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第百二十三話 興味本位の接近は計画的に その一

お疲れ様です。


大変お待たせしました。本日の投稿になります。


それでは御覧下さい。




 アオイの里を出発してから本日で四日と半日。


 地図上の予想では既に敵の陣地内に到達している計算なのだが……。此処まで敵の姿、それどころか影さえも発見出来ないでいる。


 平地の街道の様に進み易い道なら単なる移動もさして苦労はしないが。


 体に纏わり付く湿気を含んだ森の空気が汗を促し、しっとりと湿った土が悪戯に俺達の体力を奪い続けていた。


 慣れない森の中の行軍の遅さや、敵に発見されない為慎重にならざるを得ない速度の進行。様々な原因を加味したとしても計算が合わないんだよね。



 その所為なのか、将又この森が与えて来る暑さに苛立ちを募らせているのか。我が分隊長の御機嫌はちょいと宜しく無いのです。



 俺とリューヴの直ぐ後ろを親鴨の後を続く小鴨の如く。トコトコと歩くカエデの方へ振り返ると。



「……っ」



 彼女はまるで親の仇を見付けた様な鋭く険しい眼で地図を見下ろしていた。



 余所見をしながら歩いていると転びますよ??


 そう言いたのは山々なのですが……。


 あの状態の彼女をこれ以上刺激すると大変恐ろしい仕打ちが襲い掛かって来る恐れがあると考え、カエデが此方の視線に気づく前に正面を向いた。



 多分、だけど。


 練りに練った計算が合わなくて苛立ちを募らせているのではなく、どうして計算が合わないのかが気になっているのだろう。



 俺達が発見出来ない以上、敵は西へと後退している可能性が高い。此処で生まれる問題は何故敵が前線を西へと下げた、その理由か。



「リューヴ、何か感じる??」



 翡翠の険しい視線を周囲へと送り、一切の警戒を怠らない大変頼りになる哨戒の任を担っているリューヴへと問う。



「いや。特に何も感じ無いな」



 左様で御座いますかっと。


 リューヴの鼻で捉えられないのなら安全なのは確実か。



 敵が見つからない焦る気持ち、見えない敵に対して抱く形容し難い複雑な感情とは裏腹に只管西へと進んでいる。


 ひょっとしてこの森にはもう敵はいないんじゃないのか。そう思ってしまう程であった。



「何で敵は現れないんだろう?? 西に後退したのかな??」



 心に思ったままの言葉を口に出す。


 おっと。


 倒木に足を取られてしまいそうでしたね、気を付けて進みましょう。


 いざ敵とご対面となった時に捻挫でもしていたら洒落にならん。



 古ぼけて朽ち果てた木を跨ぎ終え、重い背嚢を背負い直して再び西へと進み出す。



「それは分かりません。シオンさんがたった一人で西方を防衛したと伺いましたので……。彼女の力に恐れをなして前線を下げたのでは??」



「い、いやいや。たった一人の力で前線を押し返すって……」



 カエデさん??


 それは幾らなんでもこじ付け感が強過ぎますよ??



「彼女なら有り得るやも知れんぞ」



 その身を以て彼女の力を思い知ったリューヴの口から語られると、ちょいと信憑性を帯びて来ますが。


 たった一人の力で敵の前線を退けるとは信じ難いよなぁ……。



「リューヴ、シオンさんと組手してどう感じた??」


「そうだな……。手加減されて死なない程度に痛めつけられた」



 苦い敗戦を思い返す様に、円らな瞳をぎゅっと閉じて大きな溜息を零しつつ言葉を漏らした。



「力は何割程度で相手したの??」



 リューヴとルーは力を共有しているので片方が全ての力を持つ訳にはいかないからね。



「……、七割だ」



 七割か。


 確か、マイ達と戦った時は八割だったよな。


 あの馬鹿げた力を手玉に取るとは……。流石フォレインさんの右腕を務める事はある。


 それでも底を見せていない。いや、見せてくれないと言った方が正しいのか。


 彼女の本気を垣間見る為には一体どれだけの力が必要なのか計り知れない。俺達全員で取り掛かれば見せてくれるのかしらね??


