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第百二十九話 軋轢の雪解け その二

お疲れ様です。


祝日の午前中にそっと投稿を添えさせて頂きます。


それでは、温かい飲み物でも飲みながら御覧下さい。




 蝋燭の頼りない橙の明かりに照らされた岩肌の表面に浮かぶ水滴が光を反射。少しだけ幻想的に映る通路を暫く進んで行くと、彼女が教えてくれた通り。通路の両端に木製の扉が見えて来た。


 右側がアオイの部屋だったな。


 扉の前で呼吸を整え、古ぼけた木の表面を軽く扉を叩く。



「アオイ。居るか??」


「――。レイド様??」



 暫くすると、ちょいと軋む音を奏でながら扉が少しずつ開いていき。


 木製の扉に半分だけ体を隠して少々気まずそうに此方を見上げているアオイが現れた。



 皆の前で憤りを露わにして気まずい、久方ぶりの家族との再会なのにそれを無下にしてバツが悪い。


 彼女の表情は普段の凛とした表情とは掛け離れ、どこか寂し気にも映った。



「少し、様子がおかしかったからさ。入ってもいい??」


「しょ、少々お待ちください!!」



 扉を閉じると同時に何やら扉越しに騒々しい物音が響いて来る。



『え、えっとぉ……。枕はこの位置っ!! そして、あぁ!! 配置に悩みますわぁっ!!』



 片付けでもしているのかな?? 気にしなくてもいいのに。


 女性の部屋だ、見られたら不味い物でもあるのだろう。



「ふぅ、ふぅ……。お、お待たせ致しましたわ。どうぞお入りください」



 一仕事を終え、額に若干の汗を薄っすらと浮かべている彼女に促され。



「お邪魔します」



 一つ小さくお辞儀をしながらお邪魔させて頂いた。



 中に入ると正面の大層立派な箪笥が目に飛び込んで来る。その左隣には沢山の本が詰まった本棚。


 そして化粧台だろうか。机の上に大変立派な鏡が置かれている机も確認出来た。



 へぇ……。これがアオイの部屋か。


 予想以上に整理整頓され、汚れの一つも見当たらない部屋の姿に思わず唸ってしまう。


 身嗜み、生活態度、そして自身が使用する部屋もそれ相応の地位に相応しい姿形を形成しなければならないのだろうさ。


 蜘蛛の御姫様の私生活の一面を垣間見、もう一歩踏み出して部屋の四隅へと視線を送ろうとするが。



「余り見ないで下さいまし。散らかっていますので……」



 部屋の隅に置かれている大きなベッド。


 大人四人が肩を並べて寝られるのではないかと思われる大きさのベッドの淵に腰かけ、気恥ずかしそうに俺の視線を御してしまった。



 そして、この部屋に自分以外の者が存在する事に落ち着かないのか。



「……っ」



 女性らしい膨らみの膝元へ手を置き。白き頬をちょいと朱に染めて忙しなく指をワチャワチャと動かしている。



「綺麗に片付いているじゃないか」



 さてと、見下ろしたまま話し掛けるのは憚れる。


 同じ目線でじっくりと腰を据えて話したいので……。あぁ、そこでいいか。



 ベッドの向かい。


 化粧台の前に置かれている椅子に腰掛け、アオイを正面に捉えた。



「もぉ、レイド様?? 折角広いベッドがあるのですから。此方に腰かけたら如何です??」



 眉を顰めて話すものの、その表情は何処か柔らかく。いつものアオイらしい揶揄いが戻って来た事に一つ安堵し、早速本題へと入った。



「ここでいいよ。それより、シオンさんとは仲直りする気は無いのかな??」


「申し訳ありません。気分を害してしまいましたよね??」


「いや、そういう訳じゃないんだけどさ。何て言えばいいのかな……。久々の帰郷だ、もう少し仲良くしてもいいんじゃないのかな??」



