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第三十九話 いざ、出陣ですわ

本日はちょっと早めの投稿になります。


楽しんで頂ければ幸いです!!


それでは、どうぞ!!




 洞窟の外に躍り出ると、ぽっかりと空いた森の上空には満点の星空が広がり俺達を微笑みながら見下ろしていた。



 星の煌めきがそれはもう美しく、此れから始まる激戦に対するちょっと早いご褒美の様にも映る。



 星空から視線を動かし、正面へと送ると。



 洞窟前の広場には大勢の兵士達が集まり出発を今かと待ち侘び各々が戦いに備え、体を動かしていた。



 凡そ三百の兵士達なのだが……。


 全員が女性なので肩身が狭い思いなのです。



 蜘蛛の御姫様曰く。



『蜘蛛一族の生まれて来る子は皆女性なのです。時期が来ましたのなら気に入った男を求め、平地へと向かい。己が腹の中にたっぷりと……。生命の源を頂戴して、此処へ戻って来るのです』



 と、伺いました。



 女性だけでは子を成す事は不可能ですからね。


 それは致し方ありません。



 問題は……。男性側かしら??


 美しい姿からは想像出来ぬ獰猛な狩人に体を狩られてしまいますので。



 その事もあり。


 彼女達から距離を取り、洞窟入り口付近で佇むウマ子に寄り添い。


 出発の合図を待っていた。




「短剣、弓と矢。そして清潔な布と竹筒の水筒……。うん。忘れ物は無いな」



 三度目の荷物確認を行い、装備一式を身に纏いふぅっと息を漏らした。



『念が入っているな??』



 ウマ子が俺の肩に顔を乗せ、甘える声を出す。



「そりゃそうだ。戦いに赴くのだから装備を整えるは常識だぞ??」


 彼女の頬に手を添えつつ話す。


『ふんっ。気を付けて行くのだぞ??』


「あはは!! 分かっているから!! 止めろ!!」



 長い舌が頬をそして首筋を襲うとついつい声が出てしまう。


 相変わらずの甘えん坊め。



「ウマ子も心配してんじゃない??」



 両の足を大地にしっかりと突き立てているユウが此方の様子を揶揄う。



「その様ですね。御主人の帰りを待つのは当然ですから」



 カエデがそう話し、ウマ子の額を優しく撫でた。



『貴様も注意しろ』



 そう言わんばかりに端整な顔を一舐め。



「あっ、もぅっ。ふふ、甘えん坊さん」



 いつものじゃれ合いにカエデも優しき顔を浮かべ、柔和な笑みを浮かべて彼女の頬を撫で続けた。



 良い雰囲気だ。


 気負い過ぎてはいないけど、気を切ってはいない。


 宛ら、戦いに向けて気持ちを高めている感じですね。


 素晴らしい構えです。



 ですが……。若干一名だけはこの場に相応しくない姿を晒していた。





「んがぁ……」



 龍の姿でだらしなく仰向けで眠りこけ、剰え口からは粘度の高い唾液を垂らす始末。


 それが地面の上ならまだしも……。



「ユウ。そいつ、地面に下ろしたら??」


「あたしも今そう考えていた所……。だよ!!!!」



 頭の上で寝そべる太った雀を掴み、大地へと乱雑に投げ捨てた。



 いい迷惑だろうなぁ、毎度毎度頭の上で眠られたら……。



「いでっ……。ふわぁぁぁぁ。むにゃら……」



 ングングと口を動かし、赤い目をゴシゴシと擦る。



「おい、そろそろ出発だぞ」



 ユウが注意を促すが。



「そろそろって事は……。まだか。ふわぁぁぁ――……。んっ……」



 おやすみなさい。


 そう言わんばかりに丸くなってしまった。



 あいつの心臓にはきっと毛が生えている処か、鉄で出来ているのだろう。


 そうじゃなければ、出撃前だってのに。あの堂々と眠りこける精神は理解出来ないからね。



 ユウと目が合うと。



『仕方がねぇなぁ』




 と、呆れ果てた内なる声を視線一つで察した。




「あ、あ、あの……」



 ん??


