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第三十一話 海竜さんからのお誘い

お待たせしました!! 本日の投稿です!!






 口から零れ出ようと躍起になっている眠りの塊を堪えつつ、本日も肉体を酷使していた。


 体に残る疲労は仕方無いとして。寝不足なのは……。





『お次は蜘蛛の里かぁ……。どんな人達が居るのかな??』


『さぁ?? でも、蜘蛛っていうくらいだからきしょい格好してるわよ』


『それは流石に失礼だろ』


『だはは!! 私は気にしないね!!』





 提供された家の壁の隙間から。夜が深く更け続ける中、いつまでも鳴りやまない二人の放つ声が本日の労働に多大な影響を与えているのです。




 口喧しい御二人の所為もありますし、俺が感じている適度な緊張感がそうさせたのだろう。





 お次の任務地は西、そしてユウ達の里を襲ったオークの原因解明の仕事も残っている。




 蜘蛛さん達から何故連絡が途絶えたのか。


 何故、オークがユウ達の里へと到達したのか。




 これを解明して森を北上し、指定先の拠点地へ……。帰還後にはお偉いさんに事情説明。やるべき事が山積しているのです。





 シエル皇聖、か。





 直接お会いした事は無いが確か、二十代半ば?? 位だっけ。熟練者からは若造と呼ばれるお年頃なのに数万名をも越える信者を一手に纏めるその手腕が評価されていると伺った事がある。



 パルチザンの最大の支援者である彼女の力は計り知れない。



 俺みたいな存在はきっと彼女にとって見れば、蟻程度の矮小な生物にも映るのだろう、


 そんな蟻から意見を聞いても楽しいものだろうか??


 いや……。


 現実を目の当たりにした蟻だからこそ意見を伺いたいのだろう。


 そうじゃなきゃ召集が掛かる訳ないし……。




 謁見ねぇ。


 苦手なんだよなぁ。お偉いさんと会話をするのは。




「お――!! こっちよ――!! 苦虫を食い潰したような顔の鶏――!!」



 そうそう。


 俺にはあぁいう砕けた会話がお誂え向きなのさ。




 ってか。


 どんな顔だよ、それ。



 西の居住区画の入り口。


 そこで此方に向かって手を振るマイの下へ、重い足取りのまま進んだ。



「木材、此処でいいよな??」


「おう!! ごくろ――」



 何様ですか?? あなたは。



 集積された木材の上にドンっと腰を下ろし。



「ふぅ。あっちぃ……」



 灰色のシャツを指で摘まみ、パタパタと揺れ動かして新鮮な空気を送り込んでいた。



「今日も中々の暑さだよなぁ」



 集積された木材の一角に角材を下ろし、天を仰ぎ見る。




 本日の彼も大変機嫌が宜しく。


 俺達の体力を少しでも減らそうと燃え続けていた。




「そうねぇ。昼ご飯も食べ終わったし……。くぁぁぁあ。ねっみぃ……」


 丁度木陰になる家屋の軒下へと移動し、だらしなく足を投げ出し、おまけと言わんばかりに大欠伸を放つ。



「今日の昼ご飯何だった??」



 少し休憩。


 そう考え、マイの隣に腰掛けた。



「あぁ、そっか。あんた達はもう少し後だったわね」



 食事は配給制を取っており西の作業場で汗を流す者達から食事の配給が開始される。


 西の作業場での配給が終了したのなら、お次は東。


 つまり、俺とカエデが今も作業を続ける場所で食事が始まるのだ。



「今日はパンと森で採れた果実。んで、ルミナの街で獲れた魚。この魚の脂の乗りが絶品でさ!! プツッ、プツッと弾ける脂の音が食欲を誘い。パリっ!! とした皮を歯で裁断するとぉ……」



