表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/1235

第四十四話 母娘、我が膝上にて相討つ

お疲れ様です。


本来であればこの御話しで出発する予定でしたが……。それでは味気ないと考え、本日急遽御話を付け加えました。


それでは、御覧下さい!!




 魅惑的な蒸気を放つ程よい温かさの液体に爪先からゆるりとお邪魔し。右足の怪我を庇いつつ全身を浸からせてあげると。



「くはぁ……」



 意図せぬ声が口から漏れ、これでもかと体が弛緩してしまった。



「御風呂ってなんで声が漏れちゃうんだろうなぁ」



 四方を囲んだ岩肌に俺の声が乱反射し鼓膜に戻る。



 岩肌に添えられた燭台の色もあってか。疲労を拭う為には持って来いの浴場に満足を越え、至福さえも感じてしまっていた。




 素晴らしい食事を終え、さて明日の予定を与えられた室内で皆と相談していると。



『皆様。御風呂の準備が出来ました』



 と、蜘蛛の兵士さんから嬉しいお知らせが届き。



『それでは頂きましょうか』



 海竜さんの一言により俺を覗く全員がフォレインさん、並びにアオイが使用する浴場へと移動した。



 兵士さん達には専用の浴場があるらしいのだが……。そこは苛烈を極めた戦場らしく??



 客人には向かない様なのです。



 当然、男性である俺が兵士さん達と混ざって入る訳にはいかないので彼女達の帰りを待ち。



『くっは――!! 最高だったわ!!』



 艶々になってしまった深紅の髪を揺らしつつ部屋に帰って来た彼女達を見届け、此処に至りました。




 自分でも考えている以上に疲労が溜まっていたのか。


 湯に浸かるなり、想像以上の多好感を覚えてしまっていた。



「ふぅ……。いよいよ北上、か」



 粗方の問題は解決した。そう……。粗方。



 アオイから聞いた、淫魔に指示を与えている人物が喉の奥に形容し難い引っ掛かりを発生させてしまっている。




 何故此処を襲ったのか。


 動機、意図、理由。


 その全てが不明なのだ。



 この大陸で何を画策しているのやら……。



 人と魔物を巻き込む、いいや。両者の運命を変えてしまう程の恐ろしい計画を考えているのではないかとさえ考えてしまうのだ。



「厄介だよなぁ……」



 口から出るのは愚痴。


 そして、心の中には不安が募る。



 風呂は本来疲労を拭う為に存在するのだが、こういった状況下に置かれ。一人になってしまうとついつい負の思考が浮かんでしまうのだよっと。




 魔物に指示を与えている以上、背後に居る人物は魔物だよな??




 と、言う事は。魔物が、魔物を殺そうと考えているって事か。



 人が殺人を犯す様に、魔物も魔物を殺すことを何とも思っていないのだろうか??




 初めて会った魔物は……。ま、まぁ。恐ろしい龍でしたが。魔物の皆さんは概ね人と変わらぬ、いや。寧ろ、人よりも素晴らしき人格を備えていた。



 恐ろしいとは一度も思わなかった。


 素直に尊敬していると言った方が正しいな。




「皆、素敵な性格をお持ちですからねぇ」



 頭の上に乗せていた手拭いを腰へと落とし。




 体内から溢れ出る汗を両手でゴシゴシと顔を拭いていると、ふと右肩に何かが留まった。



「おわっ!! ――――――――。何だ、アオイか……。驚かすなよ」



 黒き甲殻を備えた大人の拳大程の蜘蛛。



 複眼の直ぐ後ろが白く染まっているので直ぐに判別可能だ。



 纏わり付く湿気が少々気に障ったのか。


 二本の前足をワチャワチャと動かし、丁寧に御顔を掃除?? していた。



「こらっ。駄目じゃないか。御風呂に入って来たら」



 蜘蛛の姿なら許容範囲ですけども、人の姿に変わったら速攻で出て行かなければならない。


 どうしてかって??


