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第二十三話 大変難儀な避難誘導

お疲れ様です。

本日の投稿になります!!


それでは、御覧下さい。




 大気を吹き飛ばす馬鹿げた衝撃波と共に熱の塊が押し寄せ、皮膚を悪戯に焦がす。


 粉々に吹き飛んだ門の木片が上空から降り注ぎ、彼女が放った魔法の威力の凄まじさを物語っていた。





 あ、あんな華奢な子が……。


 たった一撃で門を破壊しちゃったよ……。




「「「ギィィィアアアァァッ!!!!」」」



「っ!!」



 異常事態を察知したハーピー達がカエデ達を追い、大空へと羽ばたいて行く。



 一体、何体の数を引き連れて行ったのだろう……。


 大雑把な計算で……。百、程度かな。



「あっれまぁ」

「すっげぇ数……」



 マイとユウも俺と同じ考えなのか。

 ポカンとして口を開いて凡そ、百体もの軍団を見送った。



「お、おい!! アレ、大丈夫なのか!?」



 多勢に無勢とは覚悟していたが、流石にあの数を目の当たりにすると体が竦んでしまう。

 

 アレに囲まれた時には体がバラバラに刻まれて……。


 そう考えるだけで身の毛がよだつぞ。



「大丈夫って言ったんだから大丈夫でしょ」


「そうだな」



 いやいや!!


 御二人共、もう少し慌てようよ!!


 カエデは初陣なのですよ!?



「カエデを信じなさい。あの子は私達が考えている以上に芯が通った子よ」

「その通りっ!! それに……。なぁ??」



 ユウがそう話し、マイの頭をポンっと叩く。



「背が縮むから止めろ。あの子達の心配よりも、今は私達の仕事をぉ……」




 ユウの手を跳ね除け、ニィっと口元を曲げて開かれた門を見つめる。



 既に戦闘態勢ですか。


 開戦の狼煙は既に上がったのだ。


 俺達は俺達に与えられた仕事を全うするのみ!!



 拳をぎゅっと握り、いざ木の影から飛び出そうとすると……。




「達成すればいいんだよぉぉぉおおお!!!!」




 マイの言葉を待たずに、ユウが木の影から飛び出し。


 何の警戒心を持たないで単騎突貫を開始してしまった。



 しまった!!


 で、出遅れた!!



「あ、あぁ――!!!! 私が先頭なのぉ!!」


「今はそんな事より!! 集中しろ!! 何処から襲われるか分からんぞ!!」



 飛び出したマイの背を追い。



 先頭で突貫を続けるユウへ追いつけと言わんばかりの全力疾走で駆け出す。





 今も黒煙が燻ぶる門跡を通過し……。


 ハーピーの里へと第一歩を踏み入れた。





 ピナさんから伺った通り、大きな通りの左右に民家が立ち並び。それがずっと奥まで続いている。



 こんな状況じゃなければ足を止めて眺めていたいのですけど……。



「クァァァ……」

「ググゥゥ……」



 流石にそれは了承出来ませんか。



「マイ、ユウ!! 出て来たぞ!!」



 左右の民家の上空。


 約四十ものハーピーが音も無く出現した。



 残存戦力でもこの戦力差。



 流石にマイ達でも気負うか??




「おっしゃああああ!! こっちだぁ!! 掛かって来やがれ!!」


「纏めて掛かって来い!! 全員、羽の毛を毟って……。今晩のおかずにしてやらぁああ!!」



 あなた達にその心配は無用でしたね。



 此方から見て右側へマイ、左側へユウ。


 知らし合わせた訳でも無いのに誰にでも分かり易い挑発を放ち駆けて行く。



「「ギィイィィ!!!!」」


「「ガアアアアァッ!!」」



 挑発に当てられた彼等が獲物を追う猛禽類の目を浮かべ、彼女達の後を素早い速度を保ちつつ追跡を開始した。




 言葉の意味に反応したのかな??


 そんな訳無いか……。




 爆ぜる疾走、勢いそのまま。


 肺が悲鳴を上げる速度で里の中央へと駆け続けていると……。



 上空で警戒を続けていた二体のハーピーに発見され、彼等が地上へと降り立ち。



「「……」」



 俺の前に立ち塞がった。



 二体、か。



 右の男性は長剣、左の女性は槍。



 得物の差で此方が不利だな。


 短剣じゃあ間合いが短過ぎるし……。かと言って、この距離で弓を構えてもあっと言う間に距離を詰められ窮地に陥る。




 この差を埋める為にはどうしたらいいか。



 それは知れた事!!!!




