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第二十五話 一方的な残虐行為

本日の投稿です!!

それでは、どうぞ!!




 一枚の葉が頬を掠めて渦巻く風に吸い込まれて行く。


 その刹那。


 頬に矮小な痛みを感じた。




 指で頬の痛みをなぞり、視界に入れると。


 指先には僅かな赤い点が見受けられた。



 とんでもない風速だな。


 あんな軽い物が皮膚を容易く引き裂いていくのだから……。



 今、こうして立っているのも奇跡に近いよ。


 周囲を取り囲む絶望の渦に対し、俺達は余りにも無力な存在なのかもしれない。





「マイ――!! どうする!?」



 大戦斧を担いだままユウが渦巻く嵐に負けじと叫ぶ。



「当然、張り倒すわよ!!!!」


「どうやって――!!!!」


「知らんっ!!」



 でしょうね。


 その方法があれば是非とも伺いたい。発生源は空に浮き、それを対処するのには浮く必要がある。



 人は空に浮けぬのだから……。それは不可能に近い。


 しかも。


 彼女を囲む風の壁により物理攻撃の効果は薄い。


 正に八方塞がりって奴だな





「あはははっ!! 無様ですね!! 矮小な虫の様に、地を這う姿がお似合いですよ??」



 空から高笑いと共に、勝利を確信した彼女の声が届く。



「ちっ。飛んだからって良い気になるなよ!? 私だって飛べるんだから!!」


「マイ!! 止せ!! 自重を軽くしたら途端に吸い込まれちまうぞ!!」



 周囲に存在する竜巻を指差して叫ぶ。



「クソがっ!! だったらどうすればいいのよ!!」


「あたしに案がある!!!!」



 おぉっ!!


 何か妙案が浮かんだのか!?



 ウキウキした顔で民家の方へとユウが進み。




「どっせいっ!!!!」



 大戦斧を家屋の壁に叩きつけ。



「んっ!!!!」



 巨大な刃にくっついた家屋の壁を大戦斧と共に肩に担ぎ、アレクシアさんに狙いを定めた。



 そして……。




「おらあああああ!! 壁の贈り物だぁぁあああ!!!!」


「「いやいやいや」」



 有り得ない速度で上昇して行く木造の壁に向かい。


 マイと共に呆れた声を出してしまう。



 あれで当たれば御の字ですけども……。



「それが精一杯の抵抗ですか」



 案の定。


 彼女の体に着弾する前に、風の刃によって粉々に切り裂かれてしまった。



「あ――。やっぱり駄目だったかぁ。まっ!! まだまだ家はあるし!! 片っ端から投げ続ければいつかは当たるだろ」



 家の持ち主もたまったものじゃあないだろうなぁ。


 正気に戻って家に帰って来たら壁が消失し、傾いてしまっているのだから……。




「そんな事している間にやられるわ!!!! ユウ、聞きなさい!!」



 マイが堂々と家を捕まえに行く彼女の肩を掴む。



「私をアイツ目掛けて投げる事は可能!?」


「出来ない事は無いけど……。あんな風に切り裂かれても良いのか??」



 地面に散らばる木の残骸を指差す。



「大丈夫!!」



 その言葉は何を根拠としての言葉だい??



「何もしないでやられるよりも!! 一泡吹かせてやりたいし!!」


「へいへい。ここに乗りな」



 ユウが戦斧の刃面を大地と平行にして差し出す。



「おう!!」


 それに呼応してぴょんっと乗る今は黒髪の女性。



 も、もしもし??


 本当に飛翔するおつもりですか??