 幼少の頃から共にこの地で育ったのだ。例え血が繋がっていなくても家族のようなものだろう。


 それに仲違いしたまま、互いに誤解を招いたまま此処を離れるのは後味が悪いだろうし。



「私もそのようにしようかと考えていますが、正直ではありませんね。シオンの前だとどうしても素直になれない自分が顔を覗かせて張り合ってしまいます」



 バツが悪そうに俯く。



「幼い頃から、女王の娘足る者の姿勢や振る舞い。私の為す事全てに文句を言い厳しい指導を課せられ育ちました」



「うん。シオンさんから伺ったよ」



「え?? そうなのですか??」



 俯きがちであった顔がパっと上がり、意外。


 そんな表情で俺を見つめる。



「ほら、此処を発つ時にアオイが食堂から出て行っちゃっただろ?? その後に、ね」


「そう、ですか。彼女から話すとは意外ですわね」


「それだけ俺達の事を信用してくれているのだろう。シオンさんから伺ったけど、アオイの口から直接あの時何があったのか聞かせてくれないか??」



 シオンさんの視点、そしてアオイの視点。


 異なる視点からあの事件の詳細を知れば、仲違いの糸口が見つかるかも知れないし。



 話そうか、このまま口を紡ごうか。


 暫しの沈黙の後、アオイが少しだけ寂しそうな口調で口を開いた。




「――――。私は彼女の言う通り学び、そして鍛えました。しかし、厳しい指導に従うと同時に心が氷の様に冷たくなるのを感じていましたわ。 だって、私が出来ない事はシオンに出来て。シオンに出来る事は、私には出来ないのですから。凍てつく心は日に日に己自身を傷付け、気が付けば震えてしまう程に冷涼な物へと変化していきました……」





「……」



 アオイの過去を受け止め、無言で一つ大きく頷く。



「厳しい指導が続いていたある日。私は彼女に負けたくない一心で大魔の系譜にのみ宿る力を解放しました」


「それってリューヴが見せた力の暴走の事??」



 不意にあの時の事を思い出した。


 目に宿る禍々しい力の坩堝。そして常軌を逸した力の解放。


 あれは……。恐ろしく強かった。



「それに近いです。心の奥底に眠る大魔より受け継し力。母もこの力は滅多に使う事はありません」


「それ程の物なのか??」



「はい。私は……。意を決してその力を解放しました。すると、何んと気分の良い事でしょうか。大地に深く根を張る大木を古紙の様に薙ぎ倒せる魔力、まるで鳥の様に軽やかになった体。あのシオンですら簡単に打ち負かす事が出来ました」



 訓練に身を置いている時点であのシオンさんを一蹴出来る程の力か。


 女王であるフォレインさんがその力を解放したらどうなるんだ??


 それに、同じ大魔である師匠やエルザードも当然力を有している。この大陸にはとんでもない傑物が揃っているんだな。




「己の力で叶わなかった彼女を倒し、暴虐の限りを尽くす。傷ついて行くシオンを見ても何も感じませんでした。それはまるで第三者の視点から見たような感覚、そう言えば分かりますでしょうか?? 彼女が傷つく度己の感情が一つ、また一つ死んでいく。氷の中に閉じ込められ抜け出せなくなる。もう……。このままどうなってもいい。そんな事を考えていました」



 話しているアオイはどこか寂し気で、悲し気で……。ずんぐりむっくり太った雀と大立ち回りする普段の様子からはとても想像出来ない程弱々しい姿であった。




「どれ程の時間が経ったでしょうか。体感的には長く感じていましたが恐らく、数分かそこらでしょう。暫くすると、母が驚愕の表情を浮かべ洞窟から現れました。そして、自身の刀を抜刀する所で私の記憶は途絶えます」


