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第百四十八話 黒き憎悪の片鱗 その一

お疲れ様です。


本日の前半部分の投稿なります。


それでは御覧下さい。




 抜け落ちて失われていた力が体の芯に戻って来る感覚を受けて目を開く。


 心の中で目を覚ますとは些か可笑しな表現だとは思うがそれでも体の感覚がある以上、そう感じるに他ならない。


 周囲を囲む森の奥へ何かを探す様に視線を動かすと……。見覚えのある森の中に何処か安心感に近いモノを覚えた。



「此処って、確か」



 鮮やかな緑に囲まれ、上空からは柔らかい陽光が差し込んで大地を照らす。


 こんな時でも無ければあそこにある倒木に後頭部を預けて最高な環境下で昼寝をするのですけども、生憎今はそれどころじゃないのですよ。



 これが……。俺の心の中の光景なのだろうか。



 日頃の疲労がが溜まりに溜まって、もっとおどろおどろしい光景の方がしっくりきませんかね??


 そのしっくりくる光景を思い浮かべてしまう程の酷い状況下で日々を過ごしている方もどうかとは思いますが……。



「――――。スゴイでしょ??」


「わぁぁああっ!! 居るなら居るって言ってくれよ!!」



 突如として耳元で囁かれた女の声に心臓と体が大混乱。


 驚きの余り飛び上がってしまった。


 そして傍から見れば大変面白い動きでケラケラと笑う彼女から離れた。



「あはっ、御免ね?? ぼぅっと突っ立ていたからイケナイ私が出て来ちゃって」



 心臓麻痺で死んじゃいますので、次からは真面に声を掛けて下さい!!



「そんな事よりも!! どうしてこの森で目を覚ましたのか説明してくれる??」



 可愛い顔だからって何でも許される訳じゃないのですよ!?


 見逃すのは今回だけですからね!!



「ん――。何と言えばいいのかな。心に浮かぶ景色ってのは人それぞれなのよ。例えば民家の中だったり、街中だったり。その人が日常的に過ごす場所若しくは衝撃的な出来事の時に思い浮かべた景色が映し出されるとでも解釈出来るわね」



 つまり、マイとの出会いは衝撃的な出会いだったと俺の心は決定付けている訳だな。



「この森はさ、マイと初めて出会った場所なんだよ。その後、ミノタウロスの里へお邪魔したんだけどね」


「ふぅん。この森の中で出会ったんだ??」



 随分とのんびりした歩調で歩み、興味津々といった様子で周囲の景色を眺めている。



「龍の姿のマイがオーク達と戦っていて、背後からデカい槍が投擲されてさ。気が付かないアイツを庇ったら……。後は周知の通りだよ」


「良く見ず知らずの、しかも魔物を庇う気になったわね??」



 無茶したわねぇっと。腰に手を当てて飽きれていた。



「う――ん。それが不思議なんだよなぁ。戦っている姿に憧れたのかな?? 兎に角、この龍はここで倒れちゃ駄目なんだ。そう思ったら体が勝手に動いたんだよ」



 自分でも良くあんな無理はしたなと今でも思う。


 でも、あの行動があったこそ今の自分が居る訳であり。その事について一切後悔はしていない。


 ただ唯一不満があるとすればアイツの食欲だろうなぁ……。我が家の家計に直結する大打撃を与えていますもの。



「お人好しにも程があるわよ。さて、精神は上手く繋がった事だし」



 さぁ、いよいよ龍の力との御対面か??


 恐ろしい力との対面に備え軽く体を解し、強き心を持つ為に精神を落ち着かせていると。




「…………。子作り、しよっか??」

「ブッ!!」




 何を考えているのか知らんが。初秋らしい落ち着きのある上着の中の白いシャツの拘束具を順に外し始めるではありませんか!!