 健全な男女間の間柄で混浴は了承出来ませんのでね!!



「……」



 あら、無言。ですか。



 複眼でじぃっと俺の顔を見上げ、時折甘える様に口に備わった牙をツンツンと肩に突き立てている。



 黒き牙を通して楊枝で突かれた程度の痛みが生じてしまっていた。



「アオイは凄いよなぁ。魔法も使えて、近接戦闘も可能でさ」



 先の戦闘で繰り広げられた魔法、そして後に聞いた継承召喚。


 そのどれもが羨望せざるを得ない力だ。


 近接戦闘に重みを置く此方としては羨ましい限りなのです。



「誰に教わったの?? やっぱりフォレインさん??」



 ぷっくりと膨らんだお腹をちょこんと突く。



「……っ」



「あはは、ごめんね」



 擽ったかったのか。


 ピクっと体を動かす。



「予想だけど、フォレインさんも素晴らしい力を持っているよな」



 相対した時、背筋がゾクリとしたのだが……。


 あれは魅力的な女性が醸し出す雰囲気では無く。彼女の奥底に眠る武によるものだったのではないかと今ではそう考えている。


 勿論、綺麗な女性な事に変わりはないのですけどね。



「すっごい綺麗で……。強くって……。卑怯過ぎるとは思わない??」



「……」



 そうですわね。


 了承の意味を籠めたのかな?? 二本の前足をササっと上げ、此方の首元に牙をちょこんと当てた。



「擽ったいよ。さっきからだんまりだけど……。どうかした??」



 これ以上沈黙が続くのであれば、申し訳無いけど御風呂を出ましょうかね。


 姿は違えどこの蜘蛛さんは女性なのだから。



 顔に湧く汗を両手で拭い、ふぅっと息を漏らすと。




























「――――――――。お褒め頂き、有難うございます。レイドさん」



「フォ、フォ、フォ、フォレインさん!?!?!?」



 蜘蛛から放たれた衝撃的な声色に思わず飛び上がってしまった!!!!



「ちょ、ちょっと!! 駄目ですよ!! 何で入って来ちゃっているんですか!!!!」



 慌てて腰の位置にしっかりと手拭いを乗せ、正座の姿勢をしっかりと整えてから言葉を漏らした。



「殿方が湯に浸かっているのですよ?? 背を流すのが女の使命ですので……」


「倫理観が少々間違っています」



 どうかお願いします。


 そのまま蜘蛛の姿で居て下さいね。



 五月蠅い心臓を宥めつつ、次なる言葉を待った。



「うふふ。真摯な御方ですね。此処へ来たのは個人的な礼を述べる為ですよ」


「個人的な礼??」



「此度は里を……。いいえ、娘と共に行動して頂き。誠に有難うございました」



 そう話すと二本の前足を器用に折り畳みちょこんと頭を下げた。



「い、いえいえ!! 滅相も御座いません!! 世話になったのは此方です!! 彼女の魔法や咄嗟の機転に救われたのは此方なのですから!!!!」



 里を統べる者が頭を下げるのは勘弁して下さい!!



「今から話すのは私の独り言として捉えて下さい」



 フォレインさんがしんみりとした口調で話すと、俺は一つ頷き。彼女に対して了承を伝えた。




「娘は生まれてから友と呼べる者を持った事がありません。里を守る兵士達とは日常会話程度の言葉を交わしますが、それはあくまでも上に立つ者としての嗜み程度のものです。立場上、娘は強く在れと考えに至り自分でも見えない所で壁を作っているのです」



