第百四十五話 知ってしまった海竜さん その一
お疲れ様です。
本日の投稿なります。
それでは御覧下さい。
伊草の香りに包まれた平屋に戻ると抑え付けていた疲労が一気に息を吹き返し、今も痛む額を抑えて畳の上にだらしない恰好で寝転がる。
師匠とのやり取りで体力が底を尽きかけていた所へ、恐ろしい速度で飛来した靴と見えない風の衝撃波だぞ??
これで寝転がらない奴が居たら是非とも見てみたいですね。居るとしたのならソイツは感情が欠如してしまった可哀想な奴さ。
はぁ……。
背に感じる畳の丁度良い硬さの感触が心地良い。
畳に己の身を委ね伊草の香りに包まれると体が真底休まるのを感じていた。
「レイド、大丈夫――??」
少しだけ染みが目立つ木の天井を何とも無しに眺めていると、ルーの顔が死角からぬぅっと生えて来た。
心配そうな瞳で此方を見下ろしているので。不必要な攻撃の所為で体は悲鳴を上げています!! と言いたいところなのだが。
「何んとかね」
平常を装う、若しくは辟易。
その両方の意味に捉えられる声色でそう答えてあげた。
此処で文句を言ってみろ。部屋の反対側で寛ぐ龍からまた要らぬ攻撃を食らう恐れがあるのですよ。
「どれどれぇ……??」
ルーの左手が前髪をすっと払い、今も痛む額を晒す。
「わっ。真っ赤だよ??」
額を見つめると金色の瞳の目を丸くしてしまった。
そりゃ、淫魔の女王様と狂暴龍の一撃だ。
何事も無い方がおかしいって。
「ふんっ!! 自業自得なのよ」
鼻息を荒げ、まるで俺が悪いと決めつけたように話す。
「あのなぁ。そっちが勝手に早合点したんだろう?? 俺は師匠の油断を誘う為、仕方が無くしたんだよ」
腹筋に激励の声を送って上体を起こし、ぶっすぅと唇を尖らせている朱の髪の女性へそう言ってやった。
「紛らわしいのよ……」
怪我をさせてしまったのが気まずいのだろうか?? それなら暴力以外にも訴える方法はあっただろうに。
「それより、マイ達の勝敗はどうなったんだ??」
「勝負が決まってから相手を変えると伺っていましたが……。どの組も中々勝敗が決まらず。結局の所、イスハさんが仰っていた最初の組み合わせで組手をしていましたわ」
少し離れた位置で女性らしく足を崩して休んでいるアオイが答えてくれた。
「ほぉん。じゃあ皆引き分けって事でいいのか??」
それだけ実力が拮抗しているのか。
「ふふん。そっちは引き分けかもしれないけど、ユウとの勝負は私が勝ったのよ??」
ムンっと腕を組み、激戦を思い返す様に瞳を閉じて満足気に頷いている。
「何言ってんだ?? ありゃ引き分けだろ」
ウンウンと頷く彼女の隣。
休日のお父さんの姿勢を保持しているユウが抗議の声を上げた。
「どう見たらそうなるのよ??」
「ほら?? 気絶させるか、降参させるか、確実に攻撃を当てるのが条件だったよな?? あたし、真面に攻撃を食らっていないし、ましてや気絶もしていないじゃん」
「はぁっ!? あんたの腹に一撃与えたじゃない!!」
「あぁ?? あんなの……。えっと……。無防備な態勢の時、近所の餓鬼に不意打ちで脛を蹴られた様なもんだ」
「まぁまぁ痛くて、結構腹立つ奴じゃんそれ!!!!」
龍の拳を頑是ない子供の攻撃に例える。
それだけユウの体は頑丈で分厚い装甲に守られている。
パッと見、何処にでもいるうら若き女性の姿なんだけどなぁ。
「カエデ達はどうなったの??」
ギャアギャアと楽しそうに騒ぐ御二人から壁際に背を預けて読書に耽る彼女へ問う。
「私達も引き分けでしたわ」
「アオイは卑怯」
結果に納得がいかないのか、カエデがむすっと頬を膨らます。
「何を仰います。相手との距離を測り、確実に攻撃を躱すのも戦い方の一つ」
