第百七十五話 トラウマは食べて治しましょう その二
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
それでは御覧下さい。
森の中は自分が想像しているよりも早く夜が訪れる。
ルーとリューヴが薪を抱えて帰って来る頃には仄暗い暗闇が周囲を包み、その暗さは夜目が効かない生き物には足元さえ見辛くなるであろう。
太陽が西へ沈むと完全なる闇が私達の手を掴もうと森から訪れて来たのだが。
私達の手を仲良く取ろうとした暗闇は美しき獣達が放つ明るさにググっと顔を仰け反らせ。
同じ仲間が居る森の奥の方へ肩をガックリと落として寂しそうな後ろ姿を見せつつ去って行った。
漆黒の闇さえも嫌がる明るさが戻って来た事に対してちょいと安堵するのだが。
これはあくまでも仮初の陽気ね。
真の明るさを取り戻しに私達は行動を続けているのだから。
「マイちゃん!! ここに薪、置くよ!!」
「あいよ――!!」
大量の薪が来るまでの間。
ユウが土中の鉄を集めて少し歪な正方形の鉄板を作り、私は周囲の大きめの石をかき集めて鉄板を乗せる為の簡易調理台を作った。
石で囲まれた空間に薪を組めばあら不思議。
あっと言う間にこの恐ろしい森の中に、こわぁい店員さんが蔓延る焼肉店が新装開店となりましたとさ。
「行くわよ?? ふんぬっ!!」
龍の姿に変わり口から炎を薪に吹きかけてやる。
着火と同時にオレンジ色の明かりが周囲を照らし、暗闇の中に安らぎの空間が現れた。
「おぉ――!! 流石だねぇ」
「ふふん。火加減はお手の物よ」
温かい火を背に受け、ちょいと鼻を高くして腰に手を当てて言ってやる。
『マイ――』
『ほいほいっと!!』
調理前のアイツの声色でどれだけの火力が欲しいの理解出来てしまう様になってしまったし……。
私も随分と火の扱いが上手くなったものさ。
「ほら、鉄板乗せるから退いて」
「あ、はいはい」
大きめの石からユウの肩へと移動する。
んほぉ――……。
早くも熱せられた鉄板が白い湯気を出しているじゃあないか。
「マイ、こっちにも火を点けてくれ」
「そっちは何??」
リューヴの方へふよふよと飛んで行く。
「かがり火に丁度良いと思ってな。暗いまま食事をしても美味くはないだろう」
ほぅ!! 考えたわね!!
そう、食事には雰囲気も大切だ。
鉄板で明かりがちょいと遮られ漆黒の闇の中で肉を食っても美味くは感じない。
これには玄人である私も大賛成よ。
「行くわよ?? ふんがっ!!!!」
炎の息を吐き、ボケナス程では無いがまぁまぁ上手に組んだ枯れ木に着火させてやる。
「おっ。丁度良い明かりじゃないか」
ユウが明るい笑みを以て此方に振り返る。
「リューヴの案よ」
「へぇ。リューヴも大分板について来たじゃん」
「主のおかげだ。夜になると、食事の火とかがり火を二つ点ける時があるからな。それを真似ただけだ」
鉄板の側に座り、そう話す。
「レイド、大丈夫かなぁ……」
鉄板を挟み、対面のルーが膝を抱え心細い顔で話した。
「大丈夫よ。母さんとベッシムが付いているし、それにしぶとさには定評がある奴だからさ」
だが、私も不安な面持ちの彼女と同じ心情なのが本音だ。
可能であればアイツの側で励ましの声を伝えてあげたい。痛みに負けるなと叫んであげたい。
しかし、それは私の役目では無い。
私に与えられた役目は彼女達を無事に父さんの下へ案内する事なのだから。
各々が与えられた役目を果たし終えたのなら、アイツは元気に目を覚ます。
今はそれを信じて行動するしかないのよ。
「それを聞いてちょっと安心したかな?? 今探しているマイちゃんのお父さんってどんな感じの人??」
「どんな人……。釣り好きでだらしなくて、良く母さんに叱られているわね」