 その気持は痛い程分かるな。


 俺が此処の兵だったらアオイに対して、気軽に話しかけられないもの。女王の娘……。


 つまり、御姫様なのですから。



「実力は年を重ねる毎に成長していますが、内面的な部分はまだまだ未熟です。精神的成長を促すのには、同じ目線から物を話してくれる者が必要です」



「それはつまり……。マイ達の様な存在が必要、だと??」



 継承召喚を可能にし、常軌を逸した力を持つ彼女達の事だろう。



 風よりも素早く移動し。


 不動の大地を揺らす膂力と、天をも脅かす魔法の威力。


 大魔の血を受け継ぐ者同士、切磋琢磨する事が成長を促す最大の要因か。




「その通りです。先日、娘が此処に帰還した時。私は娘の目を見て確信しました。レイドさん達と出会った事を、目を輝かせて嬉し気に語り。 抑えられぬ高揚感が矢面に出て話す様は母として大変嬉しいものでした。あぁ、娘はこんな目をするのだ。そして、こうも温かい笑みを浮かべるのだ、と」



「あはは。それは意外ですね。アオイさんはどちらかと言えば凛とした佇まいと、冷静沈着な性格だと考えていましたので」



 只、ちょっとだけ正しい男女間の距離感を間違えていますけどね。



「ふふ、人に本当の自分を見られるのが億劫なのですよ。娘はいつかこの里を代表する座に就きます。その時、意見を述べてくれる者が必要なのです。独り善がりの考えは独裁的な方向にも走ってしまいますので……」



「え、っと。それはつまり……」



 まぁ、恐らくそういう事でしょうね。



「レイドさん。これは里を代表する者としてでは無く、母親としての願いです。娘を……。同行させて頂けないでしょうか??」



 体の真正面を此方に向け、漆黒の複眼で俺を捉えて話す。


 女王としての覇気ある声は消失し、真に娘を想う母の声だ。



 出来る事なら俺も連れて行きたいですが……。


 何せ、あの龍と険悪な仲ですものねぇ……。


 俺は勿論大歓迎ですよ?? 戦闘面では言わずもが、そして周囲に良く目が届き。仲間を想う心は見ていて心地が良いですから。



 俺一人の一存では決めかねる。


 腕を組み、暫しの間沈黙を続けていると。



「分かりました」




 何やら決意にも満ちた声がフォレインさんから漏れた。




「レイドさんは………………。私の体をお求めなのですね??」




「――――――――。はい??」



 里を統べる者に対して放つ言葉では無いが、ついつい突拍子も無い言葉が漏れてしまった。



「皆迄仰らなくても私は存じております。無条件で連れて頂けるとは私も考えておりません。娘を産んだ体ですが……。程よい鍛錬の御蔭様で体型は維持出来ております」



 そう話すと、右肩から閃光が迸り。


 何か物凄く柔らかい物体が両足の上にぽよんと乗った。



 そして、閃光が収まり。目が慣れて来ると……。





 俺の目の前に一輪の白い花が咲いていた。




 湿気を帯びた白き髪を後ろに纏め、憂いを帯びた前髪が黒き瞳を隠すとドクンっと一つ大きく心臓が鳴ってしまう。


 濡れた布を押し上げる女性の武器が此方の胸元に密着すると男の性が刺激され。



「ふぅ…………」



 粘着質な吐息が顔を撫でると正常な思考が阻害されてしまった。



「どう、でしょうか??」


「い、いや。どう、と申されましても……」



 咄嗟に顔を反らし、黒き岩肌を捉えて話す。



「んふふ……。御安心下さい。私が……。魂が蕩けてしまう極上の夜を与えますので……」



 首に細い両手を絡め、ググっと此方の体を引き寄せるが。



「だ、駄目ですって!!!! フォレインさんは綺麗な方ですけど!! こういった行為は然るべき時、然るべき男女の間柄の者共が行う事なのですからっ!!!!」



 か細い肩をぐっと掴み。


 全力で押し返そうとするが……。



「まぁっ!! お褒め頂き、有難う御座いますっ!!」


「ちょっとぉ!?!?」



 この細い体からは想像出来ない力で引き寄せられてしまった!!!!



 嘘でしょう!?


 これが女性の力!?