 一騎当千の力を持つ女王の右腕の本気、か。


 見たい様な見たく無い様な……。



「…………。止まって下さい」



 身の毛もよだつ恐ろしいシオンさんの姿を想像していると、背後からカエデの緊張感を持った声が届いた。



「どうしたの??」



 彼女の声を受けると同時に俺とリューヴが警戒心を一気に高めて周囲へ注意を送るが、視界が捉えたのは本日も緑溢れる光景。特に異変らしき変化は見当たらなかった。



「敵の魔力を感知しました。索敵を開始します」



 カエデが俺達の前へと歩み出て正面奥にうっそうと茂る森へと手を翳し、淡い水色の魔法陣を浮かべる。



「…………、居ました。正面約二百メートル先に五体の反応があります」



 五体??


 随分と少ないな……。



「少なくないか?? オーク共は群れを成して行動しているのに……」


「えぇ。ですが、魔力は通常の個体と比べると遥かに高いです。凡そ倍程度と考えて下さい」


「倍?? ん――……。どんな奴らだろう」



 その五体だけが本隊からはぐれたとは考え難い。別行動中の偵察分隊なのか、それとも本隊とは別の目的を持って行動しているのか……。


 それに通常の倍程度の力。


 これで気にならないと言えば嘘になる。


 偵察の任を受けて文明社会から離れて行動を続けているのだ、是が非でもその姿を見収めておきたいのは事実だよな。



「一応、姿だけでも確認する??」



 ある程度の力を持つ相手にはそれ相応の危険が付き纏う。


 此処は一つ、分隊長並びに多数決を取ろうじゃありませんか。



「私は賛成です。どんな姿形をしているのか興味がありますので」


「私も賛成だ」


 決まりだな。


「くれぐれも音を立てない様に……。慎重に行動しよう」


「分かりました。それと、地図にこの場所を印しておきます」



 カエデが地図上に印を描き。



「それじゃあ行こうか」


「念話の使用は禁止します。微弱な魔力を感知される恐れがありますので」


「了承した」



 それを見届けると細心の注意を払い、亀の様に鈍重な歩みで確実に前へと進み始めた。



 敵の真意が理解出来ぬ以上、慎重にならざるを得ないし不必要な戦闘は極力避けなければならない。



 慎重な歩みから中腰へ、そして周囲に生い茂る緑の高さに合わせて更に四足歩行へ。



 慎重に慎重を重ねた移動を続けていると、四肢を器用に動かし。俺達を颯爽と追い抜かして先頭に躍り出た藍色の亀さんがその動きを止めた。




『……、見えました』



 カエデがそっと静かに茂みの中から遠くを見つめ、小鳥も思わず首を傾げる声量で敵の存在を知らせてくれる。


 俺とリューヴも彼女に倣い、三名仲良く肩を寄せ合い六つの目を前方へと向けた。





 ……、居たぞ。



 正面、ずっと奥にカエデの報告通りに五体のオークが大地の上に立ち周囲を警戒している。



 魔力が倍と伺ったのも納得出来る程に五体のオークは通常の個体と比べ一回り、いや二回り程大きい。


 背丈は周囲の木々と比較して凡そニメートル程度か。


 ドス黒い体色に筋骨隆々とした体躯、豚の顔は更に狂暴性を増しているのか猛々しい牙が下顎から天へと向かって伸び、丸太をも容易く粉砕出来そうな太い腕が両肩から伸びていた。



 使用する武器は大剣、短剣、手斧、槍、そして大弓。



 単純に強化された種類、なのだろうか??


 体躯から察するに多分そういう事だと思うけど……。



『主、どうする??』



 新しい玩具を見付けた頑是ない子供の様に煌びやかな瞳を浮かべてリューヴが小声で問う。



 駄目ですよ?? どこぞの龍じゃああるまいし。


 喧嘩を吹っ掛けたら。



『こちらの存在を知られたら厄介だ。このまま引き返して南進しよう』



 今回の任務の目的は相手を殲滅する事では無い。


 好き好んで自ら危険に突っ込むのは気が引けるし、それに戦うのは俺だけじゃないんだ。不必要な危険をカエデ達に与える訳にはいかん。



『ふんっ、了承した』


『分かりました』



 聴力に神経を統一させないと聞き取れない小声で撤退を了承してくれた。



『じゃあ下がるぞ』



 来た時と同じ所作で踵を返し、未知数の危険から撤退を開始する。



 後ろ髪を引かれてその場に留まろうとするリューヴの気持ちは分からないでもない。相手がどんな攻撃方法を仕掛けて来るのか気にならないと言えば嘘になるからね。



 力は?? 速さは?? 戦闘技術は??



