表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
421/1225

第四十三話 不穏な匂い

おはようございます。


休日の午前中にそっと投稿を添えさせて頂きます。


それでは御覧下さい。




 朝の光が夜の空気が籠る天幕の中の空気を温め、光が届かぬとも一日の訪れを確実に知らせて来る。


 深夜、此処で眠っていた獰猛な怪物を起こすのに苦労をしたのだ。


 俺を起こそうと躍起になる太陽さんには申し訳ありませんが積もり積もった疲労を拭い落す為にもう少し微睡んでいたいのです。


 愛用の毛布を大事に抱いて心地良い寝返りを打つと、腹部に微かな痛みが発生した。



『おい、トア。交代だぞ』


『ん――。もう少し、寝かせて……』


『はぁ!? 深夜に交代するって言っただろ!?』


『んんっ!! 私は眠たいの!!』


『どぶっ!!』



 いくら眠たいからって、人の腹を殴ってまで睡眠を取ろうとするかね。


 気怠い体のまま、腹を擦り昨夜……。いや、数時間前の行動を思い出していた。



「レイド――。朝だよ――」


「む……。もう、出発か??」



 天幕が左右に開き、朝の光と共に端整な顔が此方を覗く。



「もう少ししたら出発しそう。私達も準備に取り掛かろうか」


「了解。起きる、よ」



 もう少し眠っていたいのが本音ですけども。


 任務だから仕方ないですよね。


 まだまだ眠っていたいと駄々をこねる我儘な体に鞭を打ち覚醒を促した。



「…………。ね??」


「ん――?? 何だ??」



 狭い天幕の中で上体を起こし、男らしく後頭部をガシガシと掻きながら話す。



「隣で寝て良い??」


「はぁ!? 駄目に決まってるだろ」


「冗談よ、じょ――だん。相変わらず真面目なんだから」



 頬っぺたに許容量を大幅に超えた餌を詰め込んでしまった栗鼠も思わず驚いて口から餌を吹き出してしまう程に、頬を膨らませてしまう。


 巨人が握ったおにぎりでも詰まっているのか?? その頬には。




「朝一番で揶揄うのは止めてくれ。体が持たないよ」


「じゃあ、昼からならいいの??」


「違う、そうじゃないって……」



 大きく溜息を吐き、朝の気怠さを吐き出しながら答えてやった。


 何はともあれ本日は順調に行程が進めばメンフィス手前の森まで到達する予定だ。


 余り気乗りしない任務ですが、与えられた以上。己の責務を全うしましょうかね。



 何かと理由を述べて天幕の中に入ろうとする横着者の頭をポスンと叩いて撃退。眩し過ぎる笑みを放つ太陽さんの下へ重い体を引っ提げて躍り出た。

















 ――――。




 心地良い眠りに就く為には環境は勿論の事、お腹が膨れている事が必要不可欠だと思う。


 今回の尾行の旅ではほぼ野晒の状態で眠りに就かなければならないので、心地良い環境という条件は満たしていない。


 では、後者は??


 はっ、これは言うまでもあるまいて……。




 ほぼ毎食パン……。パン!! パァァンッ!!!! いい加減飽きて来たのよ!! 小麦の飯は!!