 こんもりと盛り上がった双丘、白く美しい肌。


 男心を擽る色気を含んだ瞳に見つめられると、まるで金縛りにあったようにその瞳を直視してしまう。



「ふふ、冗談よ」


「勘弁してくれ。寿命が縮みそうだ」



 思わず触れてしまいそうな魅力を放つ果実を収めるのを見届けると、地面に横たわる倒木の上に腰かけた。



「さて、龍の力に出会う前に。少しだけ練習しましょうか??」



 そう話し、俺の隣に腰掛ける。



「練習??」


「想いを形にする練習よ」


「何だそりゃ??」



 要領を得ない答えに首を傾げた。



「ここは貴方の魂の、心の世界。これまで何人もの人と出会ってきたでしょ??」


 そりゃ生きていれば自然と人に出会うよね。


「貴方がどんな風にそれぞれの人を思っているのか。強く念じてみて??」



 強く念じる……。簡単に難しい注文をしますね、この綺麗なお客様は。



「先ずは手始めに、外にいる六人を思い描いてみましょうか」


 マイ達を想う、か。



「どんな風に想えばいいんだ??」


「何でもいいわよ。例えば、マイだったら。阿保面で仰々しく飯を食べているとか」


「はは、酷い言われようだな」



 アイツは今頃汚いクシャミをしている事であろう。



「貴方が想う人の形を強く念じるのよ」


「取り敢えずやってみるよ」



 綺麗なお客様から受け賜った指導を実践する為目を閉じ、各々の姿、性格を思い描いて行く。



 マイは阿保面で大飯食らい。だけど、能天気な姿に何度も元気づけられた。強敵と対峙しても臆せず朱の髪を揺らして勇猛果敢に向かって行く姿は大変カッコいいですね。只、も――少し食べる量を減らして欲しいのが本音で御座います。



 ユウは明るい性格で。話をしていると楽しくて。友達思いの優しい奴。矢面に意見を出さないがしっかりと縁の下で皆を支える姿が本当に頼りになるよ。健康的に焼けた肌に誂えたような快活な笑み。強張っていた肩もあの笑みを見ればきっと溶け落ちてしまう事だろうさ。



 カエデは、賢くて聡明で、頼り甲斐がある。起き立ての常軌を逸した寝癖が玉に瑕だけどそれも彼女の良い所だ。藍色の髪が綺麗で、頼りない体からは想像出来ない魔力を秘めている。作戦や意見等、頼りっぱなしなのは申し訳無いと思っています。



 アオイは、まるで白い雪の様な美しさを持つ可憐な存在だ。何度もドキリとさせられているがそれは内緒です。本人は自覚していないだろうが、和を重んじている姿が俺の心を落ち着かせてくれる。彼女達の中で最年長、といってもまだ二十一歳なのだが。長女の自覚を持ってずんぐりむっくり太った雀との乱痴気騒ぎを収めてくれれば幸いですね。



 ルーは、底抜けに明るくて疲れている時もそれを感じさせてくれない。仲間内を盛り上げてくれていつも皆に笑いが絶えないのは彼女の存在が大きい。俺も随分とその明るさに助けられたものさ。



 リューヴは、強くて格好良くて、俺も彼女みたいに強くなりたいと何度も思った。でも、弱い一面もあって、強さの中にある脆さが人間味を感じさせてくれる。だらけきった仲間を締めてくれる心強い女性だ。



 様々な想いが体の中を駆け巡り、心が陽性な気持ちで包まれてくる。


 こうしてみると俺って……。仲間に恵まれているよな。


 誰一人欠けてはいけない。


 それぞれがそれぞれの役割を担っている。


 全員で一つの歯車を形成している感じだ。



「はい、目を開けて御覧なさい??」



 彼女に促されゆっくり目を開けると周囲に温かい六つの光の球が浮いていた。



「これは??」



 その淡い光を不思議に見つめて口を開いた。



「マイ達に対する貴方の想いよ?? どれも温かくて素敵な気分にさせてくれるわね」



 彼女の言う通り、それは凍え凍てつく冬の空に現れた温かい太陽のように周りを照らしている。



「これが……。俺の想い」


「どれも同じ大きさみたいねぇ。ふぅん、そっかぁ」



 何か納得したように光球を見つめて大きく頷いている。



「ね、私とクソ狐の事も思い描いてよ」



 渾名では無く、名前を仰って下さい。わが師を愚弄するのはいけませんよ??