 至高の味が舌の上に襲い掛かって来るのか。


 キャアキャアと嬉しそうに騒ぐコイツの姿を眺めていると、食欲がぐぐぅっと湧いて来てしまう。


 此処で油を売っている間にその魚が他の誰かさんの胃袋の中に収まってしまう姿を想像すると。



「さて!! そろそろ戻ろうかなぁ!!」



 居ても立っても居られず、座って間もない腰を素早く上げて移動を開始した。



「そっちに行って、あんたの分も食べてあげようか??」



 俺の気持ちを見透かしたのか。


 口元をニッと曲げて話す。



「勘弁してくれ。じゃあ!! そっちも頑張れよ!!」


「ん――。適度にねぇ――」



 だらしない恰好を保持し、さっさと行けと言わんばかりに手で此方をあしらった。


 普段なら此処で注意の一つや二つを放つのだが、今は一秒でも早く魚さんとお会いしたい。


 食欲が叱責を上回り、自分でも驚く速さで移動を開始した。




 これでもかと腹を満たし、午後の作業の糧にする。


 うむっ。


 俺の考えは間違っていないぞ。決して卑しい気持ちでは無いのです!!




 逸る気持ちを一切抑える事無く、里の中央へ差し掛ると。




「あ、レイドさん!! お便りが届いていますよ――!!」



 南門の方角からピナさんが軽快な足取りで此方にやって来た。



「どうも!!」



 彼女から差し出されたそれを颯爽と受け取り、中身を確認する。



 まぁ、恐らく。地図と指令書でしょうね。



 案の定。


 一枚目の紙にはファストベースの位置が記された地図。


 そして、二枚目には正式な指令書の内容が書き記されていた。




 えっと……。何々??



 指令書の文字に視線を泳がせるが……。



「立ち止まって見ないのですか??」



 卑しい足は留まる事を拒絶し、東へと向かい続けていた。



「あ、いや。作業が順調かどうか気になりますので……」


「真面目なのですねぇ。何て書いてあります??」




 指令書の内容はこうだ。



 ファストベース拠点隊長を務めるクーパー大尉宛てに指令が下された。


 この大陸の北と南に広く横に広がる大森林に挟まれた平原の丁度中央に位置する拠点から、南西の拠点へと送る人員を増員せよとの指令だ。



 ふぅむ……。


 南西に人員を送って前線の守備を高めるのが目的なのかな??


 そうすると北側は手薄になるし……。


 如何せん。


 情報が全く入って来ないので何がどうなっている事やら。




「拠点地へ送る人員を増やせとの指令ですよ」


 手紙を綺麗に折り畳み、右隣りを歩く彼女へと話す。


「それを態々レイドさんに知らせたのですか?? 便りを出すだけで宜しいのに」



 あっ、そっか。


 ピナさんは知らなくて当然だよね。



「こういった正式な指令は情報漏洩の虞を懸念して、誰かが直接渡すか口伝しなければならない仕組みなのですよ」


「成程ぉ!!」


 理解して頂いて光栄です。


「出発はいつの御予定ですか??」



 ん――……。


 そうだな。


 此処から南に下り、海岸線に到着するのは凡そ四時間だから……。



「明日の早朝に出立します。今日はこのまま作業に没頭しますよ」



 今から準備を整え、南に抜ける頃には日が暮れ始め。移動もままならずに疲労を残したまま夜営の設営に入る。



 それならいっその事、此処で少しでも長く里の復興に力を注ぎ。ぐっすり眠って移動を開始した方が体にも、そして里の皆さんにも好影響を与えられるからね。



「宜しいのですか?? 任務の事は」



 若干の上目遣いで此方を窺う。



「構わない事は無いですけど……。修復作業はまだ折り返し地点ですからね。少しでも皆さんのお力になりたいとの考えですから」



 人命を救う為にやむを得ず破壊したのは此方に責任がありますから。


 でも……。


 責任云々よりも、此処の雰囲気が気に入っているのは確かです。



 自分でも分からない部分が、少しでも長く居座ろうと考えているのかな??



