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第百六十三話 予想された開戦 その二

お疲れ様です。


祝日のお昼時にそっと投稿を添えさせて頂きます。


それでは御覧下さい。




 ボケナスからの念話が途切れると地面に落ちた小さな針の音さえも聞き取れてしまう静寂が訪れ。私達は互いの意見を探り合う様にお互いの顔を見つめ合った。


 奴らが此処へ来た理由の一つ、生殖。


 生殖の為には男の存在が必要不可欠だ。この村に唯一存在する男は、アイツのみ。


 嫌な予感が焼きたてのパンの様に膨らみ悪戯に心を急かす。


 それは各々も同じだった様で?? 言葉無くとも。視線を合わせていると何となぁく理解出来てしまった。



「なぁ?? 助けに行こうよ」



 ユウが誰よりも先に声を上げる。



「まだです。先生は穏便に済ませろと仰いました。力を行使するには時期尚早です」


「カエデ、取り返しのつかない事態になったらどうするんだ」



 リューヴがいつもより鋭角に眉を尖らせて話す。


 よくあんな風に尖らせられるわね。私も試しにやってみよ――っと。



「大丈夫です。周囲の魔力探知に細心の注意を払っていますので。強い力を感じたら即行動を開始します」


「だから、それで主が傷ついたらどうするんだと聞いているんだ!!」



 声を荒げたリューヴが珍しくカエデに詰め寄る。


 強い眼差しで冷静な彼女を見下ろし、今にも食って掛かりそうだ。


 急に大声を上げた所為で眉が驚いて通常の状態に戻ってしまったじゃないか。


 眉の筋肉が疲れるし、私らしく柔らか――い角度を保っておきましょうかね。



「私は行くぞ。これ以上主を一人にはさせておけん」



 何の進展も無い事に憤りを覚えてしまったのか、大股で出口へと向かい始めてしまった。



 まぁ――……。


 リューヴの気持ちは理解出来ない事も無い。


 アイツは今、イスハ達と肩を並べる強い奴とたった一人で対峙しているのだ。その女王様が生殖とぬかした。


 つまりこの状況を例えるのだとしたら。


 腹ペコの猛犬共の中に出来立てホヤホヤの餌を放り込んだ状態に陥っているのだよ。


 ボケナスがどんな目に遭うのか、それは火を見るよりも明らかだからね。




「リューヴ。あなたの身勝手な行動が、レイドを傷付けるのかも知れませんよ?? 悪戯に相手を刺激して、それこそ最悪な事態を招いてしまう恐れもあります」



「…………」



 カエデに背を向け、ぶつけ様の無い怒りで肩を震わせている。



「二人共、落ち着きなさいって。アイツは大丈夫って言ったでしょ?? 偶には信じてやりなさいよ」


「そうそう。マイちゃんの言う通り!! レイドだって鍛えているんだから、早々やられないって!!」


「ふん。分かった……」



 未だに納得いかない感じで扉から踵を返すと、椅子へ女性らしからぬ速さで座った。



「生殖って言っていたけど……。向こうの大陸に男はいないのか??」



 まだこわぁい顔のユウが私を見て話す。


 も、もうちょっと優しい顔を浮かべなさいよ。ユウの長所が台無しじゃん……。



「いないわよ。居るのは龍族と獰猛な野生生物だけ。普通の人間何てあっという間に餌よ??」


「うぇ。想像してくないなぁ……」



 ルーが舌をべぇっと出して顔を顰める。



「それでこちらの大陸に来たのでしょう。前女王も亡くなり、権力が自分に継承されて憂いも無くなった。あるとしたらイスハさんと、エルザードさん達との確執。それを抑えさせすれば大手を振って歩けますわ」



 蜘蛛が真面な考えを話しやがる。



 あぁ――あっ!! 得意気な顔をしやがって……。


 憎たらしいったらありゃしない!!




