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第百五十八話 大変騒がしいお披露目会 その二

お疲れ様です。


本日の投稿になります。


それでは御覧下さい。




  大変不機嫌そうに唇を尖らし、不貞腐れる様に空を睨みつけるミノタウロスの娘さんを見届けると。



「お次は私ですわ!! レイド様!! 私の華麗な魔法を御覧ください!!」



 蜘蛛の御姫様が威勢良く立ち上がり、少しだけ硬い表情を浮かべて歩み出す。



「おう!! 頑張れよ!!」



 珍しく緊張の色が滲むアオイの背中へ声援を送ってやった。



「は、はいっ!!」



 夏真っ盛り。


 燦々と輝く太陽の下で満開に咲き誇る向日葵も思わず顔を背けてしまう明るい笑みを浮かべ、意気揚々の足取りで訓練場の中央へと向かって行った。



 アオイの魔法か。きっと目を見張る威力、若しくは師匠達も認めざるを得ない芸術点を叩き出す事だろうさ。


 弱点という弱点が見当たらない彼女が構築した新しい魔法に期待を籠めて待ち侘びていると。



「これっ」



 一本の尻尾が俺の頭頂部を勢い良く叩いてしまった。



「あいたっ。何ですか?? 師匠……」



 おっと。


 こっちの向日葵さんは大変ご立腹の御様子の様ですね。


 眉をぎゅっと寄せ、瞳の中の向日葵さんが大変恐ろしい顔を浮かべて此方を見上げている。



「色目を使うな」



 色目??


