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第四十一話 下劣な罠

お疲れ様です!! 皆様、連休明けで疲れていませんか!?


皆様のお疲れを少しでも緩和出来ましたのなら幸いです!!


それでは、本日の投稿を……。どうぞ!!




 顎から零れ落ちる無数の汗粒と微かに震える大殿筋が疲労の色を如実に醸し出す。



 手の甲で鬱陶しい汗を拭い荒々しい呼吸のままで声を出した。



「これで、お終いか??」



 周囲の地面に無数に転がる武骨な武器の数々と、その直ぐ脇に盛り上がる黒灰を見つめる。



「その様ですね。周囲に敵影は確認出来ません」


「ふぅ――……。何んとか、殲滅出来たな」



 カエデの一言を受け。


 両手で掴んでいた刀を鞘に納刀し新鮮な空気をこれでもかと吸い込んだ。




 襲ってきた数は凡そ……。


 二百って所か。




 途中で数えるのも億劫になり……。違うな。


 数える余裕が無かった。


 カエデとアオイが遠距離魔法で敵を殲滅し、俺が弾幕をすり抜けた個体を撃破。


 いつ、どこから抜けて来るのか分からないので一瞬も油断出来なかったのです。



「レイド様。御怪我は??」


「大丈夫。二人は??」



「大丈夫ですわ」


「右に同じ」



 流石ですねぇ……。


 あれだけ派手な魔法を使用したというのに、息一つさえも上がっていないもんね。



「それでは西へと移動します。アオイ、先導をお願いしますね」


「畏まりましたわ」



 息つく暇も無く、アオイが西へと歩き始めた。


 欲を言うのであれば……。もう少し休みたいけどね。


 カエデ達は魔法戦、対し此方は肉弾戦でしたので。



「アオイ。凹地までは徒歩でどれ位の距離か分かるか??」



 彼女の後を追いつつ話す。



「そうですわね……。凡そ十五分でしょうか」



 短いな。


 続け様に戦闘が開始されそうだ。



「その凹地なのですが、高低差は如何程でしょうか??」



 右隣りを歩くカエデが問う。



「平地からなだらかに下り、最深部ですと……。十メートル程でしょうか」


「ふ、む。十メートル……」



「カエデ、何か考え事??」



 小さな御口に指をあてがう彼女に問いかけた。



「なだらかに下る凹地ですからね。罠を張るのには持って来いの場所です」



「じゃ、じゃあ。そこは迂回して違う場所から索敵を開始したらどうかな?? 敢えて罠が張られている場所に突撃するのは流石に、ね??」



 誰だってそう考えるだろうさ。



「半径が広い凹地です。その何処かに敵指令が居る可能性が高いのですよ?? 例え罠だとしても、身を切って侵入すべきなのです」



「その通りですわ。今、この時も我々の兵士達が戦っているのです。彼女達を戦いから解放する為、私達が敵を討つのです」




 二人が付いていれば怖い物無しだとは思いますけども……。


 どんな罠が待ち構えているのか不明なのだ。


 やはりここは慎重に行動すべきだと思うんだけどねぇ。


 この隊の決定権は俺には無いので、自分には彼女達の命令に従う義務があるのですよっと。




 零したい愚痴をしっかりと飲み込み、踏み心地の良い地面を歩いていると。ふと足の裏に変化が現れた。



「ん?? 此処から下り??」


「はい、左様で御座いますわ。レイド様」



 ふぅむ。


 本当になだらかに下っているな。


 周囲に生えていた木々も徐々に少なくなり、上空から射し込む月明りも強くなって来た。



「カエデ。周囲に変化は??」



 強い魔力を持つ者ならカエデが見逃すはずはないからね。



 何気無く質問してみたのだが……。



「――――。周囲に敵影は確認出来ませ……。ん?? ちょっと待って下さい」



 カエデがふと歩みを止め、集中した面持ちで周囲に神経を張り巡らせた。



『どうした??』



 小声で彼女の耳元に囁く。



「今、刹那に魔力の鼓動を感じました。とても矮小な物ですが……。後、申し訳ありません。もう少々離れて下さい、擽ったいです」



 それは大変失礼致しました。



「方角はどっちだ??」



 正常な距離に身を置き、頬がちょっとだけ赤い彼女に話す。



「…………。あちら、ですね」



 カエデが此方の進行方向に対し、やや右斜め前を指す。



「アオイ、どうする?? 向かってみるか??」



 俺達が近くに潜んでいるかも知れないのに、敢えて魔力を放った理由が気になるが……。



「恐らく、単純な誘いでしょうが。敢えて誘いに乗って差し上げましょうか」


「その通りです。私達を侮り過ぎです」



 そ、そうですか。


 敢えて進むのですね??