「でも、イスハとエルザード相手に勝てるか?? あたしはごめんだね」


「勝てなくてもいいのです。以前の戦いの事、そして人間に危害を加えない限りイスハさん達は手を出しませんから」



「どういう事だ??」



 ユウが蜘蛛に問う。



「いいですか?? 何でも相手の考えを鵜呑みにするものではありません。もし、向こうが復讐心を抱いていたらどうなりますか?? 現時点ではイスハさん達には勝てない。しかし、ここで繁殖し力を蓄えたらどうなりますか?? 生きた証を残すと仰っていましたがていの良い建前かも知れません。杞憂であればそれで構いません。考えうる全ての事を考慮すべきですわ」



 ちっ。


 今回は蜘蛛の言う事は正しいな。


 私も悔しいがその意見には賛成だ。


 しかぁしっ!! この事は絶――対っ、死んでも言わないけどね!!



「アオイの意見に賛成です。ですから、これ以上私達が出来る事は何もありません。後は先生達の意見を仰ぎ静観すべきかと」


「ま、向こうから手を出さなきゃあたし達はさっさと尻尾を巻いて逃げるって訳だ」



 ちょっとだけ怒りが静まって来たユウが軽い調子で話す。



「…………。だが主を傷付けた、あの女だけは許せんな」



「リュー、それだと話が堂々巡りになっちゃうから駄目だよ」



 ルーが珍しく真っ当な意見を話した。



「そうそう。ルーの言う通り……」



 ン゛ッ!?


 私が口を開いている途中で、離れた位置から力の鼓動を感じた。


 これって……。龍の力よね??


 あの馬鹿が解放したのか??


 真意を確かめる為にカエデの方へ向くと……。



「……っ」



 真剣な表情で黙り込み、眉を顰めていた。



「カエデ、感じた??」


「はい。物凄く強い魔力が発生しました」


「私も感じましたわ」



 と、いう事は……。



「始まりました。いえ、正確には始まってしまったと言うべきですね」



 カエデがすっと立ち上がり、無言の扉を見つめた。



「な、何だよ?? 急に」



 力の鼓動を感じ取れなかったのか、若干慌てた様子のユウが私とカエデを交互に見つめる。



「龍の力の波動を感じたのよ」


「同時に魔力もです」



「何だと!? では、主とミルフレアが戦っているのか??」



 リューヴが翡翠の瞳を見開く。



「はい。今も激しくやりあっていますね」


「こうしてはいられん!! 行くぞ!!」


「ちょっと!! リュー、先に出たら駄目だよ!!」



 ルーの制止を振り切り、強面狼が真っ先に家屋を出て行ってしまった。



 うぉぅ!! ま、また乗り遅れた!!!!



「皆さん、行動開始です。先程打ち合わせた通り行動して下さい。くれぐれも命を奪わない事。それだけ約束して下さいね??」



「勿論だ!! よっしゃ!! 行くぞ!!」


「えぇ。私のレイド様に手を出した罪。償って貰いましょうか」


「ひっさびさに暴れるわよぉ……」



 待ちに待った時と言うべきか。


 私達に誂えた様な敵陣の中央突破。


 これでワクワクが湧かない訳が無いっしょ!!!!



「何か、向こうの人達が気の毒だよ。血走ったマイちゃん達を相手にしなきゃいけないし……」



 ルーの戯言を背に受け、グングン漲って来る闘志を引っ提げて家屋を出て通りの様子を確認。



 ふぅむ……。


 リューヴはどうやら先行しているみたいだ、姿が見当たらないわね。




「カエデ、真っ直ぐ行くわよ??」


「構いません。此処から先はある程度の攻撃が予想されます。皆さんは適宜対応して下さい」



 通りの終着点へ向かい、全員が小走りで移動する。



「攻撃ねぇ。奴さん、武器を使ってくるんだろ??」



 隣でバルンバルンっと双子の大魔王様を揺らしているユウが言う。



「そりゃそうでしょう。何の為に武器があると思っているのよ」



 そして、あんたの胸に引っ付いている呆れた二つの肉も十分な威力を備えた武器なのよ??


