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第百三話 深夜の大暴れは近所迷惑なので控え目に

お疲れ様です。


週末の深夜にそっと投稿を添えさせて頂きます。


それではごゆるりと御覧下さい。




 私のすんばらしい理解力で下らん仕掛けを突破したのは良いが……。


 この暗い通路は一体いつになったら途切れるのかね?? 歩けど歩けど見えて来るのは土の壁と、通路の脇に溜まって濁った水溜まり等々。


 同じ景色の繰り返しに飽き飽きしてしまった。



 そしてぇ、ちいちゃなランタンの光量じゃ頼りない事この上無しっ!!!!



 私の直ぐ前を歩くユウが懸命に照らしてはくれているのだが、視認出来るのは精々前方数メートル程度。


 別に怖がっている訳では無いのだが……。可能であればもっと光量を上げて欲しいものさ。




「ね、ねぇ。ユウ……」


「ふぁんだ??」



 おっと、えへへ。


 勢い余って顔に腕を巻き付けちゃったわね。



「さっきの部屋から随分進んだけどさ。全く終わりが見えて来ないわよね??」



 私の至高の体から剛腕を解除して話す。



「あぁ、そうだな」


「い、いい加減見えて来ても良いんじゃない??」


「その通りだ」



 私達の足音以外に聞こえて来る音と言えば、地面の上で何かが蠢く乾いた音とか。


 天井伝いに聞こえて来るカサコソと不安を増長させる音とか!!


 怖い音しか聞こえて来ないのよ。


 視界が捉えるのは相も変わらず暗い通路と闇だけだし……。



 怖過ぎてお腹が減りそう……。



「ね、ねぇ。先に向かって走って行って、終わりが無いか見て来てよ」


「そうだな」


「さっきから黙って聞いていれば……。生返事ばっかりじゃん!!!!」


「その通りだ――」




 私が怖がっているのを良い事にコイツはぁ!!



 超絶カッコイイ朱色の髪を背後からブッ叩いてやった。




「いってぇなあ!! 少し位黙っていられないのか!?」


「ユ、ユウが悪いんじゃん!! 私が怖いって言ってるのに相手してくれないんだし!!」



 左手で脳天を抑えて振り返る私の顔に向かってそう言ってやる。



「何度も、何度も!!!! 似たような台詞を吐く奴に一々構っていられるか!!」



 し、辛辣ぅ!!



「わ、分かったわよ。黙っているから肩、触らして??」


「触るだけだぞ??」



 う、うん……。


 頑張るね……。



 只管奥に続く通路。



「じっくりコトコト煮込んだおな――べさんに――。お、美味しい具材を沢山ぶっこんでぇ――」



 自分の体の肩に手を置きつつ、己の恐怖心を誤魔化す為に今食べたい御飯の具材を想像し。それを歌詞に乗せて進んで行くと。


 つ、遂に恐ろしい道の終わりが見えて来た!!



「あはっ!! ユウ!! 扉よ!! 扉が見えて来た!!」


「ヘイヘイ。急に走ると転ぶぞ――」



 分かってるってぇ!!


 新たなる光を求め、クソ重てぇ爆乳を揺らしながら扉へと駆けて行くと……。







「っ!?!?」



 左手側の闇から何かが飛び出して来た!!!!




「キャァァアアアア!!」


「ギィィヤァァアアアア!! 取り敢えず死ねやおらぁぁああ!!」



 妙に可愛い声で泣き叫ぶ魑魅魍魎に対して、ミノタウロスの憤怒を籠めた一撃を一切の躊躇無く見舞ってやった!!



