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第百五十八話 大変騒がしいお披露目会 その一

お疲れ様です。


正月三が日の投稿なります。


それでは御覧下さい。




 この七日間の訓練は色濃く、徹底的に体を苛め抜いたと言っても過言では無い。自由時間である本日は本来なら休息に徹するべきだ。


 しかし、人の悲しい性なのかそれとも馬鹿真面目な性格なのか。


 俺はいつも通りの時間に起きてぐっすりと熟睡する皆を起こさぬ様、訓練場へ出て走り込みを行った。


 此処へ来てから毎朝の習慣をやらないと何だか気持ち悪いって感じてしまったからね。



 一っ走り終えた後、珍しく普通の量の朝食を終えると。



『おっしゃぁぁああ!! 行くわよ!? リューヴ!!』


『あぁ、掛かって来い!!!!』



 師匠が仰っていた通り午前中、俺達は己の足りないと思う所を自主的に鍛え訓練に勤しんでいた。



『カエデ、使い魔の術式なのですが……』


『私もそこが引っ掛かっていた』



 引き続き新たなる術式の構築に勤しむ者。



『う――ん……。桜嵐脚の回転数は足りるんだけど、着地が難しいんだよなぁ』



 技を鍛え抜く者。



『おぉ――……。ユウちゃんの腹枕って気持ちが良いんだねぇ……』


『そりゃど――も。ってか出来れば人の姿で頭乗っけて。毛がついちまう』


『や――』



 徹底的に休む者。


 それぞれが思い思いの時間を過ごしそして遂に。お披露目の時間となった。




「おぉ。ちゃんと時間通りに集まったの」



 訓練場の中央で並ぶ俺達へ向かい、師匠が三本の尻尾を揺らしながらやって来る。


 ふむ……。あの振れ幅からしてかなり上機嫌だろう。



「当り前よ。遅れたら鉄拳が飛んで来るし」


「鉄拳?? 甘い甘い。剛拳で貴様等の頭蓋を砕いてやるわ」



 遅刻でもしようものなら本当に師匠の仰る通りになりそうなのが怖い。



「ちゃんと完成させたんでしょうね??」



 師匠から遅れてエルザードが丈の短いスカートの端をルンっと揺らしつつやって来る。



「勿論ですわ。それぞれが満足する結果を出していますので」


「ほぉ、それは楽しみじゃのう。では、早速見せて貰おうか。誰が先陣を切るのじゃ??」


「ふふん、クジで順番を決めたのよ。最初は……」



 マイが斜め四十五度に口角の端を上げてビシっ!! と指差したのは……。



「私で――す!!」



 ルーが明るい声と共に列の前へぴょんっと一歩出て軽快に挙手した。



「ルー、頑張れよ!!」


「もっちろん!! レイドの度肝を抜いてあげるよ!!」


「じゃあ、見学する人はあっちで座りましょうか」



 エルザードが訓練場と平屋の間にあるなだらかな斜面へと向かう。



 ある程度離れていた方が魔法も披露し易いか。


 彼女の言葉を受け、随分と楽な歩調で歩き始めた。



「よっこいしょっと。ね――。お茶とかないの――??」


「あたしは茶菓子も欲しいかなぁ――」



 お嬢さん達、演劇を見に来た訳じゃありませんよ??



 斜面に座るなり、明後日の方向を向いた意見が飛び出てしまう。



「黙っておれ。集中できぬじゃろうが」



 間髪入れずに師匠が喝を入れる。


 流石です、師匠。


 これから訓練の成果を披露するって時に、お煎餅をバリバリ食む音が鳴り響けば。静寂な舞台の上の主演女優も顔を顰めてしまいますからね。



「そうねぇ。茶の一つくらいあった方がいいかもねぇ」



 エルザードが抜けた声を出してだらしない恰好で座るマイ達に便乗する。


 貴女は師匠側でしょうよ。



「そ――そ――。お茶のみたぁ――い」

「平屋はそこだし、お茶取って来ますよ」



 これ以上アイツに騒がれたら収拾がつかん。


 ちょいと溜息を放って立ち上がると斜面を登り始めた。



「あ、荷物の中からクッキー取って来て――」


「あたしのも――」



「……。了解です」



 何だろう。


 この誰にもぶつけ様の無い憤りはどうすればいいんだ??