「如何で御座いますか?? 私の体は……」



 大変柔らかくていい匂いがしますよ。とは言えず。



「で、ですから。こういった行為は了承出来ませんよ」



 耳元で囁く声に、精一杯の抵抗を試みた。



「うふふ…………。殿方を楽園へと誘う肉の壺を是非ご賞味下さい……」



 体をすっと離し、淫らに垂れた前髪を耳に掛けると。


 意を決した様に瞳を閉じて端整な顔を此方に向けて接近させた。



「い、いや!!!! 駄目です!! 勘弁して下さい!!」



 必死に暴れようが腕に拘束され、両足をがっちりと体に絡みつけて来るので全く動けん!!!!



「あんっ。暴れては駄目ですよ?? レイドさんは、何もせずそこで心地良さを堪能すればいいのですから……。さぁ……。共に……。高みへと昇りましょう……」



 む、無理です!!


 これ以上は了承出来ません!!!!



 筋疲労で萎え始めた両腕で必死に抗うも、猛った彼女は止まる事無く。此方との距離を消失させる為、接近を続ける。


 距離が完全に消失するまで、後僅か。



 首を捩じって逃れようとせめてもの抵抗を続けていると…………。




「――――――――。何をしているのですか?? お母様」


「アオイ!!!!」



 右肩に黒き甲殻を携えた蜘蛛が留まり、漆黒の複眼でうっとりとした表情を浮かべている母を制した。



「た、助かったよ!!!!!!」



 窮地に陥った弱者を救う英雄の登場に思わず声を大にして叫んでしまった。



「ふふっ。私も久しぶりですので、少々猛ってしまいしました」



 丸みを帯びた唇に淫らな唾液を纏わせた舌を這わせて話す。



 お願いします。


 その仕草はそれっきりで。


 淫靡に映り過ぎてしまいますので……。




「レイド様?? 私以外の女性とこうした行為は了承出来ませんのよ??」



「いや、そういう事じゃなくてね?? 清い男女間で行われるべきでは無い行為が繰り広げられている事自体が問題なのです」



 はぁ。


 取り敢えず、間違いは行わなくて済んだな。


 ふぅっと安堵の息を漏らし、肩の力を抜くが……。



「お母様。申し訳ありませんが……。そこを退いて頂けますか??」


「え?? おわっ!?」



 再び閃光が迸ると同時に、もう一人分の重量が足に圧し掛かった。



「あらっ?? アオイも……。参加するのです??」



 カクンっと首を傾げ。


 もう一輪余計に咲いてしまった白い花に話し掛ける。



「参加も何も……。お母様は論外ですのよ?? レイド様は私のお腹に命を注ぐ運命なのですから」



「私も子を宿す権利はありますのよ??」



「それとこれは別の話ですわっ!! 第一!! お母様はもう子を成しているではありませんか!! 順番的には私ですっ!!!!! そうですわよね?? レイド様っ!?」



「あの、御二人様……」



 俺の膝上で持論を交わし続ける二輪の花へとおずおずと話しかけた。



「如何為されました?? レイド様」


「どうされました?? レイドさん」



「申し訳ありませんが!! そろそろ退いて頂けますか!?」



 体が熱くてどうにかなりそうなのです!!


 それにぃ!! もう一人の俺が激しい自己主張を行っていて、バレてしまいそうなのです!!



 柔らかい二つの桃から逃れる為、腰を引いた変な姿勢でそう叫ぶも……。



「五月蠅い口は閉じて頂きましょうか」


「はい?? んぐっ!?」



 フォレインさんが笑みを浮かべると同時に、口へ何かが飛来。


 猿轡をされた状態になってしまった。



 こ、これは!? 糸!?




「いいですか?? アオイ。殿方が嫌がるのは偽りの姿なのです。本心では女性の体を求め、猛り狂った熱き血潮で女の体を穿ちたいと考えているのですよ」



「ン゛――!!」



 全然違います!!