 敵の能力を知りたいという身勝手な思いが湧き上がって来るが、それを跳ね除け亀の歩みを続けた。



 いかんなぁ、どこぞの腹ペコ龍に感化されている……。大人しく撤退が正解ですよっと。



 四足歩行から二足歩行へ変化すると、リューヴが俺の肩をちょいちょいと引っ張る。



『主。あの五体程度なら私一人でも容易く撃退出来るぞ??』


『駄目だって。もし、一体でも取り逃したら増援の恐れがあるし』


『逃げる暇も与えずに撃退するが??』



 そんな目で俺を見ても駄目ですっ。


 おでかけ用の紐を口にハムッと含み、何かを請うような煌びやかな瞳で飼い主を見上げる愛犬みたいな表情を浮かべていますけども。



『今回の任務はあくまでも偵察。戦闘は極力避ける必要が……』



 楽しいおでかけを強請る愛犬の誘いを断腸の思いで跳ね除け。後退を続けていると。



「っ!?!?」



 誰かさんの足の裏が地面の上に寝っ転がる横着な木の枝をポッキリとへし折ってしまった残念無念な音が周囲に響き渡った。



「……っ」



 リューヴが踏んでしまったらしい。


 すまない!! そんな表情を浮かべていた。



 大変静かな森の中に突如として響き渡った不自然な音。


 これを聞き逃している様じゃあ兵隊は務まりませんよねぇ……。


 鋼鉄よりも硬い生唾を喉の奥へと送り込み、祈る想いで静かに振り返った。

















「……」



 お、おぉう……。



 茂みを掻き分けて出現した先程の一体の個体とバッチリ目が合ってしまった。


 向こうもこんな場所でばったりと出会うと思っていなかったようで?? 驚いた様な表情を浮かべていたが。



「……!!!!」



 醜く黒い瞳で俺の顔を見つめると、此方を敵と認識したのか。


 敵意と憎悪。


 負の感情てんこ盛りといった険しい眼へと変化した。



「あ、あはは……。どうも」



 取り敢えずの挨拶を放つと同時。



「ガァァアア!!!!」



 有無を言わさずに人の体等容易く両断出来てしまう大剣を薙ぎ払って来やがった!!



「あっぶねぇ!!」



 咄嗟に屈んで急襲を回避。


 背後へと飛び退いて荷物を捨て置き、抗魔の弓を肩から外して戦闘態勢を整えた。



「主!! 申し訳ない!!」


「構わない!! それより、来るぞ!!」


「「「グルルルゥ……」」」



 正面から五体の強化されたオークが逞しい体をこれ見よがしに揺らしながら歩み寄り、此方と対峙する形で足を止めると。



「「「……」」」



 まるで俺達を品定めするかの様に五体がそれぞれ視線を動かしている。



 随分と余裕を持った態度だな……。


 それだけ自分の力に自信があるのだろう。


 俺達が取るに足らない相手だと高を括ったのか知らんが、その驕りは間違っていると教えてあげましょう!!!!



「ふぅ……」



 先ずは遠距離が厄介な弓兵に対し弓を構え、力を籠めて弦を引くと。殺意を持った敵を確実に射殺す美しい輝きを帯びた朱の矢が出現。



 力は……、三割程度にするか。小手調べだ。



 無防備な姿勢を保持する大馬鹿野郎に照準を合わせて矢を放つと赤き矢は俺が思い描いた通りの直線を描き、最短距離で弓兵へと飛翔していく。


 労せずに一体撃破かと思いきや。



「グアッ!!」



 弓兵の隣の個体が飛翔する矢を容易く大剣で切り払ってしまう。


 鈍い炸裂音の後、切り払われた矢は一瞬強く瞬くと空間から消え失せてしまった。



「まぁ、黙って撃たれる訳にはいかないよな」



 しかし、今の斬撃……。


 大人の背丈程の大剣をまるで木の棒の様に軽やかに扱う膂力は馬鹿に出来ないぞ。



「あの速さの矢を正確に切り払うとは……。楽しめそうだ」



 リューヴが込み上げて来る戦闘意欲を誤魔化す様に拳を開いては閉じたりしている。



 楽しめそうって……。リューヴもマイに似て来たんじゃないのか??