「ふぅぅぅ…………。それでは、第二投……。行きますかぁ!! ずあああああ!!」



 マイを乗せたまま大戦斧を一回転。


 体を押し出す形で上空へと振り上げ、彼女の体は面白い角度で空へと上昇して行った。



「はっは――!! 意外とすんなりいくものね!!!!」



 意外って事は失敗を恐れていたのか。





「食らいやがれぇええええ!!」



 襲い掛かる風の刃を黄金の槍で蹴散らし、鋭い切っ先をアレクシアさんの体目掛けて構えた。




「奇をてらった作戦ですが。何分、速さが足りませんね」


 マイの攻撃をサラリと躱し。






「ほっ!?」



 終着点を見失った体は虚しく空を切り。




「ちっくしょ――――!! 覚えていろよおおおおぉぉぉ……!!」




 里の何処かへと負け惜しみの台詞を放ちつつ、飛んで行ってしまった。



 止まらない事を考えなかったのだろうか。あのお馬鹿さんは。



「さて、お次はどんな手を見せてくれるのですか??」



 呆れにも似た声を放ち……。いや、呆れた声だな。


 呆れた声を放ちつつお馬鹿さんを見送った後、此方を見下ろす。




「安心しやがれ!! こっちにはまだ第三投が残っているんだよ!! な!?」



 お願い。


 そんなキラキラした目で見つめないで。



 俺はあんな風に飛んで行きたくないの。



「ユウ、頼む。生物以外を投擲して下さい」



「えぇ!? いいじゃん!! そっちの方が楽しいし!!」


「こっちはちっとも楽しく無い!!!!」



 真面な作戦を考えてくれ!!



「品切れですか。では、いつまでも魔力を放出している訳にはいきませんので……。私のとっておきを見せてあげます」



 と、とっておき。ですか。



 この馬鹿げた嵐も彼女にとっては前座なのか。


 彼女を覆う緑の光が強烈に発光し、両手を空へと掲げた。




「古の血に宿りし力。今、此処に解き放つ……」



 発光が止み、周囲を取り囲んでいた竜巻が消失。


 一切の音が鳴り止み自分の心臓の音が激しく鳴り続けている事に気付いてしまった。


 この不気味な無音が警戒心を最大限まで上昇してしまう。



 や、や、やばい。


 絶対にこれはやばい!!



「ユウ!! 下がるぞ!!」


 少しで被害を抑える為。


 家屋の中に避難を開始しようとするが。




「空を統べし女王が命ずる!! 荒れ狂え!! 風よ!! 嵐よ!!!!」



 残念。


 もう間に合わないな。



 アレクシアさんの掲げる手の先には空を覆い尽くす巨大な風の玉が出現し。


 その中では幾つもの鋭い風の刃が飛び交い、竜巻よりも猛烈な風が渦巻いていた。




「ユ、ユウ。ごめん。ちょっとおっかない」


「安心しろって。あたしもおっかねぇから」



 で、ですよねぇ……。


 あの馬鹿デカイ玉がこっちに向かって来ると思うと、ね??



「さぁ、覚悟はいい??」



「「出来ていませんっ!!!!」」



 声を合わせ、大にして叫んでやった。


 出来ている訳ないだろ!!


 こんな所で死ぬ訳にはいかないのだから!!



「荒れ狂え…………。風絶狂域テンペストフィールド!!!!」




 勢い良く両腕を此方に向かって振り下ろすと同時に、巨大な風の玉が襲い掛かって来た!!




 く、くっそぉおおお!!


 こうなったら自棄だ!!


 絶対に耐え抜いてやる!!



「ユウ!! 耐えるぞ!!」


「おぉう!! 風で吹き飛ばされない様に、あたしの手を掴んで!!」



 ユウが大戦斧を地面に突き刺し左手で銀の柄を掴み、此方に右手を差し出す。



「了解だ!!」



 心を決め彼女の手を掴み、丹田にこれでもかと力を籠め襲い掛かる衝撃に備えた。






 風の玉が地上に着弾した刹那。


 体が一気苛烈に上空へと舞い上がり、無数の風の刃が襲来した。




「「ウギィィィィヤアアアアア!!!!」」



 鋭い風の刃が無慈悲に体を切り刻み、馬鹿げた風速が鼓膜をそして瞳を傷付ける。



 な、何だこれ!?


 こ、こ、こんなもの……。耐えられる訳ないだろ!!




「レイドぉ!! 絶対、手を放すなよぉおおおお!!」



 襲い掛かる刃に歯を食いしばって耐えているユウが叫ぶ。



「あ、あぁ!! だ、だけど!! うぐぐ……」



 頭と足。


 反対になった姿勢でユウに向かって叫ぶものの。


 体全身から吹き出す出血で意識が遠退いていくので……。


 それは難しい……。かな。




「気絶すんな!!!! 今、気を失ったら……。死ぬぞ!!!!」



 死??


 今ここで、死ぬのか??


 任務も達成していないのに??


