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第一話 久方振りに訪れた戦士達の休息 その一

お疲れ様です。


本日の投稿なります。


それでは、どうぞ!!




 山の澄んだ空気、体を優しく包む風、鼓膜にそっと響いて心を落ち着かせてくれる野鳥の歌声。


 そんな風光明媚な環境とは真逆の光景が私の心を悪戯に逸らせ、体温をグワングワンと上昇させてしまい。獲物を求めて野を疾走する捕食者の様に足を急かしてしまう。



 そうよ、此処なんだ……。私の楽園は!!!!



 見てよ!!


 あの鍛え抜かれた戦士の腕みたいに太くて大きなパン!!



 嗅いでみなさいよ!!


 肉汁滴る新鮮なお肉の焼ける香ばしい匂いを!!



 感じなさいよ!!


 夏の恵みを受けて丸々と太った御米の偉大さを!!



 魅惑の食材達が私の心と体を誘惑して早くも頭がおかしくなりそうだわ。


 しかし、いくら頭の中で想像していても腹が膨れる訳ではぬわい。


 久々の凱旋記念。初手は外せないわねぇ……。



 どの子が私の心を満たしてくれるのか、吟味の開始をせざるを得ないわ!!!!



『はぁ……。はぁっ……。はぁぁっ!!!!』



 ぐふふ。


 待っててね!! 可愛い子ちゃん達!!



『楽園よぉぉおお!!!! 私は帰って来たっ!!!!』



 さ、さぁ……。宴の始まりだぁぁああ!!


 突撃開始ぃぃいいっ!!!!




「――――。こら、待て」


 意気揚々と王都中央の屋台群へ飛び込もうとする私の服の襟を無粋な男が掴むと。


『ぐぇっ!?』



 飛蝗も驚く程に勢いを付け過ぎて飛び出した所為か、シャツが喉にめり込んで咽てしまった。



『ちょっと!! 何すんのよ!!』



 堪らず振り返り大馬鹿野郎へ向けて言ってやった。



「楽しむのは一向に構わん。けどな?? 一人で勝手に行動するのは如何な物かと思うぞ」



 呆れとも怪訝とも受け取れる表情で私を見下ろす。



『あれ?? ユウ達は??』



 さっきまで一緒に居たのに……。



「ん」



 ボケナスが親指で背後をクイっと指差す。


 すると、額に汗を浮かべながらユウ達が蝸牛も心配になる速さでやって来るではないか。



 おっそいわねぇ。


 チンタラチンタラ歩きやがって。便意を催した蟻の方がもっと速く歩くわよ。


 そんなゆっくりしていたら御飯が売れ切れちゃうじゃない。



『待てよ!! 大馬鹿野郎が!! はぁ――。やっと追いついた』


『マイちゃん置いて行かないでよね!!』


『あぁ、わりぃわりぃ。気が逸ったもんだからさ』



 あははと乾いた笑いを上げ、可愛く息を荒げる無駄乳女とお惚け狼へ特に謝意を込めずに言ってやった。



『食べ物の事になると直ぐにこれですから。全く、卑しく飢えた醜い豚ですこと……』



 はい、蜘蛛は無視。


 ってか、今直ぐに死刑にしてやっても良いんだぞ??



『主まで置いて行くな。馬鹿者』


『マイの視線の中には食材を入れるべきでは無いと思います』


『それ、あたしも賛成――』


『何?? 私、滅多打ちじゃん』



 辛辣な表情を浮かべる我が部下共の前で腕を組み、心外と言わんばかりに言ってやった。






「――――。そりゃ、勝手に行動したらそうも言われるだろう。いいか?? ここは人が多く暮らす街だ。人の姿に変わっているとは言え女性が肩で風を切り、威風堂々と跋扈していたら目立つだろ」