 こ、こえぇ……。


 有り得ないでしょ。その揺れ幅……。



「それもそうか。んぉっ!! リューヴの奴、早速暴れてんじゃん!!」



 ユウの言葉を受けて、超絶爆乳から視線を外して正面へ向けると。



「はぁっ!!!!」



 殺傷能力の高い武器を持った八体のラミアがリューヴへ襲い掛かっていた。


 いや、正確には九体だった様ね。


 一体は通り沿いの家屋に上半身をめり込ませ、ぐったりとだらしなく蛇の尾を横たえているしっ。




「ふんっ!!」


「はあぁっ!!」



 正面から襲い掛かる槍を呆れた回避速度で躱して、お返しと言わんばかりに烈脚を叩き込む。



「ぐぁっ!!」



 彼女の速さに対応出来ないのか、真面に顎へ食らうと天高く舞い上がり地面へ叩き付けられると動かなくなってしまった。



 だ、大丈夫かしら。


 リューヴの蹴りって結構痛いし……。



「さぁ……。次だ」



 少しだけ興奮した呼吸を整え、残り七体のラミアに対して迎撃態勢を継続させた。



「ちょっと!! リューヴ!! 私達の分は!?」


「そうだぞ!! 抜け駆けはずるい!!」



 おちおちしていたら、全部持ってかれちゃう!!



「ふっ、随分と遅い到着だな。二体は片付けておいた。準備運動にもならん相手だがな」


「はぁ!? き、貴様!! 私達を愚弄する気か!?」



 リューヴの言葉を聞いた一体のラミアが言葉を荒げる。



「愚弄?? あぁ、すまんな。そんなつもりは無かった。ありのままの思いを吐露しただけだ。他意は無い」


「こ、虚仮にして!! 皆、行くわよ!!」


「「「おおぅっ!!!!」」」




 きゃ――!!!!


 来た来た来たぁぁああ――!!!!



 七体のラミアが敵意を剥き出しにて私達三人へ向かって突撃して来た。



 この緊張感、久々ね!! 血が騒ぐわ!!


 さぁて、私には何体掛かってくるのかしら!?



「挟撃するわよ!!」


「「了解っ!!」」



 ほっほう!! 三体か!!



 使用する得物はぁ正面は剣、右は矛、そして左は槍。



 むぇへへ……!!


 新鮮な御馳走のぉ。よ、選り取り見取りじゃない!!



「行くぞ!!!!」



 正面からは風を切り裂く斬撃が。



「でぇい!!」



 右の矛は薙ぎ払い。



「はぁっ!!」



 左の槍は私の腹部を狙った鋭い中段突き。


 どれも良い攻撃だが……。如何せん、速さがねぇ。


 イスハとの組手に慣れ過ぎた所為か欠伸が出る速さに若干失望した。



「くらえっ!!」



 ぎりぎりまで引き付けて、数舜で片付けてやる!!


 矛の切っ先と、槍の穂先が私の胴を捉えて襲い来る。



「貰ったぁ!!!!」



 はい、残念賞です!!!!



「う、嘘でしょ!?」



 剣の斬撃、矛の薙ぎ払い、槍の突き、回避が大変難しい三点同時攻撃。


 だが、それは素人とーしろ目線での話なのよっ。玄人である私にとっては朝飯前の前さ!!!!



 まぁまぁ鍛え抜かれた三点の攻撃に対し、地面へ体が着く程小さく屈んで躱す。


 飛んで躱してもいいけど……。万が一反撃があった場合反応がちょっと遅れるから屈んで躱すのが正解でしょ。



「そぉぉいやっ!!!!」



 低い態勢から左足を支点にして猛烈な勢いで起き上がりながら、右の個体へ激烈な右蹴りを放つ。



「キャッ!!」



 続け様。


 手応えを感じ無い剣先を茫然と見つめる個体へは顎に右の拳を叩き込んでやった。



 ん、んんっ!!


 超気持ちが良いじゃないかぁ、えぇ??


