肩が静かに揺れてちいちゃな御口からは甘い吐息が漏れ続け、それはもう素敵な寝姿なのですよ。



 く、くそう!! この小さな体をひょいと抱き上げて布団へ運んであげたい!!


 だが、此処は我慢の一択だ。


 落ち着きなさいよ?? 俺の父性さん……。貴方が暴走したら恐ろしい処罰が待ち構えているのですから。



「水、ぶっかけたら??」


「マイ。その後の惨状を考慮しての発言か??」


「冗談に決まってんでしょ」



 こいつならやりかねないから怖いんだよ。


 仕方が無い。このままでは埒が明かないので起こしましょうかね。



「師匠、レイドです。起きて下さい」



 師匠の右肩に手を添え、気分を害さない程度に揺らしてあげた。



「んぁ?? お――。レイドかぁ。久しぶりじゃのぉ……」



 可愛い向日葵が咲いている瞳で俺を捉えると。



「ふぅんっ……」


「ちょ、ちょっと」



 あろうことか縁側に腰かえている俺の膝に頭をポンっと乗せ再び二度寝の体勢に入るではないか。


 金の前髪が顔に掛かり、温かな気怠さを増長させ。頼りなく細い肩が体温を伝えて来る。


 くぅっ!!


 し、師匠!! 卑怯ですって!!


 これ以上俺の父性を刺激しないで!!



「レイド様の膝枕ですって!? そ、それは了承しかねますわ!!」


「そうだよ!! イスハさんだけずるい!!」



 いやいや。そういう問題じゃなくてね??


 起きないのが問題なんですよっと。



「確か、イスハって尻尾が弱いわよね??」


「そうだけど……。お、おい。何するつもりだ??」


「ぬふふ――。さぁって、起こしてやりましょうかねぇ――」



 マイが悪戯心満載の表情を浮かべて師匠の素敵で柔らかいモコモコの尻尾の下へと移動する。


 そして。



「何時まで経っても起きない……。こいつが悪いのよ!!」



 何の遠慮も無く、フワフワの尻尾の中に豪快に手を突っ込むではありませんか!!



「んっ……!!」



 それと同時に甘く切ない声が仄かに師匠の口から漏れ出す。



「ここの肉?? 骨?? 芯?? をクリクリすればいいのよね??」


「尻尾だからお肉だよ。ほら、私の尻尾もそうだし」


「それは別にどうでもいいけど。師匠、起きて下さい」



 父性を多大に刺激してしまう膝元の師匠へ話しかけるが一向に起きる気配は無く。



「あっ……。ふぅっ……」



 マイの悪戯を受け、妙に艶のある声色が俺の鼓膜を刺激。


 心なしか、頬も段々と朱に染まり色っぽさを醸し出していた。



「ちっ。起きやしないわね。ユウ、そっちの尻尾。やっちゃって」


「ぬふふ。待ってました!!」



 攻める尻尾が一本から二本へ。


 三本ある内の二本へ向かってマイとユウの悪戯攻撃が開始されてしまった



「はっ……。んんっ……」



 うぅむ……。何だろう、この妙に男の性を擽る声は。


 徐々に頬が朱に染まり、口から吐く吐息はまるで質量を帯びた様に甘く粘着質なものへと変化。


 体の奥底から湧き起こる何かを我慢する為、小さな肩を小刻みに震わせ内股をキュっと摺り寄せてしまう。




「おらおらぁ!!!!」


「ほれほれ!!」



 師匠の声が昂るに連れて、マイ達の攻撃も加速を増す。


 そして遂に師匠のナニかの限界を迎えたのか。



「ふぁっ……んっ!! だ…………、駄目じゃ!!」

「うっそっ!!!! んん――――――――っ!!!!!!」




 師匠の感情が爆発すると同時に尻尾が七本に増え俺の顔、体中に絡みつき視界が数舜で暗闇へ包まれてしまう。


 それだけならまだしも。


 一本の尻尾が首に絡みつき、俺の気道を容赦なく圧迫し始めるではありませんか!!!!