 激しく顔を横に振りこういった行為の拒絶を示すも果たして伝わっているのだろうか。



「そんな事は承知しておりますわ。レイド様はお母様の体では無く、私の体を求めているのですよ。そうで御座いますわよね?? レイド様っ」


「ファッ!?」



 フォレインさん同様。


 アオイが布一枚の姿で此方に密着してしまった。予想通り、全然伝わっていませんでしたね……。




 この柔らかさを例えるのなら……。



 フォレインさんはしっかりと柔らかいお肉の持ち主で。


 アオイは柔らかいものの、柔らかさの中にコシがあるって感じですね。



 ――――――――。


 下らない事を考えていないで、何んとか逃れないと!!!!



 このままじゃ無理矢理……。



「んふっ。レイド様っ?? 私は初めての経験ですが……。御安心下さいませ。必ずや満足のいく心地良さを提供させて頂きますので」



 安心の意味が違います!!!!



「娘の稚拙な腰使いよりも、卓越した女性の技を御賞味された方が宜しいかと……」


「きゃっ!!」



 フォレインさんが愛娘を押し退け。俺の鼻頭にふぅっと、甘い吐息を吹きかける。


 この吐息だけで失神してしまいそうですよ……。



「お、お母様は退いて下さいっ!! 私、妹は欲していません!!」


「あら、そうなの??」



 キョトンとした御顔で娘の顔を見つめる。



「妹よりも孫ですわ!! ねぇ!? そうで御座いましょう!?」



 どちらも了承出来ません!!



 首を激しく横に振ろうとしても、しっかりとアオイに顔を抑え付けられているのでそれは叶わなかった。





「じゃあ……。ここは折半にしましょう」



 はい??


 何かを思いついたフォレインさんが軽快に柏手を打つ。



「孫と妹、同時に授かれば問題無いでしょ」


「ふぁい問題ふぇす!!!!」



 こっちの意見も採用して下さい!! と言いますか!! 話を聞いて!!



「それは良いですわね!!!! 子が増えれば里の者も喜びますし」



「ふぇっ!?」



 いやいや!!


 此処は否定が正しい選択ですよ!? 肯定してどうすんの!!!!



「お若い御体ですので……。命を二回程授けるのも簡単ですよね??」


「お母様は私より後ですからね!! では、レイド様……。私のお腹に……。愛を注いで下さいまし……」



 はい、やっばい!!!!



 トロンっと蕩けた表情を浮かべたアオイの顔が近付いて来た。



「ンググッ!!!!」



 必死に腕を動かそうものなら。



「駄目ですよ?? 動いては??」



「ファガッ!?」



 フォレインさんから放たれた見えない糸で腕を拘束され。


 ホヨンっとした桃から逃れる為に腰を引こうものなら。



「逃げないでくださいまし……」



 アオイの嫋やかな足がそれを許してくれない。



「「うふふふ……」」



 二人の美しい獣に体の自由を奪われ、ついに退路が塞がれてしまった。



 蜘蛛の皆さんのお子様は女の子と御伺いしましたし。それにこれだけ美人な二人だ。


 きっと生まれて来るお子様も大変お美しい事でしょうねぇ……。


 湯の熱さと女の体が、正常な思考を奪い。抗う事を諦めかけていた刹那。






 真の英雄が登場した。



 いや、正確に言えば超絶最強に恐ろしい悪魔ですね。







「よぉぉぉぉおおおおお。姉ちゃん達ぃ。楽しそうだなぁ?? ん――??」


「ファイっ!!!!」



 背後から届いた声にこれでもかと安心を籠めた声をで振り向くと。



「あっ??」



 安心から恐怖のどん底へと叩き落とされてしまった。



 右肩に黄金の槍を担ぎ、街中でたむろする不良の座り方で此方を見下ろし。


 体からは深紅の魔力が滲み出て周囲を侵食。


 きっと、この姿を見た誰もが口を揃えてこう話すであろう。



『本物の悪魔』 だと。




「男女の営みを邪魔するとは……。無粋な御方ですわねぇ」


「マイさん?? レイドさんは里の為に我々に命を注いでくれるのです。此処は一つ、何も見なかった事にして下さりますか??」



 お願いします。


 これ以上、この人を刺激しないで下さい。




「ハハ。面白い事を言うわね??」



 ほ、ほら!!