家族団欒の姿を思い出しながら、宙を睨んでやる。
『フィロ!! 俺は釣りに行って来る!!』
『あなた。今日は龍族の集まりがあると先日伝えたではありませんか』
『そんな事は知らんっ!! 今日は海の様子が忙しないのだ。つまりっ!! 爆釣の予感が……』
『はいっ、これで行けませんねっ』
『ぎぃやああああ――――!!!! お、俺の愛用の釣り竿がぁぁああ!!』
ニッコニコの笑みを浮かべる母さんに釣り竿折られて、それでも行こうとするとしこたまぶん殴られて。
ひでぇ目に遭っている姿しか思い出せなかった。
結婚して夫と共に過ごす妻はあぁして傍若無人の限りを尽くすのだと。
一時期はとんでもねぇ間違った考えを思っていたからなぁ……。
『ぅうっ……。この釣り竿を作るのにどれだけの時間をかけたと思うんだ……』
大粒の涙を浮かべて、ボロボロの姿に変わり果てた愛用の釣り竿をぎゅっと抱きしめていた父さんが若干不憫に思えてならなかった。
「フィロは怒ると怖いからね」
調理を終えたのだろうか。
「もう解体は終わったの??」
「えぇ。後はカエデ達が切り分けてくれるのを待つだけよ??」
エルザードが血と脂で汚れた両手を手拭いで拭き取り、鉄板の熱を確認して話した。
ほほう。
後はお肉ちゃんの登場を待つのみって訳ね!!
「そっか。ちょっと!! 私達お腹空いているから早くしてね!!」
此方から離れて作業を続けているカエデと蜘蛛の背に向かって叫んでやった。
――――。
卑しいまな板の声が響くと、心の中に小さな憤りが生まれてしまう。
「五月蠅いですわねぇ……」
調理の手を止めず、一切の躊躇無しに心に浮かぶ声を放ってやった。
「もう慣れた。アオイ、そっちのお肉取って」
「はい、どうぞ」
カエデの前に熊の肉の塊を置いてやる。
エルザードさんが態々制作してくれた鉄板の上で肉を捌いているが……。
荷物の中に入っていたのは一本のナイフのみ。私は自前のクナイを使用して肉を一口大に切っていた。
「私の得物はこういう使い方では無いのですがねぇ……」
「臨機応変。それに……、不謹慎かも知れないけど。ちょっと楽しい。ほら、いつもはレイドが御飯を用意してくれるけど。今は皆でそれぞれの役割を務めて食事の準備をしているから」
そう言いながら彼女は小さな手を器用に動かしてナイフを扱い、皆が食べ易い様。一口大に肉を捌いて行く。
刃物を扱う技量は誰から教わったのでしょうか??
まぁ、賢い彼女の事ですから。レイド様の御手元を見て覚えたのでしょう。
読書に勤しみながら時折視線を外して、私の夫であるレイド様の料理する姿を眺めていましたからねぇ。
そして、一度だけふっと柔らかく目元を曲げると再び読書に耽る。
注意して見ないと分からない程度に曲げていましたが、妻である私の目は誤魔化せませんわよ??
レイド様に近付く泥棒猫は例え友人であっても見過ごす訳にはいかないのですわ!!!!
しかし……。
レイド様は私が口を酸っぱくして言っても聞いて下さらないのです……。
『レイド様!! い、今カエデが泥棒猫の瞳を浮かべていたのですわ!!』
『あはは。アオイの気の所為だよ』
私のささやかな文句を受けると、いつもの優しい瞳でアオイの瞳を見つめるのです。
あぁ……。レイド様。
アオイが必ずやまな板の父親を連れ戻してみせますからね?? それまでどうかお体ご自愛下さいませ。
「レイド様が治りましたのなら、私達のお食事でおもてなしをしましょう」
「うん……。それはもっと楽しそう」
顔を上げて私の顔を捉えると、ふっと柔らかい笑顔になる。
普段余り笑わないカエデですが。ここまで笑顔が似合うとは……。
油断は禁物ですわね。レイド様には余り見せられないお顔ですわ!!