『そんな事、分かっているわよ……』



 全員から御咎めを受けてムスっと唇を尖らしている赤き龍へ言ってやった。



 思い返せば、こいつは朝から何だか様子がおかしかった。


 師匠の所で目を覚ますなり。



『は、は、早く帰ろうよ!!』 と。



 まだ太陽も欠伸をしてムニャムニャと眠気眼を擦る時間に皆を身勝手に叩き起こして寝所の素敵な朝の時間を破壊し尽くし。



『お主達の体には見た目以上の疲労が残っておる。食事を済ませ体を解してから……』



 師匠の有難い言葉も耳に入らず、終始心此処に在らずの様子で……。


 あ、でもちゃんと朝ご飯はしっかり食べていたな。



『モア!! お代わりよ!!』



 卵かけご飯をサラサラと五杯食べていましたもの。


 兎に角。


 王都の屋台群を頭に浮かべ続けていたのか。


 己の欲求を満たそうと到着するなり。



『いぃぃやっほぉぉうう――っ!!!! 御飯食べ放題だぁぁいっ!!』


『あ、こら!! 待てよ!!』



 制止の声を振り切って駆け出して行ってしまったのだ。



 好き勝手に暴れ回られても困る。



 そう考えた俺達は、わざわざギト山からここまで空間転移で送り届けてくれたエルザードへの礼もそこそこに、豆粒大に小さくなって行くこいつの背を追いかけ中央広場まで馳せ参じた訳だ。



