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第百六十五話 到着!! 問題児集団!! その二

お疲れ様です。


本日の後半部分の投稿になります。


それでは御覧下さい。




 耐え難い激痛から逃れる為、この人に体の全権を委ねようとしたその刹那。


 最初の頃は頼んでもいないのに何度も無理矢理聞かされて飽き飽きしていたが、それが逆に今では。一日に最低でも一回耳に入れないと何だか落ち着かない怒号が己の脳内と広い大地に響き渡った。










「ひと――っつぅ! 軟弱野郎の卑猥な生き血を啜りぃっ!!」


「キャァッ!!」



 こ、この無駄にデカイ声は……。



「ふた――っつ!! ウネウネと淫猥な非行三昧っ!!」


「うわぁっ!!」

「ギャアッ!!」




「み――っつ!!! きったねぇ掃き溜めの巣窟を……」


「嘘でしょ!?」

「そ、そんな!! 速過ぎ……。ぐぇっ!!」



 ア、アイツめ。


 ラミアさん達を不必要に攻撃してはいけないとカエデに注意されなかったのか??




「よ――っつ!!!! ピッカピカに掃除してみせよう!!」


「「「「キャァァアアアアアア――――ッ!!!!」」」」



「誰よアンタは!!」



 取り囲んでいたラミアさん達を綺麗に一掃した朱へ、俺の体に絡みついているラミアさんが慌てふためきながら問うた。






「この赤を見たら極悪非道の限りを働いた悪鬼羅刹もケツ捲って逃げ出す!! そう!! 龍族の超悪党ぉ。マイ=ルクス様の御通りだぁぁいっ!!!!」






 頭上に燦々と光り輝く太陽から降り注ぐ陽光を煌びやかに反射させる綺麗な朱の髪。


 強敵と今から会敵するというのに一切億する様子も見せない不適な笑み。


 最高な機会での登場に思わず見惚れてしまいそうになるのだが……。もう少しマシな台詞を放って登場しなさいよと。



 背後に築き上げた死屍累々の前で堂々と自己紹介を言い放ったアイツに思わず突っ込んでしまいそうであった。




「もう、折角いい所だったのに。胸が可哀想な女に邪魔されて台無しじゃない」



 華麗に啖呵を切ったマイへ向かってミルフレアさんが呆れた口調で話す。



「誰が可哀想だおらぁ!! テメェの尻尾食いちぎって鼠の餌にすんぞ!!」



 あ、あはは……。


 もう間違いなく意識は通常に戻りましたね。


 アイツの罵声が頭の中ではっきりと乱反射しますから。



「鼠の餌ねぇ。私、鼠が大好きだからそれはそれで面白そうだけど……。貴女には不可能よね」


「やってみなきゃ分からんだろう!? やい!! ボケナス!!」



 はい、何でしょうか??



 今もグイグイと締め上げられて声が出せませんので、唯一動かせる視線だけを胸が可哀想な女性へと向けた。



「女二人に纏わり付かれてニヤニヤしてんじゃないわよ!!」



 一度あの人の頭をカチ割って中身を見てみたい。



「こ、これが……。い、良い状況に見えるのか??」



 体中の体力を振り絞り、高揚感全開の表情を浮かべているマイへ言ってやった。



「よぉし!! 喋れるのなら結構、そのまま意識を繋ぎ止めておけ!! 軟弱野郎めがっ!!」



 発破を掛けるのならもう少し言葉を選びなさいよね。



「これだけ痛めつけたってのにまだ意識があるのか。見上げた根性ねぇ」



 アイツが現れなければもうとっくに意識を失っています。


 何度も汚い言葉を浴びせられ、馬鹿にされ、皆に迷惑を掛けているのにも関わらず。


 本当に、頼りになる奴だよ。



「邪魔者を片付けたらもう一度、最初から調教し直さなきゃ」



 え??


 ま、またあの攻撃を受けろと言うのですか??



「ミルフレア様!! 私も一緒に戦います!!」


「大丈夫よ。貴女はあそこで倒れている者達を此処から遠ざけ。そして、里の外へ出て行った者達を呼び戻して怪我をした者達の治療に専念しなさい」


「し、しかしっ」


「気持ちだけ受け取るわ。貴女がたった一人増えた所で、彼女達との戦闘には何ら影響を及ぼさないから」



 彼女達??