「ルー!! お茶の用意するから待ってて――!!」


「へっ!? あ、うん。分かった――!!」



 マイの言葉を受けると、ルーらしい明るい笑みを浮かべて手を振る。


 披露の邪魔をされたのだからもっと憤った声を出しなさいよね。



「レイド様、御手伝い致しますわ」


「私も手伝う」


「アオイ、カエデ。助かるよ……」



 俺の後に続いてくれる両名に礼を言い、大変重い足取りで移動。


 古ぼけた戸を開き平屋にお邪魔すると、早速探索を開始した。



「アオイは……。そこの御盆を持ってくれるか?? んで、カエデは湯呑と急須。俺は荷物の中からクッキーだっけ?? それを探すよ」



 お目当ての品はどこに仕舞ったのだろう??


 大部屋の一角に積まれている荷物を漁り出す。



「レイド様、見つかりました??」


「ん――。中々見つからなくてね……。ここかな……??」



 大きい背嚢の中へ手を突っ込み、一番手前の物を適当に掴んで威勢よく引っ張り出した。



「よっと……!!」



「「……………………」」



 刹那、時間が凍り付いた。


 ユウの荷物であった事は間違いない。


 うん、これを背負っていた所は何度も見た事あるし。


 でも問題はそこじゃなくて!!


 容易に持ち主が判別出来てしまう物を引っ張り出してしまったのだ。



「……。レイド様??」

「……。レイド」



 生気が宿っていない四つの目が俺の両目を見つめる。



「わ、わ、分かってるって!!」



 猛烈な急いで西瓜を収納する為の深緑の布をユウの背嚢の中へ捻じ込んでやった。


 くそう!!


 ここじゃないのか!!



「マイの荷物の中にあると思う」



 俺の様子を見かねたカエデが仕方なくこちらへやって来てくれる。


 申し訳ありません……。


 男性が女性の荷物を漁るのはやっぱり駄目でしたね……。




「これですね」


「おぉ!!」



 一つの小さな木箱を開けるとその中身はほんのりと甘い香りを放つ焼き菓子であった。



「さ、行きましょう。これ以上待たせると文句を垂れると思いますので」


「そうだな」


「後、レイド様。先程の件は黙っておきますわぁ……」



 先程の失態からか、ちょいと顔に熱さが残る俺の顔を見てアオイがニヤリと笑う。


 おっとぉ。


 弱みを握られてしまったか??



「だ、駄目だぞ?? この一件を元に強請ろうだなんて!!」



「さぁ?? 何の事でしょう??」

「皆目見当もつきませんよね??」



 いかん。


 頭の切れる二人を相手に口論で勝てる気がしない。


 こうして、徐々に証拠を積み重ね良いように俺を扱うのだ。


 考えも無しに行動に至るのは金輪際しません……。



「遅い!!」



 そして、コイツはもう少し礼節って言葉を覚えた方が良い。



「悪い、中々見つからなくってさ」

「どうぞ」



 カエデがマイへ木箱を渡す。



「あれ?? あたしのは??」


「探したけど、見つからなかったよ」



 超絶無難な答えを出しておく。


 貴女様の下着を引っ張り出してしまいましたぁ――、何て言えるか!!




「クッキーは中々見つかりませんでしたわねぇ??」

「クッキーは見付けれませんでしたけど、それ以……」


「わぁ!!」


 慌ててカエデの口を塞ぐ。



「うん?? 何かあったのか??」



 ユウが純粋無垢な瞳で俺を見上げる。


 そんな曇りない瞳で見つめないでおくれ。



『カエデ、アオイ。ちょっと……』



 相も変わらず意味深な笑みを浮かべる二人に手招きをする。



『今度、何か奢るから黙っていてくれよ??』


「畏まりましたわ。カエデ、これは僥倖ですわね??」

「えぇ。日頃の行いが良いからでしょう」



 俺にとってはちっとも良く無い事なんだが。




「ね――!! もういいでしょう!?」



 ルーが待ち惚けを食らい、これ以上待てぬ様子で叫び出す。



「茶が入るまで待てや!!!! ユウ、クッキー」

「ん――。ちょっと古いけど、美味いな!!」



 よくよく考えればあれ、随分と前のクッキーだよな??