「当たらな過ぎて疲れました」
「ふふ、そう怒らずに。カエデは魔法について素晴らしい才能を御持ちですが、近接攻撃や徒手格闘についてはからっきしです。私が相伴致しますので共に高みへと昇りましょう」
あぁ、そういう事か。
弱点を攻め立てるのはどちらかと言えば、アオイの得意分野だ。
それなのに敢えて攻撃を避ける事に専念していたのは、カエデの弱点の克服を助勢する為。
仲間を想う心は人一倍だな。
優しい気持ちになり。
「いい加減負けを認めなさいよね!!」
「いいや!! 認めないね!!」
向こう側に送る瞳とは対照的に、朗らかな瞳で両者を見つめてあげた。
「ねぇ!! 私達も引き分けだったんだよ!!」
ルーが俺の隣に座り、意気揚々と話す。
「へぇ!! リューヴ相手に引き分けか。やるじゃないか」
「えへへ。頑張ったもん」
目を弧に描き、口元に明るい笑みを浮かべる。
いつもの明るい笑みに額の痛みも少しだけ和らいだ気がするよ。
「ルー、貴様は正々堂々と戦え。ひらひらと蝶のように逃げ回って。拳を当てないと敵は倒せないだろう」
もう一人の自分の温かい表情とは対照的。
普段より四割増しで眉の角度が鋭利になってしまったリューヴが呆れた様に話した。
「え――。攻撃を避けるのも訓練の一つじゃん。ね――レイド??」
「まぁそれはそうかもしれないけどさ。どうせだったらリューヴに対して、自分の攻撃が通用しないか試したくないか??」
近接攻撃に関して、リューヴは仲間内でも頭一つ程抜けている。
その彼女に対し自分の力を正々堂々とぶつけて力を量る。
打ち砕かれれば力不足を痛感し、少しでも拳が届けば日頃の成果に目を細めて努力は嘘を付かないと納得するのだ。
うん!!
正に合理的な組手じゃありませんか。
「主は良く分かっている。組手とは本来、己の力を発揮し相手と拳を交え自分の糧にする事だ。強者の拳を身に受け、痛みを知り。拳を躱されれば、躱された要因を頭の中で思い描き軌道を修正する。逃げてばかりではいつまで経っても強くならないぞ」
「リューと真正面から戦えるのってマイちゃんぐらいじゃないの??」
リューヴの御高説を程々に受け止めたルーがマイの方へ振り向く。
「ん?? どうふぃた??」
突然のルーの言葉を受けあっけらかんとしていると思ったが……。
それは別の理由であった。
あろうことか、夕食前なのに紙袋からクッキーを数個取り出しそれを摘まんでいるではありませんか。
「おい、飯前なのに食べて大丈夫なのか??」
「余裕よ、余裕。いきなり胃袋に入れても驚いちゃうからさ、前菜みたいなもんよ」
「「「…………」」」
あの量をこれから食らうってのに……。
以前、ここで過ごした者は呆れた顔でマイを見つめていた。
「ねぇ、ここの御飯ってそんなに量が多いの??」
ルーが小首を傾げ、クッキーの美味さによって顎の開閉速度が増してしまった彼女へと尋ねる。
「あふぁらぁ……。あみゃぁい……」
「普段の数倍以上の量が出て来ると思っていた方がいいぞ」
甘さで顔が溶け落ちてしまったお馬鹿さんの代わりにユウが答える。
「えぇ……。運動した後に食べ過ぎちゃうと筋肉付いちゃうからなぁ……」
「ほぅ?? それは楽しみだ。運動で摩耗した筋力を食事で回復させる。まさに理想の生活だな」
片方の狼は悄然とし、片方は喜々としている。
性格が正反対な彼女達の答えとしては頷ける内容であった。
慎ましい会話を続け、このまま食事が到着しないかと。淡い期待に胸を膨らませていたのだが、現実は自分で思っている以上に不条理なのですね。
「みなさ――ん!! お食事の時間ですよ――!!」