「有難う御座います!! では、本日の夕食は里の中央で盛大に送別会を開きますね!!」


「あ、いや。そこまで盛大に送って頂かなくても……」



 どちらかと言えば、目立つ行為は苦手なのです。



「駄目ですっ!! 恩人を送るのにそれでは――ってだけじゃあ物足りないですよ!!」



 もう三歩、下がりましょうか。



「で、では御言葉に甘えて……」



 ずずぅっと距離を削って来た彼女から思わず二歩下がって話した。



「はいっ!!」


 ぱぁっと明るい笑みを浮かべ、今も手に持つ書類の束を嬉しそうに胸に抱く。


 よっぽど宴会が楽しみなんだな。


 いや、それとも食事の内容が楽しみなのだろう。


 明るい雰囲気で御飯を食べると美味しいですからねぇ……。




 しみじみと頷きつつ。何やら血相を変えて此方に向かって走り来るアレクシアさんの下へと二人仲良く肩を並べて、移動を開始した。







   ◇






 一日の終わりを告げようとする柔らかい夕刻の明かりが四角い窓から差し込み、室内を照らす。


 その明かりを頼りに食卓の上に二枚の地図を広げた。



「皆、聞いてくれ。次の任務地は……。此処、ファストベースだ」



 アイリス大陸の簡易地図の一点を指差して大まかな行程の説明を開始する。




「現在位置は大陸の中央やや東の南端のルミナの街。先ずは此処から西へと向かい……。ユウ。蜘蛛の皆さんが住まわれている森はどの辺りか分かるか??」




 正面に立つ彼女に問う。



「あたしも大体の場所しか分からないけど……。多分、この近辺だな」




 彼女が指差したのは大陸の中央の南、平原と森の境目辺りに位置するギト山の南西の深い森。


 立ち入り禁止が指定されている不帰の森の中央からやや西寄りって所だな。







 ギト山の麓には不帰の森同様、緑が生い茂っている。


 当然。


 そこも立ち入り禁止区域に指定されている。それは何故か??



 標高の高い山を目指し、幾人の冒険家が立ち入り禁止の命を無視して向かったのだが……。どういう訳か、必ず森の中で彷徨い。見当違いの場所から森を抜け出てしまったそうな。




『迷いの森』




 と呼ばれるその場所には魔物が存在するとまことしやかに噂され今日に至る。



 何でも??



 二又に別れた尻尾の狐さんを見た、とか。


 どんな狐さんか一度見てみたいが今は任務に集中っと。



「此処からですと……。蜘蛛の里の南の海岸に到達するのは凡そ七日間ですね」



 悪くない線だな。


 カエデの一言に大きく頷く。



「海岸線を西へ向けて出発、凡そ七日間踏破した後北へ転進。蜘蛛の里の様子を窺い、北の平原へと抜ける。抜けた先は丁度、ギト山の南南西だ」





 地図で大体の進路を指でなぞりつつ話す。





「そして、新たな任務地は……。ギト山の真西に位置するファストベースだ。俺が拠点隊長を務めるクーパー大尉に指令書を譲渡し、そこから再び北上。ギト山を北に迂回しつつ一路東へ。レイモンドへ帰還。此処までで何か質問はあるかな??」