「ビャァッ!! あ、あっぶない!! ユウちゃ……。じゃない!! マイちゃん!! 急に殴りかかって来るなんて何考えているの!?」



「あ、ありっ?? ルー!?」



 ば、化け物が飛び出して来たかと思いきや。


 右腕の下に大粒の涙を浮かべて私を見上げているのは、カエデの中に潜むお惚け狼じゃあないかね。


 カタカタと体を震わせて私の一撃にビビっているその可愛い顔に免じて、私をビビらせた事は許してやろう。



 うむ、私は寛大なのだっ。



「あ、そっかぁ。此処で繋がっていたんだ……」



 土壁にめり込んだ拳をきゅぽっと抜き、今し方ルーがやって来た通路の奥へと視線を送る。


 三方向に分かれていた通路が扉の前で合流する仕組みなのね。



「マイ……。お願いしますから私の体を傷付けないでください」



 その奥からランタンを手に持った金色の瞳の女性が現れ、私のおっちょこちょいをジロリと睨む。



「え、えへっ。つい殴っちった」


「つい!? ついで私の顔面を粉砕する気だったの!?」


「大丈夫だって!! カエデの体も最近頑丈になってきたしっ」



 可愛い拳で私の体をポコポコと殴るルーにそう言ってやった。



「――――。何やら喧しいと思えば……」



 ちぃっ。


 鬱陶しい蜘蛛も来やがったか。



 私の直ぐ後ろ側。


 その通路から現れたリューヴの声色がそう話す。



「んおっ。リューヴ達も到着か」


「あぁ、下らん仕掛けの所為で時間を食ってしまった」


「皆さんが御無事で何よりです。そして……。やっとこの地下の中枢へと到着しましたね」



 カエデが扉の前に立ち、いつもより五割増しの鼻息をプシュ――っと噴出して話す。



「カエデちゃん。どうしてちゅ――すぅ――って分かるの??」


「雰囲気ですよ、雰囲気。ではっ!! お馬鹿な罠に嵌り。囚われの身になっている彼を救出しに行きましょう!!」



 何の遠慮も無しに扉を勢い良くガバっと開き、無警戒の足取りで扉の奥へと進んで行ってしまった。



「はぁ――。またあの足取りだよ……」



 あはは。


 カエデは怖い物好きだからねぇ。



 きっと、エライ目に遭わされたんだろうさ。



 重厚な木製の扉を抜けると、今まで感じていた閉塞感が嘘の様にぱぁっと晴れ渡ってしまう広い通路へと出た。



「何か、無駄に広い通路ね??」



 そのド真ん中を歩き、誰とも無しに話す。



「あたしは歩き易くていいけどな」


「ユウ、肩を抑えているがどうかしたのか??」



 蜘蛛狼がユウの所作を気に掛け声を掛けた。



「あぁ、リューヴ。聞いてくれよ――」



 ちっ。


 話さなくとも良い私のかっこ悪い姿を説明しやがった。だが、ユウにはそれを説明出来る権利はあるでしょうね。何しろ、今の今まで肩を掴みっぱなしだったし。



 やいのやいのと明るい会話を続け、奥へ向かって進み続けていると。


 先頭のカエデがピタっと歩みを止めた。



「カエデ、どうした??」



 ユウが彼女の背に向かって徐に話す。



案山子かかしが立っています」



 案山子ぃ??



「田んぼに突っ立って烏撃退の任務を受け持っているんじゃあるまいし」



 カエデの隣に立ち、ランタンの明かりの先へと視線を送るとそこには。



「……」



 太い藁で作成された案山子が確かにポツンと立っていた。



 麦わら帽子を被り、首からは手拭いを掛け。あたかも農作業帰りの農夫の姿を彷彿させる姿だ。



「んっ?? 何か、書いてあるわよ??」



 ちょいと警戒心を深めつつ、その案山子の下へと歩んで行く。



「え――っと?? 命が惜しければこの先に進むなかれ。これが最終警告だ。だってさ!!」



 案山子の胸に打ちつけられている木の板にそう書いてあった。


 警告、ね。


 態々説明ごくろ――さん。


 私達の歩みを止めたければこんなちゃっちぃ文じゃあ足りないのよ。それ相応の武力を持って来ないと話にならんさ。




「成程。今までの罠は警告であり、これから先に進めば警告では済まさないと申しているのですか」



 狼蜘蛛は無視っ!!