「はぁっ!!!!」



 右手に熱き欠片を搔き集め、龍の力を発動。


 腰から短剣を抜き、二人と対峙した。



 さぁ、どう出る!?



「ギャアアア!!」



 右の男性が防御を無視した構えを取り、背に生える茶の翼を羽ばたかせ向かって来た!!



 考える事を止めた突撃は単調な分……。



「くっ!!」



 攻撃力が跳ね上がっていますので、対処が厄介ですよ!!



「ガッ!!」



 空に掲げ。一気苛烈に振り下ろす長剣を短剣の剣身で受け止め。



「食らえぇええええ!!」


 僅かに生まれた隙を見出し。


 右の烈脚を相手の腹部へと突き刺してやった。



「ギィアァァ…………」



 此方の一撃を食らった体は後方へと吹き飛び、勢いを保ったまま民家の壁へと直撃。


 壁にぶち当たった体は力無く地面に倒れ、無力化した事を此方に伝えた。



 よしっ!!



「次…………。おっ、わっ!!!!」



 気を切った訳では無いが。


 突如として穿たれた鉄の穂先に思わず声が出てしまう。



 頬を掠めた刹那。



 空気を裂く甲高い音と共に、矮小な痛みを感じる。



 ふぅ。


 落ち着いて。


 冷静に対処するんだ。



 左手の甲で血を拭い、中段の構えを取る彼女と相対した。



「クァァ……」



 先程の個体と違って、この女性はどうやら『見』 に回る様だ。


 恐らく、と言うか。確実に武器の間合いの差でそう判断したのだろう。


 じっと動かないのが良い証拠です。



 お生憎様。


 俺にはこの距離を一瞬で無にする、大変有難い武器を持っているのですよっと。



「ふっ!!」



 両足に力を籠め大地を鋭く蹴り。



「ギャッ!!」



 彼女から放たれた一閃を躱して己の得意とする間合いに足を置いた。



「少し、痛みますよ!!!!」



 右手に熱き拳を作り、地面から上空へと向かって放つ。



「っ!!!!」



 よしっ!! 直撃だ!!



 右の拳に感じ取った確かな肉感。


 それは、勝利を確信させるのには余りにも十分過ぎる感触であった。



「コ、アァァ……」



 右手に持つ槍を落とし、腹を抑え。


 粘度の高い液体を零しつつ踏鞴を踏む。




 これでもまだ意識を保つのか。



 立ち上がる恐れも懸念せねばならない。


 そう考え、確実に意識を断ち切る拳をもう一撃。腹部へと突き刺そうとすると。



「カッ……」



 彼女はそのまま腹部を抑え、地面に伏してしまった。




 二体、撃破!!




 龍の力を消失させ。


 勝利から得られる熱い鼓舞を身に纏い、里の中央へと再び駆け出した。




『羽、毟らせろやぁああ!! おらぁああ!!』


『貧弱貧弱ぅうう!! そんなちゃちな武器じゃあ、あたしは倒せないぞ!!』



 左右の奥から時折聞こえて来る女性の怒号と、挑発紛いでは無く正真正銘相手を虚仮にする言葉。




 あなた達は女性なのだからもう少し柔和な言葉を使いなさい。







『逃げんなぁっ!! あんたはデカイから特別に……。ぜぇぇぇぇんぶぅ!! 毟って、ひん剥いてぇ!! 丸裸にしてやるわぁああああ!! あ――ははははっ!!!! い――ひっひっいぃ!! 良い尻してんじゃねぇかぁ!! ああん!?』








 あの声色を聞くと、どっちが敵か分からんな。




 そして、狂暴龍に羽……、なのかな。兎に角、何かを毟られた御方には少し同情しましょう。


 敵である相手に同情の念を送っていると、漸く里の中央へと到着した。




「――――――――。皆さんっ!! 救助に参りました!!」





 里の中央に到着すると同時に、腹の奥から声を出し。


 今も力無く地面へと座る住民の方々へと叫んだ。




 頬は痩せこけ衣類には汚れと綻びが目立ち。立つのも辛そうな姿に心が痛む。


 体調面は大丈夫だろうか。


 だが、今はその心配をする前に。避難誘導が最優先課題だ!!



