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第三十五話 寡黙な随伴者さん

お待たせしました!! 本日の投稿になります!!


それでは、どうぞ!!




 蜘蛛の堂々たる構えの圧は素晴らしく俺の声を、そして行動に至る思考を強奪。


 まるで金縛りにあったかの様な感覚に戸惑っていると……。






「でっかっ!!」



「きっっっっっっっっしょっ!!!!」





 後方のユウとマイの声を受け漸く我に返った。




「おいおい。流石に初対面の人に気持ち悪いは無いだろ」




 ユウが辟易した声でマイを諭す。



 それには俺も同感だよ。


 初対面でいきなりそんな言葉を掛けられたら良い気分何かしないし……。


 寧ろ。


 失礼な奴だと決めつけてしまうであろう。



「だってきしょいじゃん!! 何よ、アレ!! 馬鹿デカイ蜘蛛じゃん!!」


「いや、そうだけどさ……。言葉を選べよ、言葉を」




 口の悪いアイツはさて置き。


 取り戻した正常な思考で今も威嚇を続ける蜘蛛さんの御体を拝見させて頂くと。




「あれ……。怪我してる……」




 左の前足から赤い一筋の線が滴り落ちていた。


 剣の斬撃でも受けたのか??


 横一線に受けた傷口から湧き出る赤が痛々しさを物語っている。




 痛そうだな……。


 威嚇するだけで襲って来る気配は無いし……。



「ん?? どうしたのよ」



 ウマ子に括り付けてある荷物の中から竹筒の水筒を取り出すと、マイが此方の様子を見付けて話す。




「怪我してるんだ。ちょっと治療をね」



 竹筒の水筒と、清潔な布。


 うん。


 これでいい。



「蜘蛛さん、俺達に敵意は無い」



 腰の短剣を外し、分かり易く地面に捨て置き。



「今から怪我の治療を行うから。いいね??」



 相手を警戒させない歩みの速度で接近。


 すると。




「か、噛まれるわよ!? 毒!! そう、毒持ってるわよ!! そいつ!!」


「あのな?? 襲うつもりならとっくに襲われてるだろ」



 慄く声を放つ狂暴な龍へ呆れた声を放ち。



「ちょっと滲みるよ??」



 頑丈な節足の負傷箇所に静かに、そしてゆっくりと水を垂らしてあげた。



「っ!!」


「ごめん!!」



 傷に障ったのか。


 左の前足がピクっと素早く動く。



「怪我の放置は良くないからね。血を拭き取るよ??」



 ゆっくりと、徐々に下がった前足。


 痛々しい赤の筋を水で洗い落とし、丁寧に布で拭き取る。



 そして傷口に今一度水を垂らそうとすると。



「レイド、手伝います」


 カエデが此方に歩み寄り、淡い水色の魔法陣を左手に浮かべ。


 傷口の治療を開始してくれた。



「ありがとう。――――。おぉっ!! もう塞がった!!」



 切り裂かれていた甲殻が見る見るうちに塞がり。


 立派な黒き甲殻へと変化。



「……」



 蜘蛛さんの表情も何処か柔らかくなった様に映った。




「良かったね。俺達は今から北上するつもりなんだけど……。わっ!?」




 蜘蛛さんから強力な閃光が迸り、思わず腕で光を遮ってしまった。



 眩しっ!!


 何か気に食わなかったのかな??



「…………。あれ?? 蜘蛛さんは??」



 強力な閃光が止み、腕を元の位置へと戻すと。


 あの巨大な蜘蛛の姿は見当たらなかった。



 何処に行ったのだろう……。


 上下左右に首を動かすもその姿は確認出来ずにいた。



「レ、レイド。か、肩」



 ユウの声だ。



「肩?? 肩がどうした…………。えぇっ!?」



 彼女の視線を追い、右肩に視線を送ると再び仰天した。



 何と。




 あの巨大な大きさを誇っていた蜘蛛が手の平大に縮まり。


 俺の肩に留まっているではありませんか!!!!!!




