第四十二話 十の教戒 その一
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
初冬にしては少々強い陽射しは雑木林の影に遮られ、柔らかい風がそっと頬を撫でて行く。
大満足と頷けるとまではいかないが、概ね満足出来る快適な環境の中でいつもに比べて随分と慎ましい昼食会を終えた。
これからの行程を考えて満腹まで食う訳にはいかないけども、あたしの体は満足してくれたのか。
「ふぅっ……。御馳走様でしたっと」
素敵な影の中で満足気に大きく息をついて体の力を弛緩させた。
普通の食欲を持つ五名であるのならば十日……。いや、十五日は食っていけるだけの量をあたしとリューヴが買い込んだから問題は無いだろう。
問題が起こるとしたらこいつの食い気、だな。
「うぇっぷ。へへっ、危ない……。パンが出て来る所だった」
五人前をぺろりと平らげ満足気に腹を抑えている覇王の娘。
間抜けた面でだらしなく足を伸ばすコイツがあたし達と同じ、九祖の血を継ぐ者だと誰が思うであろうか。
「マイちゃん。食べ過ぎだよ――」
「マイ。我々はこれから八日間尾行を続けるのだ。悪戯に食い過ぎるな」
「はいは――い。次からは適量にしますよ――っと」
二人の狼に噛みつかれるも全然堪える様子を見せない。
ま、そこがマイらしいけどな。
「む!? 出て来たぞ!!」
木にもたれ、鋭い鷹の目付きで門を睨んでいたリューヴが話す。
「どこどこ!? あんにゃろう……。ちゃんと仕事してんじゃない」
「そりゃそうだろ。何してると思ったんだよ」
リューヴの隣で楽し気な瞳を浮かべているマイに話してやった。
「よいしょ……。あぁ!! 本当だ!! レイド頑張っているね!!」
数名の護衛者が豪華な馬車の前方を警護して列の先頭を進む、武器を携帯してはいるけど……。
面構え、体躯、纏う雰囲気。
その全てを加味したが全く以て頼りなさそうだ。
おいおい……。あんな華奢な奴らがお偉いさんを護衛してんのか??
あたし一人でも余裕でブチのめそうじゃん。
レイドも大変だよなぁ、あんな連中を守らなきゃいけないんだから。
茶が目立つ街道の上で白の長いローブを羽織った者達は否応なしに目立つが、あたしの瞳は列の最後方。
いつもと変わらない顔で荷馬車の御者席に腰掛ける一人の男を捉え続けていた。
あはは!!
よぉく見るとちょっとだけぶっきらぼうな顔を浮かべているな。
きっと気が乗らない任務を請け負って面倒だなぁって思っているんだろうさ。
それでもちゃんと己に与えられた仕事を全うしているのは……。うん、カッコいいぞ。
「頑張っているのはウマ子だろ。後、ルー。あたしの股から狼の姿で顔を出すな。くすぐったい」
か細い毛が股に当たり、何とも言えない感覚をこちらに与えて来る狼へ注意を放ってやった。
「しょうがないなぁ。よいしょっと」
「最初っから人の姿でいろよ。誰が見ているか分からないんだぞ??」
「ん――。そうする――」
「レイド様。私を置いてどこに行くつもりですか?? 寂しいですのよ……」
「だから、仕事……。いや、任務だって言ってんだろ??」
後方で今生の別れを惜しむ乙女の瞳を有しているアオイに言ってやった。
「そうだよ。アオイちゃんは我慢が必要なの。…………後、ユウちゃん。おっぱい重い。首が取れちゃう」
随分と肩が軽くなったなぁっと思ったら、そういう事だったのね。
「おぉ。悪い悪い」
いつものやり取りを繰り広げていると、レイド達が街道を北へと進み砂粒大の大きさに変わる。
「よし。これだけ離れていれば大丈夫でしょう。者共、尾行を再開するわよ」
意気揚々と深紅の髪が木陰を飛び出し、日の当たる街道を堂々と跋扈して歩み出した。
「マイ、いつ私が貴様の部下につくと言った」
