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第三十六話 意外過ぎる再会

大変お待たせしました!! 


本日の投稿になります!! 遅れてしまって申し訳ありません……。


それでは、御覧下さい!!





 北へ進むに連れて周囲を漂う空気の湿気が高まり体に絡みつく重さに変化する。



 目には見えぬ空気だが……。



 集中力を極限まで高め。じぃっと窺うと重さを兼ね備えた物体として目に映りそうな気もしてしまう。




 足に鉛を括り付けられた感覚が両足を襲い悪戯に体力を削り、額から零れ落ちる液体が苛立ちを募らせていた。





「暑いな……」




 ウマ子の手綱を引きつつ、誰とも無しに言葉を放つ。



「そうですね。気候の変化が激しい地域なのかも知れません」



 順調に進む此方に対し、少々遅れた位置からカエデが言葉を漏らす。



「進む速度を遅らせようか??」



 蜘蛛さんの里にお邪魔するのは火急の件に違いないのだが……。



 仲間の体調が最優先ですので到着が少々遅れるのはやむを得ないか。



 ふと立ち止まり、彼女に問うが。



「このままの速度で構いません。私一人が遅れているからといって、行程を遅らせる訳にはいきませんから」



「そっか」



 俺は別に構わないんだけど……。



 眉をきゅっと顰め、傍から見ても無理をしていると見受けられる速度で先に進んで行ってしまった。




「カエデは負けず嫌いだからなぁ」


「誰にでも欠点はあるし。そこを補うのが仲間……。いや、友人だと思うんだけどね」



 今日も飄々とした表情で話すユウの言葉に返す。



「ってかユウは暑く無いの??」



「ん?? ん――。ちょっと暑い位かな。ミノタウロスは気候の変化に強いんだ」



 それ、物凄く羨ましいです。


 出来ればその能力を譲渡して頂けませんかね??



「おら、置いて行かれるぞ。早く進め」


「了解しました」



 左胸からありがたぁい指示を頂き。ふと湧いてしまった憤怒を力に変え、力強い足取りで北へと再進した。



「蜘蛛さん、このまま進んでも宜しいですか??」



 今も右肩に留まり、複眼で正面を捉え続けている蜘蛛さんに問う。



「……」



 右前足をきゅっと掲げ、お許しを頂けました。



「よぉ。あんた、いい加減喋ったらどうなの?? それとも何?? 私達とは話す口は無いってか??」



 左胸のポケットから上半身だけを覗かせ、太った雀が鋭い眼光を右肩に送る。



「……」



 それでも沈黙を決め、一切の姿勢を崩さず佇んでいた。



 物怖じしない性格なのかな??



 コイツに睨まれたら誰だって尻窄むと思うんだけど……。



 俺を例にしたら駄目??



「シカトか?? 私相手に良い度胸してんじゃん」



 上半身から下半身へ。


 ポケットからぬるりと抜け出すと。



「っ!!」



 何かを見つけた蜘蛛さんが前方へと飛び出し、そのまま姿を消してしまった。



「二度と戻ってくんな――――――――!! 陰湿な蜘蛛めぇえええ!!」


「あのねぇ……。もうちょっと優しく接しなさいよ。向こうは好意で里の領域に入っても構わないって態度取ってくれたのに」



 拳をぎゅっと握り、今にも追撃を行おうとして飛び立たんとする深紅の龍にそう話す。



「こっちは態々此処まで連れて来てやったってのに、礼の一つも言わねぇんだぞ!? そりゃあ怒って当然でしょ!!」



 連れて来たのはあなたではありません。



 正確に言えば俺なのです。



 まぁ言いませんよ??