 どうしたんだろう。



 蜘蛛の兵士さんが此方に小走りでやって来た。



「どうかしましたか??」



 その彼女へ親切な口調で問う。



「レ、レイドさんはその装備で出発するのですか??」


「えぇ。そうですけど」



 軽装に見えるのかしらね。



 彼女は腰に帯刀、対し此方は短剣に弓。


 接近戦には少々不安が残る形ですけども、生憎。支給された長剣はとうの昔にポッキリと折れてしまいましたのでね。




「そ、そうなのですか……」



 後ろ手に手を組み、何かを我慢する様に体を左右に揺らす。


 黒の前髪を右に流し万人が整った御顔ですねと肯定出来てしまう顔は松明の熱を受けたのか、ちょっとだけ朱に染まっていた。



 お腹が、空いたのかな??



「で、でしたら!! これを御使い下さい!!」



 彼女が沢山の汗を飛ばしつつ、左の腰に差す一本の刀を差し出してくれた。



「これを、自分に??」


「は、はいっ!! 私は待機命令が下り、出撃しませんからっ!!」



 ふぅむ。


 それなら……。



「有難うございます。では、有難く使用させて頂きますね」



 接近戦に不安が残る形だったし、丁度良いや。



 彼女から刀を受け取ると。



「で、では!! 失礼しますっ!!」



 ぴょこんと頭を下げ、恐ろしい目付きを浮かべる兵士さん達の下へと駆けて行ってしまった。




「おぉ――……。これが刀、か」



 訓練施設内の資料で見た事はあるが、実際に手に持つのは初めての経験だ。


 黒鞘から抜刀し、橙の明かりに刃を照らす。



「――――。うん、綺麗だ……」



 刃に刻まれし湾れのたれば



 ゆったりとした波が刃に刻まれ使用者の心を鷲掴みにし。美しい反りは嫋やかな女性の線にも映る。



 玉鋼から生まれる至宝の武器を納刀し、左の腰に差した。



「有難う御座いました――!! 大切に使用させて頂きますね――!!」



 彼女へ向かい、夜には少々不釣り合いな声量を放ってあげた。






「い、いえ!! 此方こそ!! えへへ。やった!!」


「あんただけズルイ!! 私も……」


「ちょっと!! 抜け駆けは駄目って言ったでしょ!? それにアオイ様に叱られても知らないよ!?」


「それはそれ!! これはこれだもん!!」


「行かせるかっ!!」


「引っ張らないで!! 脱げちゃうからぁっ!!」






 ふふ。


 皆さん、元気があって宜しいですね。


 戦いに向けて此方同様気負っていない証拠だ。



 流石、鍛えられている兵士さん達です。



「よぉ、レイド……」


「どうした?? ユウ」



 ちょっとだけ目付きが悪い御顔になってしまった彼女に問う。



「ちょぉぉっと、こっちおいで??」


「は?? 何だよ」



 招き手を行う彼女の下へと何気なく進むと。



「こ、この……。女たらしめがぁあああ!!」



 剛腕に頭を巻き取られ、ユウの脇腹付近へと誘われてしまった!!



「いっでぇえええ!! は、放せ!! 頭が砕けるっ!!」


「いいや!! 放さないね!! 毎度毎度ぉ……。良い顔ばっかりしやがってぇ……」


「そ、そんな顔するか!! 向こうが善意で貸してくれたんだぞ!?」



 それを無下に断る方がお門違いでしょう!!



「知るかっ!! このまま……。脳天を砕いてやる!!」



 ユウの馬鹿力を想像すると、心臓がきゅぅっと恐ろしい声を奏でてしまった。



「や、止めて!! 止めて下さいっ!!」



 右手で彼女の背をペシペシと叩くものの。


 猛ったユウの気持ちは収まらず。



「くらえぇええええ!!」


「ぎぃいぃやああああ!!」



 恐ろしく気合の入った言葉と同時に、左右のこめかみが仲良く手を繋ごうと画策してしまった。



「あ、頭がぁ!! やめてぇえ!!」



 涙腺から頭の中身が飛び出ちゃうってぇえええ!!