「此処迄来て踵を返す様じゃあ……」


「大魔の名折れってね!!」



 にぃっと口角を上げ、ユウから差し出された右手に己が手を合わせ。超カッコイイ音を奏でて案山子の脇を通り抜けた。



「さてさて。何が待ち構えているのやら」


「まぁ――。最終警告って言うくらいだから、とっておきのとっておき……」



 ユウの言葉に答えた刹那。


 背の肌が一斉に泡立つ。



「ユウちゃん!! マイちゃん!! あぶ……」



「わぁってるよ!! でやぁっ!!!!」



 背後から襲い掛かって来た案山子の顔面目掛け、ユウが裏拳を放ち。



「物理は大好物なんだよぉぉおおおお!!」



 私が追撃としてぐちゃっと折れ曲がった藁の顔面を掴み、真っ二つに引き裂いてやった。



 へっ、雑魚が……。



「ん?? コイツ、右手に剣を隠し持っていたのか」


「ほぉん。案山子の分際で生意気ね」



 半分に割れた案山子を地面にポイっと捨て置き、再び奥へと進み始めた。



「うっわ――。あの二人、戦いになると本当にヤキモキするよねぇ」


「見えている敵に対しては強気ですから。それとルー、それを言うのなら生き生きですよ??」


「あはは!! 惜しかった……。へっ?? 何、この音……」



 ルーがビビる声を放つと同時。土の天井、地面、左右の壁の内部から何かが蠢く音が通路内に響く。


 今度は何よ……。


 まさか、超デッカイ化け物が出て来るとか!?



「皆さん、迎撃態勢を整えて下さい!!」



 カエデがそう叫ぶと同時に私達は死角を無くすために互いに背を預けて円を組む。


 咄嗟の一言で陣形を組む当たり、こういう事に関しては連携が上手くなってきたわね。



 私達が警戒心を高めると、その強さに比例する様に蠢く音が強烈になり。そして、遂に!!


 その正体が私の目の前に現れた。



「――――。カカ……」


「ギィィェエエエエ!!!!」



 が、が、骸骨!! 骸骨が這い出て来た!!!!


 暗き闇の中から光を求めるが如く。土の中から地上へとゆぅぅっくり腕を突き上げ、そして続いて出現した真っ黒に染まった眼窩が私達を捉えてしまった。



 が、骸骨と喧嘩しろっての!?


 せ、せめて生きている奴を相手にさせてよね!!



「ンニャ――!! な、何ぃ!? あちこちから骸骨が出て来たじゃん!!」


「それだけじゃないぞ??」



 高揚感全開のリューヴの声を受け、其方に視線を向けると。



 おっわぁ……。


 向こうは泥人形だぁ――……。


 しかも骸骨も、泥人形も切れ味は悪そうだけど。余裕で命を断てそうな剣を装備しているしっ!!



「皆さん。最終局面に突入します。全身全霊の力を以て対抗して下さいっ!!」



 う、うぅむ……。


 いつもなら。



『おうよ!!』 と。



 威勢良く先陣を切って突貫するのだが……。



「「「「カカカ……」」」」



 あ、あのガクガクと顎の骨を揺らす骸骨共相手に突貫する勇気はねぇ!!



「敵数、凡そ百か。フフ、腕が鳴るぞ!!」



 おう、リューヴ。


 今日だけはあんたに先陣を譲ってやら。



 ビッチャビチャに汗ばむ手の平をぎゅっと握り、私達を完全包囲してしまった骸骨兵と泥人形と相対した。



「カカココキキ!!」



「無駄に顎の骨を鳴らすなぁ!!」



 こえぇだろうがよ!!


 真正面から何の工夫も無しに突撃して来た一体の骸骨の胸部に特大の一撃を見舞う。



「カゴッ!?!?」



 そして、すんばらしいユウの体の一撃を受けた骸骨兵が美しい軌道を描いて飛翔。


 後方でこれまたカクカクと顎を鳴らし続けている複数の骸骨共を巻き込み、たった一発の拳で複数体を昇天させてやった。



 さらば、骸骨よ……。


 安らかに眠れっ。



「コイツ等……。強さは大した事ないけど、問題なのはその数よね!!」



 背後で私の体を巧みに操るユウへと叫んでやる。



「そうだな!! だけど、あたし達の体力は早々尽きやしない!! 根競べだよ!!」



 その根競べが得意な奴が居ないのは痛手よねぇ。


 こういう状況なら大活躍しそうなのにさっ。



「ココッ!!」


「おせぇ!!」



 此方に向かって剣を振り下ろして来た骸骨のほっせぇ腕を掴み。



「ふんがぁっ!!!!」



 馬鹿げた握力で腕の骨を粉砕。



「…………。カッ??」


「生えないから安心して土に還れ!!!!」



 亡くなってしまった右腕の先を物珍し気に眺める骸骨野郎の胸部へと左の拳を打ち込み。


 ミノタウロスの逆鱗に触れたらどうなるのか、それを分かり易く証明してやった。



 ふぅむ??


 全身の骨をバラバラにしたら活動を停止するのか。


 あ、いや。元から死んでいるから活動もクソもないのだけれども。兎に角!! 物理が効くなら大丈夫っ!!