「きゅ、救助ですか!?」



 一番手前の男性が腰を上げ、力強い光を瞳に灯して此方に問う。



「そうです!! 今現在。自分の仲間達が懸命に戦い、時間を稼いでいます!! 南門が開かれていますので、避難を開始して下さい!!!!」



「わ、分かりました!! 皆、行くぞ!!」



「「「「お、おぉ!!!!」」」」



 突然の轟音と、騒動に目を白黒させつつも重い腰を上げて移動を開始してくれた。


 百を超える住民が一斉に立ち上がり、南へと進み出す。




 彼等から距離を取り、敵の襲来に備えていたが……。




 住居区画から聞こえて来る何かが破壊される巨大な音、そして過剰とも言える炸裂音が耳に届いた。



 マイとユウめ。



 派手に暴れ過ぎだぞ。


 この後、ハーピーの皆さんは此処に住むのだから不必要な破壊はいけませんよ??



 まぁ、言ったとしても聞かないだろうし。


 猛った炎が一度灯ってしまえば、あの二人を止める事は不可能なのです。




 中年の男性を最後に、里の中央から人の影か消え。


 周囲を窺い最終確認を行ったが、人の姿の欠片さえ確認出来なかった。



「――――。よし、全員移動したな」



 南門へと続く通りに移動を始め、列の最後方から彼等の背中を見守っていると……。




「ま、待って下さい!!」



 一人の女性が人の列に取り残され地面に蹲り、足首を抑えていた。



「どうされましたか!?」



 慌てて彼女に駆け寄る。



「お母さん!! 大丈夫!?」


 彼女のお子様だろう。


 齢七、八の男の子が彼女の傍らに寄り添い心配そうな瞳で見つめていた。



「あ、足首を……。捻ってしまい……」


「そうですか。誰か!! 力を貸して頂けますか!?」


 南へと続く彼等の列に向かって叫ぶ。



「分かった!! ちょっと待ってろ!!」



 一人の男性が此方に颯爽と駆け寄り、腰を落として彼女に背を向けた。



「申し訳ありません……」


「いいって事よ!! ソック!! お母さんを励ましてやれ!!」


「う、うん!! お母さん!! がんば……」




 男の子が励ましの声を放つ刹那。





「「「…………」」」




 三名のハーピーが此方に向かって弓を構えているのを視界に捉えてしまった。



 里の中央からこちらまで凡そ……。十五メートル。


 あの距離から放たれた矢の威力は人体を容易に行動不能に至らしめる。

 行動不能ならまだしも、最悪の場合……。








 考えるよりも。

 体が自然と動いた。







 ハーピーに無防備な背を向け、男の子の前に立つ。




 何かが空気を切り裂く音を奏で、そして……。




「お、お兄ちゃん。大丈夫??」




「――――――――。大丈夫。それより、お母さんの心配をしてあげな」



 彼の前に片膝を着き、恐怖を拭い去る安寧を籠めた手で頭を撫でてやる。



「う、うん!! お母さん、行こう!!」


「え、えぇ……」


「に、兄ちゃん。あんた…………」


 男性が俺の背に視線を送り、此方の身を案じた声を出す。




 こっちが不安な顔を浮かべれば向こうにもそれが伝わってしまう。


 今は、堪えろ!!




「自分は大丈夫です。こ、此処は自分に任せ。避難して下さい!!」


 背に感じる三つの激痛を全て無視し。


 努めて明るい声でそう答えた。



「お、おう!! 絶対、生きて帰って来いよ!!!!」


「はいっ!!」




 背中に感じる肉を貫く激痛。


 こんなもの……。


 あの人達が今日まで受けて来た痛みに比べれば、何て事は無い。


 寧ろ、生温いものさ。



「…………、待たせたな」



 彼等を見送り、背に矢を受けたままゆっくりと振り返った。



「「「…………」」」



 既に、第二射の構えか。


 残念ながら、あなた達の思うようにはいきませんよ!!!!



「はあぁぁああっ!! だぁああっ!!」



 再び龍の力を解放。


 それと同時に右端の個体の懐に潜り込み、短剣で弦を切り落とす。


「っ!?」



 此方の侵入速度に驚いたのか。


 それとも、切り落とされて今気が付いたのか。


 いずれにせよ。


 驚愕の表情を浮かべ、白く染まる瞳で俺の顔を捉えた。


 迎撃態勢を整える為。腰に携える剣に手を伸ばす所作を取る。



 そうはさせるか!!


 初手を抑えてやる!!



「少々、強く打ちますよ!?」



 右手に力を籠め彼の腹を一気苛烈に穿つ。



「「ギイイイァッ!!」」



 一体が飛翔し、後方の一体を巻き込み。家屋の壁を突き破って姿を消した。



「クアァッ!!」



 それを見送った一体が俺に目掛け、弓を構える。



「甘いっ!!」



 放たれた矢を確実に見切り、躱し。



「同じ位置へ、行きますよ!!!!」




 力を籠めた掌底を彼女の腹へと穿ち。



「グアアアァァッ……!!」



 ぽっかりと空いた家屋の壁に向かって同じ角度、並びに同じ威力で吹き飛ばしてやった。



 ちょっと強めに打っちゃったけど……。


 お腹だから大丈夫だよね??