 食っても大丈夫か?? まぁ、あの二人の胃袋なら大丈夫だろう。



「師匠、お茶です」


 湯呑に淹れた茶を師匠へ渡す。


「うむ。……はぁ。美味いのぉ」


 湯呑に小さな唇を当て、ゆっくりと味わう様に口の中へ流し込む。


 美味そうに飲むなぁ。



「はい、エルザードの分」


 すぐさま隣のエルザードにも渡す。


 この人達だと順番の事に拘りそうだからな。直ぐに出さないと文句垂れそうですもの。



「ありがとう。……んっ。おいしっ」


 潤んで、艶やかな唇が湯呑の淵を色っぽく濡らす。


 何だろう。


 たかが茶を飲む姿なのにこうも対照的に映るなんて。



「お主も座らぬか」


「あ、はい」



 言われるがまま、師匠の右隣りに腰かけた。



「これ、足を広げよ」



 師匠が立ち上がると、俺の足をちょんっと蹴る。



「え?? こうですか??」



 言われるがまま足を広げた。



「よっと。うむ、まぁまぁじゃな!!」


「いや、前が見にくいのですが……」



 人一人分座れる空間を捻出させると俺の了承を得ずに座り、大変良い匂いがする背を預ける。


 花の香りが鼻腔に届き、視界が三本の金色の尻尾で微妙に遮られてしまった。



「そうやって、愛弟子の邪魔ばかりして。手の掛かる師匠よねぇ?? もっと私を見習いなさいよ」



 苦情が右から飛んでくる。



「お主もカエデの体を借りれば良い事じゃ」


 そういう事なのだろうか。弟子に無理強いをさせる事が間違いなのでは??


「そういう事言ってんじゃないわよ」



 お!! 珍しく意見が合いましたね。



「私の旦那の股間に臀部を預ける事が間違っているのよ」



 全然合っていなかった……。



「真昼間から良からぬ事を……。あ、羨ましいのじゃなぁ?? 欲求不満で男気が無いから自然とそんな事を考えるのか。憐れな奴じゃ」


 憐憫を籠めた瞳で隣を見つめる。


「はぁ?? それ私に言ってんの??」


「さぁのぉ……。あ――良い心地じゃなぁ――」


「黙って聞いていれば……」


「黙る?? ペラペラと良く舌が動いておるでは無いか」



 師匠、揚げ足取っちゃ駄目です。



「クソ狐め……。その尻尾、焦がすわよ??」


 エルザードの体内から魔力が滲み出すと、周囲が歪み始める。


「出来るかのぉ?? ほぉれ。こっちじゃぞぉ」



 そして、それを意に介さず目の前の尻尾が左右に揺れ始めた。



「もう!!!! 始めるからね!!!!」



 さっきからずぅぅっとこっちの様子を伺っていた様だ。


 ルーが待ちきれぬ様子で憤慨を籠めた大声を放ってしまった。



「頼む――!!」



 師匠の背後から大声を放つ。


 これ以上言い合いを続けていれば、俺の膝の上で地上最強決定戦が勃発してしまう。


 そして、巻き込まれたら最後。この披露会を見られなくなってしまうのだろうよ。


 流石の俺も大体掴めて来たからね。



「全く……。一人ぼっちでずっと待っているこっちの気にもなってよね……」



 遠いから聞こえないが、ぶつくさと文句を言っているのだろうか??



「行きます!! ふぅ……」



 大きく息を吸い込むと集中を開始。




「輝く瞬光の雷鳴……。走れ!! どこまでも!! 白雷閃光ヴァイスブリッツ!!」



 左手の先に眩い光を放つ黄色の魔法陣が浮かぶ。



「やぁっ!!」



 そして左の拳を強く握り魔法陣の前に勢い良く突き出す。


 刹那、空気を震わせる雷鳴と共に白き稲妻が迸り、訓練場の端で無防備で突っ立いてた木に直撃。


 着弾と同時に木が激しく燃え盛り、ルーの魔力の威力を証明した。



 やるなぁ……。


 放出系の魔法が苦手って言っていたのに、それを物ともせず克服した姿に温かい感情が湧いてしまう。


 彼女の御両親も御鼻が高い事でしょうね。



「「「おぉぉおお!!!!」」」



 一堂が声を上げてルーの魔法に驚く。



「山火事は怖いから鎮火しないとねぇ――」



 エルザードが指を鳴らして雨を降らすと、燃え盛る木を鎮火させた。



「ルー!! 凄いぞ!!」



 思わず声を上げてしまった。



「え、えへへ……。何だか恥ずかしいなぁ」



 照れ隠しで頭を掻いている。



「ふんっ。やるじゃない」


 龍も納得の御様子。


「次いきま――す!!!!」



 へぇ!! まだあるんだ!!