 使用した覚えはありませんけども……。



「さぁ……。始めますわよ」



 アオイが中央に辿り着くと集中力を高め、魔力を放出。


 此処からでも彼女の周囲が迸る魔力によって朧に揺らいでいるのが確認出来た。


 凄い圧だな……。




「激光に捕らわれ、その身を焦がせ。雷光金縛らいこうかなしばり)!!!!」



 彼女が魔力を解き放つと足元に金色の魔法陣が浮かびそれが形を変え。訓練場の中央から蜘蛛の巣状に光の線が静かに伸び行く。



「私の艶やかな姿に見惚れてはいけませんわよ……??」



 アオイが上空へ右手をすっと上げると、蜘蛛巣状の線が苛烈に眩い光を解き放つ。



「はぁ……。綺麗な魔法だな」



 思わず触れてしまいたくなる美しく、華麗な光に思わず溜息を漏らした。



「あれはどういう効果があるの??」



 地面に描かれた光り輝く蜘蛛の巣を見つめながら、エルザードへ尋ねる。



「あの光の線に触れると痺れて動けなくなるの。最悪、体が麻痺してあの世行きよ??」


「おぉ!! じゃあ、あの範囲にいる敵は一網打尽って事か」



 美しい反面、威力は絶大。綺麗な花には棘があると言われる様に。


 それを忠実に体現した魔法に思わず舌を巻いてしまった。



「ふぅ、お次ですわ。美しき我が幻影を果てしなく追って来なさい、叶わぬ想いを胸に抱き安らかに眠れ。霞夢幻舞踏かすみむげんぶとう!!!!」



 アオイが白く輝く魔法陣を浮かべ魔力を放出すると彼女を中心として大量の霧が発生。


 瞬き一つ二つの間に彼女の姿が白に紛れて見えなくなってしまう。



「アオイの奴、どこにいったんだ??」



 ユウが訓練場へ向け、きゅぅっと目を細め見つめている。



「近付いて御覧なさい。ぞっとする光景が待っているわよ??」


「ぞっと?? そう言われると、見たくなるよな!!」



 その言葉を受けたユウが怖い物見たさで駆けて行く。



「アオイ――。どこだ――??」



 アオイが居るであろう思しき場所へ近付き、声を上げるが……。



「「「「ここですわよ??」」」」


「うげぇっ!?」



 霧の中に何十もの人影が現れ、ユウへ向けて同時に返答した。



「成程……。影で攪乱するのか」


「しかも、影は魔力を持っているから区別は困難。それにさっきの魔法を組み合わせれば…………。分かるわよね??」


「近寄って来た敵を一掃するって訳か。はぁ……。凄いなぁ……」



 蜘蛛の御姫様の実力は伊達じゃない。


 是非ともフォレインさんに見せてあげたい光景ですね。



「レイド様!! 如何でした!?」



 微かに頬を朱に染め、息を荒げてアオイが帰って来る。



「凄かったぞ!!」



 心に思ったままの言葉を彼女へ伝えてあげた。



「フフ……。これでレイド様の心は私が射止めた事になりそうですわね」



 いや、そこまで深い意味を持たせて話した訳じゃありませんからね。



「では、私の出番だな」



 アオイの到着を見届けるとリューヴが徐に立ち上がる。



「リューヴ、余り気負うなよ??」


「あぁ。主、見ていてくれ」



 軽く頷くとそのまま歩み出す。


 リューヴの魔法か。


 いつもは力と技で敵を捻じ伏せているけど、どんな魔法を作ったんだろう。




「ふぅ――。よし、行くぞ!!」



 魔力を高めて両手を前に翳すと漆黒の魔法時が浮かび、それが酷く暗い光を放つ。



「立ち塞がる者、全てを無に還せ。漆黒の稲光よ、我に宿り従え!! 漆黒シュバルツフェアトラーク!!」



 漆黒の稲妻。


 自然界には決して存在しないが、彼女が解き放ったそれはそうとしか言いようが無かった。


 黒き稲光が魔法陣から放たれると宙を縦横無尽に暴れ狂い。



「ふんっ!!」



 リューヴが暴虐の限り暴れ回っていた稲妻を身に纏う。


 体中から漆黒の稲妻が迸り、ここまでその力の鼓動が伝わって来るようだ。



「おぉ!! リューヴの奴、やるのぉ」


「そうねぇ。あの状態なら私達ともいい勝負しそうじゃない??」



 師匠達が認める程の力を帯びているのか。


 リューヴ、良かったな。


 この二人が初めて同時に認めてくれたぞ??



「エルザード殿。申し訳無いが、頑丈な人型の木偶を作ってくれないか??」


「はぁ――い、どうぞっ」



 エルザードが指をパチンっと鳴らすと、鋼鉄製の木偶が訓練場に出現。



「恩に着る。さぁ……。我が拳を味わうが良い!! ずぁぁああああああっ!!!!」



 黒き稲妻を纏った拳を無慈悲に木偶へ突き刺す。


 拳が衝突する度に天まで轟く轟音が鳴り響き、激しい火花が迸る。



「うぉっ!! 凄い威力だな……」



 鉄よりも頑丈な体のユウも目を丸くする威力に思わず見惚れてしまった。



「ずあぁぁああっ!!」



 一切の繋ぎ目の無い拳の連打と烈脚により、鋼鉄製の木偶が宙へと浮かされて行く。



 一切の反撃を許さない攻撃の雨、ね。


 あれが肉体だと思うとぞっとするな……。



「エルザード、もしあの拳が体に当たったらどうなる??」


「人間だったら一瞬で黒焦げよ」



 見た目通りの威力って事ですか。



「はぁぁぁぁっ!!」



 止めを使用する考えなのか。


 右手の甲に彼女の継承召喚である黒き鉤爪を装着すると、下段から木偶の胴体へと鋭い切っ先を突き刺す。



 そして、体の中央から黒き稲妻の波動が爪の先端へと集約されていき……。



爆散エクスプロージオンッ!!!!」



 鋼鉄の木偶がまるで溶かした熱の様に真っ赤に燃え上がると同時、木偶が爆散した。



 あ、あはは……。何て破壊力だ。


 鋼鉄が木っ端微塵ですよ??