 揚げ足を取るなって殴られますので。




 ギャアギャアと喚く彼女の言葉に適当な肯定をしつつ。何故か森の真っ只中で足を止めているカエデ達に追いついた。





「どうした、二人共…………。えぇ。何だ、こりゃ…………」




 二人が足を止めていた理由が直ぐに理解出来てしまった。





 周囲を包む緑。


 そこに幾つもの白い蜘蛛の糸が縦横無尽に張られ、侵入者の侵入を拒んでいたからだ。




 空を見上げても蜘蛛の糸。


 左右、地面。


 前後左右どこを見ても白が視界に入って来る。



「お、おいおい。此処を進むってのか??」



 ユウが堪らず口を開く。



 そりゃそうだろう。


 此処から一歩でも先に進めば糸に絡め取られてしまいそうだもの……。




「此処以外も恐らくこの様な状態なのでしょう。警告にも見えます」



「「「警告??」」」



 三人仲良く声を合わせてカエデに問う。



「えぇ。此処は私達の領域。侵入する事は死を意味します、と」



「や、止めてくれよ」


「そ、そうそう。怖い事を言って俺達を脅かそうとしても駄目だからね??」



 ユウと共に若干震えた声で話す



「蜘蛛の糸に引っ掛からない様に進みましょう。それ以外、道は存在しませんので」



 足を止め、進む事を躊躇した此方に対し。



 威風堂々とした歩みで進むカエデ。




 司令官が先に進み、道を示している。


 そしてあの背中は俺達にこう問いかけていた。




『ビビっています??』 と。




「じょ、上等!! 進んでやろうじゃないか!!」


「あ、あぁ!! 行くぞユウ!!」


「おう!!」





 白い糸に四方を囲まれた空間へと第一歩を威勢良く突き立て、勢いそのまま進んで行った。






 木々の枝から垂れる白き糸が風に揺れ形容し難い動きを見せれば。


 糸に掴まった矮小な虫の成れの果てが大変硬い生唾を発生させ、腕に絡みつく糸が恐怖感を増長させる。




 こ、こんな場所に住んでいるのか??


 蜘蛛の皆さんは……。



 何んと言いますか……。


 蒸し暑い密林で、しかも糸に囲まれた空間ですので……。


 もうちょっと過ごし易い空間に引っ越しすればいいのにとさえ感じてしまう。



「ぬぉっ!?」



 木々の影から妙な物音が響くとユウがぎゅっと俺の腕を掴んだ。



「な、何だ!? ユウ!?」


「あ、いや。はぁ……。変な音がしたから馬鹿デカイ蜘蛛に襲われるかと思ってさ」


「勘弁してくれよ。後、腕が折れそうだから放して」


「あっ、へへ。ごめんね??」



 どういたしまして。


 一つ頷き。粘着質な白い糸で足の裏を掴み取って来る大変進み辛い大地を進んで行くと……。







































 耳障りな声が上から降って来た。



「そ、そこにいる愚か者達!! わ、私を助けなさい!!」



 背の高い木の枝の先に張られた蜘蛛の巣に、一人の女性が繭状の姿で捕らえられている。



 特徴的な薄紫色の髪、そして傲慢で高圧的な態度……。


 何であの人が此処に居るのか甚だ疑問が残りますが、取り敢えず言葉を送りましょう。




「よ――。クレヴィス。あんた、そんな所で何やってんのよ」



 おっと。


 先に言葉を送られてしまいましたか。



 マイがポケットから飛び出し。宙へと浮かんで蠢く繭を見上げつつ話す。




「見て分かんないの!? あんた馬鹿なの!?」


「あぁ!? 喧嘩売ってんのかぁ!?」



「落ち着けって。えっと、クレヴィス!! どうして此処に居るんだ!!」



 随分高い位置に居るので声を大にして言ってやった。





「そこに居る力だけが取り柄の馬鹿で愚かなミノタウロスにぶん殴られて此処まで吹き飛んで来たのよ!!!! 何か不気味な場所だし、取り敢えず歩いていたら白い化け物に襲われて……。逃げ回っていたら捕まったの!! 馬鹿乳!! あんたの所為で捕まったのだから助けなさい!!」




「あ?? 誰が馬鹿だって??」



 お願いっ!! 頼むからこの人達を挑発しないで!!


 収拾が付かなくなりますので!!