「フォレインさんが止めたと??」


「後で兵から聞いた所によると、私は一振りで倒されたらしいですわ」


「ひ、一振り!?」



 あのリューヴの力と同等の力を僅か一振りで……。



「馬鹿げた力ですわ。目を覚ますと、シオンは前髪で顔を隠すようになりました。私の攻撃で額に怪我を負ったようで……」



 両手に渾身の力を籠め、力を籠めた指先が今にも皮膚を突き破ってしまいそうな悲しき拳を作り出し。


 己が過ちを悔いていた。



「誰もが羨む美しい顔立ち、夜空も嫉妬する漆黒の髪、そして万人に愛される優しき瞳。私は……。私は!! 彼女からそれを奪ってしまった!!」



 彼女の心の底に沈んでいた負の感情が溢れてしまい、口から零れて来る語気が荒々しい物へと変化。


 俺は黙って立ち上がると、溢れ出る悔恨によって俯いて思いの丈を吐き捨てている彼女の目の前に両膝を着き。



「……」



 無言のままアオイの震える手に優しく手を添えてあげた。



 蜘蛛の一族を纏める女王の愛娘として生まれ落ち、アオイは生まれた時から進むべき道を定められていた。



 誰よりも賢く在れ、強く在れ、そして女王の娘として気高く在れ……。



 此処で共に過ごして来た友人達にも、そして俺達にでさえも言えぬ立場の苦しみ。アオイが口に出す悲しみの言葉は彼女の真の想いだろう。


 今まで誰にも言え無くて、たった一人で苦しんでいた。


 それなら仲間であり、友人である俺が彼女の痛みを少しでも受け止めてあげなければ……。




「私は……。私が奪ってしまったのですよ!! たった一度の過ちで!!」



 俺の手を取ると痛い程握りしめて来る。


 この痛みが彼女の心の痛さを現実に映し出している様だ。



 痛みに触れまいとして気丈に振る舞っていたのが此処に来て一気に溢れ出てしまったのだろうさ。



「彼女の顔を見る度に……。私は己が犯した過ちを見るようで……。辛いのです……。後悔、懺悔、不快、焦燥。負の感情が止め処無く、溢れて、来てしまうの……です」



 途切れ途切れに切ない感情を乗せた声色で己の胸中を話してくれる。



 ゆるりと端整な面持ちを上げると。



「レイド様ぁ……。私は……。どうしようもない出来損無いなのです。そんな出来損ないの私が……。レイド様と共に歩んで行く権利等あるのでしょうか??」



 粉雪の様な白い肌に一粒の雫が伝い落ちた。



 女王の娘として強く生きようとした彼女は、その立場故に苦しんでる。


 だが。


 俺の目の前で目を赤く染めて涙を流す友人は年相応の何処にでも居る女性と変わり無い。



 そう、女王の娘では無く。


 たった二十一年という短き人生しか歩んでいない一人の若き女性だ。




「アオイ……。過ぎ去ってしまった事実は変えられない。けれど現在、未来はより良い方向に変えられるんだ」



 今も細かく震える小さな手を包み込む様に優しく握り返してやる。



「シオンさんに負けたくない一心で行った行為だ。許してくれるさ、それに……。嬉しいんじゃないのかな??」



「……、嬉しい??」



 俺の声を受けて少し落ち着いたのか。


 一つ呼吸を整え、嫋やかな指先で悲しみの軌跡を拭いつつ話す。



「シオンさんは妹を見ているような目でアオイの事を見ているんじゃないのかな?? 成長が楽しみ、だけど女王の娘の手前厳しく指導しなきゃいけない。彼女もそれなりに苦しんでいたのだと思うよ」



「シオンが……」



「あぁ、家族の様に温かく見守り、そして時には意見の相違で慎ましい口喧嘩をする。そんな温かい感情が溢れていると感じるかな。俺には血の繋がった家族がいないから、温かい家族愛は直ぐに分かるんだ。アオイが羨ましいよ」