「ふぅ……。まずまずといったところか」



 額の汗を拭い、リューヴが満足気な表情を浮かべて戻って来た。


 相当体力を消耗したのか呼吸が荒い。



「リューヴ、かっこよかったぞ!!」


「そ、そうか!!」



 普段の姿からは想像出来ない笑顔で俺の声に反応してくれた。


 魔法が成功してよっぽど嬉しかったんだろうな。努力が報われた瞬間って嬉しいものね!!



「これ。さっきの言葉、聞いておらんかったのか??」



 二本の尻尾が体に絡み付き、脇腹を砕く勢いでぎゅうぎゅうと締め上げて来る。



「いえ……。これは素直に褒めただけであって。他意はありませんよ」



 肋骨を破壊し尽くされる前に、静々とした口調で当たり障りのない言葉を返しておいた。



「次は私」



 カエデがすっと立ち、普段通りの歩調で進んで行く。



「カエデ――!! 一丁かましてやれ!!」


「勿論です。皆さんをあっと驚かせてあげます」



 余程の自信があるのか、ユウの言葉に軽い調子で答えた。



「では、本邦初公開です」



 訓練場の中央に到着すると目を閉じ、集中を始める。



「この世に在りし遍く力。扉を開け、そして私を導いて……。空間転移ディメンションムーヴ



 此処からでも思わず顔を背けたくなる程強烈に発光する魔法陣が浮かび、一際強い輝きを放った刹那。



 彼女の姿が訓練場から消えた。




「はっ!? き、消えた!?」



 あの強烈な発光で俺達の視界を閉ざし、その隙に姿を消す魔法とか……??



「……………………。大成功です」


「どわぁっ!!!!」



 背後から突然としてカエデの声が鼓膜に届くと、心臓が激しく跳ね上がる。



「あ、あはは……。嘘でしょ??」



 マイがあわあわと口を震わせる様が超高難易度の魔法の成功を物語っていた。



「先生とは違う種類の空間転移です。私が一度行った所にしか行けません。それに、まだ魔力の容量も少ないので距離にも限りがあります」



 澄まして言うが、とんでもない魔法である事には変わりない。



「では、失礼します」



 再び空間転移の魔法を詠唱するとその場から姿を消し、訓練場に姿を現した。



「はぁ……。天才、という奴じゃな」


「そうねぇ。私程じゃないけど、カエデの才能には正直驚いているわ」



 この二人が認めて太鼓判を押す。


 その事実だけで如何に凄い事をやってのけたかが窺い知れるぞ。


 流石、傑物共を纏める分隊長を張るだけはありますね!!



「次の魔法です。光り輝く願いを込めて、地下深くへ届け魔力の波動。星屑煌雨流星願スターダストレインアンリミテッド



 カエデが魔力を開放すると、訓練場の上空に馬鹿げた面積の光輝く魔法陣が浮かび上がる。




「ちょっと……。これは不味いわね」



 エルザードが手を翳すと訓練場全体に薄い桜色の結界が包み込む。



「さぁ……。光の波動に抗えますか??」



 カエデが上空へ勢い良く手を翳すと、魔法陣から無数の光の矢が現れ鋭い勢いで地上へ降り注ぐ。


 以前見た魔法と変わりないが……。それは直ぐに考え改める事となった。



「っ!?」



 光の矢が地面に着弾すると地面が爆発した。


 比喩とかでは無く。文字通り爆ぜたのだ。


 それは真夏の豪雨の様に留まる事無く降り注ぎ、矢が地面へ着弾すると爆炎と胃の奥を震わせる衝撃波が迸り結界の中に土埃が充満する。



「カ、カエデは大丈夫なのか??」


「安心しなさい。自分の魔法で怪我をするような子じゃないわ」



 そ、それならいいけど。



「…………。ケホっ。先生、結界を解いて下さい」


「ほらね??」



 言った通りでしょ?? と。


 エルザードが此方へ向かってパチンっと瞬きをして、指を鳴らして結界を解除。



「ふぅ。煙かった……」



 体に付着した埃を払い。恐ろしい魔法使いが煙たそうに咽ながら帰還した。



「カ、カエデちゃん。今の魔法は……??」


「既存の魔法に更なる魔法を組み合わせました。光の矢に水蒸気爆発を付与させ敵に叩き込む魔法です」



 さらっと恐ろしい事を仰りますね??



