第七十四話 犠牲者の手記
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
ごゆるりと御覧下さい。
カエデを中心に固唾を飲んで手帳を見下ろすと。
女性の甘い香が混ざった風がふわぁっと吹いて鼻腔に届き、男の性を悪戯に刺激してしまうが。当然今はそれ処では無いので、シャキっと気持ちを切り替え。
海竜さんの肩口からボロボロに擦り切れた手帳の中の文字に視覚を集中させた。
「では、皆さん。冒頭から読み解いて行きましょう」
「「……」」
カエデの声を受け、俺とマイは小さく頷き。鷹の目よりも鋭い目付きを彼女の手元へと向けた。
『 ノ月 十、日。
いよいよ無人島へ出発だ。ずっと前から計画していた事もあってか楽しみで仕方が無い。
パーマーの奴、遅刻しないで来るよな??
俺とクリカで計画していた段階で気付いたのだが、どうやら旅行で向かう無人島はいわくつきの島として漁師から忌み嫌われているらしい。
まぁ、地元出身では無い俺達にとっては何の弊害も無いから特に気にせず実行へと移った。
どうせ迷信だろう。
人が入ると島が汚れる、それを防ぐ為にでっち上げた嘘に決まっているさ。
案の定、船賃を多めに提示したらあの漁師は喜んで飛びついて来た。
呪いより金の力の方が強いに決まっている。
この休暇の為こっちは仕事を休んでまで決めたんだ。今更変更は出来ない。
ま、注意に越した事は無いけどさ。 』
『 十六日。
睨んだ通り、パーマーの野郎は遅れて来た。
悪い悪いと言う割にはちっとも反省しちゃいない。こいつの悪い癖だ。
しかし、下らない憤りはこの青い海に綺麗さっぱり流してやった。
今回の参加者はパーマー、クリカ、エイミ、ローファ、そして俺。男二人に女三人。全員が仕事仲間で普段から顔を合わせている事もあり、気兼ね無く楽しめそうだ。
漁師は現金を受け取るといそいそと船を出して、島に着くなり颯爽と踵を返しそそくさと帰って行ってしまった。
そんなに怖いのか??
こんな素晴らしい島なのに?? 正直、予想していた倍以上の美しさだ。
透き通る海、突き抜ける青色の空、白い砂浜。地上の楽園とは正しくこの島の事を言うのだろう。
山程買い込んだ食料と水と酒。ここで羽を伸ばそう。疲れを取る為に来ているんだ。
楽しまなきゃ損だよな。 』
「――。どうやら真面目な方だったようですね。字体が凄く丁寧です」
カエデが手帳を持ち真剣な眼差しで字体を見つめている。
「この人が消えた五人の内の一人になるのかな??」
酷い虫食いの紙から枯れ果てた頭蓋へと視線を移す。
この世に残した未練を今にも叫び出しそうな姿に、思わず同情してしまった。
「そ、そうみたいね。んんっ!! キャ、カエデ助手。次を捲り給え」
まだその設定なの??
「分かりました」
駄探偵の声を受けると、超絶優秀な助手君は特に気に掛ける様子も無く。次なる紙を捲った。
『 十七日。
しまった。宴会で羽目を外し過ぎて二日酔いになってしまった。美しい緑に囲まれる中、倒れているのは少しばかり勿体ない気がする。
俺が休んでいるとパーマーの奴が喜々として森の中から戻って来た。奴が言うには温泉を見付けたとの事。
本当か?? こいつは少々ほら吹きな面がある。
しかし、エイミとローファが共に出て行った結果。やはり温泉は実在するとの事。
おいおい、最高だな。海と緑だけで無く温泉も付いているとは。
至れり尽くせりとは正にこの事。この二日酔いも温泉に浸かれば多少は和らぐ筈。
クリカを誘ってみようかな??
しかし、その勇気は無い。自分の臆病さに嫌気が差す。今回の旅行は自分の思いを伝える為も兼ねているのだから。
時間はたっぷりあるんだ。何も今日言わなくてもいいだろう。もし振られでもしたら気まずくて仕方が無い。保留だ、保留。
温泉は確かに良かった。只、パーマーと二人で過ごす温泉は少しばかり味気が無かったけどね。 』
『 十八日。
今日も天気が良い、季節外れの陽射しだ。
皆で遊んでいる時、どうしても視線がクリカに向いてしまう。この視線を気付かれてしまうのではないかと心配になっちまうよ。
いや、気付いて貰った方がいいのかもしれない。臆病な俺にとってそれは好都合だから。
昼食を済ませると、パーマーとエイミが温泉の近くで群生している竹林で筍を採取して来た。
こんな季節なのに新芽?? おかしいと思い俺は口をつけなかった。
筍を食べたのはパーマーとエイミのみ。腹を壊しても知らないぞ。 』
「この人達、筍を食べたのか」
手記に記載されてある通り、今も温泉近くには竹林が存在している。
そして彼等が採取した筍も……。
「――――。そうみたいですね」
カエデが何か考えるように一間隔置いて口を開いた。
「季節外れの陽射しと記載されていますので、冬若しくは秋に上陸したのでしょう」
上陸した詳しい日時が破れて見えないが、文章から察するにそう考えるのが自然か。
「どうせお腹壊したって書いてあるんでしょ?? ほら、捲って捲って!!」
「……」
口喧しい駄探偵の指示に従い、名探偵さんがちょいと顔を顰めて静かに紙を捲った。
『 十九日。
昨日の夜からパーマーとエイミの様子がおかしい。
両者共に顔に大粒の脂汗を浮かべ、高熱を出し。時折激しい吐き気に見舞われている。
医者もいないここじゃどうしようも出来ない。只経過観察する事しか出来ないのが歯痒いな。 』
「ほら!! 私の言った通りじゃない!!」
そら見た事か!!