「――――――――。ユウ、御戯れはそこまで」



「ちっ、命拾いしたな!!」


「はぁっ!!!! ぜぇ……。ぜぇ……」



 い、痛かったぁ……。


 も、もう少しで向こうの世界に旅立つ所だったぞ……。



「有難うね、アオイ」


「どういたしまして、レイド様。おや?? その刀は……」



 左腰に彼女の視線が留まり、不思議そうな口調で話す。



「あぁ、これ?? 蜘蛛の兵士さんが貸してくれたんだ。こっちも接近戦には憂いが残っていたし。これで準備万端だよ!!」



 彼女には何かお礼を返さないとな。



「それは……。よう御座いましたわねぇ……」


 蜘蛛の兵士さん達へ視線を送ると。



「「「っ…………」」」



 アオイの視線を受け、何故かしどろもどろになっていた。



 どうしたんだろう??



「後で問い詰めるとして。皆様!! 少々宜しいでしょうか!!」



 アオイが声高らかに声を放つと、皆が一斉に彼女の前へと集合した。



「俺達も行こうか」


「そうですね。――――――――。ユウ、そこで眠りこけている生物を持って移動して下さい」


「へ――へ――」



 カエデも言うようになったなぁ……。


 悪い方向に転ばなければいいんだけど。




 蜘蛛の兵士さん達の後ろに並び、洞窟前で立つアオイの次の言葉を待った。






「――――――。皆様、我々はこの地を守る為に武器を手に取ります」




 おっと。


 第一声でもう皆さんの顔色が変わりましたね。


 優秀な指導者の素質の一つである声色を持っている証拠だ。




「言い換えれば、我々の武器は密林の代弁者とでも申しましょうか。この地の安寧を脅かす愚か者には死を以てしてその罪を償わなければならないのです」



「「「……」」」



 蜘蛛の兵士達が静かに、そして一つ小さく頷く。




「周囲に渦巻く憎悪の塊は歴戦の兵士でさえ恐怖を抱くかも知れません。しかし……」




 アオイが僅かに俯き、そして。


 一つ呼吸を整えると、決意に満ちた面持ちで顔を上げた。




「血を流すことを恐れるな、死する事を恐れるな……。我々の恐ろしさを奴らの魂に刻み込みましょう!!!!」



「「「おぉおおおお!!!!」」」





「我々は負けない!! そして、必勝を遂げ!! 勝利の美酒を女王に捧げるのだ!!!! 行くぞ!! 気高き蜘蛛の強者共よ!! 暗闇を裂き、勝利の曙をこの手に掴む為にっ!!!!」