「も、もし肉体に当てていたらどうなるのかなぁ??」


「さぁ?? やってみない事には。恐らく、皮膚が爆散して内側から内臓が飛び……」


「も、もういいよ!! 説明ありがとう!!」



 それ以上は言わなくても分かりますから、と。ルーが続きを遮った。



「っ??」



 慌てふためくルーの顔を、小柄な大魔法使いは小首を傾げて見つめていた。



「ありえんじゃろ。今の威力」


「ふふん。私の自慢の弟子はどうかしら?? あんたでもあれだけ打ち込めば怪我の一つや二つ負うでしょう??」


「怪我で済めばいいがのぉ」



 でしょうね。


 当たり所が悪かったら木っ端微塵ですからねぇ。




「さぁ……。真打の登場よ!!!!」



 満を持しての登場に鼻息も荒い。


 マイが真紅の髪を揺らし、肩で風を切りながら進む。



「マイ――!! 程々になぁ――!!」



 あいつの事だ、無茶をしかねない……。


 ここは釘を差して制すべきと判断し、声を張り上げた。




「うっせぇ!!!! 全く。そんな野蛮にみえるのかしらね……」



 勿論、その通りです!!


 前歯の裏まで出掛かった言葉を必死に飲み込む。



「さぁって、先ずは小手調べと行きますか!!」



 マイが右手を翳し、赤い魔法陣を浮かべる。


 その中から現れたのは赤き炎の槍だ。



「風よ!! 我と共に吹き荒べ!! 出でよ!! 覇龍滅槍、ヴァルゼルク!!」



 彼女の得物である黄金の槍を召喚すると。



灼熱火輪ブレイジングサン!!