得意気に声を上げ輝いた瞳をこちらに見せる。
「「……」」
叱る意味を含ませた厳しい視線を、キッラキラの瞳を浮かべる彼女へと二人同時に向けてやった。
「分かったわよ。黙って読むから……。そんなに睨まなくてもいいじゃない……」
『 しかし、俺達の心配を他所に昼前に症状は回復した。エイミは何事も無かったように、倒れる前以上に明るく振る舞っている。 パーマーは意識を失ったままであるが。表情は柔らかく、そして脂汗も引いたので直ぐに回復するだろう。 』
『 二十日。
あれだけあった食料が忽然と姿を消した。一体どういう事なんだ。誰がこんな訳の分からない事をしたんだ。
クリカやエイミ、そしてローファに事情を聞いたが知らないの一点張り。
食料が無くなって困るのは俺達だけだ。そうする動機が見当たらないから当然なのだが。
俺はこの時その考えが甘い事に気付けば……。起きてしまった惨劇を回避できたのかもしれない。
しかし、当時は第三者による行動と決めつけていた。
それが後に痛手になるなんて。 』
『 二十一日。
第三者が存在するかも知れないので、俺達は島の内部を探索する事にした。
クリカと俺、そしてエイミとローファの二組で東と西に別れ行動を開始する。
こんな時じゃなければ手でも繋ぐのに……。今はそれどころじゃない。こちらの命が掛かっているんだ。
島を半周してエイミ達と出会うが、彼女達も誰も見なかったとの事。
おかしい。
誰もいないのに食料がなくなるのは考えられない。きっと俺達以外の誰かが明確な目的を持って行動したに違いない。
しかし……。こんな事は考えたくは無いが。
皆が寝た時に行動すれば誰にでも犯行は可能だ。エイミ?? ローファ?? それとも、クリカなのか……。
誰もが疑心暗鬼になり互いとの距離を取っている。
余所余所しさと、猜疑心を含ませた視線。
この空気は耐えがたい。空腹から来る苛立ちがそれを増幅させているのかもしれない。幸い明後日には船の迎えが来る。
それまで何とか凌げば命は助かる。それまでの辛抱だ。 』
『 二十二日。
皆は空腹と喉の渇きで動くのも面倒なのか。夜営地から一歩も動こうとはしなかった。
只、努めて明るい会話をしてこの空腹感を紛らわせようとしていた。そして、パーマーも未だ意識が戻らない。
交わされる会話の中、気になる節があった。エイミとクリカの会話だ。
エイミは確か四人家族だった筈、両親に姉が一人。その姉はエイミとクリカの三人でよく遊んでいると聞いていた。
暫く前、土砂降りの日にエイミはクリカと自分の姉に会う為集合場所に急いでいた。その時に焦る気持ちが先行して転倒してしまい、膝元に大きな怪我を負ったのだ。
その日の天候を彼女は……。間違えて覚えていた。
おかしいと思わないか?? 怪我した箇所と集合場所は覚えているのに天候を間違えるなんて。
クリカは何を言っているんだと笑って流していたが俺はその瞬間を見逃さなかった。一瞬だが、彼女の瞳が赤黒く光ったのだ。
エイミはクリカの様子を窺うと、今まで通りの笑顔になり話の調子を合わせていた。
俺の見間違いか……。それともあの筍の所為で記憶が曖昧になったのか。
この時だ。この時に判断を誤らなければ……。 』
「筍一つで大変な事態になっているな」
最初の字体に比べ後半部分に向かうにつれて字が荒々しく、そして激しく乱れていた。
その字体が彼の心情を分かり易く此方に伝えてくれている。
「そのようです。彼は冷静に判断をしていましたが。どこかで判断を誤ったようですね」
「判断を誤らなかったら、こうはならなかったのよね……」
マイが静かにそう話すと、哀れむような視線を頭蓋に向けた。
「さぁ、残りは後少しだ。続きを読もう」
カエデは沈黙したままページを捲り始めた。
『 二十三日。
俺の目論見は正しかった。アイツは……。エイミじゃない。エイミを模った偽物だ。
大まかな記憶は覚えているが細かい記憶は所々で間違っている。俺が感じた違和感の正体はそれだった。
そして……。決定的な事件が起きた。
俺が用を足しに森へ行った時、不意に背後から物音が聞こえて来た。振り返れば数歩先にエイミが俯き立っているのだ。
どうしたのかと聞いても何も言わず只立ち尽くすのみ。
彼女がゆっくりと面を上げると俺は息を飲んだ。
目は赤黒く光り、口元は歪んだ笑みを浮かべていたのだから。そして、普段の明るい声からは想像出来ない程低い声でこう言った。
『私の、一緒に、仲間に、なれ』
片言だったので上手く聞き取れなかったが確かにそう聞こえた。彼女から後退りを始めると、獣の様な唸り声を上げて飛び掛かって来た。
女の力とは思えない腕力に対して必死に抵抗を続けながら揉み合い地面を転げ回り、そして。運が良い事に彼女は頭を木に打ちつけ気を失った。
エイミには悪いと思ったが体を調べさせて貰うと、目を疑う光景が背中にあった。
腰付近に、筍が生えていたのだ。
これは比喩では無い。正真正銘、筍の新芽が人体から生えていたのだ。
力を込めて腰から筍を引き抜くと、肉の表面が削れた程でそれは綺麗に抜けた。これが彼女を操っていたのか??