 俺は迂回した方がいいと思うんだけどなぁ。



「了解。警戒を続けながら進もう」



 引き続き、アオイを先頭にカエデが指し示した方角へと進む。




 周囲で鳴り響く虫の声が心無しか徐々に小さくなっていく気がする。


 俺達を包む闇の色も此方を取り込もうとより濃くなり、何処までも深い底へと誘う。



 矮小な歩行音でさえ巨人の足音に聞こえてしまう静寂が訪れ、粘着質な空気が体に絡みつき悪戯に不快感を覚えていると。






 森の中に一人の女性が倒れていた。





 丸い月光を浴びて倒れる様が此方の使命感を募らせ、見えない何かに引き寄せられる様に進もうとするが……。



「レイド、待って」



 カエデが俺の右腕を強く掴み、その場に引き留めた。



「カエデ……。あの人、どうしてこんな所で倒れているのか気にならないのか??」



「気になるならない以前に、無警戒のままで接近するのは了承出来ません」


「レイド様のお優しい気持ちは理解出来ますが……。十中八九、罠ですわ」



 でも……。


 何だろう。



 触ってはいけない物って、無性に触りたくなるよね??


 それと同じ感覚が俺の足を、そして気持ちを逸らせていた。



「分かった。俺が話しかけて来るから、二人は離れた位置で警戒を続けてくれ」


「危ないと思ったら直ぐに助けるからね??」


「了解」



 警戒心を最大限に高めた歩調で進み、闇の中から月光の下へと躍り出る。




 濃い茶のズボンに黒の上着、そして薄い茶色の長髪の女性。


 普遍的な服装と人の姿だが……。


 何だか奇妙な感覚を覚える。



 勿論。こんな場所に倒れている事自体が奇妙なのだが。それ以前に、この人の存在自体が奇妙とでも呼べばいいのか。



「あの、すいません。大丈夫ですか??」



 恐る恐る彼女に近付き、声を掛けてみるが。



「……」



 案の定、無反応。



 肩に触れて覚醒を促してみるか??



「すいません。此処は危険ですから……」



 彼女の傍らに片膝を着き、右手を伸ばして彼女の肩に触れようとした刹那。





「――――。えっ!?」



 右手は彼女の体を貫通。


 肉の感覚は訪れる事は無く、俺の右手は空気を掴んでしまった。



「な、何だ!? これ!?」



 此処に居るのに、触れられないなんて!!


 奇妙な感覚はこの所為だったのか!! 


 存在自体が此処に居なければ、そりゃ奇妙な感覚に陥るだろう!!




 慌てふためき、彼女から右手を引き抜くと。




「……」



 ゆっくりと、幻の彼女が此方を振り向いた。



「レイド!!!! そこから離れて!!!!!」



 カエデの声に反応するも、此方を振り向こうとする彼女から視線を外せないでいた。


 彼女の顔が月光の下に晒されると。
















「あなたは……………………。私の下僕と成り果てるのよ」



「うぐっ!?」



 茶の瞳が怪しく光ると同時に頭の天辺から爪先に激しい痺れが流れ、体の自由が喪失してしまった。



 な、んだ。これ……。


 全く、うご、け……。




『うふふ……。さぁ、一緒に心地良い鎮魂歌を奏でましょう。怖がらなくていいわ。私はあなたの全てを受け止めてあげるから……』



 頭の中に響く妖艶な声に従い、俺の意識は白く濃い霧の中へと沈んで行ってしまった。







   ◇







「レイド様っ!!」



 ちっ!!