「「「うぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!!」」」





 はは、凄い気合だな……。


 彼女達の咆哮で空気が揺れてるよ……。



 限界を突破した士気が周囲の空気を揺らし、太い木々の幹さえも揺らす。


 その圧は周囲を囲む闇でさえも払拭させる程のものであった。




「んぁっ!?!? な、な、何だ!? 敵!?」



 流石に気付いたか。


 兵士達の雄叫びを受け、ユウの頭の上で眠りこけていた龍がガバっと上半身を起こした。



「決起だよ」


「あぁ、士気を高めるって奴か。ふわぁぁ。びっくりした」



 ユウの言葉受け、クニャァっと崩れ落ち。


 再び寝ようとするが。



「マイ。そろそろ出発だ、人の姿に変われ」



 こうして忠告しないとずっとだらしなく過ごしそうだもの。


 少々きつめの声色でそう言ってやった。



「あいよ――。ほっ!!!!」



 太った雀が飛び立つと、眩い光が彼女を包み。



「うっし!! ユウ!! 作戦通り!! 出発するわよ!!」



 いつもの明るい笑みを浮かべたマイが、東へと足を向けた。



「お前さんは遠回りか。んじゃ、あたしは西に向かって行くよ」



 それに対し。


 ユウは正確に西へと足を向ける。



「言ってよ!! 間違えたじゃん!!」



 第一歩目から大間違いかよ。


 心配で仕方ない……。




「ユウ。マイの世話を頼みますね??」


「俺からも頼む。西側の作戦はユウの手腕に掛かっているからな」



 カエデに続き、嘘偽りない想いを告げた。



「は、はぁ!? あんたら私の事を何だと思ってんのよ!?」


「了解。おら、あたし達が戦いの開幕を務めるんだ。さっさと行くぞ」


「ぐえっ!!」


 ユウがマイの襟を掴み、西の方角へと進み始めた。



「頼むぞ!!!! ユウ!!」


「おう!! 戦いが終わったら美味い飯を食おう!!」


「は、放せぇえええ……。首が……。もげるっ!!」



「「「あははは!!!!」」」



 その姿を見つけた兵士達が軽快な笑い声をあげた。


 それを背に受け、ユウ達の姿が闇の中へと消失していった。




「全く……。折角私が士気を高めましたのに。あれじゃあ台無しですわ」



 額にちょっとだけ汗を掻いたアオイが此方へと歩み来る。


 緊張したのかな??



「見事な演説でした。心に響く物がありましたよ??」


「カエデの言う通りだ。指導者足る資格を持つ声色だったよ」



 俺だったらあぁはならないだろう。



「お褒め頂き、有難う御座います。では、作戦要項を伝えて参りますので。伝え終えたら我々も出発しましょう」



「了解」



 それでは。


 アオイが此方に対し、美しい所作で頭を下げると。


 主力部隊の隊長らしき人物の下へと進んで行った。



「はぁ――。まだ若そうなのに。あれが才能って奴なのかな」


「大魔の血を受け継ぐ者ですからね。当然と言えば、当然でしょう」



「ふぅん。――――――――。え?? 大魔??」



 さらりと出た言葉に思わずカエデの方を見つめてしまう。



「はい、そうです。お気づきになりませんでしたか??」


「気付くも何も、申し訳無いけど。俺はカエデ達みたいに力を感じ取る事は出来ないの。じゃあ、アオイも継承召喚が可能なのか」


「その通りです。ほら、体の奥に潜む巨大な力を感じ取れませんか??」



 感じ取る、ねぇ……。



 物は試し。


 そう考えて、アオイの体を注視した。



「では、西側の戦いが始まりましたのなら機を見計らい北へ攻撃を開始して下さい。そして……」



 ん――。


 マイと喧嘩している時だったり、妙な絡み方をする時とはまるで別人だな。



 超優秀な女性って雰囲気ですものねぇ。



「私達は主力部隊が動いてから行動を開始致します。各個撃破しつつ……」



 おっと。


 バッチリ目が合ってしまいましたね。




 俺と視線を交わすと。




「……」



 真面目一辺倒だった表情が途端に溶け落ち、そこから異性の心をぎゅっと掴む笑みを浮かべてくれた。



 雪が降りしきる冷たい冬が過ぎ、雪の中から新しい命が芽吹く。


 そんな温かい笑みですね。



 視線を交わしたのは数秒程度だが、数分以上にも感じてしまった。



「――――。見過ぎです」


「いってぇ!! ちょ、ちょっと!! 抓らないでよ!!」



 左大腿部に激痛が走ったので思わず叫ぶ。



「見ろって言ったのはカエデだろ!?」


「そこまで長く見る必要はありません。女性の体を視姦するなんて、卑猥ですね」


「し、心外だ!! 俺はちゃんと指示通りに従ったまで何ですからね!!」



 全く……。


 困った司令官ですよ。



 むすっ、と。


 唇を尖らせ苛立ちをこれでもかと表現するカエデから視線を外し再びアオイへと送る。



 彼女の周りには忙しなく人が押し寄せては返す。



 信頼される者、又は指導者足る者の姿に何処か心が温かくなり。出発するその時まで、時間が許される限りアオイの姿を見続けていた。







    ◇







 夜虫の歌の声が耳を楽しませ、それをおかずに。背の高い木々から零れ落ちる月明かりを頼りに前へと進む。


 高揚しているのは怪しい月明かりを身に浴びている所為なのか、それとも戦いに赴くからなのか……。




 まっ!!


 当然後者よね!!




 あの蜘蛛の所為でイライラしているし……。


 ここいらで一発派手に暴れてスカッ!! と爽快な気分を味わいたいのよ。



 アイツと行動してからというものの、ろくなことが無い。



 何処かの馬鹿タレはきっしょい胸元を覗いて鼻の下を伸ばし、粘着質な言葉を聞いては瞳の中にハートが浮かばせ、剰え与えなくても良い情報を与える始末。



 全く!!