「こんな所まで吹き飛んで来て……。五体満足で居られるのですか。話には伺いましたが、ある程度の魔法は得意な様ですね」



 二人を宥めているとカエデが興味深そうにクレヴィスを見上げる。



「あんた誰!!!!」


「名乗る程の者ではありません」


「あっそう!! 魔法は使えるの!?」


「えぇ。嗜む程度ですが」



 コクンと小さく頷く。



「じゃあ下ろしなさいよ!! へったくそな魔法使い!!!!」



「…………」



 ぎゅぅぅぅぅうっと眉を顰め。


 お馬鹿さんの挑発によって大変ご立腹な表情を浮かべてしまいましたとさ。




「わ、わぁっ!! カエデも落ち着いて!!」




 ア、アイツは本当に馬鹿なのか!?


 怒らせても何の得にもならないってのに!!





「ちっ。お前さんはそこで捕らえられたまま枯れて……。くたばりやがれ」


「そ――そ――。人様の里に我が物顔で侵入して来た罰だ」


「因果応報です。己の罪を悔やみつつ、そこで果てて下さい」




 遥か頭上で涙を浮かべて助けを懇願する彼女を置き北へと進む三名。




「え……。えっ!? や、やだぁっ!! 助けなさいよ!!」



 まぁ、でも。


 致し方ないのかな。


 ユウ達を傷付けたんだし。



 慌てふためくクレヴィスを置いて彼女達に倣い進もうとすると……。




「「…………」」




 涙目の彼女とバッチリ目が合ってしまった。




「レ、レイドは助けてくれる……。わよね??」


「えっと。自分には決定権は無いので、悪しからず……」



 視線をすっと反らし、マイ達に続こうとするが。



「は、薄情者!!!! か弱い女を置いて行く気なの!?」


「か弱いって……。フェリスさんの一撃を食らって生きている女性をか弱いと言いませんよ??」




「え?? 褒めてくれるの??」




 あの人の頭の中を覗いてみたい。


 一体どこがどうなったら褒めた台詞に聞こえるのだろう。




「褒めてはいません。どちらかと言えば皮肉に近い台詞ですよ」


「どっちでもいい!! 助けてよ!! 蜘蛛の毒で死ぬのなんてまっぴらごめんだもん!!」




 はぁぁ……。


 これだけ酷く痛めつけられたんだ。


 これに懲りて、もう此方に手を出してこないだろうし。




「カエデ。悪いけど……。彼女を下ろしてやってくれないか??」


「構いませんけど……。ユウはどうですか??」



「――――。ちっ!! やい、阿保女!! 誓え!! 二度とあたし達の里に手を出さないって!!」



「っ!! 誓う!! 誓うからぁ!!」



 何だかんだいって皆優しいですよね。


 あぁして悪態を付きながらも、旧敵を助けるのだから。



「ふぅ。レイド、受け止めて下さいね??」


「はい??」



 カエデが右手をクレヴィスに対して翳すと。



 無数の風の刃が彼女の下へと駆け抜けて行き。



「きゃああああああ!!!!」



 繭から羽化した一人の女性が重力に引かれ自由落下。



「っと!!!!」



 慌てて彼女の落下地点へと進み、羽化したばかりの女性を受け止めてやった。



「大丈夫だった??」


「へっ?? え、えぇ。うん。大丈夫……」



 こうやって素直にお礼を言えば良いのに。


 若干鋭い目付きですが、頬を染める姿は可愛いと思いますよっと。



「立てる??」


「う、うん。何んとか」



 彼女が恋焦がれていた地面へ下ろし、此方の手に纏わり付く若干の蜘蛛の糸を手で払ってやった。



「じゃあ、俺達は行くから。こっちの後を付けないでよ??」



「だ、誰が付いて行くもんか!! 私を助けた事を……。後悔しない様にねっ!!!!」




 ん??


 ちょっと言葉の使い方が違いますよ??


 敵に向ける言葉じゃあありません。




 後、人に対して指を指さない。失礼ですからね。




「あぁ、多分。後悔する事は無いかな」



 申し訳無いけど、クレヴィスの実力じゃあカエデ達には逆立ちしても勝てそうに無いし。


 大した障害にもなりそうにないので。後悔はしませんね。




「だな――。後悔はしないよ」



 ユウも言葉の間違いに気付いたのか。


 ニヤリと笑って俺に続いた。



「????」



 俺達の言葉にまだ気付かないのか。


 瞬きをパチパチと繰り返し、小首を傾げる。


 その姿は小鳥の様にも映り。敵ながらも此方に愛おしさを持たせる程であった。





「今は後悔しなくても、私達は後々後悔するかも。今、助けても後悔しなくていいあなたを見ている私達は後々後悔しているのかもしれない。 何故なら。あなたが後々実力を持ち私達があの時、助けた事を後悔するかもしれないから」