「ですが……。私はシオンを傷付けてしまった、彼女の美しさを奪ってしまった。一生癒えない傷を与えてしまったのですよ!?」




「己の過ちを悔いそこで前進を止めてしまうよりも。過ちを認めて前進する方が良い結果になると思うよ」



 彼女の心を覆う悲しく冷たい雨を、春の訪れにも似た温かい雨に変える為。柔らかく包み込む様な口調で話す。


 体に負った傷はいつかは治る。しかし、心に負った傷は人によっては死を迎える迄完治しない恐れもある。


 それだけ人の心は繊細で傷つき易く、壊れ易く出来ている。



 だから、人は人を思い遣り。愛し愛され人生という物語に輝かしき光を灯すのだ。




「ですが……。ですがぁ……」



 ふぅむ。こりゃいかん。


 アオイは少々頑固な面もあるし……。



 直接、話し合った方がいいかな。



「――――。そうは思いませんか?? シオンさん??」


「え……??」



 自分の心に臆病な女性から扉へと視線を移し、その向こう側で息を顰めて聞き耳を立てている彼女へと向かって尋ねると。



 俺の言葉を合図に、随分と臆病な速度で扉が開かれた。



「――――。失礼いたします」



 俯き気味に、そしてあの馬鹿げた力の持ち主とは思えぬ所作で。おずおずと部屋に入って来る。



「お気付きでしたか??」


「えぇ。油断していたのか分かりませんけど、気配が駄々洩れでしたよ??」



 そうでなければ俺程度の力の持ち主が気付く筈は無いからね。


 いや、もしかしたらシオンさんは気付いて欲しかったのかもしれないな。だから敢えて……。



「アオイ様がそんなに苦しんでいたとは。一生の不覚です」


「いえ……」



 シオンさんが俺と入れ替わる様にアオイの前に膝を着き、優しく話しかけた。



「アオイ、良い機会だ。自分の思っている事を伝えてみなよ」


「え、えぇ。レイド様がそう仰るのなら……」




 俺の言葉に小さく頷くとシオンさんを正面に捉えた。



「シオン」


「はい」



「えっと、私は……。貴女を姉の様に思っていますわ。ですが……。私は貴女に消えない傷を与えてしまった。情けなくて、意気地無しで、卑怯者な私を許してくれる??」



 時折小恥ずかしそうに視線を外しけれど、この温かい想いを伝えたい。


 アオイの声色と視線、そして体から滲み出る雰囲気は……。そうだな。



 大変ド派手な姉妹喧嘩をしてしまい、姉に怪我を負わせてしまってどう謝ろうか。うじうじ悩んでいる妹さんって所か。



 ふふ、微笑ましく羨ましい光景だよ。全く……。




「アオイ様!! 今の御言葉……。万の言葉よりも嬉しゅう御座います!! この傷跡はアオイ様が氷の様に冷たくなってしまわれた。それを戒める為、己に枷として与えていました。しかし、しかし……。その行為がアオイ様を傷付けていたのですね」