 鬱憤が溜まりに溜まっていたので拳が硬い感触を捉えると、スカッとした爽快感が体の中を駆け抜けて行った。




「グハッ!!」


「こ、このぉっ!!!!」



 おっと。


 流石は私の生まれ故郷であるガイノス大陸で生き延びた事はある。


 二体がやられたってのに闘志が衰える処か、より強力に漲らせ。ほぼ合格点を上げられる速度で槍を突いて来た。



 この速さの差を目の当たりにして向かって来る事は称賛してあげる。


 鋭い槍の突きを疾風の如く躱し。


 槍の柄を支点にして、流れる様に体を回転させ女の懐まで潜り込む。



「は、速い!!!!」


「そう?? まだ速く出来るわよ??」



 驚く姉ちゃんに対し、軽く微笑んで言ってやった。



「ば、ばけ……ゴフッ……!!」



 腹部に重拳を放つとそのまま二、三歩踏鞴を踏みながら後退。事切れた様に崩れ落ちた。



「よっしゃ!! 完勝!!」



 うぅむ。


 我ながら完璧だわ!!



「こっちは終わったわよ」



 ユウ達へ振り返って言ってやる。



「お疲れさ――ん。こっちも終わったよ」


「あぁ。取るに足らない相手だ」




 おぉう……。



「もう少し、手加減してやったら??」



 ユウに対峙した相手は二体。


 その二体は木造の家屋の壁に、地面から生える人参の様に突き刺さっていた。


 臀部辺りの蛇の部分がプリンっと柔和な角度で晒されているので、ついでに叩いてやろうかと思ったが。今はそれ処では無いので我慢しましょうかね。



「手加減?? 当然だ。私が本気を出したらこいつらを殺めてしまう」



 リューヴの足元には、頬が腫れ上がった二体が無残に地面とあつぅい抱擁を交わしていた。


 往復ビンタでもしたのかしらね??



「ねぇ。マイちゃん達ってあんな強かったっけ??」


「対峙した相手が弱過ぎるのですわ」


「いつも私達相手に組手をしているから比較対象が分からない。そう見えて当然です」



 さて、敵の第一波は退けた。


 このまま直進しますかね。



 私達が貞操の危機に瀕している野郎を救出する為、目的地へ向かって歩み出そうとすると。




「あらあら。騒がしいと思えば……」


「やられちゃったか――。まぁ、仕方ないよね」


「この程度の雑魚にやられるなよなぁ」




 ボケナスを良い様に扱っていた三名が姿を現した。



「「「雑魚??」」」



 水色の髪の姉ちゃんが放った言葉にリューヴ、ユウ、そして私が声を合わせる。



「あはは!! ごめんなさいね?? この子、口が悪いものですから」



 黒髪が私達を見下ろして嘲笑う。



「本当の事じゃないか」



 今も悪びれる素振を見せない水色。



「きゃはは!! そうだねぇ!!」



 そして、阿保面で笑い転げる金髪。



 こりゃいかん。


 ユウ達の獲物だが、私直々に鉄拳制裁を加えてやろうかしら??