「うっ?? んんっ??」





 カエデの簡単な言葉遊びを聞き必死に頭を回転させているものの。



 過剰な言葉の処理の所為か。



 顔が真っ赤に染まり、その赤みが耳まで到達。



 そして、限界に達した頭には白い蒸気が揺らめき始めてしまった。




「あんた大丈夫?? 助けた事を後悔しないって事は、助けても別に良かったなぁって意味よ。 後悔ってのは後で悔やむ事。それの逆は悔やまない。 あんたがこれから先、悪さをしてもこちらとしては大して障害にならない。つまり、今助けても後悔はしない。って、事になるわね」



 マイが堪らずクレヴィスの言い間違いを訂正してやった。


 意外と親切ですね??



「あ……。こ、こ、後悔する事ね!! と言うか何よ!! 寄って集って馬鹿にして!! 誰にだって言い間違いはあるでしょ!!」



 やっと自分が言った言葉を理解したようですね。


 お疲れ様でした。




「きょ、今日は見逃してあげるわ!! じゃ、じゃあね!!!!」



 そして、負け惜しみの言葉を吐き捨て南の方角へ走り去って行く。



 捨て台詞が似合うなぁ……。




「走ると転ぶぞ!!」



 一応、彼女の身を案じて一言を添えてあげた。



「うっさい!!…………。きゃあっ!!」



 転んだな。


 まぁ大事には至らないから大丈夫でしょう。




 周囲の蜘蛛の糸にも慣れたのか。それとも馬鹿馬鹿しい展開がそうさせたのか分からないが……。強張っていた感覚がすっと溶け落ち。



 自分でも驚く程に気分が楽になっている事に気付いた。



 あのお馬鹿さんでも役に立つ事があるのだな。



 面に向かって決して言えない失礼な台詞を頭の中で浮かべつつ、随分と小さくなってしまったカエデ達の背に向かって駆け出した。








   ◇








 お馬鹿さんと別れ早一時間程度だろうか??


 縦横無尽に張り巡らされた白き糸の妨害を受けつつ進行を続けていると、正面に開いた空間が見えて来る。




 先頭を歩いていたユウがすっと、腰を落とし。


 茂みの合間から注視を送った。



『ユウ、何か見えるか??』



 ウマ子を制止させ、足音を立てずに彼女の隣に腰を落とす。



『ほら、あそこ……』



 ユウが指差したのはぽっかりと口を開いた岩の洞窟。


 左右、凡そ……。十メートル程だろうか。


 距離が離れているので大雑把な広さしか伺えぬが、問題なのは突如として洞窟が出現した事だよな。



『恐らく、あそこが蜘蛛一族の住処でしょう。中から幾つもの魔力を感知出来ます』



 ユウの左隣。


 此方と同様に警戒を続けるカエデが話す。



『どうする?? 此処でじっとしていても問題は解決しないし……』



 元より。


 様子を窺いに来たのだ。


 何も攻撃を加える為では無いので、こうしてコソコソ様子を窺う必要は無い。




 さて、誰が一歩目を踏み出そうと互いに様子を窺っていると。



「何ビビってんのよ。こういう時は堂々としていればいいの。よぉ――!! 様子を見に来たわよ――!!」



 用件を話しただけマシなのかな??



 密林を真っ先に抜け、何の警戒も持たず無防備な姿のままで洞窟へと向かう怖い物知らずのお馬鹿さんに俺達も続いた。




 閉鎖的な空間から、開けた空間へと抜けると心と体がふっと楽になる。



 糸に、密林に囲まれ続けて居たのだ。きっと己の気付かない所で緊張していたのだろう。



 久しぶりに窺う青い空を仰ぎ見て快適な踏み心地の大地を進み、洞窟の入り口へと向かうと。





「ちょ、ちょっと。何よ、この音……」





 周囲の森から何やら心を不安にさせる音が響き始めた。


 何か……。そう。


 何かが擦れる様な音にも聞こえる。



 あれは……。


 うん。


 幼い時に見た超絶怒涛に足が速い蜘蛛さんの移動音に似ていますね。




 つまり!!