 不殺を心掛けるのはこうも難しいのか……。


 一つ勉強になりました。



「よしっ!!!! 五体撃破っ!!」


 住民の皆さんも南門から滞りなく避難完了したし……。


 此れにて作戦の第一段階は終了。



 ほっと一息付こうとすると。




「どわっ!? な、な、何!?」



 胃袋の奥をズンっと刺激する爆音が突如として発生し、思わず肩が上下に揺れ動いてしまった。



 音の発生源を確認する為、振り返る。



「あ、あれは。一体……」



 上空に黒い煙が立ち上り、その下方から幾つもの黒い線が地上へと落下していく。


 ま、まさかですよ??


 あの煙を発生させたのはカエデの魔法で。


 煙の中からポロポロと落ちて行くのが、ハーピーの皆さん??



 此処からでも確認出来てしまう呆れた状況を見守っていると。



「お――。片付いたぁ??」



 のんびりとしたマイの声が届く。

 一通りお仕置きを楽しんだ所為か。どこか表情も満足気だ。



「あ、あぁ。今し方……」


 普段と変わりない表情と立ち姿。


 二十体以上と大立ち回りをしたっていうのに、傷一つ負っていない。


 大魔の力は伊達じゃない証明ですね。



「お待たせ――!! いやぁ、ちょっと手こずっちゃった!!」



 此方も無傷、ですか。


 いつも通りの快活な笑みを浮かべ元気良く右手を振りならが進み来る深緑の髪の女性。



 無傷、なのですが。


 服に若干の綻びが見えますね。


 避けきれなかったのかな??




「ユウ。上の下着、見えてる」

「ぬぉっ!?」




 そこまでは見ていませんでしたね……。



 慌てて振り返り、背中を北へと向けた。



「まぁ……。いっか!! これ位なら許容範囲だし!!」


「許容範囲の意味が分からん。ん……?? んんっ!? よぉ、ボケナス」



 ボケナス……。



 俺の事だろうが。


 此処で振り返ればそれを自分から認めたようなもの。




 決して振り向かんぞ。




「うっへ。よぉ、レイド。背中に矢が刺さってんぞ??」


 あぁ。

 さっきの攻撃か。



「男の子を庇ってね。その時に食らったんだよ」



「そっか――。マイはそっちの一本ね」


 はい??


「へ――へ――。ユウはそっちの二本を一気に抜いて」


「ん――」



 いや、ちょっと。お嬢さん達??



 本人の了承を得ないで悪戯に傷口を刺激してはいけないのですよ??



 止めて下さいと伝える為。


 静かに口を開こうとするが……。




「「せ――――のぉっ!!!!」」


「いっでぇぇぇええええ!!」




 熱した鋭い針を突き立てられた痛みが三か所同時に発生し、思わず声を大にして叫んでしまった。



「な、何すんだよ!!!!」


「何って……。ねぇ??」


 引き抜いた矢を乱雑に捨て去りつつマイがユウを見上げ。


「治療だって」


 それに呼応してユウも二本の矢を地面に捨てた。



「引き抜いてくれた事には感謝しよう。しかし!! 人の了承を得ないで、勝手に引き抜くのは看過出来ませんっ!!」


 腰に手を当て、巨大な鼻息を放射しつつ二人に言ってやった。




「「ふぅん……。そう」」




 こ、この人達はぁ!!