「素晴らしいですね。体の大きさを変化させる魔法は高等技術です」



 カエデが興奮を隠しきれない声色でそう話す。



「そ、そうなの?? えっと……。俺達は此処から北上するつもりなんだけど。進んでもいいかな??」



 複眼で此方をじぃっと見つめる蜘蛛さんに問うと。



「こ、こら!!」



 腹部に備わったチクチクした毛を首元に摺り寄せて来た。


 痛擽ったいと呼ぶべきか……。


 形容し難い感情を湧かせる感覚に思わず狼狽えてしまう。



「あはは!! 気に入られたみたいだな!!」



「ユウ!! 笑うな!! 結構痛いんだぞ!?」




「蜘蛛さん。私の名前はカエデ=リノアルトと申します。此方、ミノタウロスのユウ=シモン。そして、後ろで警戒を続けているのはマイ=ルクスと申します」



 そこまで話すと俺に視線を送る。




「自分の名前はレイド=ヘンリクセンと申します。えっと、ユウの里がオークに襲撃され。蜘蛛の里の皆さんから連絡が途絶えてしまったので、その様子を窺いに参りました。余所者である我々ですが、足を踏み入れる許可を頂いても宜しいですか??」




 端的にですが、此度の件について問う。



 蜘蛛さんが俺に視線を送り、そしてカエデ達に体を向けグルリと一周。



 暫く体の動きが止まった後に……。




「で、ですから!! 擽ったいですって!!」




 ぷっくりと膨らんだお腹の毛を再び摺り寄せて来た。




「それは肯定と捉えても宜しいですか??」



 指で押し退け続ける俺の行動を無視してカエデが話す。



 もうちょっとこっちを労って下さいよ。


 結構痛いのですから。



「……」



 蜘蛛さんが器用に二本の前足を上下に動かし、肯定?? なのかな。


 兎に角。


 進んでも宜しいですよ、という反応を頂いた。



「はぁ、驚いた。てっきり襲われるかと思ったし」


「敵意剥き出しの化け物じゃないんだから」



 ユウに言葉を返しつつ短剣を拾い、腰のベルトに戻す。



「それじゃあ、北へ進みますね??」



 最終確認じゃあ無いけど。


 一応、ね。



 右肩に視線を送ると蜘蛛さんは此方に向けて数回上下に前足を振ってくれた。



「ありがとう。怪我が治るまで……。それか蜘蛛さん達の里まで一緒に行動しますか??」


「……」



 再び前足を動かす。



「了解です。じゃあ、皆。北上を続け、夜営地点を探そう」


「分かりました」


「了解――」




「蜘蛛は置いてけ!! そいつ、ぜってぇ襲って来るわよ!? それにきっしょいし!!」


「はいはいっと」



 一部を無視し、ウマ子の手綱を手に取って北上を開始した。




 だが、これが良く無かった様ですね。




 屈強な戦士も尻窄む雄叫びを上げた龍が強力な飛び蹴りを背に放ち。


 俺の体は面白い回り方をして、北上を開始してしまったのだから……。






   ◇







 深い森に訪れる真の闇。



 普段と変わらない夜なのに場所一つで夜の様子が変わって見えるのは何故だろうか??



 風で木々が揺れ動く音が不気味聞こえ、空を覆い尽くす木々の枝が閉塞感を与え。心に怯えという負の感情を生じさせていた。



 蜘蛛さんと行動を共に続け、早二日。


 ユウ達の里とは雰囲気が違う所為か、一向に慣れる気がしないよ。


 



「んっは――!! はぁっ!! 御馳走様でしたっ!!」



 御粗末様です。


 美味そうに食べるのは結構ですが、偶にはあなたも料理を作って下さい。




 満足気に腹をポンっと一つ叩き、だらしなく倒木にもたれかけるマイ。



「警戒を続けて来たけどさ。意外とすんなり移動出来ているよな」




 その隣で腰かけるユウが宙へと言葉を放つ。




「警戒は続けて下さい。もう間も無くしたら焚き木の明かりも消灯させます」



 キチンと正座をして美しい姿勢のままでカエデが話す。



「え――。暗いとジメジメするじゃん。只でさえ暗い雰囲気を与える奴がいるし??」




 マイがそう話すと俺の右肩へと視線を送った。




「おら。何んとか言えや、そこの蜘蛛」




 行動を共にして気付いたのだが……。


 蜘蛛さんは一切口を開く事は無かった。



 話せないのか、それとも話そうとしないのか。その判断が非常に難しいのです。



 余所者である俺達に必要な情報を与えたくないのかも知れないし。


 攻撃を加えて来ないだけで御の字かね。




「おい、言い過ぎだぞ。ごめんなさいね?? 蜘蛛さん。あの人はちょっと口調が荒い者で……」



「……」



 えっと……。



 寝てるのかな??