「師匠とエルザードを?? 別に構わないけど……」



 再び目を閉じ、彼女達に対する想いを念じた。



 師匠は俺の目標だ。誰よりも強く、厳しく、そして時折見せる優しさが堪らなく嬉しい。心が溶け落ちてしまう安心感を覚えさせてくれる笑顔、金色に輝く髪とモフモフの尻尾。そのどれもが魅力的で大魔である事をたまに忘れてしまいますよ。



 エルザードは凛とした美しい立ち振る舞いが誂えた様に良く似合っている。そしてその姿とは対照的な強さに正直目を丸くしている。綺麗な桜色の髪に妖艶な瞳。捉えどころの無い性格でも、その奥底には優しさが垣間見える。それは僅かに、注意して見ないと分からない程だ。




「へぇ――。ふぅん……」



 エルザードの声を受けて徐に目を開ける。


 そこには二つ増えた八つの光が蛍のように、時折瞬き、淡い光を放つ様になっていた。



「どれも同じくらいな明るさだな」


「え――。うっそ。私の生徒と阿保面大食龍だけ何だか強くな――い??」


「そう、かな??」



 改めて眺めてみるが……。どう考えても一緒の明るさに見えるのだけども。



「一緒に見えるって事は……。それなら私も対象って事よね……」



 一人で何かを納得して頷いているけども。これはどういった意味なんだろう??



「はい、これで練習はお終い。お次はいよいよ本番よ??」



 倒木から立ち上がると、柔らかい表情から一転して真剣な面持ちを浮かべた。



「今から龍の力に触れるわよ。今思い描いたように、マイから授かった龍の力を想像してみて。出来るだけ鮮明にそして強く念じて」



「分かった。やってみよう」


 大きく呼吸をして、集中力を高めながら瞳をそっと閉じた。



 マイから授かった力……か。


 先ずは初めて会った時のマイを思い描く。


 深紅の龍の赤き甲殻、全てを噛み砕く牙、大地を揺るがす巨躯と大木を薙ぎ倒す尾。


 口から放たれる炎は全てを炭へ還し、背中から生えた翼は大空の覇者を彷彿させる。


 凛々しい姿、溢れ出る力、膝を折り畳み祈ってしまう程の美しさ。一瞬で憧れた姿を強く念じた。



 それが今やどうだい。 



『むっひょ――!! やったぁぁああ!! 特製巨大おにぎりだぁぁああいい!!』



 普通の大きさじゃ物足りないから私に誂えた大きさのおにぎりを握れと所望するんだぞ??