「エルザードに礼も言わないで。もうちょっと相手を敬えよ」



 手の甲で額の汗を拭いながら言ってやる。



『送ってくれたのは感謝しているわ。でも、気が付いたら足が勝手に動いちゃったのよ……』



 正常な思考を上回る食欲、ね。


 相も変わらず桁違いの欲求を御持ちで何よりですよっと。



「礼は俺達が言っておいたからいいけど、次からは気を付けろよ??」


『レイド様、随分と甘いのでは?? 卑しい豚には厳しい躾をしませんと。図に乗って再び愚行を繰り広げる事は火を見るよりも明らかですわ』



 アオイが言いたい事は十分理解出来る。


 しかし、昨日までの件を考えると厳しく言えないのが少々歯痒いですね……。


 何しろ俺の命を救う為に身を粉にして行動してくれたのだから。



『ま、まぁ。久々の王都だから……。余り派手な行為をしなければ問題無いだろう』



 俺も甘いなぁ。


 こういう時こそ分隊長の様にビシっと言ってやるべきなのに。



『さっすが!! 分かってるじゃない!!』


「痛いって」


 人目も憚らず右肩を叩いてくるので、常軌を逸した苦みを舌の上で感じた時の様に。これでもかと顔を顰めて言ってやった。



『ん?? 何か、人の声が理解出来ないんだけど??』



 シパシパと瞬きを繰り返して周囲で数多蠢く人々の群れを見つめる。



「そりゃそうだ。カエデの魔法を掛けて貰う前に行動したんだからな。だから、慌てて追っかけたんだよ」



 そう。これも理由の一つ。



 脱兎も恐れ入る速度で駆け出して王都内の歩道を爆走し。


 屋台群の中へ突入して慎ましい歩みで散策する分には構わないが……。人語を理解出来ない状態では真面に意志の疎通も図れないだろう。



 その結果、人に言い掛かりを付けて暴力沙汰でも起こしかねない。空腹の龍は俺達でさえも行動の予想が難しいのだよ。



『マイ。こっち来て』


『はいよ――』



 カエデに手を引かれ、人目の付かない裏路地へと連れていかれてしまった。


 多分、あそこで魔法を掛けるのだろう。



「さて、一段落した事だし。これからの行動を整理しようか」


『は――い!!』



 ルーが威勢良く手を上げた。



「俺は今から宿の手配をしてくる。今は……。丁度真昼頃か」



 天高く上昇した太陽を見つめ、大雑把な時間を測る。



「宿を取れたら連絡するよ。夕方までは各自、自由行動で」


『了承した。主は宿を取れたら何をするんだ??』



 リューヴが言う。



「ん――。そうだな……。明後日からの任務に備えて、市場とかで色々見繕っておきたいし。それに……。こいつを収める革袋も買わなきゃいけないから」



 肩から掛けている鞄の中から一本の短剣を取り出した。




『良くそんな武器使おうと思うな?? 自分の腹に刺さった奴だぞ??』



 ユウが怪訝な顔で取り出した短剣を見つめる。



「いいじゃないか。これ程の業物、早々お目に掛かれないぞ。それにあのまま放置していたら師匠に叩き折られていたし……」



 寝所でこの短剣が荷物の山の側に無造作に放って置かれているのがふと目についた。


 師匠曰く。



『糞忌々しい短剣はさっさとへし折ってやらねばな!!』



 と、仰られていたが俺は。



『勿体無いですよ。自分が丁寧に使います』



 こいつが無残な姿に成り果てる前に救出した訳だ。



 普段使っている短剣より刃の厚みも太く、諸刃で鋭い切っ先。使い手の事を第一に考えてある手に良く馴染む漆黒の柄。


 この諸刃なら太い木の枝等、紙を切る事より容易いだろう。


 俺が使用している短剣は鋭く突き刺す事に特化しているが。こいつは強打を受けてもビクともせず、硬質な物質を裁断する事に特化している。


 用途に分けて使おうと考えて持ち帰って来たのだが皆の評判はいまいちであった。



『そうだよ。イスハさんが言っていたように壊しちゃいなよ――』


『一声下されば、滅却致しますわ』


『あぁ。真っ二つだ』



「駄目だって!! 勿体無い……」



 皆に取られまいと両手に抱えて大事に鞄にしまってやる。


 酔狂だと思われようが、勿体無いの精神は崩さないぞ。



『ただいま――っと。うん?? どうした?? 産みたての卵を大切に守る親鳥みたいに鞄を抱えて』


『あの短剣を持って帰って来ただろ?? あたし達が折ってやろうって言ってんのにさ、大事に隠しちゃうんだよ』


『あぁ、はいはい。あのクソ忌々しい短剣ね。ユウの言う通りよ。ほら、潔く出しなさい』



 まるで子供から玩具を取り上げる母親の口調で話す。



「嫌だって」


『レイド、私が燃やす。貸して』


 マイの後ろからカエデがやって来ると、さも当然とばかりに手を差し出すから困ったものだ。


「もうこの話はお終い!! 俺は宿の手配をして来るからね!!」


 このままでは本当に折られてしまう。


 そう考えた俺は猟犬も驚く速さでいつもの宿屋へと向かい駆け出して行った。






『おらぁ!! 逃げんなぁ!! …………全く。物好きよねぇ』


 猛烈な勢いで小さくなっていく背中を見て言ってやった。


『まぁ……。あぁいう所がレイドらしいっちゃらしいけどな』


 ユウが溜息混じりに話す。



 私だったら速攻で叩き折ってやるけどねぇ。


 だって、その所為で死にかけたんだしさ。酔狂も度を超えると呆れて来るわね。


 ま、刃の毒も除去されて害も無いし。


 大丈夫でしょう。


 子供から玩具を取り上げる程、私は横暴では無いのだよ。



『よし!! 準備万端!! 美味しい物探すわよ!!』


『お――っ!!』


『よぉしっ!! あたしも久々に食うぞぉ!!』



 いつもの二人が私の言葉に呼応するが……。


 相も変わらず真面目組の反応はちゅめたかった。



『カエデ、図書館に向かいますか??』


『うん。新聞も読みたいし、本も読みたい』


『人混みは苦手だ。相伴させてもらおう』



 ほらね??