 怒らせたら駄目ですよ!!



 黄金の切っ先が背中を突き、ピリっとした痛みが発生し。薄皮を裂いてしまった。




「あら、レイド様……。血が……。流れていますわ」


「ひぃっ!!」



 濡れた体を密着させ。


 細い指で傷口から零れ出る赤き液体を掬い取り……。



「んふっ」


 潤んだ口へちゅぴっと含む。



 それがまぁ恐ろしく色っぽい事で……。



 ですが……。


 これが大変宜しく無い行為に映った様で??



「さぁってっと…………。いっぺん、死んどくか??」



 背筋が泡立つ圧が背後から放たれた。



「ファイ!! ふぁめて!!」



「うっせぇえええええええ!!!! 助けに来てやったんだ!! 少し位の痛みは我慢しろやっ!!」



「本日はお暇させて頂きます」


「レイド様っ。また後日、御伺い致しますわねっ」



「ふぃや!! 嫌ぁあああああああああ!! アデブッ!?」



 蜘蛛の御二人は事前に危機を察知し、そそくさと岩肌の隙間へと退散。


 それと同時に黄金の槍が風呂床へと着弾し、天上へ届けと言わんばかりに湯が爆ぜ。降り注いだ。



「ぶはっ!!!! ぜぇ……。ぜぇ……」



 外気を吸ってちょっとだけ冷めてしまったお湯を、風呂上りの犬の如く頭を振って振り払い。


 漸く自由になった体で立ち上がった。



「助かったよ、マイ」



 心に思った言葉をそのまま彼女へと話す。


 痛みは余計でしたが、マイが助けに来なければあのまま二人と……。


 正に間一髪だった……。



「ふんっ。あんたは隙だらけなのよ。もうちょっと…………。っ!!!!!!」



 ん??


 何だ?? 髪の毛同様、顔を朱に染めて。



 下方へと向けたマイの視線を何気なく追うと……。





「げぇっ!!!! ち、違うんだ!! これは!! 違うの!!!!」





 咄嗟に手拭いでもう一人の俺を隠し、ざぶんと湯に浸かった。



「て、てめぇ……。私にそんな気色の悪い物を見せやがってぇえ!!」


「や、止めて!! せめて石突で!!!!」



 蒸気を逸した赤みを帯びた顔の彼女が向けた穂先に懇願する。



「御望み通り!!!! 顎を砕いてやるわぁあああああああ!!」


「やっぱ今の無し!! パングッ!!!!!!」



 心地良い衝撃が顎を打ち抜き、体がピンっと伸びてしまい。


 グシャリとお湯の中へと倒れ込んだ。



 あ、顎が……。


 痛過ぎて気を失いそうですよ。



「死ね!!!! 変態野郎!!!!」



 助けてくれた事に礼は言いますけども……。


 変態と罵られるのは心外です……。



 猛った猪ばりに荒い鼻息を放ちつつ浴場を去る男らしい彼女の背中を見つめ。礼にも、恐ろしさにも似た複雑な感情を、腰を引いた変な姿勢で送る。




 淫靡な煩悩よ、去りなさい。


 そして。澄み渡った清い心が訪れますように。



 異常なまでに高まってしまった煩悩と。今日までに積もり積もった疲労。この両者をお湯の中に完全に溶かしてから出ようと口元までちゃぷんっと浸かったのだった。


お疲れ様でした!!


如何でしたか??


今度こそ、次の御話で蜘蛛の里を離れますので御安心?? 下さいね!!


それでは次の御話しでまたお会いしましょう!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