 ミルフレアさんの言葉を受け、マイの後方へと視線を送ると。




「レイド様ぁ!!」


「主!!」


「レイド!! 大丈夫か!?」



 遅れてやって来たアオイ達が此方を心配そうな瞳で見上げていた。



 申し訳無い。


 結局、皆の足を引っ張っちまったな。



「ろ、六人もの強い力が……」


「これで分かったでしょ??」


「で、では早速行動を開始します!! 私達が帰って来るまで御無事で居て下さい!!」



 一体のラミアさんが尻尾の拘束を解くと。



「うっわぁ……。酷く腫れてる……」



 マイ達の背後で気持ち良く眠っている者達を家屋の中へと運び終え。獲物を追って地面の上を苛烈に這う蛇の蛇行を続けて里の外へと向かって行ってしまった。



「ようこそ、お揃いで。他の者達は……。驚いた。全員仲良く寝てるわね」



 ミルフレアさんが遠くへ視線を移して話す。



「この大陸住む大魔以外の魔物には負けないと思っていたけど……。貴女達、一体何者??」



「通りすがりの、食事通よ!!!!」



 その通り名はどうかと思う。


 食事通というよりも、暴飲暴食の権化の方が誂えた通り名ですね。



「冗談はそこまでです。ミルフレアさん、私達はイスハさん並びにエルザードさんから遣わされて此方へ伺いました」



 カエデが一歩前に進み話す。


 余程の事が無い限り、師匠の名前を出すなと言われているが……。


 今がその時なのだろう。



「知っているわよ。彼から嗅ぎ慣れた花の香りと、見慣れた技で察したわ」



 俺の体を引き寄せ、傷ついた肩口に顔を近付けてスンスンと匂いを嗅ぐ。



「き、貴様!!」


「リューヴ」



 カエデが前へ出ようとする荒ぶる彼女を手で制した。



「続けます。イスハさん達はミルフレアさんがどうしてこの大陸に来たのか。それを知りたがっています」



「彼にも言ったけど。平和に過ごして子孫を後世に残す為よ?? 向こうの大陸じゃあ男はいないし。私が女王の座を引き継いで、その目的の為に戻って来た訳」



 生温かい唾液を纏わせた舌を首筋に這わす。


 この生温い感覚……。


 慣れる気がしないな。



「そう、ですか。私達魔物と人間では言葉、意思の疎通が図れません。言い方が悪いとは思いますが、無理矢理生殖を図る。そう捉えても構いませんか??」



「私は無理矢理するのが好きなのっ」



「うぐっ!!」



 爪の先端が蛇の胴体から覗く肩口を切り裂き。



「はぁ、美味しい。レイド、貴方は最高の素材よ」



 爪に付着した血液の残り滓をマイ達へ見せつける様に舐め取る。


 その仕草はお止めになった方が……。


 うちには気性の荒い方々がおりますので……。


 恐る恐るマイ達を見ると。



「「「………ッ!!!!」」」



 ほらね??


 リューヴ、アオイ、ユウ。


 三名が今にも飛び掛かりそうな姿勢を見せ。



「ガルルゥゥ!! バウッ!! ワゥゥッ!!!!」



 一名は敷地内に侵入した不審者を見付けた犬みたいに吠えていた。



「マイちゃん。ちょっと落ち着こう??」

「うっせぇ!!」



 どうか穏便に済ませて下さい。


 俺が動けぬ今、カエデが頼りだ。



「彼はイスハさんの弟子。それに…………」



 言葉を切り、視線をふと落とす。



「私達は彼を必要としています」


「必要?? 生殖の道具として??」



「いいえ、彼は大切な友人だからです。此処で別れるのは余りにも惜しいです。彼は人間と我々魔物の言葉を理解します。人間と魔物の間に出来た溝を埋める事が出来るかもしれない本当に大切な存在なのです」



 カエデの口から出て来た。



『大切な友人』



 その言葉が事切れそうになっていた体に活力を生み出してくれる。


 こんな時だってのに嬉しい言葉を掛けてくれて……。


 本当、有難うね。



「人間との軋轢を?? アハハ!!!! 貴女馬鹿じゃないの?? 人間を守ろうとする事自体無駄な労力なのよ。いい?? 人間は私達を蔑む、妬み、迫害するわ」



「それは極一部の人間です」



「今はオーク、それに魔女との戦いで私達魔物には目もくれていないわ。けどね?? 戦いが終われば絶対此方に牙を向けてくるわよ」



 じっと真剣な眼差しでカエデを見下ろす。



「そうならない為、彼の存在が必要なのです。人間と魔物、両者を繋ぐ架け橋になる唯一の希望です。友人でもある彼を……。おいそれと馬の骨に差し出す訳にはいきません」



「いいぞ!! カエデ!! もっと言ってやれ!!」



 ユウが威勢のいい声を出す。



「そうだそうだ!! そいつは私達の為に一生飯を炊き続ける必要があるのよ!!」



 それってほぼ奴隷って意味ですよね?? 赤い髪のお嬢さん??