 人が良過ぎるのも大概にせい!!



 そう言っても聞きやしない。



 アイツは人……。ううん。私達魔物を信用し過ぎる節がある。


 いつか、そういつか。



 取り返しがつかない事が起こる前に誰かが言ってやらんとね。


 そう考えて言ってやったんだけども……。


 果たして心に響いたのどうか……。



「よぉ――」



 ん??


 ユウの声だ。



「どした?? うぺっ!? きっしょ!! 蜘蛛の糸が!!」



 彼女の方へ振り向こうとしたら蜘蛛の巣が顔に!!



「もうそろそろ東へ移動しよう。奴さん達の気配がそこら中で感じられるし」


「分かったわ!! ちきしょう……。絡みついて来やがる……」



 両手でゴシゴシと御顔さんと拭くと、漸く取れやがった。



 さっさとこの森を抜けて、平地へと出発したいわね。



 空気がムシムシして体にへばりついてくるし。



「なぁ」


「ん――??」



 東へと転進し、ユウと肩を並べつつ進む。



「アオイってさ。大魔の血を引いているよな??」


「あぁ、そうみたいね。私達同様、すっげぇ力が腹の奥に見えたし」



 まぁ私の方が断然!! 当然!! 強いけどね!!



「じゃあさ、ひょっとしたら……。この戦いが終わったら一緒について来るかもよ??」


「はぁ!? 絶対嫌よ!! 何であんな奴を引き連れて歩かなきゃいけないのよ!!」



 断固拒否!!


 断固拒絶してやるんだから!!




「いやいや。良い奴じゃん、アオイ。人の話は親切に聞いてくれるし、周りの状況も良く見ている。まっ、ちょいと男女間の距離をまちがえているけども」


「そこっ!! 大事なのはそこよ!!」



 お可愛い顔にビシっと指を指す。



「そこ??」


「あのボケナスがいつアイツの毒牙に掛かるのか分からないのよ!? お人好しなのはま、まぁ仕方がないけどさ。その所為で私達の目標……。この大陸中の美味しい物が食べられ無くなったらど――すんの!?」



「お前さんの目的はそうかも知れないけどな?? あたしの目標は…………。あぁ、似てるな」



「ユウはこの世界を見る為、そして!! 私は美味しい物を食べ尽くす為!! ほら、一緒じゃん」



 片眉をクイっと上げて言ってやる。



「そうなると……。あぁ、でもなぁ。どうせだったら皆で楽しく旅をしたいしなぁ……」



 はい、出ました。


 ユウの悪い癖。



「あんたねぇ。自分を優先させなさいよ。自分が頑張れば、友達が楽になる。自分が苦しめば、友達が解放される。そんなんじゃいつまで経っても楽しくならないわよ??」



 移動中も自分から率先して大荷物を運び、御飯を食べる時も皆よりもちょっとだけ少なくしているもんね。


 私は見ているのだよ。



「自分ばっかり優先していたら空気が悪くなるだろ。あたしはお前さんとは違うんだよ」



 そう話すとポンっと私の頭を軽く叩いた。



「止めろ!! 背が縮む!!!!」



 これ以上チビになったらどうしてくれるのよ!!



「そんなんで縮むか。まっ、そこは追々直していくつもりさっ」



 いつも快活な笑みをニッ!! と浮かべて前へと進んで行った。




 う、うぅむ……。


 直されるのもちょいと癪かも……。



 ユウってさ。


 性格は勿論の事、懐も深いのよねぇ。


 そして程よく焼けた肌と快活な言葉使いに、可愛い御顔ちゃん。


 更に!! 更にぃ!!!!




 超烈最強無敵の爆乳…………。




 欠点という欠点が見当たらないじゃんっ!!!!



「な、直さなくもぉ。い、いいんじゃない??」



 やっぱ今の無し!!



「はぁ?? 何だよ…………。っと、お喋りはここまでか」



 そう話すといつもの優しい顔が何処かへお出掛けし、緊張感を持った面持ちへと変化した。



 この腐ったうぜぇ臭い……。


 何度嗅いでも慣れる気がしないわね……。



「そうみたいね。どうするよ?? 相棒」



 足をピタリと止め、右隣りの彼女へ問う。



「あたし達の仕事は超!! 簡単。周囲の地形が変わっても良い位に暴れてぇ……」



 おほっ!!