 泣くまで、そして命乞いするまで痛めつけたら改心するだろうさ。




「…………。待っていたぞ」


 リューヴが小さく呟く。


「待っていた??」


 黒髪がリューブを見つめ不思議そうに首を傾げた。




「そうさ。あんたらをずぅ――――っと待っていたんだよぉ」


「私達を??」


 水色の前へユウがノッシノシと重低音を響かせる歩行で移動。




「そうですわ。私も我慢強くなったものですわねぇ」


「我慢?? 何の??」



 そして、残る金髪へキショイ蜘蛛が。



 さ、おっそろしいお仕置きの始まりっと。







「狩る為だ!!」

「ぶっ飛ばす為だよ!!」

「お仕置きの為ですわ!!」



「「「キャッ!!!!」」」



 三人が同時に開戦の口火を切った。



「うっひょう!! きんもちいい!!」


「えぇ。心の蟠りが一気に溶け出すようですわねぇ」


「二人共、気を抜くな」



 リューヴが若干悦に浸っている両名へ注意を促す。



「分かってるって。取り敢えず、ぶん殴っただけだし立ってくるだろう」



「「「…………っ」」」


「ほらなっ??」



 ユウの話した通り、三人は怒りの表情を浮かべゆるりと立ち上がった。


 へぇ――……。


 ユウ達の攻撃を食らって直ぐに立つか。それ相応の強さは備えている様ね。



「ゴホッ……。あなた、私に……。手を上げましたね??」

「あぁ。それがどうした?? 手加減はしたぞ」



 リューヴが黒髪へ当然とばかりに言い放つ。



「いたた。おい、南瓜。この痛み、どうしてくれる??」

「うっせぇなぁ。さっさと掛かって来いよ」



 水色は今にも怒りで感情が暴発しそうな表情だ。



「も――。あの人と楽しむ前に体を汚したく無いんだけど??」


 金髪が服の埃を払いながら立ち上がる。


「あの人?? もしかして、レイド様の事ですか??」



 蜘蛛の眉がピクリと動いた。



「あ、レイド君って言うんだ。ふぅん。私のここに新しい命を宿して貰うのに、名前も知らないじゃ不味いから助かったよ」



 下腹部を優しく撫でて、まだ宿していないのにも関わらず満足気に笑う。



「こ、この!! それは正妻である私の役目ですわ!! あばずれは下賤な男の子でも孕んでなさい!!」


「やだよ――。レイド君の子供貰うんだもん!!」


「御黙りなさい!!」


「そっちが黙ってよ!!」




 勝手にやってろ、色ボケ共めがっ。





「皆さん、集中して下さい。残りのラミア達が寄って来ますよ??」



 カエデの声を受けて周囲へ視線を動かすと。



「な、何事!?」


「あぁっ!! 皆がやられてる!!」


「侵入者か!!!!」



 家屋と家屋の狭い路地、若しくは左右の通りから続々とラミア達がこちらへ目掛け駆け寄って来た。



 お、おぉ……!!


 こ、これも全部平らげていいのかしら!?



「多いなぁ」


「ルー。雑兵は任せる」


「はいはい。務めさせて貰いますよ」


「マイ」



「何??」



 私が御馳走へ向かって飛び出そうとすると、背後からカエデの声が届く。



「ライネさんの姿が見当たらないのが気掛かりです。ここは私達が引き受けますので、このまま目的の家屋へ進んで下さい」


「大丈夫??」



 流石にこの数だ。


 私が居ないと雑魚助である部下達に対し、多少なりとも心配してしまうのだよ。



 でも、まぁ……。



「余裕だ、余裕」


「マイ、先へ行け」


「目障りですからさっさと立ち去って頂けませんか??」


「マイちゃん、私達は大丈夫だよ――!!」


「その通りです」



 ったく!! 頼れる友人達よね!!!!


 一部を除く!! だけど!!



「了解!! 先行するわ!! 風爆足ウィンドウバースト!!」



 強力な風を纏い、通りの終着地点へと向けて脚力を解放するが。



「先に行かせると思うのか!?」



 黒髪がリューヴを無視して私の進行方向へ鋭利なナイフを投擲した。



 おっそ。



「私なんかより、目の前の相手に集中しないと……。とんでもない目に遭うわよ??」



 生温い速度のナイフを弾いて言ってやった。



「貴様、主を傷付けた罪は重いぞ??」



 込み上げる戦闘意欲が彼女の筋線維を隆起させ、体内から漲る魔力が周囲の空気を朧に揺らす。



 うっへぇ……。


 ひっさびさにリューヴの闘気みたけども。相変わらず化け物じみているわね。



「部下共!! 此処は任せたぞ!!!!」



 力の限り硬い地面蹴り飛ばし、風の一部となって村の大通りを爆走。



 ボケナス!! 私が到着するまでヤラれるんじゃないわよ!?


 万が一、あんたが厭らしい真似をしていたら黄金の槍のテメェの尻に捻じ込んでやるから!!



 強敵が待ち構えているという事実が此れでもかと高揚感を湧かせる。


 風よりも速く、そして夏の嵐よりも強烈な風を纏ってドスケベ男の救出へと向かった。




最後まで御覧頂き有難うございました。


それでは引き続き、祝日を堪能して下さいね。



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