 まさか魅了の幻術使いが居るとは思いませんでしたわ!!



 レイド様がお力無く地面に倒れると同時に女の幻影がゆるりと立ち上がり、勝利の確信に満ちた笑みを浮かべて此方に振り返った。



「アオイ。目を見たら駄目」


「分かっていますわ」



 レイド様は恐らく……。


 彼女の瞳を見つめてしまい魅了に掛かって……。




「折角、私が罠を張って待っていたのに。掛かったのはとっても小さな獲物か」



 淀んだ空気の中に女の清涼な声が響く。



「レイド様を今直ぐに解放しなさい。そうすればあなたの命を奪う事までは致しません」



「命を奪う?? 私の??」



 お前達には不可能だろう。


 随分と高い位置から此方を見下ろす口調でそう話す。



「手加減してあげるから早く解放して」



 優しそうな外見とは裏腹に、かなりキツイ言葉を投げ掛けますわね??


 カエデが怒気を僅かに滲ませた口調でそう話すと。



「ふっ……。あははははは!!!! あんた達みたいな餓鬼が……。くくくっ!! 手加減ですって!? これは愉快だわ!!」



 耳障りな笑い声が静かな森の中に響く。


 鬱陶しい笑い声ですわね……。



「それが精一杯の譲歩ですわ。我々蜘蛛一族の領域に手を出した罪はそれだけ重たいのです。貴女の目的は一体なんですか?? 淫魔一族は人と、そして魔物とは対立していないと御伺いしましたのに」



 さて、と。


 彼女がどうして此処に攻め入ったのか、その目的が分からない以上。会話から探りを入れてみましょうか。



「どうしてあなた達にそれを話さなければならないのかしら?? 話した所で私に何の利益も無いのに」



「利益ならある」



「ふぅん?? 参考までに聞こうかしら。藍色のお嬢ちゃん」



「ある程度痛めつけた後、貴女を生かしたまま此処から逃がしてあげるから。早く言って」



 そ、それは利益とは呼びませんわよ??


 どちらかと言えば脅しですわ。



「はぁ……。大体の事は察していると思うから。優しい私がちょっとだけ教えてあげる」



 大きな溜息の後、月光の中をゆっくりと左右に歩みながら女が口を開いた。



「此処へ足を運んだのは……。蜘蛛の女王を抹殺する為よ」



 やはりそうでしたか。


 罠を張り、姿を隠し。我々が迎撃に手を焼いた所で女王の出撃を待つ。



 此処へ、若しくは西へと誘い込んで命を絶つつもりでしたか。



「貴女自身の意思なのか、それとも第三者の意思なの??」


「それはぁ。ひ、み、つ」



 その一言を受け、カエデがむっと眉を顰めた。



 此処で激情に駆られるようではまだまだお子様ですわよ??



「そうですか。では続けて質問します。此処から東へ向かいハーピーの里、並びにミノタウロスの里を襲ったのは貴女ですか??」



「それもぉ内緒っ」



「……」



『カエデ。落ち着きなさい』



 拳をぎゅっと握り、何かを堪える彼女を制す。



「此処へ貴女が侵攻を仕掛けた理由はあくまでも母様の抹殺。それは理解出来ました。ですが……。貴女達淫魔を統べる女王がよく了承しましたわね??」



「私達の女王は自由奔放という言葉が似合う人でね?? 彼女は私達に対し。自由に過ごす様にと命令したのよ」



「自由?? 里から出て、この大陸を跋扈しても良いと命じたのですか??」



 驚愕を通り過ぎて、呆れてしまいますわね。


 一族を統べる者の発言だとは到底考えられませんわ。この大陸の状況を鑑みて発言して頂きたいものですわね。




「その通り。気に食わないのよ……。人間が我が物顔で大陸をのさばり、剰え魔物を虐げて森へと追いやって……。あの御方に出会わなければ私はきっと理不尽に人を殺め続けていたでしょうね」





 ――――――――。





 よし!!


 掛かりましたわね!!




「あの御方?? 貴女と同じ考えの方がいらっしゃるのでしょうか??」




 今の一言は非常に大きな収穫ですわ!!