 そして、街の人々やハーピーの里の皆さんも救出していないのに??



 何も成し遂げていない中途半端な自分に怒りが募る。



 絶対、生き伸びてやる!!!!



「あ、あぁ!! こんな所で死ねないよな!!」


 決意を籠めた瞳でユウの手を力強く握り返す。


「その意気だ!! ぐぁっ!!」


「ユウ!!」



 一際鋭い風の刃が彼女の腹を襲い、続け様に繋いでいる手に襲い掛かって来た。




「し、しまっ!!!!」



 ユウの目が大きく開かれると同時に繋いだ手が離れてしまう。




「ユウ!! 俺の事は良い!! 自分を守れ……。ぐぅぅうあああああっ!!!!」



 強風に誘われ、体が宙へと舞い。



 想像を遥かに超えた痛みが体を襲う。



 上下左右に常軌を逸した速度で舞い続ける体。


 何処が地上で、何処が空なのか。


 平衡感覚が消失し、それと同時に風の刃が命を断とうと体を切り裂く。



 や、やばい……。

 このままじゃあ、本当に死んじまう……。



 風の刃が肉を裂き、裂け目から呆れる程の血量が宙へと放出。

 己の深紅が服を穢し、顔を穢す。



 景色が白み始め、鉛を括り付けられた様に瞼が重い。


 もう、何も考えられない。



 このまま眠ったら……。楽になるのかな……。



 それすらも考えるのが面倒だ。



 もういい。

 目を瞑れ。

 楽になろう……。



 もう一人の自分の甘い囁き声に身を委ね。

 空に舞い続ける中、そっと静かに目を閉じた。




















「――――――。諦めてはいけません」



 混濁していた意識を現実の下へと戻す澄んだ声が響くと同時に、体が求め続けていた硬い地面へと着地した。



 な、何だ……??


 ど、どうなった……??



 硬く閉ざされた瞼を開くと、早朝の光に彩られた美しい空を瞳に捉えた。



 生きて、いるのか??



「おはようございます」


「――――。カ、カエデ??」



 必死の思いで上体を起こし声の方向を確認すると。





 藍色の髪の女性が空の女王と、たった一人で対峙していた。






 風に吹かれたなびく藍色の髪が揺れ動き、華奢な肩には似合わない堂々とした立ち姿。


 その背中は俺にこう語り掛けていた。



『立って、戦え』



 戦場に遅れてやって来た窮地を救う英雄の背中に発破を掛けられ、残り滓の気力を発熱させ大地に両の足を立てた。



「く……。ぐぅぅう!!」


「そうです。立って戦って下さい」



 可愛い顔して無茶言うよ……。


 こちとら、出血多量で意識が朦朧としているのに。



「ユ、ユウは??」



「御安心を。彼女なら……」



 カエデが動かした顔の方向へと視線を動かすと。




「ユウさん!! 大丈夫ですか!?」


「お、おぉ。大丈夫……」



 民家の壁に頭を突っ込み、下半身を此方側に向けている彼女の姿を捉えた。



「もう少し優しく引っこ抜いてくれ!! 胸が全部出ちまう!!」


「えぇ!?」



 冗談を言える分、俺より軽傷だな。


 ってか。


 お尻振るの、止めません??



「ピナさんも無事だったか」


 顔を真っ赤に染め、ユウの腰を一生懸命に引き抜こうとしている彼女の姿を見て何処か安堵してしまった。


 良かった、無事で。



「お陰様で。さて……、ハーピーの女王様。少々宜しいでしょうか??」



 上空で浮かび続ける彼女へとカエデが問う。



「何かしら」



「あなたは少々お痛が過ぎましたね」



 いつもと同じ丁寧な口調なのですが……。


 少々語尾に怒気が含まれている。



 カエデさん。

 怒っていらっしゃいます??