快活な声と共にモアさんが、それは一体何を目的にして作ったのですかと問いたくなる御櫃を持って平屋に入って来てしまった。
「モアさん、久々だね」
あの変なモノは作っていませんよね?? と。声を大にして問いたいのだが。
皆の手前、そんな事を聞いたら浴衣の懐に仕舞ってある出刃包丁が俺の首をプッツりと切断してしまうので。
猜疑心に塗れた声色では無く、出来るだけ明るく努めた声色で挨拶を放った。
「はい!! 皆さんもお元気そうで何よりです!!」
そう話しながら、白米がこんもりと盛られている御櫃を部屋の中央に置く。
同時、お米特有の甘い香りが部屋を漂い素敵な夕食の雰囲気が部屋を満たした。
「おぉ!! 良い匂い!!」
ルーが鼻をスンスンと嗅ぎ、陽性な言葉で感想を述べる。
うん。
香りは、いいんだよね。
俺も白米の香りは大好きだ。しかし、問題は量なんだよなぁ。
馬鹿デカイ御櫃の淵から上に大きくはみ出る程積載された米なんてそうそう拝める機会はありませんからね。
「ほら、前回と同じように残さず食べろよ??」
メアさんが続いて部屋に入り、大きな木の皿の上におかずを乗せてやって来ると。
「ほっ!! ほほっ!! うほほぉぉおお――んっ!!!!」
「満月の夜に昂ってしまったどうしようもない感情を誤魔化して叫ぶ雄猿か」
無意味にぴょんぴょん跳ねる赤猿をユウが咎めた。
「メアさんも元気そうだね」
「まぁな。そっちはどうだ??」
感情の抑制が効かない猿から、手が届きそうで届かない絶妙な位置へ皿を置いて話す。
「ウキキィ……。ウギィッ!!!! ムッキャ――――!!」
「だ――!! まだ駄目だって!!」
ユウ!! 頑張って抑え付けてくれよ!?
料理が全て揃うまでは食べてはいけませんからね!!
「御覧の通り、師匠にしごかれて疲労困憊さ」
「鍛え足りないんだよ。男だったらもっと筋肉付けろって。んで、そっちの新入りさん達は??」
メアさんが若干呆れた瞳で御櫃と並べられて行く品々を見つめるリューヴ達へ視線を移す。
「新しい仲間で、狼族のルーとリューヴだよ」
「ふぅん、狼ねぇ。ま、宜しく」
「宜しくね――!! メアちゃん!!」
「宜しく頼む」
「お、おぉっ……」
二人が同時に話すと、メアさんは少しばかり困惑したようだ。
雰囲気は違えど同じ顔が同時に挨拶をするのだ、慣れない内は混乱をきたすのは必然の事であろう。
「良く似ていますねぇ」
モアさんが軽快に草履をパタパタと鳴らして追加のおかずを持って来る。
「そうかなぁ??」
「よく見ろ。私の方が筋力の量が多いだろう」
いや、普通の人は筋肉の量で判断しないから。
続々と到着する目を疑う量の料理に対し、既に胃が抗議の声を叫ぶ。
だが……。
食わねば強くならぬのだ。
彼女達に追い付く為にも出来る限り胃袋の中へ詰めてやるからな。
御米を主軸にしてどのようにして食事を進めていくか頭の中で想像を膨らませていると。
「お――。準備は進んでいるようじゃな」
「良い匂いじゃない」
大変綺麗な花が二輪、平屋の戸を開けて此方へと合流を果たした。
「師匠!! 一体どうしたのですか??」
座ったまま師を出迎えるのは弟子として失格ですからね。
畳の上に確と量の足を立てて我が師へと声を掛けた。
「うむ、今日はここで食事を共にしようと思ってな」
「そういう事。あ、でも私達は相応の量しか食べないからね?? あんまり運動していないからさ」
師匠は兎も角、エルザードは見学に徹していたし。
途中、要らぬ横入をしたがそれ以外は特に目立った行動はしていないからお腹は空いていないのでしょう。
魔法を担当すると言っていたが、実行は明日以降なのだろうか??