 焼きたてホカホカの肉汁滴る肉に齧り付き、油塗れの舌で炊き立ての米を口の中へ掻きこんで幸せの咀嚼を始め。


 塩気が利いた熱々のスープでそれをグビッ!! と流し込む。


 それを永遠と続ければ最高な気分になるってぇのに……。



 まぁ……。こうなる事は分かっていてついて来た私にもその責任はあるのだけれども。


 何だか釈然としなかった。




 夢現の頭の中に現れた御馳走に夢を膨らませていると眩しい光が瞼を刺激して、一日の始まりを知らせて来た。


 微妙に硬い草の上で眠りに就いた所為か、体が少しばかり機嫌の悪い声を上げている。



 はぁ――……。仕方が無い。


 起きて尾行を開始しましょうかね。




「お。起きたか」


「ん――。ユウ、おはよっ。ボケナス達は??」



 がしがしと頭を掻き、後頭部に寝癖が目立つ親友の顔を見上げて話す。


 寝癖が残るも程よく日に焼けた肌に朝の光が良く似合っていた。



 日が当たらない時も可愛ければ朝も可愛いくて、剰え胸もデケェときたもんだ。


 世の中には不公平が溢れ返っている事を再認識して硬い地面に両足を突きたててやった。



「向こうも起きた所だよ。もう直ぐ出発じゃないかな??」



 ほぅ、夜明けと共に行動開始か。


 忙しない連中め。


 どうせならゆっくりと移動しなさいよ。もう少し寝ていたいんだから……。



「あれ?? ルーとリューヴは??」



「レイド様……。あぁ、レイド様ぁ……」



 蜘蛛はユウの隣でじっとボケナスの方を気色悪い眼差しで見つめているが、二頭の狼の姿が見当たらなかった。



「…………お花を摘んで来るんだとさ」


「あぁ。成程ね」



 生理現象は止むを得ないわね。



 さてと、王都に帰るまで御馳走はもう少しの我慢。


 今日も一日、元気良く尾行をしましょうかね!!!!



 背中とお尻ちゃんに付着した土埃をパパっと払い、さり気なぁくユウの丸いお尻を撫で。



「勝手に触んなっ!!!!」


「はごすっ!?!?」



 頭の天辺から足の爪先まで駆け抜けて行った衝撃と痛みが収まるのを待ってから出発の準備を始めた。


























 ◇




 どうもこの陽気は任務中に宜しくないな。


 御者席に着き手綱を操っているが自然と体の奥底から欠伸が湧き上がって来る。



 それもその筈。


 日中は護衛を続けながらの移動、夜間は難癖付けて沢山眠ろうとする同期の所為で大半の夜間哨戒任務を請け負い。


 更にぃ!!


 朝昼晩と飯の担当を受け持てば眠気に付き纏われるのも致し方ないとは思いませんか??


 少なくとも俺はそう思います。




「寝不足??」


「ん――?? まぁね。今日で三日目だろ?? 昨日の夜も何事もなかったし。緊張の糸が切れる訳じゃないけどさ。ど――も眠さが取れないんだよな」



 今しがた話した通り、レンクィストを出発してからは平和そのものであった。


 昨日の夜は報告にあった襲撃地点が近かった為、緊張感を持って哨戒に臨んだが……。



 野盗共が凶器を以て襲撃してくる恐ろしい光景とは裏腹に。


 目に映っていたのは月が照らす風光明媚な景色、鼓膜を優しく揺らす虫の声、そして微風が大地の香を届けてくれた。



 野盗よりも己の眠気と戦う方に労力を割き、行動中に蓄積された疲労の反動が今になって襲って来たらしい。


 双肩がズンっと重くなる気怠さが体に襲い掛かっていた。



「ちょっと――。任務中なんだからね??」


「分かっているさ。流石に寝入る訳にはいかないよ」


『本当か??』



 ウマ子が疑うような瞳の色を浮かべて此方へと振り返る。



「本当なの!!」



 堪らずその瞳に言ってやった。


 全く!! 馬にまで疑われるとは心外だ。



「あはは!! ウマ子ちゃん、分かっているんだよ。御主人様が眠たくてしょうがないって事をさ。ね?? リク」



 ポンっと己の愛馬を手で撫でて話す。



「はいはい。しゃんとしますよ!!」



 少しばかり声を荒げてやる。


 大体……。俺の方が夜の哨戒時間が長いんだよ。


 アレコレと難癖付けて君は眠ろうとするし!!