「ま――だ――??」
「お腹空いた――!!」
餌を強請る雛鳥の声が耳障りですわね!!
「このクナイを当てて見せましょうか」
肉の隙間から引き抜いたクナイを手元で回し、鋭い切っ先を背後へと向けてやる。
「避けられるか、弾かれるのが目に見える」
「そうですよねぇ……。あぁ見えても手練れですから。よし!! こっちは終わりましたわ!!」
やっと終わりましたわ!!
いつもならレイド様が御褒美としてアオイの頭をヨシヨシしてくれるのですが……。今は我慢しましょう。
魔法陣から水を呼び出して手に付着した血と脂を洗い流す。
「こっちも終わった。アオイ、水頂戴」
「どうぞ」
「ふぅ。後は仕上げですね」
「仕上げ??」
水で綺麗に血を洗い流したカエデが両手を宙に掲げた。
「味が無いのは寂しいですから。…………。んっ!!!!」
彼女が魔力を籠めると、淡い光を放つ大きな魔法陣が宙へと出現。
「何をしていますの??」
そのまま暫く魔力を放出している彼女に問うた。
「塩を集めているのですよ。海が比較的近くで助かりました。海風を捕らえ、大気中に含まれる塩分を集めて結晶にするのです」
魔力の放出を止めると……。
彼女の小さな両手にすっぽりと収まる量の塩の小さな結晶体が握られており。
「そんな事も出来るのですか??」
「伊達に海竜の名を継いではいませんよ?? さ、食事にしましょう」
馬鹿げた量の肉の塊に均一になる様に振りかけ、仕上げが整った皿を両手に持ち移動を開始した。
魔力放出が難しいこの場所で今の魔力……。齢十六の子が到達出来る領域ではありませんわよ……。
難しい事を簡単にやってのける彼女に対して、真に敬服致しますわ
「ふぅ……。この世界は正に天井知らずですわねぇ」
小さな溜息を吐き、私も小さな大魔法使いに倣って移動を開始した。
――――。
「お待たせしました。熊の肉、カエデ特製塩味です」
カエデが肉の塊を乗せた皿を此方に運んで来ると。
「「「おぉ――!!!!」」」
それを見付けた、何人かが歓喜の声を上げ。
「いぃぃやぁぁほぉぉ――――うっ!!!!」
私は両手に拳をぎゅっと握り締めて木々の合間から覗く満点の星空へと突き出してやった。
ま、まさか。この森で焼肉を食べられるとは思いもしなかったから喜びが炸裂しちゃったわ。
「箸と取り皿は木を削り作りました。皆さんお使い下さい」
し、しかも食事道具一式も用意してくれるとは!!!!
鉄板を取り囲む私達に対し、カエデが掴み易い箸と取り皿を丁寧に渡してくれる。
至れり尽くせりの待遇に嬉し涙がホロホロと流れてしまいますよ……。
「カエデちゃんありがとう!!」
「気が利くな!!」
「流石、私の生徒ね」
本当に気が利くと思う。
肉も綺麗に捌け、剰え何も言わなくても各自の食器を用意する。
良妻賢母たる姿に舌を巻く。
それに比べ、私は火加減のみ……。
聡明な海竜の名に恥じない振る舞いにちょっと嫉妬しちゃうな。
いやいや!! 火加減も立派な調理じゃない!!
私は頑張ってそう思う様にした。
「では、調理を開始します」
カエデが菜箸で新鮮な熊肉を鉄板の上にそっと乗せると。
「「ほぉぉおお……」」
ほぼ同時に私とユウが声を合わせ感嘆の声を上げた。
ジュゥジュゥと軽快な音を立てて肉が食欲をグゥングゥン促進させる色へと焼き上がって行く。
鼻腔を擽る焼け焦げる馨しい香り、そしてオレンジ色に照らされた周囲の薄暗い雰囲気がこの音と香りに良く似合っていた。
こ、これは否応なしに気が逸るわねっ。
「も、もういいかしら??」
鼻頭がお肉ちゃんにくっつく位に前のめりになって話す。
「まだ駄目よ――。置いたばかりじゃない」
エルザードの厳しい指摘が耳に痛い。
早くぅ、早く焼けなさいよ。
「…………先生。味見をお願いします」
カエデが最初に焼き上がった肉をエルザードの取り皿へ運ぶ。
ぐ、ぐぬぬぅ!!