 先程出現させた炎の槍と合一させると、灼熱の熱波が此方に飛来した。



「あっつ!!」


「ほほう!! マイの奴考えたのぉ」


「下手な魔法を構築するより、物理中心の方が伸びるかと思ってね」



「ふんっ!! せぇいっ!!!!」



 炎を纏った槍を回し、橙色の軌道の残像が瞳に焼き付き。切っ先を振る度に炎が揺らいで熱を帯びて行く。



 突き、振り下ろし、回転。



 炎を自由自在に操る凛々しくも美しい彼女の演武に俺は酔いしれていた。



「マイちゃんかっこいいね――」


「ふんっ。見た目だけはまともかもしれませんわね」


「アオイちゃん――。もっと正直になればいいのに――」


「相手を切りつけるだけでは無く、炎の属性で焼き尽くすのですか……。参考になります」


「あたしも戦斧にデカい岩をくっつけるか??」



「ユウちゃん、それ魔法じゃないから……」



 カエデ達もマイの姿に俺と同じ思いを抱いているようだ。


 日常会話を続けるも。



「「「……」」」



 直ぐに口を閉ざして龍の舞を瞳へ焼き付けているのが良い証拠です。



「ふぅ!! 準備運動はここまでね」



 一際苛烈に槍を薙ぎ払い、炎を消す。



「むふふ……。私が本気を出したらどうなるか、見せてやりましょうかね!!!!」



 黄金の槍を大地へ突き刺し。



「すぅ――。ふんがっ!!!!」



 左右の腕を地面と垂直方向に広げ、左手の先には緑。そして右手には彼女の髪よりも赤い朱の魔法陣。


 両手に異なった色の魔法陣を浮かべた。



 あれがとっておきって奴か。


 今から始まるであろう龍の最大最強の切り札にワクワクが止まりませんよ。



「ぐぐぐ……」



 魔力という奴を高めているのだろう。


 丹田に力を籠め、重心をどっしりと構えて力を蓄えている。



 時間が経つにつれてマイの周囲の空気が熱せられ歪む。


 呼吸すれば肺が熱くなる熱気が此処まで届き、真夏の太陽に当てられた様に肌がじわりと汗ばむ。



 一体何をするつもりだ……。



「さぁっ……。終局よ!!!!」



 マイが俯きがちであった面を上げると。



「私の闘志よ!! 今こそ烈火の如く燃え上がれ!!」



 右手の赤い魔法陣から灼熱の業火を帯びた赤き槍が出現。



「我、龍族の誇りにかけ……」



 続いて、左手の緑の魔法陣から生命の鼓動を感じさせる深緑の槍が。



「勝利をこの手に!!!!」



 召喚した二つの槍を正面の黄金の槍に合わせると。上空に浮かぶ雲が霧散してしまう程の爆裂音と共に衝撃波が俺達を襲った。



「うぉっ!?」



 馬鹿げた衝撃波に思わず体の芯が揺らいでしまう。



「お、おいおい。大丈夫か??」



 頼むから間違ってもこっちに向けて使用するなよ??



「アオイ、カエデ。結界を張る準備をしなさい」


「えぇ……。あの馬鹿力のやる事はお見通しですわ」


「ここを壊されたら堪りません」



 三人が一気に険しい表情に変わる。


 それが、あの槍の威力を物語っていた。



「ぐ……。ずあぁあああああっ!!!!!!!」



 地面に突き刺した黄金の槍を引き抜く。


 黄金の槍は太陽よりも強烈な眩い光を放ち溢れ出る力を表現。それはまるで太陽が地上に出現したのかと此方に錯覚させる程だ。



 右手で太陽を掴み、大きく後ろへ引くと投擲の構えを見せた。



「私の乾坤一擲、受けてみなさい!! くらいやがれ!!」



 さぁ、解き放たれるぞ……。


 アイツの最強の切り札が。




龍飛鳳舞槍バニッシュメントランス!!!!」




 燃え盛る太陽を渾身の力で放つと一直線に空気を切り裂き、音の壁を突き破り、轟音と共に飛翔して行く。



「やっば!!!! 結界を張るわよ!!」



 エルザードが瞬間的に魔力を開放すると白目の部分が血の様な赤い色へと変化。


 そして、着弾予想地点の上空へ円蓋状の結界を張った。


 結界は頂点から、地面へゆっくりと閉じて行く。



「暴力女め!!」

「苦労しますね……」



 カエデ達も立ち上がり魔力を開放。エルザードのそれに重ねる様に結界を張った。



 そして太陽が結界の隙間を縫い、地面へ着弾した刹那……。




「どわぁぁああっ!!!!」



 結界内で炸裂した太陽が地面を、そしてこの山全体を強烈に揺れ動かす


 それはまるで大地震の様に。常軌を逸した力の波動が地面を伝わり円状に広がって行った。


 木々が、建物が、そして自然さえも揺れ動かす龍の力。


 本当……。


 凄い奴だよ、お前さんは。





「ぐっ……。ふぅ、これだけ力を使ったのも久々ね」



 エルザードの瞳が元の色へ戻り、肩の力を抜く。



「あ奴には後で説教じゃな」


「こってり絞ってやって下さいませ」


「泣くまで横っ面を叩くべき」



 カエデさん?? そこまでしますか??



 結界の中は爆煙で様子は伺えないが、恐らく彼女達が結界を張らねば此方まで衝撃波が届いていた事だろう。



「あ、あはは。ごめん。やり過ぎちゃった……」



 面目無さそうに話すと、照れ隠しの様に頭を掻く。



「力の加減を覚えるべきです。私達が抑えなければ、この山は大きく形を変えていました」



 カエデが珍しくいや、珍しくは無いか。


 厳しい口調でマイへ話す。



「し、仕方ないでしょ。初めて使用するんだから……」


「お、煙が晴れて来たぞ」



 ユウの言葉を受けて視線を動かすと驚きの余り変な声を出してしまった。



「うげっ……!!」



 そりゃそうでしょう。


 爆炎が晴れ渡りそこから現れた大地は形を変える、抉れ取る。


 そんな表現では物足りない程綺麗さっぱり消失してしまっていたのだから。



 う、嘘だろ??