「マイちゃん。目立つからもっと下がって」
「そうだぞ。自然の中で深紅は特に目立つんだよ」
「鬱陶しい髪を見せないでくれます??」
「うっさいわね!! あんた達は隊長である私に黙ってついて来ればいいのよ!!」
はぁ…………。こりゃいかん。
カエデがいないと収拾がつかなくなるぞ。あたしとリューヴ、それとアオイで何んとか纏めて……。
「あぁ、レイド様ぁ。私を置いて何処へ行かれるのですかぁ……」
うん、アオイは戦力外だな。
豆粒大になったレイドの背に向けて潤んだ乙女の瞳を向けて嘆いた。
比較的真面なあたしとリューヴでこの分隊を纏めなきゃいけないのか……。
これから始まる尾行の旅に、早くも危険な香りと暗雲が漂い始めたのだった。
◇
ウマ子の蹄の音が等間隔で小気味の良い音を発して俺の意識を深い眠りへと誘う。
長い瞬きを続けている内に首がゆるりと上下に動き、このまま襲い掛かる眠気に身を委ねようとしたのだが……。
「……っ」
車輪が小石を跳ね、その衝撃が荷馬車を揺らして眠りへと続く道を阻んでしまった。
真夏に蓄積された疲れがどっと押し寄せるのは涼しくなる秋口であると誰かが言っていたが、今正にそれを体験しているのかも知れない。
秋口では無くて、今は初冬か……。
まぁ秋口も初冬も然程変わりないだろうさ。
コールド地方から一切休みなく移動を続けて、帰還後に待ち構えていたのは山の様な報告書と相も変わらずギャアギャアと騒ぐ可憐な華達。
そして、非番だってのにまるで戦地の様なけたたましい三日間を終えるとお次は気乗りしない任務が始まってしまった。
疲れが溜まっているのは事実なのだから、体が休息を欲して眠くなるのは自明の理だ。
「ちょっと。大丈夫??」
トアが此方の様子を窺い、呆れたような声を掛けてくれる。
「ありがとう、もう大丈夫だ」
目頭をぎゅっと抑え、幾つもの文句を垂れ流す体へ覚醒を促してやった。
「お尻、捻ろうか??」
昨今の女性は何故皆こうも暴力的なのだろうか。
可愛い顔をしてとんでもない言葉を放つものだからいつぞやの幻痛が臀部を襲った。
「勘弁してくれ。尻が四つに割れちまうよ」
「もうちょっと起きてなさい。ほら、今は夕方だし。もう直ぐ休めるからね」
レンクィストを発ち、長閑で代わり映えの無い平原の中を只管進み続けていた。
眠りが悪戯に襲って来るのも頷けよう。
「ふぁぁ……。夜間の哨戒はどうする?? 俺が初めに受け持とうか??」
「ん――。そうしてくれる?? 御飯食べたらゆっくり寝たいし」
「おい。そのまま眠り続けてくれるなよ?? 一晩中起きているのは勘弁願いたいからな」
「あのねぇ、そこまで辛辣じゃないわよ」
怪しいものだ。
「すいません。今宜しいでしょうか」
「はい、何です??」
イル教信者の護衛者が馬の歩みを遅らせ、俺と並走を始める。
「間もなく夜営の準備を始めたいと思うのですが……。ここら辺りで設営しても構いませんか??」
彼の言葉を受けて俺とトアは周囲を見渡して地形を確認した。
夜襲に備えた遮蔽物も無いし、今日の天気は……。
うん、晴れだな。
月明かりで襲撃を画策する相手を見失う心配も無い。
「はい。大丈夫だと思いますよ」
「畏まりました。そうお伝え致します」
此方に一つ小さく頷くと、前方を行く馬車に並走しようと馬の足を速めて進んで行った。
「――――。大丈夫だよな??」
俺の独断で決めちゃったけど……。
一応、トアにも聞いてみる。
「襲撃があったのは此処から暫く進んだ先。それにこれだけ開けていれば敵の姿を直ぐに発見出来るし大丈夫でしょう。まっ、それは向こうも同じ条件なんだけどね」
「脅かすなよ……」
寝込みに襲われたら堪ったもんじゃないぞ。
「あはは!! 怖いの??」