「座布団も敷かれているようじゃな。どれ、横に座るぞ??」
「お構いなく」
座布団の上にポンっと軽く座る。
座布団も師匠の軽さに目を丸くしているに違いない。
どうしたらこれだけの細い体に常軌を逸した力を積載出来るのであろう。
日頃の鍛錬?? 大魔の力を引き継いでいるから??
それは今も分からずじまいであった。
「むふふ――。どれ、お主から頂いた土産でも開くとするか」
三本の尻尾を揺れ動かし、そして頭頂部から生え出たフサフサの獣耳をピコピコと動かして師匠の為に厳選した木箱の蓋を開く。
「おぉ!! 饅頭ではないか!!」
「王都で良い評判を伺い、是非ご賞味して頂きたいと思い持って参りました」
「ほぉ……。これは美味そうじゃなぁ」
十在る中から一つを大事に手に取り、目を細めて眺めている。
「では早速……。むふっ……。美味い!! 儂の好みが分かっておる!!」
「御口に合ったようですね」
良かった……。
色んな店を訪問し、試食を重ね、師匠が気に入りそうな味を探していたのは内緒です。
中々素敵な味に出会わないと辟易していた所。
『ねぇ、最近あの店に行った??』
『ぜ――んぜん。旦那の世話が忙しくて』
『あはは!! お互い様ねぇ――……』
狭い通路の道端で井戸端会議を催していた主婦の方々の情報を偶々耳にして、件のお店へと足を向けた。
これがズバリ大正解!!
やはり、台所と井戸端会議を主戦場としている方々の情報は確かなもので??
味、外見、そして値段と三拍子揃った品と遂に出会う事が出来たのだ。
満足気に口元を緩ませ目尻を下げている師匠を見つめると、主婦様達の確立された情報網は間違いないと確信した。
「御饅頭じゃない。一つも――らいっ」
エルザードが師匠の背後から饅頭を一つ取り上げ、彼女の了承も無しに小さな御口へと運んでしまう。
「あら、美味しい」
女性は甘い物に目が無い。
もうこれは覆せない普遍的な法則なのだろう。女性と喧嘩をして、仲直り及び謝意を表したいのであれば甘味に頼るとしますか。
「儂の物じゃぞ!!!!」
「別に一個くらいいいじゃん。ね――レイドぉ??」
「いや、まぁ……。それは師匠が決める事だから」
師匠は俺の右隣りに座り、エルザードは左隣に座る。
この配置は不味いんじゃないか??
食事が始まる前から嫌な予感しかしない。
「ねぇ?? 私にはお土産ないのぉ??」
甘く粘度の高い声が左耳を刺激すれば。
「欲しかったの??」
「そりゃぁね。慕っている人からの贈り物を嫌がる女の子はいないわよ」
「女の子という歳でもないじゃろう……」
甘い声とは対照的な苦みを含んだ声が右耳の奥に突き刺さる。
「聞こえな――い。それ以前に、どこぞの幼児体型さんも私と同じ位の年齢じゃない。や――よねぇ。見え透いた若作りしちゃってぇ」
「貴様……。どうやら雌雄を決する時が来たようじゃのぉ??」
師匠の震える声が肌を泡立たせ、馬鹿げた圧が心臓の面積を窄めてしまう。
恐る恐る右を振り返ると……。
お、おぉう……。
六本の尻尾がこの部屋の天井を、怒髪天を衝くかの如くそそり立っていた。
この二人は水と油。
決して混ざり合う事は無く、反発し合い、破壊と混沌の渦で周囲を巻き込むのだ。
出来れば最も危険とされるこの位置から脱出したいのですけども。今移動すれば不必要な攻撃が待ったなしに襲い掛かって来るし……。どうしたものやら。
「何時ぞやの時みたいに、ぼろ雑巾みたいにされたいのぉ??」
「貴様こそ、あの時のように目に涙を浮かべ。ひしゃげた蛙のように地面に這いつくばりたいのじゃろ??」
「はぁ!? 私がいつ泣いたっていうのよ!?」
「誰がぼろ雑巾じゃ!!」
「「ぐぬぬぬぬ!!!!」」
俺の正面で左右からの熱き視線が衝突し、火花……。いや、小さな太陽が発生しているようだ。
それは時を追う毎に膨れ上がり、いつ破裂するか伺い知れなかった。
誰か助けて下さいよ……。本当、お願いしますから。
――――。
う、うっひょ――!!!!