 球状に大地が消えてる……。



「あんたねぇ。爆風で私達が怪我したらどうすんのよ」


「そうじゃぞ?? やるなとは言っておらんが加減をせい」


「大体の使い方は分かったから、今度使用する時は注意するわよ……」



 地中深くに突き刺さった黄金の槍を地面から引き抜き、魔法陣の中へと仕舞う。



「まぁ、威力に全振りするのはお前さんらしいよ」


「マイちゃんの頭の中には破壊しか入っていないのかな??」


「程度を覚えろ、程度を」


「馬鹿の一つ覚えも此処までくると憐れですわねぇ」


「やり過ぎ」



「うっせぇぞ!! おめぇら!!」


「いや、でも……。凄かったぞ?? 流石、マイって感じだ」



 自分の最大最強の魔法を披露したはいいが、矢継ぎ早に繰り出される苦言に対し。超絶不機嫌顔のマイへ言ってやると。



「そ、そう??」



 途端にぱぁっと顔が明るくなった。


 分かり易い奴め。



「あぁ。カッコ良かったぞ」



 もっとやれとは決していいません。


 調子に乗ってこの山を消されたら堪ったもんじゃないからね。



「ふふん?? もっと喝采しなさい!!」


「いや、それは止そう」



 腰に両手を当て、慎ましい標高の胸をムンっと張る彼女にそう言ってやった。



「良し、皆の者良く聞け」



 師匠が俺の膝の上からやっと立ち上がり、皆の前へ出ると嬉しそうな表情を浮かべて口を開く。



「この七日間、よう頑張った。お主達の成長、確とこの目に刻んだ」



 一人一人の目を順に温かい瞳で見つめていく。



「褒美と言っては何じゃが……。今宵は馳走を用意しておる。食い、騒ぎ、疲労を抜き明日の出発に備えよ」


「やっほぅ!!!! ご馳走だ!!」



 馳走という単語を受け、マイが気持ちの悪い小踊りを披露する。



「モア達に頼んでおるから期待してもよい。もう直ぐ夕刻じゃ、平屋へ戻り休むがいい」


「へへ、御馳走食べられるなら頑張った甲斐もあるよな??」


「あ、あぁ……。そうだな……」



「何だ?? 嬉しく無いの??」



 ユウが俺の顔を見つめ、不思議そうな表情を浮かべている。


 そりゃそうだ。


 あれが、いや。


 アレ達が料理に紛れて出現するかもしれないからな。



「まぁ、うん。気にしないで」



 御馳走を楽しみに待つ、ユウへそう言ってやった。


 世の中、知らない方が幸せな事もあるのだよ……。



「ユウ――!! 行くわよ――!!」


「あいよ――!!」



 浮かれた様子で平屋へと向かって行くワクワク感全開の背中が大変眩しく見えちゃいますよ。


 可能であればモアさんの悪行だけを綺麗さっぱり記憶消失出来る魔法を誰か開発して下さい……。


 叶わぬ願いを心の中で呟き。


 悪魔の料理人が拵えた最強最悪の食事が並ぶ地獄の宴会場へ向け、誰よりも肩を落として向かって行った。




最後まで御覧頂き有難う御座いました。


彼女達が開発した魔法の数々。


少々無理があるルビもありましたが……。そこはご了承下さいませ。



そして、ブックマークをして頂き誠に有難う御座いました!!


休日最終日にお年玉を頂き、執筆活動の励みとなりました!!



さて、宴会を終えてぐっすり休んだらいよいよラミアの里へと出発します。


そこで待ち構えている傑物達。


彼等は果たして狐の女王と淫魔の女王様の意思を滞りなく伝える事が出来るのか??


そして、間も無く突入する第二章最終章を見届けて頂ければ幸いで御座います。



それでは皆様、お休みなさいませ。

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