 大体の生物には瞼が備えられているので眠っているのは容易に理解出来るのですけど。


 蜘蛛の複眼には瞼が付いていないのでその塩梅が良く分からない。



 右肩の蜘蛛さんに視線を送り、じぃっと観察を続けていると。



「おぉっ!! 動いた!!」


『起きていますよ??』



 そう言わんばかりに右の前足をすっと上げてくれた。





 黒き甲殻に包まれた外殻、腹部に備わる細かい毛。



 全身真っ黒かと思いきや。



 複眼の後方の一部の甲殻だけは白に染まっていた。その一点だけが白く染まっているので逆に目立ちますね。





 平原ではあまり見ない蜘蛛だよなぁ……。





 街中で見かける蜘蛛と言えば、美しい模様を描いた巣の中心にどっしりと体を構え。黒と黄色が交互に入った蜘蛛だろ??




 んで。




 偶に家の中で会敵するあの超絶怒涛に足が速い蜘蛛。




 子供の頃に出会った時は……。




『すっげぇ!! 蜘蛛ってあんなに速く走れるんだぁ!!』




 と。



 孤児院の女先生達が大絶叫を上げる中。



 一人興味津々といった様子でいつまでも眺めていた。




 あの蜘蛛。一歩目が最高速だもの。


 そりゃあ飽きるまで観察しちゃうよ。


 只、臆病な性格なのか。俺が一生懸命追いかけたら箪笥の裏側に隠れちゃってさ。


 引っ張り出そうとしたら先生達に思いっきり後頭部を叩かれた記憶がある。



 何故叩かれたのだろうか?? 当時は理解出来なかったが……。大人になってからは当然理解出来る。


 あの形が怖かったのでしょう。


 でも……。カッコいいよね?? あの足の速い蜘蛛。






 場所が変われば生態系も変わり、それに適した形態に進化するのかな??



 俺がじっと見下ろすと、蜘蛛さんもじっと見上げてくれる。


 何だかお互いに観察し合ってるみたいだな。










「――――――――。皆さん、気配を殺して下さい」



 カエデが緊張した声色で話すと、焚火の明かりが突如として消失した。



『どうした?? カエデ』



 周囲の環境音も思わず首を傾げる声量でカエデに問う。




「敵の気配を察知しました。距離、凡そ五十メートル。そして、全方位から徐々に距離を縮めて来ます。数は…………。六十、といった所でしょうか」




「お、おいおい。嘘だろ?? 南で倒れていた奴等だけじゃないのか??」



 ユウが立ち上がり、周囲を警戒しながら話す。



「その残存戦力かも知れません」



「カエデ。もう見つかっちまったんだから明かり消さなくてもいいでしょ??」



 マイが南側へと体を向けて話す。



「その様ですね。私は北側、マイは南、ユウは東、そしてレイドは西の敵を処理して下さい」



「目立っちゃうけどいいの??」




 明かりを頼りに弓を手に取り、矢筒を左肩に掛けながら問う。





「はっ!! 誰に喧嘩を売ったのか……。その身を以て分からせてやらぁ!!」


「同感!! 掛かって来やがれ!! 豚野郎共!!!!」





「どうせあの二人が呆れる程に暴れますので……。明かりを消す程度では余り意味がありませんから」



 成程……。



「カエデ――。聞こえたわよ??」


「後でお仕置きだからなぁ――」



「私は素直な意見を述べた迄です」



 いつも通りの会話が肩の力を抜いてくれる。


 だけど、此処で気を抜き過ぎるのは了承出来ません。


 適度な緊張感が大切なのですよっと。




「蜘蛛さん。危ないからそこを動かないで下さいね??」



 左手に弓を構え、右肩を見下ろすと。



「…………」



『分かりました』



 そう言わんばかりに前足を動かしてくれる。



「ありがとう。ウマ子も野営地の中心から動くなよ!?」



 後方で待機する相棒にそう伝えると。



『了解だ』



 火の側でしっかりと立ち、俺の方へ一瞥を送ってくれた。



「皆さん。魔力の使用は必要最低限に控えて下さい。周囲に展開する敵に察知されてしまう虞がありますので」





「了解了解ぃ!! さっさっと掛かって来いやぁ!!」


「素手で十分っ!! 体ごと、大地に叩きつけてやる!!」




 あの二人だけがちょいと心配ですが……。



 戦闘の時は真面目ですので、大丈夫でしょう。




 今は自分の持ち場に集中しよう!!






 さぁ……。


 いつでも掛かって来い!!!!