 ノリが悪いんだから。



『ねぇ、食べに行かないの??』



 ルーが北通りを目指す三人の背中に話しかけた。



『私達は人が少ない時間に回りますわ』


『大人しく行動するんだ。分かったな?? ルー』


『子供じゃないもん!!』



 二人が振り返ってお惚け狼に言葉を返すものの、カエデは珍しく浮足立った歩みを止める事は無かった。


 余程楽しみなのねぇ。


 私が食材を欲するのに対し、カエデは文字を欲しているのだろう。


 止めはしないさ。


 仮にしたとしても、歩みを止める事は無いでしょう。



 私の歩みを……。止められないようにね!!


 さぁ、行こうかぁ!!



『あ!! 待ってよ!!』


『遅いわよ!! いざ行かん!! 魅惑の園へと!!』


『何言ってんだか……。お前さんの手綱を持つこっちの気持ちを理解して歩けよ??』



 お待たせ……。皆、私が帰って来たのよ??


 万雷の拍手で喝采して迎えなさい!!!!


 止めどなく湧き続ける私の食欲を漲らせてくれる香りの坩堝へと身を投じ、私の鼻腔へ全身全霊の力を以てイケナイ香りを届けてくれる我が子達の愛情を受け止めてあげた。














 ◇





 全く。物を大切にするという事を知らないのか。


 俺は幼い頃から口を酸っぱくしてオルテ先生にこう言われて育った。



『レイド、物は大切に使いなさい』



 服は解れたら縫い、物は壊れたら修復して使えなくなるまで教えに従って使用していた。


 金持ちなら幾らでも物を買えるだろうが、孤児院で育った俺にそんな余裕は無かった。



 けれど、裕福な家庭が羨ましいとは思わなかったなぁ。



 玩具が無いのなら代わりに色んな遊びを考えて遊んでいたし。


 着飾った服や舌が溺れてしまいそうな御馳走にもさして興味はなかった。


 只、両親の存在は気掛かりだった。


 俺の両親はどんな人なんだろう?? 今も生きているのだろうか?? どんな容姿をしているのか?? そして……。





 どうして、俺を捨てたのか。





 この世に生まれてしまった理由を知りたかった。


 両親は恋をして愛を育みその結果俺が生まれたのか。それとも、愛し合うとは違った形で俺が生まれたのか。


 要らない子なら産んでくれるな。


 いっその事、捨てるのでは無くて。殺してくれればよかったんだ。


 子供が持つにしては重過ぎる負の感情を持ってしまった時期もあった。


 だが、オルテ先生や共に育った孤児院の仲間が俺を支えてくれた。支えられている内に負の感情は霧散して人生を謳歌しよう。そんな前向きな感情を抱かせてくれて……。本当に感謝している。


 今となっては両親の事を特別恨んでもいない。


 寧ろどんな人達なのだろうか、と偶に脳裏に過る。


 ま、子を捨てて行く人達だ。


 凡そ真面ではあるまい。



「いてっ!! 兄ちゃん、ちゃんと前向きなよ」


「あ!! すいません!!」



 考え事をしながら歩いていたので道の反対から歩いて来た人と肩をぶつけてしまった。


 慌てて頭を下げて謝罪の意を示す。


 いけない。ちゃんと前を向いて歩こう。人生と同じで下を見続けても良い事はないのだから。




 宿の予約は滞りなく済んだ。


 いつもの受付のおばちゃんがさして興味を持たずに宿の予約を受け持ち、欠伸を噛み殺しながら料金を受け取ってくれた。


 他人の詮索は嫌われる。


 毎度、その事を体現した態度に救われて利用させて貰っているんだけどね。



 場所も場所なだけに、偶にけしからん態度の恋人らしき男女が夜な夜な宿に訪れて部屋を借りている。


 そういう事もあって深く聞こうとしないのだろうなぁ。



 おっと、此処だ。


 目的地である建物が見えて来たので歩みを止めてその外観を確認した。



 只あても無く歩いていた訳ではない。


 この短剣に相応しい革袋を探しに武器屋へと参った次第なのです。



 南大通の東側に店を構える武器屋 『ラピッド』



 大通り沿いで人気があるのか、今も通りから複数の男性客がお目当ての品を探し求めて店内へと足を踏み入れていた。



 人気店に相応しい売り場の広さを誇り、商品の品揃えも中々の物と同期の連中が言っていたし。


 ここでなら。そう考えて足を運んだのですよっと。



 さてと!! 買い物ついでに実戦で使える武器も探そうかしらね!!