 今日の睡眠時間はたったの二時間ですよ!? 睡眠というよりかは仮眠だよ、仮眠。


 安眠に就けるのはいつになる事やら……。


 欠伸を噛み殺し、襲い掛かる眠気によって中々定まらない頭の定位置に四苦八苦していると。




「レイド様、少々お時間宜しいでしょうか??」


「あ、はい!!」



 前方の馬車が停止して小窓からアズファさんが顔を覗かせた。


 ウマ子を停止させ、下馬して駆け足で向かう。



「どうかされましたか??」


「間もなく森へと到着します。街道は森を突き抜ける形で続いているのですが……。本日中にメンフィスに到着するのは難しいかと思われるのです」



 停車した馬車からルトヴァンさんが下車して此方に相談を持ち掛けて来る。



「以前、襲撃を受けたと報告があったのは森の中です。このまま進み、森の中で夜営を張っても宜しいのかと考えていまして」


「メンフィスへは明日の朝に到着したいのですよね??」



 襲撃を警戒し過ぎて行程が遅れてしまっているのでそれを取り戻そうと躍起になるのは理解出来るが……。


 森の中は平地と違って襲撃には持って来いの場所。それを証明する様に襲撃事件があったのも森の中だ。


 つまり、強行して進んでも宜しいのかと問うているのだろうさ。



「仰る通りです」


「ちょっと待って下さいね」



 地図を取りに戻ろうと駆け足で踵を返し、燕も驚く鋭い切り返しで戻って来た。



「早いですね」


「どうも。地図で確認しますと……。う――ん。森の手前で夜営を張ると明日の朝には間に合いそうにありませんね……」



 森の入り口からメンフィスまではどう短く見繕っても一日は掛かりそうだ。


 朝一番に到着したいのなら森の中腹から抜ける手前で夜営を張るのが最善だと思うけど……。



「当初予定していた期日よりも少々遅れますが、確実に夜襲を避けたいのであれば森の手前で夜営を張るのが堅実かと思われますよ」



「そう……。ですか」



 ルトヴァンさんが気難しい顔を浮かべて考え込む仕草を取る。


 きっとこれ以上の遅れは頂けないと考えているのだろうさ。



 彼の決断を待ち続けていると。



「――――。レイドさん達が私達を守ってくれるのでしょう?? それならこのまま進んでも宜しいのでは??」



 馬車からエアリアさんが下車して柔和な笑みを浮かべて俺にそう話した。



「「「……」」」



 彼女が姿を現すと護衛を続けるイル教信者の衛者達が静々と頭を垂れる。


 こういう姿を見ると位の高い人物なのだと改めて思い知らされるよな。



「完璧な安全は保障しかねますよ。自分達だけでは出来る事も限界がありますので」


「それに、私共の守護者もいます。力を合わせればどんな困難にも打ち勝てる事でしょう」



 いやいや。そちらの護衛者は戦力として全く期待していませんので……。



「は、はぁ。では、本日の行程は森の中腹まで。という事で宜しいですか??」


「はいっ。宜しくお願いしますね」



 ぱぁっと明るい表情で無理難題を押し付けてくるものだから困ったものさ。



「了解です。では、出発しましょうか」


「畏まりました。おい、出してくれ」



 ルトヴァンさんが騎手に指示し、両名が馬車に乗り込むと再び進み出す。



「…………ねぇ。何の話してたの??」


「うん?? あぁ、今日の行程だよ。この先森にぶつかるだろ??」



 ウマ子を出発させ、並走するトアに見えるように地図を傾けてやる。



「今はここら辺りだから……。もうちょっとで見えて来るね」


「以前襲撃があったのは森の中だと報告があって、その中で夜営を張るのは如何な物かと?? って相談を受けたんだよ」



「ふぅん。で??」



 またこの人は……。



「で?? って。端折り過ぎだぞ。まぁいいや。エアリアさんがこのまま進みましょう。そんな鶴の一声で考えが纏まったよ」



「相手の数、武器、規模。全てが未知数なのに思い切った事するわよねぇ」


「行程が遅れているし、急いでいるんじゃない?? ま、こっちには第ニ十期生首席卒業のトアがいるからな。杞憂になるでしょ」



 少しばかりお道化て言ったやった。



「ちょっとぉ。私にも限界があるのよ??」


「冗談だ。夜の哨戒は二人でするぞ?? 視界も悪いし、相手がどこから襲って来るか分からないからな」


「ん――。はぁ……。明日は寝不足確定ね。女の子にとって寝不足は天敵なのよ??」



 いや。そんな事俺に聞かれても困るのですけども……。




 夜間の哨戒任務の打合せ、下らない愚痴を交わして進んで行くと街道の先の先。


 薄っすらと朧げに見えて来た黒い影の片鱗を捉えた。



「おっ。見えて来たぞ」


「あそこ通って行くの?? 広い森よねぇ……」


「陽射しも遮られるだろうし。早めに夜営を張った方がいいかもしれん。そこは適宜こちらで判断するぞ」


「了解。さ、リク。もうちょっと頑張ってね??」



 ポンっと首元を叩くと甘えた様に鼻息を大きく漏らす。



 よし!! 俺達も絆の深さを見せてやろうではないか!!