 まぁ元々戦闘大好きっ子なのは理解していますけども。




「かなり鍛えられています。二人共気を抜かない様に」



 カエデが普段通りの声色を放った刹那。



「ギシシッ……」



 大弓を装備した強化豚が俺に視線を合わせると茂みの奥へと姿を消した。



 野郎……。


 明らかに誘いやがったな!?




「待て!!」


「主!! 深追いは禁物だぞ!!」



 強面狼さんから諸注意を受けますが。



「分かっている!! 増援を呼ばれたら不味い!! 此処は任せたからな!!」



 後方にどれだけの敵が居るのか不明瞭に対し此方はたったの三騎。


 味方の増援が望めない今、これ以上敵が増えるは御勘弁願いたいからね!!


 抗魔の弓を手に取りもう既に深い森の中へと姿を消失させてしまった弓兵の追撃を開始した。









 ――――。




 主が弓兵を追い、正面の敵を避けて右の茂みの中へと駆けて行く。


 私はそれを見送ると残りの四体に視線を戻した。



「どうやら、主を追う気配はないようだな」


「そのようですね。まぁ此方に背を向け追いかけるようでしたら容赦無く背を撃ちましたが……」



 そう話す彼女の手元には冷涼な青色の魔法陣が浮かんでいた。



「ふっ。カエデもそのように考えていたのか」



 脚力を抜き、自然体に構え直す。



 人間だから敵一人でも対応できる、奴らはそう考えたのだろう。


 主の実力も知らずに……。甘い考えだ。



「レイドなら大丈夫です。残りの四体を片付けましょう」


「了承だ。継承召喚は……、駄目か??」



 速攻で片付けても良いが、主にコイツ等の力量を伝える役目もある。


 難しい判断だな。



「後方にどれだけの戦力が配置されているのか分かりませんので、それは了承しかねます。強過ぎる力は相手にも感知されますから」


「分かった。このまま相手しよう」



 さぁ……。


 狩りの時間だ!!!!


 血沸き肉躍る戦いを繰り広げようでは無いか!!!!