 巨大な蜘蛛が此方に向かって物凄い速さで向って来ている事を意味します!!




 大変御硬い生唾をゴクリと喉の奥に流し込むと……。




「「「「…………」」」」



 巨大な蜘蛛の群れが俺達をあっと言う間に取り囲んでしまった。




 茶、黒、深い緑に、濃い青に、眩い黄色。




 わ、わぁ……。色んな色の蜘蛛さんが居るのですね。



 しかも!!


 皆さん俺の体よりも遥かに大きいです……。




 真正面には八つの足を大地に穿ち今にも飛び掛かろうとする蜘蛛。


 背の高い木の頂上付近で様子を窺う蜘蛛さんは粘着質の糸を垂らし、此方を絡み取ろうと画策。


 森と開いた空間の狭間で待機する蜘蛛さんの黒く鋭い牙からは……。




 お、おぉう……。



 タラリ、と。


 毒液にも見える液体を垂らし、俺とバッチリ目が合ってしまっていた。



「く、食われる??」



 ぱっと頭の中に浮かんだ言葉をついつい口に出してしまう。




「この中で一番美味しいのはコイツよ!! 味わって食べなさい!!」


 マイがユウの背をグイグイと押し、此方へジリジリと距離を詰める蜘蛛さん達の前へと献上した。



 うん。


 確かにユウは美味しそうだもんね。


 仕方が無いよね??




 俺じゃ無くて良かったです……。


 人知れず安堵の吐息を漏らしてしまった。




「止めろ!! あ、あたしは食っても美味くないぞ!? く、食うならこっち!!」


「ちょ、ちょっと!!」



 ユウがカエデの腕を掴み、さぁどうぞ!!


 そう言わんばかりに更に前へと差し出す。




「カエデも美味そうよね――」



 最後方で安心しきった顔でマイが話す。



「押すなって言っただろ!! お前さんが先に食われちまえ!!」



 だが、ユウに腕を掴まれると。あっと言う間に最前線に押し出されてしまった。




「な、何すんのよ!!」


「マイが先に押し出したのです。諸悪の根源であり悪の総帥は滅されるべきです」


「誰が悪の総帥だ!!!!」




 ごめん。


 すっごく似合うと思う。


 少なくとも正義の味方よりかはね。



 三人の縦の列が形成され、先頭の者は背を押され慌てふためいた後に最後方へそそくさと移動。


 そして先頭に躍り出てしまった者は……。





 他人様の家の前で何をやっているのやら。





 蜘蛛さん達も俺と同じ考えに至ったのか。何度も繰り返される呆れた行動を見て、突き立てようとしていた牙を仕舞い。


 漆黒の複眼で此方をじぃっと窺っていた。




 事情の説明をして敵意は無いと告げようとすると。





「――――――――。皆様、其方の方々は敵ではありませんわ」




 背後から突如として背筋が泡立つ声が放たれた。


 その声に反応しゆるりと振り返ると……。





















 そこには。


 美麗で、荘厳な一輪の白い花が咲いていた。





 背の中央まで伸びるしなやかで美しき白い髪が風に靡くと、道ですれ違う誰もが彼女に対して振り返るであろう。



 すっと横に流れる眉に誂えた様な丸く黒い瞳。


 女性特有の丸みを帯びた細い肩と、鈴蘭の花も嫉妬を覚えずにはいられない白き柔肌。




 その女性に見つめられたこの体は思考を強制的に停止させた。


 それは恐らく。


 言葉を出すな、そして。目の前の女性の姿を心に刻めという意味なのだろう。




 背筋が泡立つ視線を浴びせられ続けたらこの体は一体どうなってしまうのだろうか??




 そんな考えさえ起こさせる彼女の瞳に魅入られた俺はまるで……。蜘蛛の糸に絡められた様に動けずに、只々彼女を見つめ続けていた。


如何でしたか??


次話では蜘蛛さん達の住処へと足を運びます。


遅い時間の投稿になってしまい、申し訳ありませんでした。

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