「ウマ子。俺達も頑張るぞ!!」



 御者席から身を乗り出し、臀部の上方を軽く叩くと……。



『そこはおいそれと触っていい場所では無いが??』



 リクとは正反対の厳しい視線がこちらを捉えた。



「あはは!! 女の子のお尻をそんな気安く触っちゃ駄目だって」


「喧しい。トアは中々起きない俺の尻を抓ったじゃないか」



 昨日の早朝の出来事が思い返される。


 あれは本当に痛かった……。



「逆はいいのよ。逆は」



 何て理不尽な世の中なのでしょうかね。


 眉を顰め、唇を尖らし、ぶっきらぼうな表情を浮かべたまま手綱を手に取り。一団は不安と杞憂が待ち構えている森へと進んで行った。

























 ◇




 空から降り注ぐ陽射しが遮られ涼しい筈の薄暗い森を進み続けているのにも関わらず、額にじわりと汗が滲み出る。



 尾行で無ければ進み易い街道を進むのだが如何せん、発見されてはいけない制約がある為。こうして湿気と泥を含んだ悪路を態々歩き続けている訳だ。



 腹は減るわ、塩気があるものを食べたいわ、舌の上に甘味を感じたいわ。


 心に湧く現状ではどうしようもない欲求と戦いながら齷齪と足を動かしていた。



「ユウ――。甘い物ってまだある――??」



 正面、肩にちょこんと乗る程度の長さの髪を揺らしてズンズンと進む彼女のカッコイイ背に問うてみた。



「ある訳無いだろ。昨日、マイが全部食べちまったよ。あたしは少ししか食べれ無かったぞ……」



 振り返らずに辛辣な言葉が返って来た。


 せめてこっちを向いて話せや。



 そう言いたいのは山々だが……。


 そんな台詞を吐いたら彼女の魔境へと誘われ、呼吸困難に陥ってしまうので言いません。



「むぅ……。じゃあパンは??」


「あるけどまだ夜飯には早いから駄目だ」


「え――。口が寂しいから何か食んでいたい気分なのよ。何か無いの??」


「あのなぁ……。往復分の食料を行きで全部食わせる訳にはいかないの。お分かり??」



 呆れた表情で此方へ振り返り、溜息混じりに話す。


 それは分かっているが、どうも手持ち無沙汰というか……。暇潰しというか……。


 只歩き続けるってのも飽きて来るものなのよ。


 是非ともそこを理解して貰いたいものだ。



「はいはい。我慢しますよ――っと」


「あたしも腹減ってんだ。我慢しろ」


「う――い。…………おっ!! この野苺食べれるかな!?」



 暗くて何処か陰湿な感じが漂う森の中、不意に現れた超カッコいい赤い色に心が逸る。


 緑の枝の先に赤い実がちょこんと生えて、さぁ食べて御覧なさいと私に手招きしていた。



「どれどれ?? フンフン……。うん!! 匂いは大丈夫そうだよ!!」



 森に入ってから狼の姿に変わったルーが話す。



「ほぅ!! どれどれ??」



 ぷちりと実をもぎ取り、口に運ぶと。



「う――ん。酸っぱいような……。味が無いような……」



 舌にピリリとした酸味と何とも言えない柔らかさを感じた。


 不味い!! と断定出来る味でも無いし。お世辞にも美味い!! と太鼓判を押す味でも無い。


 まぁ、食えただけマシって奴ね。



「はむっ。ふぉんとうだ。あんまり美味しく無いね」



 足元の狼に与えるが私と同じ気持ちのようだ。


 無駄にデケェ顎をコニョコニョと動かすも、決して口角は上がらず。人間の顔であれば眉らしき箇所を微妙に曲げて話す。



「ま。野性味溢れる味って事にしておきましょう」


「そうだね。ね――、リュー。レイド達見失っていないよね??」



 お惚け狼が私達の先を行くもう一頭の灰色の狼の尻尾へ話しかけた。



「安心しろ、こちらが風下だ。視界で捉えぬとも匂いは確実に捉えている」



 確かに彼女の言う通りで、私の鼻も進みやすい街道を歩く人間の集団の匂いを捉えていた。


 汗の酸っぱい匂い、馬の獣臭、そして……。アイツの匂い。


 緑溢れる柔らかい匂いの中にこんな匂いが漂えば誰でも見失う事はないでしょう。



「フンフン…………。おぉ、本当だ。リューの言う通りしっかり嗅ぎ取れるね」


「鼻が良いのは便利ですわねぇ」



 最後尾の蜘蛛が構って欲しそうに声を上げる。


 しかし、私は当然の様に無視をした。


 一々こいつの独り言に付き合う元気は無いし。何より、蜘蛛とは反りが合わないからね。


 蜘蛛が。



『世界最強のマイ様!! どうか愚かな私に是非ともお返事を与え下さいませ!!』 と。



 大粒の涙を流して祈る様に手を合わせたら考えてやってもいい。


 まぁ……。そんな事は天と地がひっくり返っても起こり得ない出来事だから。蜘蛛と仲良く会話する事は金輪際無いでしょう。



「へへ――ん。いいでしょう??」


「その代わり、私には遠くを見渡せる東雲がいますので……。召喚して様子でも窺いましょうかね」



 はい!! 出ました――!!!!