 街の陽気な空気にあてられたのか、若干浮ついた気分でやたら丸みがかった文字の看板の下にある入り口の扉を開いた。



「いらっしゃいませ――!! ラピッドへようこそ――っ!!!!」



 大変お綺麗な扉を開き、店内へお邪魔させて頂くと元気な女性店員の声が響いた。



 あらぁ……。凄い人。



 店内は人気店を証明する様に広い。


 凡そ二十メートル四方の店内の壁際、中央の棚に所狭しと武器防具が陳列されている。


 丁寧に刃面が磨かれ美しい光沢を放つ剣、重厚な造りで矢の飛翔など簡単に跳ね返してしまうであろう鉄の胸当。


 分厚い革の手袋に大、中、小弓。


 店内の奥には農工具、そして日常生活で欠かせない包丁や鍋等の金物類も確認出来た。



 キチンと整頓してある数々の品を主に男性客が手に取り眺めていた。


 武器屋の名に恥じない品揃えの多さにふむと一つ頷く。



 しかし……。そのぉ、何んと言いますか。



「これぇ。新作なんですよ――」


「そ、そうなの!?」



「あぁ!! 今日も来てくれたんですねぇ!!」


「す、勧められた商品が気になっちゃってさ――!!」


「本当はぁ――……。私に会いに来てくれたんでしょう??」


「あはは!! バレちゃった!?」


「もぅ!! 嬉しっ!!」




 武器屋の店員は硬派だと勝手に決めつけている俺自身の印象が尾を引いているのか、場にそぐわない女性店員の接客が少々鼻に付いた。


 営利を求めるのは店側としては当然なのですけども、男心を擽る甘い声で惑わすのはちょっとねぇ……。



 方々で上がる彼女達の声を無視して壁に立てかけてある長剣を手に取るが……。


 使用している鉄が悪いのか随分と軽く感じた。


 こんな物でオークを切ったら刃が欠けちまって、直ぐ使い物にならなくなるぞ??