「遅いですわよ!!」


「カエデ!! そちらに向かったぞ!!」


「えぇ、分かっています!!」



 各自が奮闘し、円陣を維持。


 一部の隙も見当たらぬ連携と奮戦に舌を巻きそうになったのだが。



「おぉっ!! えへへ。危なかったなぁ――」



 若干一名は戦力不足なのが否めない。


 魔法が使用出来ないカエデの体だものねぇ。致し方ないとは思いますけども、せめて。



「んっ!! 丁度良い大きさの石発見!! とりゃぁっ!!」



 自分の拳を使えや、お惚け狼め。


 地面に横たわる石を掴み、骸骨と泥人形の群れの中へと投擲してしまった。



「はっはぁ――!! やっと体が温まって来た!!」



 華麗な後ろ回し蹴りを披露するユウが話す。



「私の体だからね!! ちゃんと、大切に扱いなさいよ!?」


「うっせぇ!!」



 う、五月蠅いぃ!?


 人様が心配してあげてるってのにぃ!!



「コ!?」



 鬱憤を晴らす為、目の前の骸骨兵の両肩をガッ!! と掴み。



「――――。くたばれっ」



 鎖骨付近に指を捻じ込んで、綺麗にそして疑いようのない程に半分に分けてあげた。



「こっわ。ユウちゃんの力だとそんな事も出来るんだ」


「これでも抑えている方よ。ユウが本気を出したら私達だって地面に横たわる骸と変わらない姿に成り果てちゃうからね」


「ユウちゃんは優しいから……。ふぇ!?!? み、皆!! 危ないよ!!」



 ルーが円の中央へ、驚き桃の木山椒の木といった表情で指を差すと地上。


 そしてお代わりは如何ですか?? と。天井から大量の敵がうじゃうじゃと湧いて、降って来やがった!!



 やっべぇ!! 分断される!!



「皆さん!! 直ぐ隣の人と組んで下さい!!」



 ルーの声色でカエデが叫ぶ。




「背後を取られ、分断されてしまいましたが。二人一組で戦えば勝機はあります!! 決して、諦めないで下さい!!」



 うっひょ――。


 しっぶい時に発破をかけてくれるじゃん。流石、我が部隊の参謀官ね。



 骸骨と泥の人形の大群の向こう側からカエデの有難い声援を受け、我が相棒となる人物を確認する為。颯爽と振り返った。



「――――――。ひゃぁぁ……。こっわぁ……」



 あ、あ、あぁ……。


 終わった……。



 白の長いローブを羽織り、大きな藍色の目をきゅっと見開き。


 数多蠢く骸骨共の顎間接と等しくカタカタと肩を震わせている女性を視界に捉えた途端に、人生の幕が今ここで下りてしまうのだろうと自覚してしまった。



「マイちゃん。今、終わったって思ったでしょ??」



「はい。その通りです」



「うっわ、そういう事言うなんだ。いいもんっ!! 私だってやれる所みせてあげるんだからぁ!!」



 白のローブを捲り、舌で唇をペロリと潤して正面の骸骨と対峙する。



 何だろう、この気持ち。もう既に嫌な予感しかしないっ。




 まだこの世の道理を理解していないヒヨコが。



『おかあさん!! みててね!! 私、飛ぶんだからぁ!!』 と。



 断崖絶壁の淵に立ち親鶏に向かってそう叫び。


 勢いをつけて飛び立つ為に助走を開始してしまったヒヨコを見つめた時の母親の気持ちね。


 心配処の騒ぎじゃねぇ!!!!



「お、お止めなさい!!」



 プヨプヨの拳をきゅっと握ったアホヒヨコにそう叫んでやったが。


 時、既に遅し。


 ヒヨコちゃんが勢いをつけて断崖絶壁の向こう側へと飛び立って行ってしまった。



「やぁぁああああ!!」


「カコッ!?」



 意外や意外!!


 ヒヨコの攻撃が骸骨の顔面を捉え、華麗に髑髏を吹き飛ばすではありませんか!!