 龍族の誇りは一体何処へやら。誇りよりも彼女はきっと目の前のおにぎりを選択してしまうだろうさ。



 いかん、集中力が途切れてしまったぞ。


 もう一度集中し直そう。



「ふぅ――……」




 そして、彼女から授かった力は漆黒の闇の力だ。


 集中力を高めて腕に発現させれば身体能力は飛躍的に上昇するが、その代償として大量の体力を消耗し。時には酷い痛みを発生させる。


 自分自身の中に眠る力なのにその欠片を宿しただけでこれらの症状が発生するのだ。


 端的に言い表せば、正に諸刃の刃だな。



「上出来よ。これが……、龍の力か。凄まじいわね」



 三度目を開けるとそこには黒と赤が入り混じった光が浮遊していた。


 先程との光と違い、熱を感じさせる程の熱量を放っている。



「何か……。禍々しいな??」


「そりゃ強さの塊ですもの。レイドの優しい想いとは真逆の存在よ。さ、ここからが大変なの」



「大変??」


 いつもの飄々とした口調から一転、険しい表情と共に口調も重々しくなる。


「今見えている光に手を触れなさい。そうすれば禍々しい光の中から貴方の体の中に力が流れ込んでくるわ」


「触っても大丈夫??」



 どう見ても火傷しそうな色だし……。


 それに龍の力と聞けば腰が引けるのも当然の事。


 どこぞの龍みたいに触れただけで噛まれるかも知れないし。



「流れ込んで来る力に飲まれない様に。丁度、腕力で抑え付ける感じかしら。相手の力を制御するの」



「難しそうだな」


「男だったらドンと構えなさい。安心して、私も一緒に触れてあげるから」



 エルザードの手が肩に置かれると、少しだけ勇気が湧いて来た。



「分かった、やってみよう」


「ん。いい子」


 柔和な笑顔で此方を見つめる。


 ズルいぞ。


 そんな顔されたら男らしい所を見せなきゃいけないだろう。


 おっかなびっくり、触れたら火傷してしまう熱を持つ物を触るように。たどたどしく光に触れた。







「…………ぅっ!?!?」



 刹那、周囲の温かい森の光景が霧散し代わりに常闇が俺達を包み込んだ。


 闇の中に空気を切り裂き雷鳴轟かす稲光が迸るが、その強烈な発光でも漆黒の闇を打ち払う事は叶わない。


 無限に広がる闇。


 この空間に身を置くだけでも危険だと己の防衛本能が働き。無意識の内に脱出経路を確保する為に視線を上下左右、悪戯に動かしていると奇妙な影を捉えた。


 闇の中で迸る雷光に照らされたそれは……。




 黒き龍の姿だ。



 一度巨大な翼をはためかせれば嵐を呼び起こし、鋭く角張った黒き甲殻を備えた堅牢な胴体を支える後ろ脚は呆れる程の筋力が積載されており。大地に突き立てるだけでうねりを伴った地震を発生させるだろう。