 弦を強く引き、その時を待っていると……。




「「「グルル……」」」




 早速三体のオークが闇に紛れて出現した。


 黒く染まった醜い体、口からは粘度の高い液体を零し美しい大地を穢す。


 生気を感じさせない漆黒の六つの瞳が俺を捉えた。




 三体か!!




「食らえぇっ!!」



 有無を言わさず先頭の黒く醜い豚の脳天へ矢を穿つ。


 美しい軌道を描き、矢が眉間に着弾。



「グ、ウゥ……」



 耳障りな声を放ち、黒灰へと還る。



 よしっ!!


 いいぞ、この調子で……。



「おわっ!?」



 あぶねぇ!!


 正面の敵に捉われ過ぎていたのか。


 横からの強襲に一つ遅れて反応してしまった。




 周囲が見えていない証拠だ。


 もっと……。集中しろ!!



「「グアァアアアッ!!!!」」



 武骨な剣を掲げ、一切の防御を捨てた構えで此方に向かい来る。



「行くぞ!!!!」



 短剣を腰から抜剣。


 右手前の豚の攻撃を躱し、素早く背後へと通り抜け……。



「がら空きだ!!」



 無防備であった最後方の敵に突撃。


 喉元へと短剣を突き刺してやった。



 これで二つ!!



「「「…………」」」



 憤怒の息を漏らし、三体の豚共がゆっくりと此方に振り返る。



「さぁ、どうした!! 俺は此処だぞ!! 纏めて掛かって来い!!」



「「「ギィィィヤアアアアアアア!!!!!!」」」



 此方の挑発に激昂した三体が一気苛烈に襲い来る。



 三体同時は流石に厳しいか!?



 いいや!! 自分の力を信じるんだ!!!!



「ガァッ!!」



 天から降り注ぐ剣の一閃を半身で躱し。



「ふっ!!!!」




 続け様に地面と平行に放たれた手斧の攻撃を短剣の剣身で往なし。


 後方から突撃して来る豚の腹へと誘ってやった。



「ガッ!?」


「超接近戦に対し、攻撃範囲の広い攻撃は御法度だぞ!!!!」



 黒く醜い目が己の腹に突き刺さった凶器を捉え、驚愕の表情を浮かべた後。黒灰へと変わり。



「グゥッ!!」



 手斧を引き抜いた個体が俺の忠告通りに真上からの攻撃を放った。



 そう来ると思ったぞ!!



「後ろにも気を配るべきだ!!」



 その場から瞬き一つの間に横へと移動。



「「っ!?!?」」



 俺の真後ろから剣を振り下ろそうとした個体と己の得物同士が行先を失い衝突。甲高い音が響き、激しい火花が闇の中に飛び散る。



 そして、これを逃す手は無い!!!!



「ふっ!!」



 手斧を持つ個体の喉元に切っ先を穿ち。



「これで……。終了だ!!!!」



 素早く切っ先を引き抜き。相手が体勢を整える前に醜い豚を黒灰へと還してやった。




 よし!!


 五体、撃破!!



 自分でも驚く程に周囲の状況が見えていた事、そして的確に対処出来た事に驚きを隠せなかった。




 もしかして、俺って……。


 強くなってる??




 オークとの戦闘、そしてハーピーの里での戦闘を経験して一皮剥けたのかも!?




「皆!! そっちの状況は……」




 野営地へと振り返ると……。




「邪魔だ、クソ雑魚がぁあああ!!」



 狂暴な龍がオークの顔面に正々堂々と拳を捻じ込むと。



「っ!?」



 顔が有り得ない角度に曲がって後方へと吹き飛び。



「貧弱貧弱ぅううううう!!」



 ユウに襲い掛かった二体のオークは彼女の剛腕に捕まり。



「吹き飛びやがれ!!!!」



 喉元を握り潰され二体同時に黒灰へと還った。



 そして、この隊の司令官の御様子は……。



「ふ、む。単調な攻撃ですね」



 その場から一切動かず。襲い掛かる複数のオークの体を鋭い氷柱で切り裂き、貫き、圧巻の様で勝利を宣言していた。



 少しでも強くなったと考えた己を戒めてやりたい。



 この人達と俺には埋めようが無い差がありますので……。



「はっ。暴れ足りないわねぇ――」


「だな。弱過ぎて欠伸が出るわ」



 マイとユウがパチンっと手を合わせ。



「周囲には……。敵影は確認出来ません。皆さん、状況終了です」



 カエデの言葉を受け、やっと肩の力が抜けた。



「皆、怪我は??」



 大丈夫だとは思いますけど、一応ね??