 特に表情を変えず、此度の最終目的地である最北の屋敷へと足を向けてしまった。



「人の話を聞きなさい!!!!」



 彼女達の後を慌てて追いつつ、憤りを籠めた声色でそう叫ぶ。



「うっさいわね。矢が突き刺さったまま行動されると、気になるでしょ」


「同感。痛々しい光景はちょっとな――。でも、さ。痛みは引いただろ??」


 ユウがニッと口角を上げて此方を見つめる。


「え?? あぁ、うん」


 疼痛は消失し、代わりに鈍痛が残っているが……。


 彼女が話す通り。


 痛みは僅かにでも和らいでいた。


 頑丈な体の造りに感謝します。




 南から北へ。




 三人横一列に並びつつ進んで行くと、件の屋敷を遂に捉えた。



 美しい木目が目立つ外壁が立てに伸びた造り。

 木造三階建ての屋敷は周囲の家屋と一線を画し、否応なしに目立つ。

 一階の入り口は両開きの扉が備え付けられ、今はしっかりと閉じている。




 此処から見える二階三階の窓もしっかりと施錠されていた。




「ほ――。さっすが、女王様の御屋敷ねぇ。見事なもんだ」



 マイが阿保みたいに口を開けて三階付近を見上げる。



「大きさはあたしの家の勝ちだけど。見た目はこっちが勝ちってとこかな」


「品評会はまたの機会で。屋敷に突入して、取り押えるか??」



 少々気が緩んでいる御二人へと話す。



「そうね。ピナが言っていた通り。飛んじまったら厄介だろうし」


「よっしゃ!! 鳥の女王様退治と洒落込みましょうかね!!」



 マイとユウがパチンっ!! と手を合わせ、肩で風を切って屋敷の入口へと進む。



 も――ちょっと、集中をね??


 まぁ言いませんよ。


 要らぬ怪我を負いたく無いし。


 彼女達から視線を外し、何気なく今一度三階へと視線を送った。












 ――――――――。


 あれ??


 窓が開いている。




「マイ、ユウ。ちょっと待って」


「あぁ??」


 お願い。


 そんな風に睨まないで下さい。


 あなたの目は只でさえ怖いのですからね??


 目力を籠めますと、どんな獰猛な野獣も尻尾を巻いて逃げちゃいますから。


 恐ろしい龍の赤い瞳から視線を外し、三階を指差した。



「あそこ、ほら。さっき窓が閉まっていたのに、開いているぞ」



「「は??」」



 マイ達が俺の視線を追い、三階へと視線を送る。




「風じゃない??」


 マイが顔を元の位置に戻して話す。



 風、ねぇ。


 しっかりと閉じた窓は強風でも吹かない限り開かないでしょう。


 どの程度の風速で開くのか。



 頭の中で想像していると、本当に強い風が上空から降り降りて来る。




 そうそう。


 これ位の風速なら開くかな。




 吹き続ける一陣の風の中。



 俺の目の前に一枚の大きな純白の羽がふわりと宙を漂い……。地面に着地した。



 鳩の……。羽??





「――――――――。皆さん、こんにちは」





「「「っ!?」」」



 鶯も恍惚の表情を浮かべる声色に全身の肌が泡立ち、それと同時にその場から飛び退いた。




 な、何だ!?


 全く気配がしなかったぞ!?



 五月蠅い心臓を宥めつつ、後方を振り返ると。


 そこには一人の女性が柔和な笑みを浮かべ、風を纏いつつ立っていた。



 薄いピンクの前髪を右へと流し、背に伸びる髪は万人を魅了するには十分な威力を備えている。


 白を基調とした長いスカートは彼女の体躯に誂えた様に栄える。

 薄緑の上着、そしてスカートと同じ純白のシャツの胸元は淫らに開かれ。男の視線を否応なしに集める。



 あ、勿論。


『そこ』 だけを注視した訳ではないのですよ??


 彼女の谷間の入り口には……。しっかりと薄紫色の結晶体が埋め込まれていたので!! そこを注視させて頂いた次第であります。



「あなた達ですか??」



「――――。あ??」


 警戒を続けるマイが口を開く。


 口調、こっわ。



「言葉が至りませんでしたね。あなた達が、私の領域を侵したのですか??」


「おうよ。人の街から勝手に人を攫って良い訳がないからなぁ」



 ユウがマイの隣で彼女と同じく警戒を続けつつ、口を開いた。



「勝手に困りますねぇ……。彼等には我々の仕事を与えていたのですから」


 我々の仕事??


「それは一体どんな……」


 美しくも恐ろしい魅力を放つ彼女にそう問おうとしたその時。



「「「っ!?」」」



 彼女の瞳が赤く染まった。


 人間で言えば白目の部分が深紅に染まり、誰がどう見ても異常な色合いに思わず一歩下がってしまう。



 きゅ、急になんだ!?



「改めて、自己紹介させて頂きます。私の名は」




 長いスカートを女性らしい細い指で摘まみ。







「アレクシア=ヴィエル=レオーネ。と申します」






 膝をちょこんと折り曲げ頭を垂れる姿は大変心地良くも見えるが。


 あの目をした奴は不味いともう一人の俺が声色高らかに警告を続けている。



 肌理の細かい柔肌の足がスカートに再び包まれても、俺達三人はその場から一歩も動かず。彼女の様子を窺い続けていたのだった。


如何でしたか??

御覧頂き有難う御座いました!!

明日に続きます!!

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