な、何よあの私に誂えた様な量の御飯ちゃん達はぁ!!
今にも噴火寸前である食欲の悪魔を宥めつつ、右手にドデカイ丼を握り締め。今か今かとその時を待ち続けていた。
「ねぇ、マイちゃん」
「あ?? 何よ」
私より先に飛び出したら往復ビンタ食らわせるからね??
「あっち、止めなくていいの??」
アッチ??
お惚け狼の声を受け彼女の視線を追うと、魅惑的な食材越しにイスハとエルザードのやり取りを大変苦い顔を浮かべながら宥めているボケナスの顔を捉えた。
「大丈夫でしょ」
例えあの二人が暴れ出したとしても、持ち前の体力と頑丈さで早々死にはせん。
「そうそう。下手に近寄って巻き込まれたく無いだろ??」
たった一言で私の心情を理解してくれるとは、流石我が親友ね。
「でもさぁ、昼からずっとあの調子じゃん。気苦労?? とか大変そうだし……」
気苦労ねぇ。
その言葉を受け、再びアイツに視線を移す。
「近寄り過ぎじゃ!! 離れろ!!」
「いいじゃない。久々だし、ねぇ――??」
「そ、そうだな……」
ほら、すぐそうやって優柔不断な言い方をするから相手が調子に乗るのよ。
男だったらもっとズバッと断ればいいのに。軟弱で女々しい奴め。
あんなへなちょこ野郎の心配よりも私の腹の心配をすべきだ。
さっきからずっとぐぅぐぅ鳴り続けているもの。このまま放置したらきっとこの部屋一面に敷かれている畳すらも食べ尽くしてしまいそうよ。
「あ――、腹減ったなぁ……」
勿論?? 私は右隣りでもうもう唸っている草食の猛牛ではないので伊草は食べられませんっ。
「イスハさん。そろそろ食事を始めたいと思いますので」
ボケナスの様子を見かねてか、エルザードの左隣に座るカエデが孔雀の一声を上げた。
あれ?? 鶴だっけ??
まぁ、どっちも似たような形だし。それに似たような鳥の味だと思うからこの際どっちでも構わん!!!!
「そうじゃな。オホン!! 今日はまだ初日じゃが、これからの厳しい訓練に備えしっかりと飯を平らげるように。出された食事は余す事無く、全て平らげる事。よいな??」
「「「は――い――」」」
私を含めた何人かが口を揃えて間延びした声を放つ。
「じゃから伸ばすなと言っておるだろう。お主達に足りない物は体力や精神力……。この食事も訓練の内じゃ。体を大きくする為にはそれ相応の量を食わねばならん。料理を施した者や、生産者に感謝の気持ちを……」
あ――。くそっ。
なっげぇな……。
適当に頷きながらさり気なく移動を開始しましょうかね。ほら、イスハの奴。得意気に目を閉じて説教ブチかましているし。
「はい、説教はお終い。皆、食べていいわよ??」
エルザードがイスハの言葉を唐突に区切ったのを合図と捉え。
「「「頂きます!!」」」
私達は待っていました!! と言わんばかりに食事に手を伸ばした。
「これ!! まだ話は終わっておらんぞ!!」
「大ふぁい、話ふぁなふぁいのよ」
ホカホカの御米ちゅわんを口一杯に頬張りながら言ってやる。
んほぅ!!
仄かな甘味が絶妙っ!! 参ったわ。これなら無限に食べられそうね……。
御飯のお代わり自由!! おかずも好きなだけ食べて良いっ!!!!
この世のに出現してしまった桃源郷の中。私は正に夢見心地の気分で目尻を下げながら食べても食べても減らない御米さんを口の中へとかっこみ続けていた。
最後まで御覧頂き有難うございました。
それでは皆様、体調管理に気を付けて休んで下さいね。