「かすり傷一つ負っちゃいないわよ」


「こっちも大丈夫」


「そっか。カエデは??」



「無傷です。皆さんの的確な攻撃の御蔭で状況は打破出来ました。しかし、油断は出来ません。今晩は此処で夜営を続けますが歩哨を立てて休みましょう」



 その方が安心して眠れる、か。



「了解。歩哨に立つのは何名??」


「二名にしましょう。マイとユウ、レイドと私。交代で歩哨に立ちます」



「へいへいっと。安心して眠れるのは暫くお預けってね」



 お前さんはいつもグーすか昼寝しているじゃあありませんか。



「では早速行動に移ります。歩哨は四時間交代。マイとユウから歩哨に立って下さい」



「あいよ。ユウは北側で宜しく――」


「ん――」




 随分と間の抜けた声を放ち、ユウは北へ。マイは南側へと移動を開始した。




「ふぅ――……。いきなりの戦闘だったけど。上手く動けて良かったよ」



 倒木へと腰掛け、肩をグルリと回して話す。


 負傷もしなかったし……。


 うん。


 やっぱり成長しているよ、な??



「素晴らしい格闘戦でしたね。相手の攻撃を見切り、互いの得物同士を衝突させ……。周囲の状況が良く見えている証拠です」


「え?? こっちの状況を見てたの??」



「勿論です。常に周囲の状況を把握するのが私の務めですので」



 はは、参りました。


 自分だけじゃなくて周囲の状況まで気を回すなんて……。


 隊長を務めるに相応しい才能だよ。



 とてもじゃあないけど、俺にそんな余裕は無いからね。



「蜘蛛さん。怪我は大丈夫??」



 戦闘中、右肩から一切動かなかったけど。


 激しい運動によって傷に障らかなかったかどうか心配だ。


 そう考え、右肩に視線を送る。



『大丈夫ですよ』



 両前足を素早く上に掲げてくれた。



「そっか。無事で何より」



「その蜘蛛さん……。ひょっとすると、オークを全滅させた方かも知れませんね」



 焚火の前で膝を抱えて座るカエデが右肩に視線を送って話す。




「大きさを自在に変えるのは高等技術って言っていたから……。可能なのかも知れないけど。どうなの?? 蜘蛛さんがあの大量のオークを撃退したのかい??」




 右肩を見下ろすと。



「……」



 あらら。


 動かなくなっちゃった。



 肯定とも、否定とも取れる姿勢だ。



「どの道、蜘蛛の里に到着すれば分かる事さ。俺はちょっと……。よいしょ。横にならせて貰うよ」



 地面に毛布を敷き、倒木を枕代わりにして休む。



「……」


「っと。蜘蛛さんも休むのかい??」



 右肩から胸元へ。


 ぴょんっと飛び移った蜘蛛さんに問う。



「……」



 右足をしゅっと上げると。八つの足を綺麗に折り畳んで動かなくなってしまった。



「あはは。ご自由にど――ぞ。カエデも休める時に休んでおきなよ?? 体がもたないからな」



「そうですけど……。南側の警備に些か不安が残りますので……」



 南??


 あぁ、マイが向かった方向か……。



「ちょっと様子を窺って来ます」


「んっ。宜しく……」



 ふわぁっと大きな欠伸を放ち。


 体をこれでもかと弛緩させた。



 直ぐにやって来た睡魔さんに身を委ねようとすると……。




『んぎびぃぃぃいいい!!!!』




 女性らしからぬ叫び声が陽性な感情を呼び起こしてしまう。




 アイツ。


 うたた寝してたな??


 そして、カエデに襲われて……。



 蜘蛛さんも今の叫び声で起きたのか。



「……」



 口を抑える様に両前足を動かしていた。


 笑い声を堪えたのかな??



 器用に動かすねぇ……。




 もしも。


 蜘蛛さんが言葉を放ってくれるようになったのなら、是非その方法を伺いたいものさ。


 大きく鼻息を漏らし、再び体を弛緩させ。束の間の休息を味わう事にした。


お疲れ様でした!!


さて、もう間も無く始まる大型連休ですが。筆者は光る箱の前で文字を打ち続ける予定です。


楽しみにしている御方は御安心してお待ち下さいね。



新しい作品のプロットも同時進行で制作していこうかなと考えている次第であります。



そして!! ブックマークをして頂きありがとうございました!!


連休中の制作に大変嬉しい励みになりました!!


それでは、明日の投稿も引き続き御楽しみしてお待ち下さいませ!!

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