 二つも新しい魔法を取得したのか……。



「迸る閃光、我に降り注ぎ打ち破れ!! 白輝憑依グランツターグン!!!!」



 先程と同じ色と輝きの魔法陣が浮かぶ。


 稲妻が走るかと思いきや、その光はルーの体に宿った。



「はぁぁああああ!! うりゃぁぁああ――!!!!」



 宙へ高く舞い、白き稲妻を纏った拳を地面へ激しく叩き込むと。


 強烈な威力を纏った拳は堅牢な地面を容易く砕き。鼓膜をつんざく爆音と共に地面が大きく窪んだ。



「ひゅ――!! あたしばりの破壊力だな!!」


「えぇ。それに雷の属性も付与されています。あれを打たれたら痺れて暫くは動けなくなるでしょうね……」



 カエデの冷静な分析のお陰で理解出来た。


 自然界の猛威をその身に宿し、敵を打ち破る。


 その威力は今見た通りだ。



「い、以上です……」



 なだらかな斜面で座る俺達の前に到着すると、ぎこちなく頭をペコリと下げた。



「ルー!! よく頑張ったな!!」



 両腕を師匠の体の前へ移動させ、彼女の体に触れない様にして拍手を送ってあげる。



「まぁまぁ頑張ったじゃん!!」


「あぁ、大したもんだっ!!」



 マイとユウの言葉を受けると……。




「あ、ありがとう……」



 褒められて恥ずかしいのか。


 右手と右足、左手と左足を同時に動かしながら斜面へと移動して。耳まで真っ赤に染まった顔で斜面の上にポンっと座ってしまった。



 頭の天辺から蒸気出てる……。


 皆の前で素直に褒められる事が苦手なんだな……。



「中々良い物を見せて貰った。お次は誰じゃ??」


「ふふん!! あたしだよ!!」


「ユウ!! 頑張れよ!!」



 体の前に拳を激しく衝突させ乾いた音を響かせ、堂々たる歩みで訓練場の中央へ向かい始めた彼女に檄を飛ばすと。



「おう!!」



 少しだけ不器用に片目を瞑り、声援に応えてくれた。



 ユウの魔法か……。どんな魔法だろう??


 本命予想は力を前面に押し出した魔法ちからで、大穴がルーが使用した放出系の魔法かな。



「うっし、いきますかっ。すぅ――……。ふぅ」



 訓練場の中央に辿り着くと、目を瞑り集中を始めた。



「大地に宿りし大いなる力。その片鱗を示せ!! 防御壁ストーンウォール!!」



 彼女が力強く瞳を開くと同時、足元に深緑の魔法陣が浮かびユウが大地を強く踏みつけると。


 ユウの前に分厚い岩の壁がそそり立った。



 ほぅっ!!


 襲い掛かる飛翔物、若しくは魔法に対する防御策か!!


 力技なのは相変わらずだけど良く考えてある魔法だな。



「吹き飛びやがれっ!!!! でやぁっ!!」



 己の拳でそれを打ち砕くと岩の礫が正面に弾け飛ぶ。



「成程。相手の攻撃も防げるし、砕いて攻撃にも使えるのか。ユウらしい魔法ね」



 エルザードが今の魔法の効果を説明してくれるのですけども……。


 何だか雲行きが怪しいな。



「因みに、鉄にもできま――す!!」



 再び地面を踏むと今度は黒鉄の壁が現れた。


 あれだけ厚くて頑丈なら、そうそう打ち破れない……。



「…………。どっっせ――いっ!!」



「「「いやいやいやいやいや」」」



 砕け散った黒鉄の先からユウが現れ。得意気に大戦斧を肩に掲げている様を捉えると俺を含めた数名が呆れにも似た声を出してしまった。



 破壊して武器として使うのは理解出来ますけども、それを壊す方が逆に疲れないかい??