「馬の骨??」



 ミルフレアさんの気に障ったのか眉がピクリと小さく動く。



「そうです。会って間もない男と性交を行う人には丁度いい言葉ではありませんか??」


「間もない、か……」


 うん?? 何だろう。


 ミルフレアさんがふと懐かしむ表情で宙を眺めた。


「カエデ、もっといい言葉があるのを御存じないのですか??」



 アオイがカエデの隣に並び、蛇の胴体に巻き付かれて宙に浮かされている俺を見上げる。


 既に嫌な予感しかしない……。



「あ、ば、ず、れ、ですわ。レイド様の正妻である私から横取りする何て、烏滸がましい事甚だしいのですぅ!!」


「そうそう!! レイドは私と一緒になるんだからね!!」



 彼女に続けとルーも一歩前へと出る。



「はは。冗談、あたしとだろ??」


「ユウ。冗談は寝てから言え。主は私が支えるんだ」


「リューは黙ってて!!」


「さて、そろそろその飯炊きを私達に返すかどうか。返事をくれるかしら??」



 マイが皆の前に立ち堂々と腰に手を当て、いつも通り片眉をクイっと上げた。


 皆様、その態度は如何なものかと……。


 彼女は師匠達と肩を並べる実力且、相応の権力を持った御方なので出来るだけ穏便に事を済ませて頂けたら幸いで御座います。


 まぁ……。拘束されている俺が言えた義理ではありませんけども。



「さっきから大人しく聞いていれば……。貴女達、目上の人に対する態度を改める必要がありそうね」



 ごもっともです。


 皆さん、ミルフレアさんの御話をキチンと態度を改めて聞き。そして無礼を働いた謝罪を……。




「はぁ――ん?? 態度ぉ?? うちの所有物を勝手に壊しておいてよくもまぁ戯言を吐き出せますなぁ――??」




 マイが耳に手を添えて惚けた態度を取るので。


 降り積もった雪も凍り付く真冬に無理矢理聞かされた最恐の怖い話で冷えに冷えてしまった肝よりも、更に肝が凍り付いてしまった。



 お願いしますからこれ以上事を大袈裟にしないで!!




「どうやら……。指導が必要の様ね??」



 ミルフレアさんの魔力が膨れ上がり、大地を矮小に揺らし空気がグニャリと歪む。



「お、おおぅ……。すっげぇ魔力……」



 ユウが重心を落とし、流れ出る魔力の波に耐えながら話す。



「イスハ達と同じ位じゃない。私達全員で掛かれば……。勝機はある!!」


「丁度、退屈していた所だ。私の本気をぶつけるに足る相手だな」


「上等ぉ……。あたしもぶちかます!!」


「み、皆程じゃないけど……。頑張るよ!!」


「レイド様を傷物にした事を後悔させてやりますわ」



 足並み揃えて、戦闘態勢を整える。



「マイ達も、ミルフレアさんも落ち着いて下さいよ!!」



 この人達が好き放題暴れたら一体どうなる事やら……。


 戦闘を始めるべきではない。


 そう判断して声の限りに叫んだ。



「私を虚仮にした落とし前はどうすんのよ……??」



 お、おほぉ……。


 こえぇ。


 目が血走り、美しさの幻影すら残っていない。



「か、カエデ!! 皆を止めてくれ!!」


「ふぅ。実は……。私もマイ達に同意しています」


「流石っ!!」



 カエデがマイとパチンと手を合わせて心地良い乾いた音を鳴らしてしまった。



「穏便に済ませたいと考えていましたが……。どうあってもレイドを手放す様子は見られないので、強硬手段に今から移行します」


「強硬手段??」



 嫌な考えしか思いつかない。



「えぇ……」



 ニヤリとマイが笑う。



「無理矢理ぃ……。奪い取って逃げんのよぉ!! だっはっはぁ――!! くたばりやがれぇぇええ!!!!」


「ちょ、ちょっと!! 駄目ですって!!」



 奪取するのなら俺の顔面じゃなくて、蛇の胴体に襲い掛かりなさいよね!!


 もう間も無く到達するであろう恐ろしい龍の拳を見つめて声の限りに叫んでやった。




最後まで御覧頂き有難うございました。


先日も申した通り、選択肢がまだ決まっていない御話が迫っています。


お店の席に着きメニューを開いて考えていると、遠くからニッコニコの笑みを浮かべた店員さんがパタパタと歩いて来る時の感情に似ています……。


はてさてどうしたものやら……。



蛇の里の御話を終えたのなら、その選択肢がどこだったのかを後書きにて掲載させて頂きますね。


そして、感想文を入れて頂き有難う御座いました!!


それでは皆様、お休みなさいませ。

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