 陳列されている商品を適当に見つめ適度な品定めをしながら見て回るが、特に興味を引く物は見つからなかった。



 物は確かに多いんだけど、どれも大量生産された物なのか。


 しっくりと来ないし、業物も置いていない。


 そして、肝心要の革袋も見つからないと来たもんだ。


 こりゃ参ったな……。


 後頭部をガシガシと掻き、一人静かに店の中で佇んでいると。



「――――。お客様、何かお探しですか??」



 大変お綺麗な女性店員さんが甘い声を出して接客を開始してくれた。



「えっと……。短剣を納刀する革袋を探しているのですが」


「ん――。今、ちょっと切らしていますね」



 中央の棚を探してくれるがどうやら売り切れの御様子。



「そうですか……。いや、参ったな」



 有名店なら置いてあると思ったんだけどなぁ。



「革袋は置いていませんけどぉ。他の品は手に取って頂けましたか??」



 どの品も中途半端で戦には向かない品でした。



「えぇ、軽くですけどね」



 心の中で思う言葉とは違う言葉で彼女へそう答えてあげた。



「何か気に入った商品は御座いましたか??」


「え?? えぇっとぉ……」



 御免なさい。


 全く見当たらないのでどう言葉を返せばいいのやら。


 だが、世辞の一つや二つを放てば俺も恐らく……。



「きゃぁ!! お客様。その武器似合いますよぉ」


「え?? そうかな??」



「今ならぁ、お安く出来ますけど――??」


「じゃあ、頼んじゃおうかな!!」



 鋭い眼で武器を見定めるのではなく、女性店員さん達の際どい衣装に鼻の下を伸ばす男性達と一括りにされてしまうであろう。



 見えそうで見えない胸元の開き具合、純白無垢な白い前掛けを内側からググっと押し上げる双丘。


 短めなスカートに誂えたようなスラリと伸びる白い足。


 世の男性はこれに惹かれ、買わなくても良い武器防具を購入。


 そして……。家計を逼迫してしまいある人は奥様に、ある人は家で不必要な武器を見つめて後悔する訳だ。


 商売は儲ける為に物を売るのだが、その手段がねぇ……。


 此処は俺の求めている店では無い。


 早目に退散しよう。




「――――。どの品も余り良い品ではありませんね」



 俺の接客を担当している彼女の眼へと向けて心に浮かぶ言葉そのものを放ってあげた。


 さ、これでこの人は見切りをつけて違う人に向かうでしょう。俺も違う店へと向かって目的の品を探さなければならないのでね。


 時間は有効的に活用しませんと。


 俺の前から早々と立ち去る事を願い、彼女の端整な顔を眺めていると。



「まぁっ!! ふふ、良かった」



 彼女は俺の想像とは真逆の言葉と表情を浮かべてしまった。



「お客様。店内に足を踏み入れてからずぅっと納得していない表情を浮かべてしましたから……。少々気になっていたのですよ」


「そう、なのですか」


「えぇ。ここだけの話……」



 彼女が耳打ちをする様に手を伸ばすので、それに合わせる形で右耳を傾けてあげた。



『お客様は他の人とは違う空気を纏っているのが一目瞭然でしたよ??』



 温かい吐息に混ざった甘美な言葉が耳からぬるりと頭の中に入り込むと、何だか背筋がゴワゴワと泡立ってしまう。


 此処に居る店員さん達は言葉に魔力でも籠めているのでしょうかね??


 大変宜しく無い声色ですよ。



「お客様に似合う品を御持ち致しますので暫くお待ち下さいねっ」



 耳打ちの姿勢を解き、普遍的な距離感を保って笑みを浮かべる。



「あ、いや。もう出て行こうかと……」


「直ぐに戻って来ますからぁ――!!」



 有無を言わさずに店の奥に見える扉へと短いスカートを翻しながらタタっと駆けて行ってしまった。


 はぁ――……。


 待つのも面倒だし、このまま出て行っても良いけど。似合う品と言われて気になるのもまた事実。


 その品を見て購入するか否かの判断して店を出よう。



「きゃはっ!! お客様に私だけの会員証を渡しますねっ!!」


「やったぁ!! 今度からも贔屓にさせて貰うよ!!」


「またの御来店をお待ちしておりま――す!!」



 何とも言えない空気の中、確実に浮いている存在だと自覚しつつも自分のお人好し加減に呆れながら手持ち無沙汰を誤魔化す為。


 彼女が帰って来るその時まで適当な商品を手に取っては戻して、無駄な時間を淡々と過ごしていた。




お疲れ様でした。


早速御使いに出掛けさせたいのは山々なのですが、彼等も少しは羽を伸ばす必要がありますので今暫く彼等の休暇を御楽しみ下さい。



皆様は靴を選ぶ時、どんな基準で選んでいますか??


私は見た目で選んでいるのですが……。購入する靴は全て実寸よりも微かに大きい靴を選んでいます。先日購入した靴もその基準で選びました。



では、何故微かに大きなサイズを選ぶのか。その答えは簡単です。


私の足はカッパも思わず


「同士……??」 と。


二度見する程の超偏平足だからです。



物心付いた時から泳いでいた所為か、水に適した進化を遂げてしまい。自分でもびっくりする程に真っ平らなのですよ。


縦は合っても横幅が合わないので微かに大きな靴を選んでいる次第であります。



そして、いいねを押して頂いて有難う御座いました!!


もう少し分かり易い位置に置いて欲しいのが本音ですよね。



それでは皆様、お休みなさいませ。

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