「そりゃあ暴力沙汰は無いに越した事は無いからな。平穏に過ごしたいのさ」
肩を竦めて言ってやった。
「あの四人は頼りないし、実質私達が護衛しているようなもんか。頼りにしているわよ?? 相棒さん??」
「どういたしまして。お、馬車が止まるぞ」
街道の端に馬車が寄ると騎手が馬に停止を促す。
車輪が静かにその動きを止めると、中からエアリアさん達が久方ぶりの地面へと静かに足を着けた。
座り心地が良い馬車でも体が強張ってしまうのか。
「んっ……。ふぅっ」
天然の大地に両足を着けると、肩を回して筋線維を解し。そして腰をゆるりと捻ってしこりを解かしていた。
「レイドさん。本日は此処で一晩を明かすのですか??」
軽い運動を終えた彼女が静かな歩みで此方へ向かって来ると、真面目な面持ちで声を掛けてくる。
「あ、はい。そうです。此処でなら敵の姿も瞬時に確認出来ますので」
「そうですか。有難う御座いますね、守って下さって」
ニコリと笑みを浮かべ話す。
うむ……。真摯な態度に少しばかりの好感を抱く。
やはり上に立つ者は物腰柔らか且、真面目な態度は必然なのだろう。
「おい。天幕を張ってくれ」
「畏まりました」
続け様にルトヴァンさんが皆へ指示を出して本日の夜営の準備に取り掛からせる。
俺達も夜間の哨戒に合わせてそろそろ準備しなきゃな。
「トア、俺達も夜営の準備をしようか」
「そうね。一人用の天幕は……。あそこでいいかしら??」
街道から少し外れた平原を指差す。
「大丈夫だろう。夕食を終えてから哨戒に当たろうか」
「了解。御飯はどっちが作る??」
「俺が作るよ。新しい鍋の性能を試してみたいし」
そう!! 何を隠そう。
昨日購入した職人の熱き魂が籠った鉄鍋の性能を早く己が腕で感じてみたかったんだよね!!
早速荷馬車から鍋を取り出し、夕食に必要な素材や薪を持ち。若干早足で街道の脇へとしゃがみ込んだ。
「ねぇ。何作るの??」
「ん?? 野菜スープと……。焼いたベーコンを乗せたパンだ」
「おぉ!! いいじゃない!!」
ふふ。そう焦るな。
先ずは火打ち石で火種を作り、薪に着火させねばならないのだよ。
いつもはマイが一息で点けてくれるからなぁ……。
薪が湿気っていても問答無用で燃え上がらせてくれるから重宝しているのだが。
無い物強請りはいかん。
石と石を衝突させると美しい火花が飛び散り、細かい木屑から頼りない煙が立ち上り始めた。
「ふぅ――……。ふぅ――……」
火の子供が消えぬ様、大切に両手で掬い上げ静かにゆっくりと息を吹きかける。
「へぇ。慣れたものねぇ」
「前線でもやっている事だろう。ほら、点いたぞ」
大きな石で囲んだ薪に柔らかい橙の炎が揺らめく。
もう随分と黒くなり始めた空へ火の粉が舞い上がり始めた。
「ふぅ――。なんか、火を見ると落ち着くわよね」
「一日の終わりって感じだからな。でも、火を甘く見ちゃいかんぞ?? 火事は怖いのです」
「ふふ、子供扱いしないでよ。野菜切ろうか??」
「ん、頼む」
荷物の中から簡易まな板を取り出し、巧みな包丁捌きで野菜を一口大に切り始めてくれた。
ほぅ、中々の腕前だ。
「どう?? 上手いでしょ??」
「まずまず、といった所だな」
こちらもベーコンを食べ易いように一口大に切り分けながら話してやる。
「先にそっちを焼いちゃう??」
「そうしなきゃスープ作れないからね。それにベーコンの脂でスープも旨くなるし。一石二鳥だよ」
「へぇ。考えているのねぇ」
当たり前じゃないか。料理をする上で順序は大切だ。
どの食材から切り分けてから調理を開始するのか。焼く順番も決めなきゃいけないし。
料理を始める前から頭の中に最終形へ辿り着く道筋を思い描かなければ美味い御飯は出来ないのさ。
仕事でも順序は大事でしょう??