 この淫魔の背後には誰かが居る。そして、その誰かが指示を送っている。


 あの御方と呼んだので……。少なくとも彼女よりも位は上かしら……。




「――――。ちょっと喋り過ぎた、か」



 女がそう話すと。



「「っ!?」」



 周囲に空気が刹那に張り詰めた物へと変化した。



「まっ、いいわ。貴女達は此処で……。殺すから」



「それは困りましたわねぇ。そうですよね?? カエデ」


「その通りです。本物の貴女を探し出し、此処へ来た事を後悔させてあげます」




「あはははは!! やってみなさいよ!! 餓鬼共!!!! ほぉらっ。私の可愛い下僕ちゃん?? 出番よ??」



 女の幻影が微かに光ると。



「…………」



 レイド様が徐に、そして左右に揺れながら立ち上がった。



「あそこに見える女。あの二人を…………」



 彼女がレイド様に指示を与えると、温かい表情が消失してしまった茫然自失とした御顔で此方を見つめる。



「カエデ!! 来ますわよ!?」


「うんっ!!」



「殺しなさいっ!!!!」



 女が命じると同時に。



「うぉぉぉおおおおっ!!!!」



 レイド様が雄叫びを上げて此方へと突貫を開始した!!



「レ、レイド様!! お止めください!!」



 腰から抜刀し、私の体に目掛け滅茶苦茶な軌道で振り回す。



「ふっ!! はぁっ!!」


「くっ!!」



 滅茶苦茶な軌道ですが……。


 レイド様の膂力もあってか。その一撃一撃が必死に至る威力を備えていますわね!!



 肩口から襲い掛かる刃を躱し、地面と平行に放たれた一閃を躱す。



「アオイ」


「何ですの!?」



「そこで五秒避け続けて」



 五秒!?



 只でさえ速く鋭い攻撃ですのに!!



「五秒数えた後、適当に飛び退いて」


「分かりましたわ!!」



 此処は一つ、彼女を信じましょう!!



「はぁぁあああっ!!」



 腹部を狙った鋭い突きを躱し。



「だぁっ!!」



 上半身を仰け反り、首元を狙った刃に空を切らせ。



「ふんっ!!」



 体を両断しようとした天からの一撃を半身で躱す。



 そして……。


 五秒経過!!!!



「今ですわ!!」


「んっ!!!!」



 素早く後方へと飛び退くと。



「っ!?」



 レイド様を中心として結界が展開された。



「ふぅ……。恐らく、閉じ込めるとは考えていましたが……。何も此処まで厚くする必要はあったのですか??」



「っ!!!!!」



 結界の中で恐ろしい顔を浮かべて刀を叩きつけるレイド様を見つめながら話す。



 あぁ、おいたわしや……。レイド様。


 獰猛な獣の如く暴れ回る彼の姿を見つめると、胸が締め付けられる様に痛みますわ。



「レイドの力を侮ったら駄目。これでも足りない位」


「その様ですわね。では、もう一つ。展開させましょうか」



 カエデが張った結界の外側に魔力を注入し、更にもう一回り大きな結界を展開して差し上げた。



「レイド様……。もう少々お待ち下さいませ。私が必ずや解放して差し上げますからね……」



 そして。


 彼に……。手を出した報いを受けて頂きますわよ!?



「カエデ!! 本体を捜索致しますわよ!!!!」


「勿論、そのつもり」



「魔力探知は得意ですわよね??」


「上の下」



 それなら結構!!!!



「私が全方位に魔力を流します。貴女は微少な魔力の流れの変化を読み取って下さい!!」


「任された」



 よしっ!!


 行きますわよ!!!!