「ふぅ――。我ながらかってぇなぁ」



 ほら、健康的に焼けた肌にうっすらと汗が浮かんでるし。



 だが、あの鉄の塊を真面に食らったら骨の一つや二つ粉々だろうなぁ。



「お次の魔法なんだけどさ――!! 魔力高めるのに時間掛かるからちょっと待って――!!」



 了承の意味を込めて無言で手を振ってあげた。



「母なる大地、偉大なる地脈に流れる力……。この拳に宿れ……。巨星大鳴動ガイアナックル……」



 静かに目を閉じ、足を肩幅に開き。腰に拳を当てて重心を落とす。


 そしてその姿勢のまま魔力を高め始めた。


 一体どんな魔法何だろう。


 期待を込めた視線で魔力を高め続けるユウを見つめていた。



「…………」

「…………」



「…………。いい天気ね」



 大変心地良い静寂の中。マイが誰とも無しに声を上げる。



「そうだなぁ」



 その声を掬い相槌を打ってやった。


 ユウが魔力を高め始め、数分経ったが何ら変化は見られなかった。



「なぁ。エルザード」


「ん??」


「ユウに変化見られる??」



 魔法が分からぬ俺には何も変わっていないようにしか映らない。



「変わっているわよ。魔力も高まっているし……。例えるなら……噴火前の火山、かしらね??」



 火山ねぇ。


 火山って爆発するんだよな……。


 爆発……。


 何だか嫌な予感がするのは俺だけでしょうか。



「始まるわよ??」



 エルザードの声を聞き、彼女の一挙手一投足を見逃すまいと注視した。



「はあああぁぁっ!! くたばりやがれぇぇええええ!!!!」



 右の拳に深い緑の輝きが宿り、ユウの膂力そして魔力を合わせた合力を力の限りに……。


 迫力満点の怒号と共に地面へ叩き込んだ。



「どわあぁぁっ!!」



 拳が大地にめり込むと不動の山が震え振動の波が俺達の尻を通過。そして、ユウの足元の地面が下方へ沈んだ。


 そう、沈んでしまったのです。


 ルーの一撃は地面を抉る程度であったが彼女のそれは地面を沈める程の大威力。


 食らったら体が弾け飛ぶな。



「あはは……。やり過ぎちゃった……」



 バツが悪そうに頭を掻く。



「凄まじい威力じゃが……。発動まで時間が掛かり過ぎるわい」


「そうねぇ。でも、ユウなら攻撃に耐えながら溜められそうじゃない??」



 師匠とエルザードの協議の結果、何んとか及第点を頂けそうな雰囲気ですね。



「儂なら溜まる前に気絶させてやるわい。ほれ、削れた地面を治さぬか」


「うっさいわね。分かっているわよ……」



 エルザードが手を翳し、グチャグチャになってしまった訓練場一杯に魔法陣が浮かび上がると。



「おぉ!!」



 地面が隆起し、平らな地面へ早変わりだ。




「凄いな!!」


「どういたしまして」



 あれだけ荒れ果てた大地が一瞬で元通り、ね。エルザード一人で何でも出来そうな気がしてくるよ。



「どうよぉ?? あたしの魔法は」



 ユウが自慢気に鼻息を荒げて帰って来るが……。




「魔法って言うより、殆ど物理攻撃じゃない」


「ある意味ユウちゃんらしかったよ――」


「呆れた馬鹿力です事」


「暴力の権化」


「今のは魔法では無いだろう」



 待っていたのはちょいと辛辣で、散々な言葉。



「いいよいいよ。どうせあたしは暴力女ですよ――っと」



 不貞腐れ、唇を尖らせて斜面に転がってしまった。



「そんな事ないぞ?? どの魔法も使い処はあるし。それに最後の奴、凄かったじゃないか」


「褒めてくれてありがと――ねぇ――。ちょっとは元気出ましたよ――っと」



 そう話すものの、唇の尖り角度は変わらないままであった。




最後まで御覧頂き有難うございました。



昨日申した通り家電量販店へ赴き、いつ壊れても構わない為。展示品を買おうとしたのですが……。


「この商品のリモコンを探して来ますね――」 っと。


接客業らしい笑みを浮かべて店員さんがバックヤードへと姿を消しました。


その十五分後。


「展示品の動作確認をするので暫くお待ち下さ――い」


希望する商品を大事そうに抱えて再びバックヤードへ。


そのまた十五分後。


「すいませぇん。この商品、取り出し口が不良でして……。此方の展示品ではどうでしょうか??」


別に構いませんよと伝え、彼女は二つ目の展示品を抱えて三度バックヤードへ。


更に、十五分後。


「お客様――。も――しわけありません。この商品も取り出し口がぁ……」


いやいや!!


一時間近く立ちながら待って、二つとも不良品って。


ちょいと文句を放って帰ろうとしたのですが。


「代わりと言っては何ですがぁ。此方の新品を展示品と同じ値段で販売しても良いと許可を得たのですが。如何いたしますか??」


「買います」


紆余曲折あり、展示品では無くて新品を展示品と同値段で購入出来た次第です。






そして、ブックマークをして頂き誠に有難う御座いました!!


二章の終結へ向かって嬉しい励みとなりました!!


正月に入ってからというものの……。文字を打ち過ぎて指先が滅茶苦茶痛むのですよね……。


ですが、読者様が待っている以上。指を止める訳にはいかんのです!!



明日も寒い予報ですので、体調管理には気を付けて下さいね。


それでは、皆様。お休みなさいませ。

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