「ん――!! ふるふぃぃい!!!!」



 もがけばもがく程、尻尾が執拗に絡みつき常軌を逸した力で俺の首をグイグイと巻き締め付けて来る。


 な、何て力だ。す、少しでも気を抜けば意識がぶっ飛びそうだぞ!?



「やっば!! イスハ!! 起きなさいって!!」


「んがぁ!! リューヴ!! こっち手伝え!!」


「主!!」



 力自慢の三人が数本を相手取り引っぺがしてくれるが……。


 首に絡みつく一本は依然元気良く、そして容赦無く俺を滅殺しようと躍起になっていた。



 だ、れか。た、助けて……。



「ちょ……。どの尻尾よ!!」


「分からん!! これか!?」


「ひゃんっ!!」


「んぐ――――!! それじゃふぁい――!!」



 どうやら師匠の当たりをリューヴが引き当ててしまった様だ。


 その証拠として一層締め付ける力が増大した。



「全部毛で覆われて分からん!! ルー達も手伝え!!」


「レイド様!! この……毛むくじゃら!!」


「レイドぉ!! 待ってて!!」


「燃やした方が早いのでは??」



「ん――んっ!!!!」



 カエデの極端な提案に対して俺は首を横に振って意思表示を伝えた。


 向こうに伝わっているかどうか分かりませんけどね!!!!



「…………。ふぅ――、良いお湯だったぁ。あれぇ?? カエデ達じゃない。さっきの魔力、やっぱりそうだったのね――」



 この声は……!!


 渡りに船とは正にこの事!!!!



「えるふぁーど!! たふふぇて!!!!」


「ちょ!! あんた私のレイドに何してんのよ!!!!」



 淫魔の女王、エルザードが尻尾地獄からの救出劇に参戦してくれた。


 一切合切光景が見えないから俺の予想ですけれども。



「ドスケベ姉ちゃん!! そっちの尻尾持って!!」



 マイの鬼気迫る声が遠くの方から聞こえて来る。


 いかん。このままじゃ……。



「こっち!? とりゃ!!」

「きゃんっ!!!!」



「ふぬぐぉぉええっ!?!?」



 な、何!? 一体何が起こったの!?


 尻尾が増えたのか知らないが、気が遠くなる痛みが体全体を包み込む。



「ぎゃあ!! 増えちゃったじゃん!!」


「先生。しっかりして下さい」


「し、知らないわよ!! 御風呂上りにこんな光景みたら誰だって焦るわよ!!」



 あ、風呂入っていたんだ。


 俺も一汗流したら入ろう、か……な。ここの御風呂は本当に素敵ですからね……。



「やっば!! ぐったりしてる!!」


「ユウ!! もっと引っ張れ!!」


「え?? こう??」


「ひゃぁんっ!!!!」


「んぐぬぅ…………」



 ユウが今日一番の大当たりを引くと、俺の意識は遥か彼方。遠い地平線の先へと旅立って行ってしまった。


 これから、寝ている師匠に近付く時は細心の注意を払おう。


 薄れゆく意識の中、人知れずそう決意を固め。



「うっわ……。何、コレ。自分の触腕が増え過ぎて扱いに困っている蛸みてぇじゃん……」



 蛸は八本の足があるから……。その扱いに困るって事はそれ以上の数の尻尾が俺に絡みついているのですね……。


 抗う事を諦めたマイの声をおかずにして我が師と仲良く縁側で昼寝を享受したのだった。




お疲れ様でした。


先程まで、この長編の中盤辺りのプロットを執筆していたのですが。その部分で少々難航して立ち止まっている状態ですね。


そこさえ乗り切れば一気に終盤まで駆け抜ける事が出来るのですけども……。中々難しいです。



春が過ぎ、もう間も無く夏を迎える季節。温かくなって来たので熱中症に気を付けて下さいね。


それでは皆様、お休みなさいませ。

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