 悪い笑みねぇ!!!!


 当然!! これには乗るっきゃない!!



「大暴れしてぇ!! ボッコボコのぉおおお!! ギッタンギタンにしてやらぁあああ!!!!! 来いっ!! 覇龍滅槍!! ヴァルゼルク!!!!!」




 猛った勢いそのまま。


 宙に浮かんだ魔法陣から黄金の槍を取り出し、素晴らしい構えを取ってやった。




「大賛成だ!! 行くぞぉぉおおお!! タイタンッ!!!!!!」



 ユウも此方に倣い深緑の魔法陣から大戦斧を呼び出し、右肩に担ぐ。


 相も変わらず、すっげぇ迫力よねぇ。



「「「「「グルル…………」」」」」



 案の定。


 私達の魔力につられ、数えるのも一々面倒な量の豚共が闇の中から出現しやがった。




「うっひょ――!! 大群ねぇ!!」


「マイ!! 準備は良いか!?」




 ユウが大戦斧を両手に構え、開戦の狼煙を上げようとする。




「勿論よ!!!! いいか!? 聞きやがれ!! 豚野郎共!! 私達がぁ……」



 さぁ!!


 激戦の開幕は私が務めましょう!!!!



 いざ、槍を突き立てようとすると……。



「一匹残らず叩き潰してやるから、掛かって来やがれぇえええええええええええええ!!」



「グガァッ!?」



 ユウが大戦斧を天に掲げ、一体のオークを見事に両断してしまいましたとさ。



「あぁあああ!! 私が一番乗りだったのにぃ!!」


「うっせぇ!! こんな時に一番も二番もあるか!! さっさと戦え!!」




 言わずもがなっ!!!!




「おらぁ!! 一つ目ぇ!!!!」


 正面で剣を構える豚の喉元に向かって穂先を穿ち。


「次ぃ!! ふたぁぁぁあつっ!!!!」



 私の速さに黒い目をひん剥いて驚いている奴の腹を貫く。



「はっはぁ!! 絶好調!!」



 おまけと言わんばかりに三体目の豚の首を刎ね、鬱陶しい黒灰を振り払う。



 体も思い通りに動くし、武器の切れ味は本日も快調!!


 この調子でガンガンぶっ潰していくか!!



 襲い来る敵に対し、適宜対応していると……。



「「「「「ガアアアアアアアアア!!!!」」」」」



 っとぉ!!


 正面、五体同時ぃ!!



 こういう時はぁ!!



 十二分に引き付けてぇ!!




「ユウ!!」



 叫ぶと同時に姿勢を低くしてしゃがむ。



「わぁってるってぇええ!!」


 ほぼそれと同時に物凄い風圧が頭上を通過し、極厚の刃面が豚共の胴体を通過して行った。



「さっすが!!」



 私が指示を出さなくても応えてくれるのは本当に嬉しいわね!!



「おう!! ――――。ちょっと、そこ邪魔」


「へ?? のわぁっ!?」



 此方の胴体に向けて、何んと大戦斧を横断させるではありませんか!!



 慌てて地面を蹴り、宙へと逃れた。



「グウウ……」



 あらまっ。


 後ろに居たのか。



「危ないじゃない!!」



 地面に両足を付け、爆乳へ己が手を叩き込んで言ってやった。



「集中してないお前さんが悪い。ほれ、どんどん行くぞ??」


「え?? え、えぇ……。うん……」



 何で、あぁしてたわわに揺れ動くのだろう……。


 いや、それは分かるよ??


 デカイから動くのは周知の事実なのですが、叩いた時の感触が慣れないって意味なの。



 硬かったぁ……。



 痺れが残る手で黄金の柄を握り締め。



「どんどんお代わり持って来いやぁあああああ!!」



 此方に向かって襲い掛かる黒き絨毯の下へ駆け出して行った。


お疲れ様でした!!


如何でしたか??


少しでも皆さんの御心が温まってくれたのなら幸いです!!

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