それと一緒で料理も適当な順序では美味しくならないのですよっと。
「はい。野菜終わったよ――」
「ありがとう。そこの木の皿に乗せておいて」
「はいはい。ん――良い匂い。お腹空いちゃうね」
ベーコンの脂がぱちりと爆ぜ、食欲を刺激する音と共に腹が減る香りが鼻腔を突き抜け食欲を大いに刺激している。
こんな匂いを嗅げば、誰だって腹が空くだろうよ。
いつもなら……。
『うひょ――!! いい匂いじゃない!! 早く食べようよ!!』
と、肩から喧しい声が鼓膜を刺激するのだが。
今日はその音が聞こえない。
それに安堵すると共に妙な寂しさを覚える。
マイ達、ちゃんと飯食ってるかな。食い過ぎてカエデに叱られていなきゃいいけど……。
「ほい、ベーコンお終い。野菜入れてくれ」
「あいよ――」
菜箸と鍋を巧みに操り、大胆に炒めつつも野菜に与える火力を均一にする。
野菜を焦がしたらスープの味が落ちちゃいますからね。
炒める作業は大雑把に見えて実は繊細な作業なのです。
「トア、そこの水取って」
「人使いが荒いわねぇ……」
「文句言うなよ。飯を作れって言ったのはそっちだぞ」
「そうだけどさ……。よいしょっと」
「よぉし。野菜は終了。後は水を煮立てて味付けだな!!」
焼いた野菜達を木の皿に乗せてお次は水を沸騰させてっと。
それにしても……、この鍋。
滅茶苦茶使いやすいな!!!! しかも火力が素材へ伝わり易い!!
これは……。フフ、良い買い物をしてしまったぞ……。
水の中にクツクツと小さな気泡が昇り始めた姿を愛しむ様に見下ろしていた。
「十人中、八人が気持ち悪い顔と断定出来る顔色を浮かべてどうしたの??」
それならいっその事、気持ち悪いと言って貰った方が揶揄われる此方としても踏ん切りが付くのですがね。
「一言余計だ。いやね、この鍋買って正解だなぁってさ」
「幾らしたの?? それ」
「六千ゴールドだよ」
「たっか!!!! 軍の支給品使えばタダじゃない」
「馬鹿者!! 食を疎かにしてはいかんのだ!! その為には道具にも拘りを持つべきなんだ。たかが六千ゴールドで美味い飯が出来れば言う事無いじゃないか!!」
全く。これだから素人さんは……。
「六千もあったら服を一着買って。お茶……ううん。一食の御飯代も賄えるわね」
「それを我慢すれば鍋が壊れるまで美味い飯を無限に作り出せるんだぞ??」
おっと、水が煮立って来たな。
塩と醤油そして胡椒を振り撒き、味を整え。先程焼いた野菜さんを投入してコトコトと煮込んで行く。
火の上で奏でられる水と食材の重奏曲が夜空の下で開演すると、夜虫もこの音に魅入られたのか。独奏を止めて重奏に合わせる様にリンっと一つ強く鳴く。
この音と香り……。
いつ聞いても、嗅いでも心のワクワクが止まりませんよ。
「男ってやっぱ私達女と感性が違うのねぇ」
「それには激しく同意するよ」
エルザードの件もそうだが。女性は買い物自体を楽しむ傾向が見られる。
買わなくても、街に並べられている商品を見て己が購買意欲を満たすらしい。
俺は目的の物を購入する為、寄り道はせず愚直に真っ直ぐお目当ての商品を買いに店へと向かう。
寄り道していたら商品が売り切れちゃうかもしれないしさ。
男にとって商品を見るだけの行為は蛇足に近い感覚なのかも知れないな。
「わぁ。良い匂いじゃない」
「だろ?? よしっ!! 出来た!! 早速食おう!!」
琥珀色の湖で野菜達がスイスイと泳ぎ、傍らには脂が乗ったベーコンがパンの上で寝そべっている。
現状況下で頂ける最高の夕食に心が逸りますよっと。
「ほら、どうぞ」
「うむ。御苦労」
お玉でスープを掬い、お椀に入れて正面に座るトアへ渡してやった。
「じゃ、頂きましょうか」
「おう!! 頂きます!!!!」
白い蒸気が立ち昇るスープをゆっくりと、火傷しないように口に迎えてあげる。
「…………うむ。美味い!!」
丁度良い塩加減が塩分を失ってしまった体に活力を与え、ピリリと自己主張を始める胡椒に舌が大きく頷く。
人参、ジャガイモ……。
根菜類を中心にした野菜達の甘味が塩と胡椒と手を組み、口の中で踊り始めた。
「美味しいじゃない。腕、上げたわね??」
「そりゃどうも。お代わりするか??」
「もち!!」
良く食う奴だ。だが、奴程ではあるまい。
あの深紅の龍ならば今食している食べ物は一人で平然と平らげてしまうだろうからね。
しかも。
『もっと食べたい!!』
絶対、何があろうともお代わりを強請る筈。
多めに買っている食料が毎度毎度足りなくなるのはアイツの所為なんだよなぁ。
言っても聞きやしないし、この際。フィロさんに告げ口してやろうかな。
トアと二人で火を囲み、食事を満喫しながらそんな事を考えていた。
◇
うぐぐ……!!!! な、何て凶悪な香りなの!?