 地図上から指を離し、皆の顔を窺う。




「そのファストベースって所を出てからの補給は??」



 ユウが腕を組みつつ話す。



「大陸の至る所に存在する町で補給を済ませるよ。少なくとも、飢え死ぬ事は無いから安心して」


「それを聞いて安心したわ!!」



 でしょうねぇ……。


 恐らくあなたはその一点についてのみ心配していると思いますので。




 ふぅと安堵の息を漏らしたマイに視線を送ると。




「皆さんのこれからの行動は把握出来ました。そこで、一つお願いがあります」




 カエデが少々緊張した面持ちで口を開いた。




「お願い?? どうしたの??」



 右隣りの彼女へと問う。



「ルミナの街から出発したら私の家に足を運んで頂いても宜しいでしょうか?? 先日、父に此度の事件の経緯を説明した所。是非、皆さんの顔を窺いたいと申していたので」



「それは構わないけど……。一体どうして??」



「私にも分かりません。恐らく、大魔の力を引く二人の顔を見たいのでしょう」



 ふ、む……。


 それなら、まぁ。


 カエデにはお世話になったし、何より命を救われたお礼を述べたいのもあるからね。





「俺は構わないよ。二人は??」


「あたしは構わないんだけど……。なぁ??」


「そうねぇ。カエデ、例の件について両親に尋ねた??」


「例の件??」




 マイに引き続き、カエデに視線を送る。




「いいえ。伝えていません……」



 俺達から視線をすっと視線を外し、俯いてしまう。



「レイドは知らなかったか。ほら、あたしみたいにさ。里を出て一緒に旅をしようって誘ったんだ」



「カエデ、今の話は本当か!?」




 ユウの言葉を受けた刹那。心の中に温かい気持ちが炸裂してしまった。



 そりゃあそうだろう!!


 あれだけの実力を備えた彼女が任務に帯同してくれるのだ。カエデが仲間になってくれれば鬼に金棒、いいや!!



 龍に黄金の槍、だ!!



 …………。


 狂暴な龍に凶器を与えてはいけません。


 此方の寿命が縮んでしまいますので。 





 だらけきった雰囲気をピシャリと引き締める役は俺には正直手に余るし、俺が言ったとしても聞いてはくれない。


 隊長役を務めるのは分不相応なのです……。




「え、えぇ。本当ですけど……」


「俺からもお願いするよ!! カエデが一緒に来てくれれば怖い物無しだからさ!!」




 遠距離からの魔法、長きに渡る移動の負担の軽減に、戦闘の指令役。


 たった一人で幾つもの難しい役割を熟してくれる彼女の存在は大変ありがたいのです!!!




「おぉ?? 随分と積極的に誘うなぁ?? えぇ??」


「だなぁ――。あたしの時よりも大袈裟じゃね??」


「あ、いや。これは……」



 彼女の細い肩から両手を離して話す。



「兎に角。皆さんには一度、足を運んで頂きたいと考え。声を掛けさせて頂きました次第です」



 頬をポっと赤く染め、俯いたままそう話した。



 カエデが一緒に来てくれれば皆も楽しいと思うし、俺なんかよりもよっぽど頼りになるからなぁ。


 でも、それは両親の御話し次第かな。




 それから今一度行路の確認を行っていると、不意に扉が開かれた。




「皆さ――ん!! 宴の準備が整いましたよ――!!」



「待ってましたぁぁああああ!!」



 ピナさんの御言葉に真っ先に反応したのは言わずもがな。



「きゃっ!!」



 扉付近の彼女の脇を颯爽と駆け抜け、家を飛び出して行った愚か者です。



「申し訳ありません……。喧しくて……」



 何で俺がアイツの代わりに謝らなきゃならんのだ……。



「構いませんよ。お食事は里の中央で、里の皆と召し上がる形になります」


「へぇ!! そいつは楽しそうだな!!」



 快活な笑みを浮かべ、ユウがそう話す。



「では!! 皆さん……。此方……」



 俺達を促そうとするピナさんがクルリと振り返ると。



「ピ、ピナ!! 宴会場は何処よ!?」



 行先を伺う事を忘れたのか。


 それとも目先の飯の事しか考えていなかったのか。


 口から白い蒸気を放ち、食いしん坊の狂暴龍が瞬き一つの間に舞い戻った。



「え、っと。里の中央です……」


「おっしゃああああ!! 待っててねぇ!? 私のカワイ子ちゃん達ぃぃぃいいいい!! とうっ!!」



 そして、再び姿を消したましたとさ。



「ふふふ。元気があって何よりです」


「元気過ぎるのも問題あるって……」


「同感です」



 皆一様に困った笑みを浮かべ、これから始まるであろう素敵な夕食に期待を胸に膨らませつつ。


 茜色の空の下へと足を踏み出した。


お疲れ様でした!!


本来であれば、このまま海竜さんの家にお邪魔させて頂く予定でしたが……。


何事も無く去るのはちょっと寂しいなと考えに至りまして、急遽宴会を御用意させて頂きました。


と、言う訳になりまして。


明日は宴会の始まりです!!


さてさてどんな宴になるのか。楽しみにしてお待ち頂ければ幸いです!!

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