ま、まぁ年功序列はやむを得ないけどぉ……。横から奪い取って御口に迎えてあげたいぃ!!
「有難うね。では、頂きます。――――。はふっ、うんっ!! 美味しい!! ちょっと癖はあるけどしっかりと塩味が効いて……」
目を瞑り、満足気に肉の味を噛み締めている。
くそう。
美味そうに食いやがって。
「有難う御座います。天然の塩だから美味しいのでしょうかね??」
「カエデの味付けがいいのよ。良い奥さんになるわよぉ??」
「揶揄わないで下さい」
ほんのりと頬を朱に染め、鉄板に視線を移した。
「では、皆さん。好きなだけ焼いて好きなだけ食べて下さい」
待っていましたその台詞!!
「ここだぁっ!!!!」
私の心眼が上手に焼き上がった瞬間の肉を捉え。箸で素早く鉄板の上から掬い上げて取り皿に移す。
「はわぁ……。肉だぁ……」
目の前にこんがりと焼き上がった肉がある。
只それだけでも心の渇きが癒え、頭の中に満開の花がぱぁっと咲き誇ってしまった。
いかん。
見ていても腹が膨れる訳ではない。
頭を一つ横へ振り、気を落ち着けて肉を豪快に頬張った。
「頂きます!! ふぁむっ!!」
「どうだ??」
隣のユウが私の表情を伺う。
「ひ、ひあわふぇ……」
久し振りに食す肉は格別な物であった。
野性味溢れる香りがふわぁっと鼻腔を抜け、獲れ立て新鮮な肉汁が舌と口を喜ばす。
噛めば噛むほど肉の感触が心を潤して、喉を通り胃袋へと収まれば体が狂喜乱舞した。
あぁ、生きていて良かったぁ……。
「そのだらけた顔を見れば分かるよ。よっしゃ!! あたしも食べるかな!!」
「「「いただきま――す!!」」」
大きな鉄板を囲み、素晴らしい食事が始まった。
「あら、意外と美味しいですわね」
「リュー!! それ私のお肉!!!!」
「取るのが遅い」
「くは――!! んまい!!」
「ちょっと癖がありますが……。美味しいですね」
各々が口へ肉を運び、喜々とした表情を浮かべている。
私もその表情につられて馬鹿みたいに笑顔になっているのだろうさ。
「お代わりは山程ありますので、遠慮なさらず召し上がって下さい」
「勿論!! 全部食らい尽くしてやるわ!!」
カエデの声を受けた刹那、私の中の何かが弾けた。
そう。
食欲が湧き上がり、留まる事を知らないのだ。
「ガッフォッ!! バッフバフッ!! ンンン゛ッ!!」
次々に焼き上がる肉を口に入れ、咀嚼し、飲み込む。
あぁ……。私は幸せだ。
肉が私の疲労を拭い去り、疲弊した筋肉を修復する。さっきまでの私は新しい私へと生まれ変わりより強力に。
そして、より美しく成長するのだっ!!
駄目ぇ……。これ、無限に食べれちゃう。
「マイ。湖ふぁめ、どれふらいかかりほう??」
ユウが肉を頬張りながら話す。
「そうねぇ。明日のふぁさ、出発すればふぃふぃまふぇにはとうふぁく出来るわよ」
美味そうに食う親友の顔に倣って私も肉を口に入れて話してあげた。
「あんた達。行儀が悪いわよ」
「本当。卑しいですわ」
五月蠅い蜘蛛め。黙って私達の食事の世話でもしてろや。
「お昼前かぁ。そこまで行くのに、注意する事ある??」
ルーが焼き上がる肉の煙越しに尋ねて来た。
「あ、そうだ。一つだけ注意して欲しい事があるわ。皆食べながら聞いて」
肉をしっかりと飲み込み、ちょいと真面な口調で口を開く。
「湖の近くの木の幹に爪痕があったらそこに近付かないで」
「爪痕??」
咀嚼を続けるリューヴが話す。
口の端っこに肉の欠片がついているわよ??