「それがどうしたの??」



「いい加減に目を覚まして下さい。これ以上ここで暴れたら里が持ちませんよ??」




「それは私の勝手でしょう?? 好きに暴れ、好きな様に残虐の限りを尽くす。うふふ……。あはは……。アハハハハハ!!!! 最高じゃないですか!!」




 腹を抱え、珍妙な声色で笑い声を放つアレクシアさんを見ると……。



 胸が痛いな。


 きっとあれは本人が望んでいる姿では無いのだから。



「アレクシア様!! お願いします!! 正気に戻って下さい!!」



 ユウを引っこ抜き、此方にやって来たピナさんが懇願を放つ。



「あらあら。ピナ?? どうしてそちら側に居るのかしら??」


「カエデさん達のお力で正気に戻ったのです!! ですから、アレクシア様も彼女達に従って下さい!!」



「御断りします。私は空を……。自由に駆け回りたいの。何のしがらみも無い、澄んだ空。美しい空気を切り裂いて、何処までも……」



 ふっと寂しい顔になり、地平線の彼方へと顔を向ける。



「――――。お願い!! アレクシア!! 私の声を聞いて!! 昔からずっと一緒の仲じゃない!! いつもの……。優しい……。アレクシアがいいよぉ……」



 目の淵から零れ落ちる涙を手の甲で拭き、今にも枯れてしまいそうな声量で懇願するが。



「あなたは……。そうか。そこに居る虫達の命令に従っているのですね?? 安心しなさい、ピナ。私が……。全てを破壊してあなたを今一度迎えてあげます!!!!」



「だ、駄目――――――――!!!!」



 ピナさんが叫ぶと同時に、アレクシアさんの体内から赤い強烈な発光色が解き放たれた。


 それと同時に再び強風が吹き荒れてしまう。



「くっそぅ。まだ上があったか……」



 頭から煤を被り、いつもの深緑の髪が台無しになってしまっているユウが話す。



「恐らく、あれが最後の抵抗でしょう。消える前の灯火です」



 手負いの獣程危険だ。


 己の命を消失させまいと、消えかけている命を再燃させ襲い掛かる敵を蹴散らすのだから。



「ですが。その時が一番危険です」



 でしょうねぇ……。



「言い換えれば、これを乗り切れば私達の勝利です。最終局面に突入します。皆さん、準備は宜しいですか??」



 此方に背を向けるも。


 カエデの体全体からは決意にも満ちた空気が放たれている。



「おうよ!! ぶっ飛ばして、目を覚まさせてやろう!!」


「わ、私は私にやれる事をやります!!」


「正直、立っているのも辛いけど……。アレクシアさんを苦しみから解放してやろう。そして、里に元の平和をもたらすんだ」



 彼女の決意に同意した声が三つ。


 空から降り注ぐ強風の中で確かに、そして力強く響く。



 あんな華奢な子が先頭に立って勇気を振り絞れと背中で語っているのだ。それに応えるのが男ってもんだろ!!



「――――。結構です。そして、我々の勝利へと続く最後の欠片が今。到着しました」



 最後の欠片??


 何の事だろとアレクシアさんの後方の屋敷の屋根に視線を移すと…………。






「…………――――どぉぉぉぉおおおおおりゃあああああああ!!!!!!!!」



 黄金の槍を手に持つ深紅……。


 じゃあ無い。


 今は黒髪の女性が三階の屋根から上方に飛び上がり、彼女へ向かって何の遠慮も無しに黄金の槍を叩きつけるではありませんか!!



 無事で何よりです。



 槍の穂先が直撃する刹那。



「ぬぉ!? かってぇええ!!」



 風の防壁によって穂先が弾かれ、地面へと落下。



「ほっ!! よっとぉおおお!! へへ、全員集合ね??」



 華麗に着地を決め。


 どうだと言わんばかりに片眉をクイっと上げた。



「お帰りなさい。何故、黒髪なのかは後で問います。今は戦いに集中して下さい」


「わ――ってるってぇ!! なんかさ、最後の最後って感じだしぃ!? 気合いれて行くわよ!! 皆の衆!!!!」



「「何様だ」」


 ユウと声を合わせ、先頭に躍り出たお馬鹿さんへと話す。



 満身創痍の体だけど……。


 こうして皆が揃うと、何でも出来そうな気がして来るよ。


 もう間も無く訪れるであろう最終局面に対し。


 俺達は勇気を、そして気力を振り絞り己を奮い立たせ。空の女王と対峙し続けていた。


最後まで御覧頂き、有難う御座いました!!

本日はこのまま執筆を続けます。

日が変わるまでに投稿出来れば宜しいのですが……。

間に合わなければ、明日の昼休み中に投稿させて頂きます!!


是非ご覧下さい!!

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