 器用貧乏のくせにさり気なく有能を強調する台詞っ!!


 人よりもちぃ――っとばかし魔力の容量が多いからってテメェは所詮器用貧乏止まりなんだよ。


 世界最強……。ううん。


 史上最強である私の足元にも及ばない事をいい加減認めろや。



「アオイ、それは止めておけ。主は東雲を一度見ている。普通の烏より大きい分目立ってしまうぞ」



 リューヴが此方に翡翠の瞳を向けて話した。



「分かっていますわよ。はぁぁ……。もう三日もレイド様の御肌を感じていません。私、寂しくて死んでしまいそうですわ」



 あっそ。


 それならそのままくたばって二度と現世に帰ってくんな。


 そう言いたくなるのをぐっと堪えた。



 微妙に進み辛い土の上を歩き続け、何処かに食べる物が無いかなぁっと周囲へ視線を送り続けていると…………。









「――――。むっ!?」



 リューヴがモフモフの四つの足をピタリと足を止めたので私達も彼女の横に並び、その視線を追った。




「おぅ?? 何だ、これ」



 柔らかい地面に人間の足跡よりも遥かに大きな足跡がくっきりと刻まれている。


 人間の五本指とは違い、こちらは四本。明らかに魔物の物だと推察されるわね。


 屈んで触ってみると、踏み均された箇所は乾いており。米粒大の匂いも残っていなかった。



 ふぅむ……。古い足跡なのは理解出来るけども……。



「これってさぁ……」



 私はこの四本指の足に見覚えがある。



「あぁ。大森林で見たな」



 どうやらユウも私と同じ考えに至ったようだ。



「あの大蜥蜴さん達の足跡ですわね。…………、古い足跡ですが街道と並走するように刻まれています。恐らく、街道を歩く者の品定めしながら森の中を歩いた跡でしょう」



 蜘蛛が今話した通り、足跡は薄暗い森の奥へずっと続いている。


 しかも複数の人数で。



「おいおい。レイド大丈夫か??」


「私達相手に組手しているし、それに龍の力を引き出せるようになったんだからさ。過保護は駄目よ??」



 ボケナスの身を案じるユウへ言ってやった。



 以前会敵した時はぁ……。六体だったか。奴が力を解放すれば全員相手でも何んとかなるでしょ。


 只、懸念すべき事はあの女首領の存在ね。


 奴は他の蜥蜴擬きと違ってまぁまぁ強かった。あの女を相手に複数の蜥蜴擬きを相手にするのは骨が折れそうね。




「まぁ……。それもそうか」


「こ、こうしてはいられませんわ!!!! レイド様に傷が付いてしまいます!!」



 いやいや、話を聞けよ。


 テメェの頭の中は色欲で満たされているのか??



「アオイちゃん。見つかったら駄目なんだよ?? それにレイドだって男の子だもん。一人で戦わなきゃいけない時もあるんだよ??」



 ほぅ。馬鹿なルーにしては真面な事を言う。



「そ、それはそうですが……」


「どうしても助けなきゃいけない時だけ、あたし達の出番って事だ。レイドにも自尊心ってもんがあるだろ。見守ってあげよう」


「うぐぐぅ…………。分かりましたわ!! 百歩譲って見守る事にします!!」



 蜥蜴共が以前と変わらぬ力なら十分対応出来るでしょ。



 一番の問題は……。守るべき者を守りながら戦うって事か。



 先手を取って後手に回らないようにしなきゃ勝機は見出せないわね。



 ボケナス、しっかりしなさいよ??


 私達以外に後れを取るなんて許さないんだから。


 いい加減機嫌が悪くなって来た腹の虫を宥め、森の奥までずぅぅっと続く蜥蜴達の足跡を辿って歩み出した。





お疲れ様でした。


執筆活動を続けてこの後、食事を摂りに家を出るのですが……。皆様はもう既に昼食は何にするのか決めましたか??


私の場合。



温かいうどん、ホカホカの御米の上に乗せられたツユだくの牛肉と痛めた玉葱、そしてチキンカツカレー。


頭の中にパッと浮かんだ三つの献立を頼りに攻めようかと考えております。


食べ過ぎて眠くならないように気を付けないといけませんね。



そして、ブックマークをして頂き有難う御座いました!!


中々調子が上向かない中、本当に嬉しい励みとなります!!




それでは引き続き休日を満喫して下さいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