「この森でも厄介な生物の縄張りなのよ、そこは」
「具体的にどんな生物なのですか?? 焼き上がりましたよ」
私の取り皿に焼きたてホヤホヤの肉を乗せてカエデが質問をする。
「ありがとう!! そうねぇ。簡単に言えば、デカい芋虫かしらね??」
「「「芋虫??」」」
何人かが声を合わせる。
「勿論、只の芋虫じゃないわ。さっきの熊より大きな体。力の森でも物理攻撃の効果は薄いし、当然魔法は効かない。そして……」
「そして……??」
ルーがごくりと生唾を飲み込む。
私は皆に注意して貰いたい為、敢えて一呼吸置いてから重々しく口を開いた。
「体の先端の口から這い出る触手が厄介よ。捉えた獲物を口まで引き寄せ、ずっちゅずっちゅと飲み込むの。正直相手にしたく無いわね」
「うぇえ。気持ち悪そう――」
「湖の近くだろ?? それなら無視して迂回するか。虫なだけに……」
ユウが満更でも無さそうな顔をして惚けやがったので、敢えて虫……。
オホン!!
盛大に無視してやった。
「そうですね……。距離と時間を考慮して、可能であれば直進、戦闘を回避したければ迂回。状況に合わせて決めましょう」
「カエデちゃんに賛成――。ニュルニュルは苦手だよ――」
「そうしましょうか。カエデ、焼いてばかりじゃない。ちゃんと食べなきゃ駄目よ??」
エルザードが立ち上がり、カエデの持つ菜箸を受け取る。
「先生のお手を煩わせる訳には……」
「偶には甘えなさい」
ポンッと頭を叩く。
「分かりました」
「カエデもエルザードの前じゃ敵わないな」
ユウが軽快な声を出す。
「ふふ。いい子ね。ほら、じゃんじゃん焼くから、ガンガン食べなさい!!」
「言わずもがな!! 無限に食ってやるよ!!」
たくさんの肉を鉄板の上に置くと大量の煙が空へと昇り、夜空へ吸い込まれて行く。
私達は肉を有難く享受し改めて食事の大切さを噛み締めていた。
「マイ、流石にそれは頬張り過ぎでは無いか??」
「これふらいふぇ!! ふぃふぃの!!」
「何を言っているか分からん」
「これ位で、いいの。だぞ」
私の通訳担当者であるユウが言葉を訳してリューヴへ伝えた。
「あはは!! マイちゃんカッコ悪い――!!」
「うるせぇ!! テメェの肉も食ってやる!!」
「あ――!! 私が焼いてたお肉――!!」
漆黒の夜空を通過する鳥も驚く程明るい声が煙と共に天へ昇って行く。
仲間と共にする食事は改めて格別であると思い知らされた瞬間であった。
ボケナス……。
あんたもここに居るべき人物なんだからね??
もう少しの我慢だから、それまで絶対逝くんじゃないわよ……。
夜空の星にこの味と雰囲気をアイツへ届けて貰う為。焼き上がった肉を天へと掲げ、そして己の口に含む。
「んひゃりぃっ……」
あっ、駄目。
やっぱ届けなくていいわ。
だって……。滅茶苦茶美味しいもん!!
あの熊がこんなに美味しいなんて……。全く知らなかったわ。
時間が許すのであればまた狩ろうかしらね。
「真に気色が悪い顔ですわ……」
鬱陶しい蜘蛛の言葉も今の私の耳には届かず、続々と焼き上がって行く肉を無我夢中で食らい続けていた。
最後まで御覧頂き有難うございました。
次の御話なのですが、狂暴龍の弱気な心の描写が出て来る場面がありまして。その場面の編集作業に四苦八苦している最中であります。
彼女の性格上、こんな事言うのかな。将又思うのかな、と。
意外と苦戦している次第であります。
本日も冷える夜ですので体調管理に気を付けて下さいね。
それでは皆様、お休みなさいませ。