 短い二本の腕の先に生えた指先には深紅の龍と同じくいとも容易く生命を断絶出来る鋭い爪が生え揃っていた。


 この星の生態系の頂点に立つ相応しい姿に憧れと同時に畏怖の念を抱いてしまった。


 そりゃそうだろう。


 あんな化け物みたいなのが俺の心に棲んでいるんだぞ?? これで恐れない方がおかしいって。



 どちらが上でどっちが下か。


 方向感覚が狂う闇に包まれている中。


 黒き龍は目を瞑り俺の直下、淡い光の中に包まれて落ち着き払った表情を浮かべ休息していた。



『あれが、俺の中に眠る龍の力か??』



 俺と同じく深い位置で休んでいる龍の背中へ視線を落としている彼女へと問う。



『そう。此処は貴方の深い……、深い心の奥底。そこに眠っている力の根源がアレなのよ』



 精神の核へ潜っている所為か、俺達の声も通常の声色とは違い響いて聞こえてしまう。


 ここが、俺の心の底か。


 随分と殺風景だなぁ。もう少し違う色があればあの龍さんも落ち着いて眠れるってのに。



『見ていても始まらないわよ。あの龍に触れてみなさい』


『了解だ』



 足元に存在する黒き龍へと向かって深い海へ潜る様に移動を開始。


 淡い光に包まれ、休息を続ける黒き甲殻を備えた龍の背に恐る恐る手を伸ばして触れた刹那。



『ぐぅっ!?!?』



 龍に触れた右手から灼熱が這い上がって来た。


 襲い掛かる熱さと痛みで体中の血液が沸騰してしまいそうだ。



『あっつ!! おい!! これ大丈夫なのか!?』


『焦らないで!! 全身の力を振り絞ってその力に抗いなさい!!』


『くっそ!!』



 丹田に力を籠め、足を踏ん張り、右手の筋力を総動員する。



『ぐっぐぅ…………』



 奥歯を噛み締め這い上がって来る熱量に対抗していると、本の少しずつではあるが。体内を駆け巡り痛さと熱を与えていたモノが徐々に収まって行くのを掴み取った。



 良し、いいぞ。


 このまま力を振り絞れば抑えられそうだ。


 安寧の吐息を僅かに漏らした瞬間。


 俺の考えは安易で浅はかだと思い知らされる事となった。



『グルルルル……』



 今まで大人しくしていた龍が起き上がり、憎悪を籠めた真紅の瞳で俺達を見下ろす。


 吐く息は鉄をも溶かす熱量の炎を帯び、黒き体からは今まで感じた事の無い魔力が放出され空気が振動、龍の怒りに同調するかの様に激しい稲妻が発生して闇を切り裂く。


 頑強な鋼鉄も切り裂く鋭利な爪、背中に生えた漆黒の翼は見ている者に立ち向かうのも愚かであると絶望を抱かせた。



『あ、あはは……。ど、どうも、初めまして。一応、あなたと一緒にこの体を共有させて頂いております』



 恐ろしい圧を放つ体から手を放し、相手を宥める様に話し掛けた。



 初対面の方には挨拶を放つ事。


 幼少期の頃からオルテ先生に口を酸っぱくして体に刻み込まれた処世術を行ったのが癪に障った様ですね。



『ギャァァアアアア!!!!』


『ぃいっ!?』



 俺の言葉が黒龍の逆鱗に触れてしまった様だ。


 両足で立ち上がると巨大な尻尾を大きく振り下ろし、これ見よがしに此方へと己の巨躯を見せつけ。お前達との力の差は歴然だと主張してしまった。



 どこぞの龍じゃあるまいし!!


 こ、こんな化け物を越えた化け物相手に喧嘩を売ろうとは思わん!!



『エルザード!! もう限界だ!!』


『いいわ!! 脱出するわよ!!』



 黒龍から踵を返すと同時、エルザードが俺の体を引き上空へ引っ張り上げてくれる。


 暗闇に包まれているが、足元の黒龍が徐々に小さくなっていくのが見えるのでそう感じたのでしょう。



『グゥゥゥゥ!!!!』



 俺達が離れて行くのが気に食わなかったのか。将又、眠りを妨げられたのが気に食わなかったのか。


 空間を震わせる程の圧を放つと黒龍の口元に光の筋が集まり始めた。


 それは一点に集まり、目を疑いたくなる程の巨大で燃え盛る火球と変貌を遂げた。



 も、もしかしてですよ??


 その大火球を俺達目掛けて放つおつもりですか!?!?



『お、おい!! まだか!?』


『後少しよ!!!!』



 は、早くして!!


 あの火球が直撃したら只じゃ済まないって!!



『ガァァァァアアアア!!!!!!』



 鼓膜をつんざく咆哮が発せられると同時、青き稲妻を帯びた巨大な火球が俺達目掛けて放射されてしまった!!


 凄まじい熱量と、空気の震え。


 直撃したら体は炭どころか、この世に存在した欠片さえ残さないであろう。



『くっ……。後少しなのにぃ!!』




 …………。


 エルザードを巻き込む訳にはいかないな。


 元々、ここは俺の心の中だ。


 死にはしないだろう。多分、だけども……。



 火球が俺達を強襲する刹那。


 俺の手を引くエルザードの背を強く抱きしめ、己の背中を火球に預けた。



『えっ!? な、何をする気!?』



 さぁ、歯を食いしばれ!!


 頑丈さが俺の持ち味だろ!?


 覚悟を決めたこの体は、どんな痛みにも耐えられる!!!! …………、筈!!



 背に恐ろしい圧が着弾した瞬間。想像の斜め上処か、空の果てを通り越す痛みと熱が背を襲った。



『うわぁぁぁぁああああ!!!!』



 服が燃え尽き、皮膚が焼け焦げ、尋常じゃ無い痛みが背中を襲う。


 激痛と灼熱に耐える為、腹の奥から喉の筋肉が擦り切れる勢いで悲痛な声を叫んでやった。



『ば、馬鹿!! 何してんのよ!!』


『は、早く。脱出を……』



 火球は俺の背を無慈悲に焦がしながら遥か上空へと押し上げる。


 痛みで気が遠退く中、彼女が一縷の望みを抱かせてくれる声を放った。



『見えたっ!! レイド!! 脱出するわよ!!!! 私の体を離さないでね!?』


『は、はや。早くっ……!!』



 最後に残った渾身の力を振り絞り、彼女にしがみ付いた。


 彼女の背中越しに僅かな光の一筋が見える。俺達は灼熱の火球に押し上げられながらその光の穴へと向かって行った。





最後まで御覧頂き有難うございました。


後半部分につきましては現在編集作業中ですので、今暫くお待ち下さいませ。


恐らく、日付が変更される頃の時間帯になるかと思われます。

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