「シオン……。ごめんなさい」


 言葉を振り絞るように妹は小さく、そして消え入りそうな声で姉に伝えた。



「ア、アオイ様!!」


「きゃっ」



 姉が邂逅を遂げようと、ベッドに腰かけ項垂れている妹をひしと己が腕で抱き締め。


 姉妹仲良くベッドの上で横になる。



「本当に、本当に申し訳ありませんでした……」


「御免ね?? 本当に御免ね……。シオン」



 姉が謝意を述べ、更に妹が更に温かな謝意を述べると姉妹の間に酷く親密な空気が流れた。


 結局の所、二人共お互いの事が大好きなんじゃないか。



 小さなすれ違いが互いの距離を広げ、溝を深める。少しだけの勇気を振り絞るだけで解決出来るんだ。



 改めて家族っていいもんだな。本当に羨ましく思うよ。


 俺にも血の繋がった家族が居れば……。こんな温かい光景の中で生まれ育って居れば……。


 いかん、無い者強請りは駄目だ。


 今の現状で満足しないと……。



「では、自分は食堂へ向かいますので。後は家族水入らず、素敵な時間を過ごして下さいね??」



 これ以上は余所者である俺が踏み入る訳にはいかないからね。


 邪魔者はお暇させて頂きますよっと。



「レ、レイド様。でしたら私も……」


「駄目ですよ?? アオイ様」



 俺に続こうとして立ち上がろうとした妹の腕を姉がきゅっと掴み、再びベッドの上へと引きずり込んでしまった。



「ちょ、ちょっと!! 何をするのですか!!」


「アオイ様が此処を出立してから今日に至るまでの御話を聞かせてくれるまで、私は決して離しませんから」


「え、えぇ!?」



 ふふ……。


 それでは、素敵な時間をお過ごし下さいね。



 大切な物を宝箱に仕舞う様に。


 そっと静かに扉を閉めると、二人の邂逅の姿を見て安心したのか知らんが。急にぐぅぐぅ鳴り始めてしまった横着なお腹を宥める為、一路食堂へと向かった。




























 おまけ。



 姉妹だけの秘密の会話。





「シオン、聞いて??」


「はいっ、聞いていますよ」


「レイド様はね?? クルミパンが大好きなのですけど……。皆が沢山食べるので、自分を押し殺して決して多く買わないのです」


「まぁ……。そうなのですか」



「それと、意外とお茶目な面もあるのです。狐の里での出来事で……」


「ふふふ。朝食に出る卵かけご飯の為に全力で階段を登られたのですか??」


「可笑しいですよね?? あっ!! そうそう!! 無人島に向かった時の話なのですが……」



「おやおや。アオイ様が一糸纏わず風呂に相伴したというのに、手を出す処か。御逃げになられたと??」


「そうなのです!! 四つの獣の目、賢い海竜の目、爆乳娘の目。後は……」


「マイ様ですか??」


「敬称は不要ですわ!! シオンの事を馴れ馴れしく渾名で呼んで!! 全く。人の家族を何だと思っているのかと問いたくなりますわ!!」


「私は嬉しゅう御座います。アオイ様に家族と呼んで頂けて」



 姉が優しく妹の頭を撫でると。



「私はもう子供ではありません!!」



 妹は顔を猛烈に、真っ赤に染めてその手を優しく押し返してしまった。



「私が生を受け続けている限り、アオイ様は私の妹で御座います故。諦めて下さい」


「も、もう!! 意地悪は止めて下さいまし!!」


「さ、時間は沢山あります。アオイ様が話し疲れるまで私はずぅっと聞いていますからね??」



 妹が自分の思い出をまるで宝物を自慢するかの様に話せば、姉は目を細めて頷き。


 苦い思い出を話せば、妹と等しく顔を顰めてしまう。



 偽りの姉妹。


 されど、本物の絆で結ばれた二人の会話は月が天高く昇り。月の女神が呆れ果てた顔を浮かべる刻まで続けられ。


 月の女神が一つ咳払いして忠告を与えようかとしたのだが……。




「レイド様は本当に御立派な御柱を御持ちで……。アレを目の前で見た時には、流石の私も刹那に時が止まってしまいましたわ」


「まぁっ。うふふ……。その御話を伺い、私もレイド様の御柱を拝見したくなりましたね」



 彼女達の会話が深夜に相応しい内容へと変化すると、咳払い処か。


 ずずっと、身を乗り出して聞き耳を立ててしまう。



「だ、駄目です!! シオンは見てはいけませんっ!!」


「どうしてで御座いますか?? 彼と重婚を禁じられている訳ではありませんのに」


「レイド様は私だけのモノなのですから!!」


「独り占めはいけませんよ?? 私だけではなく、この里に居る者は皆等しく彼の……。雄らしい体を求めていますので」


「む、むむむぅ!!!! 兎に角、駄目なものは駄目ですからねっ!!」 



 憤る白の頭を黒が優しく撫でると、口では悪態を付くもそれを決して邪険に払おうとしないのだ。


 微笑ましい姉妹の姿に満足した月の女神は襲い掛かる眠気によって顎が外れんばかりに口を開き、地上の海を荒立たせてしまう量の空気を吐き尽くし。


 彼女達の楽し気な会話を子守歌代わりにして大変心地良い眠りへと就いたのだった。




最後まで御覧頂き有難う御座いました。


私は少し早めの昼食へと出掛けて参ります!! 本日はちょいと寒いですので、温かいうどんでも食そうかと……。


それでは皆様。


素敵な祝日をお過ごし下さいね。

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