 体の奥底から溢れ出る魔力を右手に籠め、宙へと掲げた。








「常闇に咲きし一輪の花……。咲き誇れ!! そして、舞い狂え!! 我々の前に立ち塞がる闇を払うのだ!! 行きますわよ!! あかつき!!!!」






 漆黒の魔法陣の中に両腕を差し込み、そして……。



「勝利という輝かしい光に照らされた道を……。可憐に示しましょう」



 小太刀二刀を手に取り、抜刀。


 二つの鞘を左の腰へと収めた。



「それがアオイの継承召喚??」


「左様で御座います。美しい薔薇には棘がある様に、大変切れ味が鋭いですので……。触れる事はお薦め致しませんわ」



「そっか。じゃあ、早く行動を開始して下さい」



 うふふ。


 せっかちですわねぇ。



「畏まりましたわ。では、私の力。存分に御覧あれっ!! はぁぁぁああああっ!!!!」



 全身の魔力を小太刀に籠め、一気苛烈に大地へと突き刺した。



「行きますわよ!? ふぅっ!!!!」



 小太刀から大地へと魔力を放射。




 静まり返った水面に一滴の水が零れ落ちた波紋が生じ、それが外円へと美しい円を描いて広がって行く。




「くっ……。まだ、ですの??」



 実物と見間違う幻影。


 恐らく、ある程度近い距離からの詠唱だと考えられますのでそれ程遠距離には居ない筈。



「まだ。もっと魔力を注入して下さい」



 目を瞑り、右手に橙の色を浮かべつつカエデが無茶を要求する。



「畏まり……。ましたわぁ!!!!」



 大量の魔力を注入すると、大地と平面に広がって行く波紋が変化。


 立体的となって木を伝い、上方へと向かって行く。



 こ、これ以上は流石に無理ですわ……。



 小太刀を掴む手が震え、鬱陶しい汗が頬を伝って行くと…………。





「――――――――。発見しました。そこですっ!!!!」



 カエデが上空へと向けて、深紅の魔法陣を浮かべると同時に灼熱を帯びた火球を放射。


 大気を焦がし、そして太い木々を貫き向かった先は。




「ぎゃぁああっ!?」



 勿論。


 此度の首謀者の位置でしたわね!!!!



 燻ぶる体が地面へと落下し、燃え盛る炎が彼女を焦がす。



「く、くそぉおおお!!!! 私の魔力消失は誰にも見破れない筈なのに!!!!」



 ふん。


 火傷程度でしたか。


 随分とお優しい事ですわね。



「私一人じゃ不可能だった。アオイの御蔭」


「そういう事ですわ。――――。さて、愚か者さん?? もう逃げられませんわよ??」



 大地から小太刀を引き抜き、漆黒の刃を女へと向けた。



「はっ!!!! まだ私には……。奥の手が残っているのよ!!」



 此処まできて、見苦しい嘘を吐きますわね。


 貴女には降伏という選択肢以外は残されていませんのよ??



「では、それを拝見させて頂けますか??」


「うふふ……。もう見えているじゃない」



 見えている??








 ――――――――。


 まさか!?!?



 カエデと同時に背後へ振り返ると。



「グアアアアアアアアアアアアッ!!!!」



 レイド様が大地を震わせる咆哮と共に、結界を打ち破り。



「アハハ!! やっぱりねぇ!! 素晴らしい力が潜んでいたと思ったのよ!!」


「フゥ……。フゥッ!!!!」




 右手に龍の力を発現させ、大きく肩を揺らし。狂気に塗れた表情を浮かべ、口からは憤怒の白い吐息が漏れ続けていた。




「カ、カエデ。レイド様は……」


「龍の力を発現させたのでしょう。あの女より、正直レイドの方が厄介ですね」



 でしょうねぇ。


 私達と変わらぬ圧を放っていますので……。



「さぁ!!!! 私の可愛い下僕よ!! その女達を殺しなさいっ!!!!」


「ギィィィィヤアアアアアアアアアア!!!!」




 女の命に従い、彼が雄叫びを放つと。


 森の中で羽を休めていた鳥達が一斉に飛び立つ。


 きっと、彼の放った殺意の衝動に野生が反応したのでしょうね。


 私も出来る事ならこの場から立ち去りたい。ですが……。彼を救うのは私の役目なのですわ。



 レイド様。


 お待ち下さいまし。私が必ず、救ってみせますからね??



 上空に聳える雲を霧散させる勢いで殺意が膨れ上がり、常軌を逸した加速度で此方に向かい来る彼に対し。


 私は心を決めて、真正面から迎え討った。


お疲れ様でした!!


最後まで御覧頂きありがとうございました!!

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