「いけますか??」



 藍色の瞳で此方を見上げる。



「愚問だ。私が四体を相手しても構わないか??」


「私が四体でも構いませんよ??」


「世迷い事を……。来るぞ!!」



「「「「グアァァアアアア!!!!」」」」



 口元から太く鋭い牙を覗かせ、剥き出しの敵意を浮かべた四体が武器を構え大地を踏みつけながら襲い来た。




「ギシャァッ!!」


「あなたの相手は私ですか??」



 右手に短剣を持った個体がカエデに襲い掛かる。



 カエデに接近戦は務まるものか?? 相手の得物は短剣、接近戦にてその真価を発揮する。


 魔法主体のカエデでは分が悪い。



「私の心配は無用です。そちらはそちらで好きに暴れて下さい。私は向こうでじゃれ合って来ますので」


「そうさせてもらう!!」



 心配は無用か……。ふっ、頼もしい限りだ。



「グガァ!!」


「はぁっ!!」



 正面から威風堂々と大剣を振り下ろして来た斬撃を回避。



「ふっ!!」



 空を切った大剣が中段の構えに戻る前に相手の左頬へと雷撃を打ち込んでやった。



「グァッ!? グ、ウゥ……」



 私の動きを甘く考えていた様だな。


 予想以上の速さと重さの反撃を真面に食らい踏鞴を踏んでいるのが良い証拠だ。




 相手に打ち込んだ右の拳に硬い感触がじわりと広がっていく。


 随分と硬い装甲だな。


 筋骨隆々とした見てくれは伊達じゃないようだ。



「「ガァ!!」」



 踏鞴を踏む個体を援護する為。


 右から手斧、そして左から槍が同時に薙ぎ払われて私の体に襲い掛かる。



「ふっ!!」



 限界まで上体を反らし、反った背中の角度を地面と平行に。それと同時に眼前を二種類の武器が通過。


 それ相応の破壊力と速度が鼻先の空気を消し飛ばした。



 ふむ……。中々の速さと威力だな。


 マイ達との組手程では無いが、少しは楽しめそうだ……。








 ――――。




「シャァァアアッ!!」


「危ないですよ?? そんなに振り回したら」



 左右から鋭い斬撃の嵐が私の体を切り刻もうと、空気を裂き襲い掛かって来る。


 私は主戦場から後退を続けながら機を窺っていた。


 いや、正確に言えば相手の実力を推し量ろうとしていた。



 今回の任務は偵察と敵情視察。それならば相手の実力も多少は理解しておいた方が彼の為……。


 ううん。


 この大陸に生きる人の為になるのだから。



「シッ!!」


「おっと……」



 腹部を狙った鋭い突きを右手で弾く。


 土の魔法で右手を硬化させておいて正解でしたね。



 暫く様子を窺ってはいますが……。鋭い斬撃に目を見張る物はありますがそれ以外にこれと言って特殊な攻撃はしてこない。


 単純な強化種と考えて良い様ですね。



「シャ――!!!!」



 当たらない事に憤りを感じたのか。斬撃が雑に、そして素人目にも容易に看破出来る攻撃態勢へと移行した。



 駄目ですよ??


 そんなに大きく振り翳したら。



「風よ……。吹き荒べ」



 刹那に生まれた隙を見逃さず相手の懐に一歩踏み込み、風の力を籠めた右手を翳す。


 淡い緑色の魔法陣から一陣の突風が吹き荒れ、強化種を後方へと吹き飛ばして行く。



「アギャッ!?」


「ふむ。短い詠唱でここまでの威力を引き出せるようになりましたか。成長が目に見えるのは嬉しい限りです」



 魔力だけじゃなくて、素早い攻撃にも対応出来る身のこなしも評価されるべきでしょう。


 これも日々の研鑽の成果。


 ふふ……。


 彼女達から受けた痛い思いは決して無駄では無かった様ですね。 




「グ……。ガハ……」



 巨木に体を打ちつけられ相当な痛手を負ったようだ。


 今にも崩れそうな足に力を入れて立ち上がると憎悪の目を此方に向けて来る。



「まだ立ちますか?? 警告します。命が惜しければそれ以上私に近寄らない様に」



 私の淡々とした態度が癪に障ったのか。



「ガァアァァア!!」



 憎悪で真っ黒に燃え盛る炎を瞳に宿し、明確な殺意を持って此方に向かって駆け出して来た。



 折角忠告してあげたのに。残念です。




「ギィィャァァアアアア――――!!」



 地面に設置した魔法陣に強化種の足が触れると、魂をも焼却してしまうであろう灼熱の炎柱が大地から噴出した。



「言ったでしょう?? 私に近寄るなと」


「ガァァアアアア!! ア、アァァァ……」



 血よりも赤き深紅の炎の中で悶え苦しんでいた強化種の無意味な動きが事切れると同時。



「考えも無しに後退していた訳ではありませんから」



 私の強過ぎる魔力を察知されたら大変ですからねっ。



 魔力の放出を抑え炎を御すと炎の柱の中から無残に焼け焦げてこんもりと盛り上がった焦土が出現し、私の勝利を知らせてくれた。




 一体でこの強さ……。


 予想以上でしたが想定の範囲を超える事は無かった。


 強化種は魔法を使用する魔物相手だと多少なり善戦するかもしれませんね……。


 これが人間相手となると、彼等の苦戦は必須となる事でしょう。


 事前に戦っておいて正解です、良い情報が入手できました。



 さてと、御二人はどうなりましたか……。


 戦闘大好き狼さんと、私の命令を受ける前に敵の追撃を勝手に開始してしまったお馬鹿さんが待つ前方へと静かに歩み出した。




最後まで御覧頂き有難うございました。


そして、ブックマークをして頂き誠に有難う御座います!!


日曜の夜までびっしりと予定が詰まり、地獄の様な一週間を終えて草臥れ果てたこの体に嬉しい活力となりました!!


プロット作成が大幅に遅れてしまったので今週は少々投稿が遅くなるかも知れません。



もう間も無く訪れる年末年始。


皆様は如何お過ごしの予定でしょうか??


私は勿論執筆活動に勤しむ予定ですので投稿を楽しみにされている方は御安心?? して下さい。年内に第二章を終える為にも精進させて頂きますね。



それでは皆様、おやすみなさいませ。

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