「あはは!! やったねっ!!」


「……」



 首を吹き飛ばされた骸骨の体は情けなくその場に尻餅を付き、吹き飛んだ頭は直ぐ後ろに立っていた骸骨兵の首を吹き飛ばす。


 つまり、一撃で二枚抜きって訳だ。



 へ――。


 カエデの体って意外と力が……。



「よぉし、まだまだやるぞぉ!!」


「意気込むのは良いんだけどさ。ほれ、さっきの骸骨見てみ??」



 クルクルと拳を回すヒヨコちゃんに向かって話す。



「え?? ――。えぇっ!? 何してるの!?」



 首を吹き飛ばされた最初の一体が。




「……」

『はぁ――。よっこらっしょ』 っと。



 重い腰を上げる様に立ち上がり。



「……っ」

『おいおい、しっかりしてくれよ。お前さんの所為でこっちの首も吹き飛ばされちゃったじゃん』 と。



 二枚抜きされた二体目の骸骨が、一体目の頭蓋骨をすっと差し出してしまった。


 そして、二人仲良く頭蓋骨を元の体にキュッキュッと嵌めこむのだが。



「「……、??」」



 嵌り心地が悪いのか、将又違和感を覚えたのか。


 互いの頭蓋骨をじぃぃっと眺め合い。



「っ!!」



 一体がポンっと柏手を打ち、颯爽と互いの頭蓋骨を交換し終えてしまった。



「カカカカ!!!!」


「ココココ!!!!」



 顎の骨をカチカチと鳴らして笑い転げる二体の骸骨兵。



「うっわぁ……。こっわ……」



 しかし、彼等の頭蓋骨を吹き飛ばした張本人の声を捉えた刹那。



「「カ――――!!!!!!」」



 鷹の飛翔をも越える速度、且眼窩をキッ!! と尖らせて突撃を開始してしまった。


 そりゃあ首を吹き飛ばされて心底穏やかな奴もいまいて。



「首を吹き飛ばしてごめんなさ――い!!!!」


「マイ!! 私の体を守りなさい!!」



 遠くの方から海竜狼の声が届く。



 へいへい。


 ちゃちな体のお守をしましょうかね。



「カッ!!」



 身近な一体が私に向かって愚かにも剣を振り下ろして来たので。



「あ、丁度良いや。あんたの体借りるわね――」


「コッ!?」



 半身の姿勢で剣を素早く躱し、骸骨の右足首付近を掴んで持ち上げてやった。



 う――ん。


 重さが今一かぁ……。



「カクカ!!!!」



 持ち上げられた骸骨が反撃を試みようと、此方に向かって剣を穿とうとするが。



「おらぁぁああああ!! 数体纏めてぇ、ぶっ飛ばしてやんよぉぉおおおお!!」



「「「「カカッ!?!?」」」」



 上半身を捻りに捻り、全ての力を籠めて。右手で掴む骸骨の体で骸骨の群れをブッ叩いてやった。



「おっひょ――。こりゃ痛快だわっ!!」



 一気に数体の敵を屠り、満更でもない感情が心に浮かぶ。


 だが、問題はたった一回で道具がぶっ壊れちまう事よねぇ。



 手元に残った右足首をポイっと地面に捨てた。



「マ、マイちゃん!! 助けて――!!!!」



 丁度良い所に来やがった!!



「そのままこっちに向かって走って来い!!」


「うん!!」



 ルーが私の背後に隠れ、正面から二体の骸骨が襲い掛かって来るが……。



「わりっ。ちょいと体借りるね――」



 一体は左腕に抱え込み在庫を確保。


 もう一体は先程と同じ要領で右足首を持ち。



「おらぁぁ!!!! ぶっ飛べやぁぁああああ!!!!」


「「「っ!?!?」」」



 右腕を力の限りに振り抜き、五体以上の骸骨をぶっ飛ばし。


 役目を終えた足首をポイっと捨てて、在庫から新たなる新商品を手に持ち骸骨兵に見せびらかす様に。敢えて大袈裟に振り回してやった。



「ニシシ……。さぁ、皆様お待たせしましたぁ。在庫一掃、骸骨叩き祭りの開幕でぇぇええええすっ!!!!」



 良い、良いわよ!!


 やっぱ物理って最高だわ……。


 暗闇に怯えていた私よ、さようなら。そしていつもの私よ、お帰りなさい。


 帰還を果たした私はいつもよりも凶悪なので悪しからずっ。溜まりに溜まった鬱憤を晴らす為、貴様等は私の贄となるのだっ!!!!



 呆れたようにカパっと顎を開き、若干後ろ足加重になった骸骨兵の群れへと向かい。爛々と骸骨の体を振り回しながら突撃を開始した。




最後まで御覧頂き誠に有難う御座いました。


それでは引き続き素敵な週末をお過ごし下さいませ。

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