何処までも続く平原の中にポツリと佇んでいる大きな岩。
その背に隠れ遠方のオレンジ色を見つめていると私の鼻腔が極上の香りを捉えてしまった。
鼻が良すぎるのも考え物だ。
この香りは……。脂が乗りに乗ったベーコンね!!!!
きっとアイツが鍋でジュウジュウと炒めているに違いない……。
脂がぎゅっと乗ったベーコンをパンに乗せて食べるんだわ。
あ――!! 食べたい食べたい!! 焼きたてのベーコン食べたい!!!!
「マイちゃん、体全部出てるよ??」
「ぬぅっ!? いつの間に……」
危ない。
ルーが止めなければこの凶悪な香りに手を引かれてきっとあの場所まで進んでいただろう。
でも……。この弾ける脂の乗った匂い、好きっ……。
ずっと嗅いでいたいわね。
「ほら。パンでも齧って我慢しな」
「うむぅ……。流石の私もパンだけだと飽きてくるわね」
ユウから受け取ったクルミパンを齧り、心の中から沸々と湧いて来る欲求を誤魔化しながら言ってやる。
「私達の足を引っ張らないで欲しいものですわぁ」
はいっ、無視!!
「我慢しろ。主の行動を見守るのが今回の尾行の目的だろう。火を起こせば直ぐに見つかってしまう」
「リューの言う通りだよ。少しだけの我慢じゃん」
「お肉食べたい!! 熱々のスープが飲みたい!!」
「馬鹿!! 叫ぶなって!!」
「うむふぁい!! 熱いごふぁんふぁたふぇたいの!!」
ユウに口を抑えられても叫ぶのを止める事は出来なかった。
「ふぁ――なふぇ――――!!!!」
「だ――!! バレるからやめろ!!」
べ、ベーコンが私を呼んでいるのよ!!
だから離しなさい!!
ジュクジュクの脂と、アツアツの触感を舌で感じたいのよ!! この私は!!!!
私の中の大半を占める食欲という名の悪鬼羅刹が制御を失い暴れ始めてしまう。
我が親友に口元を抑え付けられてしまうが、そんなちゃちな力では私の食欲を制御するのは不可能に近い。
食欲に支配された私の体が岩陰から飛び出そうとすると、怪力爆乳娘とお惚け狼が背後から羽交い絞めにしてそれを留める。
地面に組み伏せられても軽い暴走状態が暫く続くが……。
「あぁ!! もう!! これでも食って大人しくしてろや!!!!」
ほんわりとあまぁいパンが口の中に捻じ込まれると、食欲さんも一応は満足してくれたのか。
「へへっ……。おいしっ」
ほわぁっと香る小麦の香に沈静化の一途を辿ってくれた。
そして私と食欲さんは仲良く手を繋いで優しく、そして大事に咀嚼を続けながら小麦の有難さを改めて認識したのだった。
お疲れ様でした。
本来であれば後半部分も投稿する予定でしたが、私の体力と指先と肩甲骨の筋肉が限界を迎えましたので本日は此処までになります。
本当に申し訳ありませんでした。
いいねをして頂き有難う御座います。
そして、評価をして頂き有難うございました!! 執筆活動の嬉しい励みとなります!!!!
本日は明日の投稿に備えて直ぐに就寝させて頂きます。
それでは皆様。お休みなさいませ。