そして、なんらかの方法で俺を仲間に引きずり込もうと……。
エイミが薄っすらと目を開けてこちらを見上げた。
再び襲って来るかと思ったがそれは杞憂に終わり。続け様に質問を続けると、どうやら彼女はこの数日の記憶が曖昧らしい。
呆けているエイミを心配していると、俺はそこで思い出してしまった。
二日前、島の捜索時にエイミはローファと共に行動していた。その時点でエイミが感染していたとすると既にローファは……。
俺はエイミにその場に居ろと伝え、夜営地に向かって走りだした。
不安が確信に変わるまであっと言う間の出来事だった。夜営地でクリカが倒れていたのだ。
彼女を抱き起すと意識を取り戻し、俺の予想通り。ローファが襲って来たと小さな声で答えた。
くそっ!! 違和感を覚えた時に確認をとっておけば……。俺は彼女を背負うと立ち上がった。
そして……。何気なくパーマーを見て言葉を失った。
背中から数本の筍が伸び、そして体はやせ細ったみすぼらしい犬の様に萎んで大地の上に横たわっていたから。
筍は人体の栄養を奪い、そして成長する。
男は意識を失い、女は狂暴に暴れる。
何故異性によって症状が異なるのか分からないが。筍の本能は個体数を増やす為、ただそれだけの為に人間を利用するのか……??
何て恐ろしい奴らだ。
背後から足音が響きその方向へ振り返ると、ローファがエイミ同様の恐ろしい目を浮かべてこちらを見ていた。俺は恐怖に駆られ、クリカを背負って無我夢中でその場を走り去った。
どれだけ走っただろう。気が付けば崖の上に立っていた。
クリカを降ろし、一息つく。
彼女が大丈夫かと聞いてきた。そして肩から掛けていた鞄から水筒を取り出し、一口飲むと俺に渡してくれる。
その好意を受け取り、貴重な飲み水を豪快に喉へ流し込み乾いた体を潤す。
一息付いた所で、彼女の記憶を試してみた。
懐かしいなぁ。ほら、初めて二人で遊びに行った時転んで怪我しただろ?? その時もおぶったよな。
彼女は笑って答えた。
あの時は本当に緊張したんだから。
その言葉を聞いて、俺は彼女から距離を取った。
不思議そうに此方を見つめる彼女にこう言ってやった。
初めて遊んだ時は転んでもいないし、二人だけでは無くエイミも居た。そして三人で御飯を食べて直ぐに解散しただけだ、と。
此方の言葉を聞き終えた刹那。
俺の想像した通り。彼女の目も赤黒く変色し始めた。
背中の筍を抜いたらエイミは正気に戻った。それなら、クリカも戻る筈。
俺は一心不乱に彼女目掛けて飛び掛かった。しかし、それが甘い行動だとすぐさま思い知らされる。
クリカの右足が左腕に当たると激痛が走った。常識では考えられない力で俺を人形のように跳ね飛ばし、蹴りつける。体中が痛みでどうにかなりそうだった。
このままでは死んでしまう。彼女をその場に置き去り、森の中へと逃走を開始した。
息が切れ、口の中に鉄の味が広がっても走る事を止めなかった。止めたら後ろにクリカがいる、そんな想像が俺を駆り立てたのだ。
一体どれくらい走っただろう。気が付くと辺りは一面闇に包まれていた。
今日は、確か船が迎える日だったな。もうどうでもいい。このまま楽になりたい。木に背を預け襲い掛かる睡魔に身を預けた。
俺の願いは受け付けられなかったようだ。朝日が頬を射し、その温かさで目覚めた。
アイツらは俺を見付けるに至らなかったようだな。
痛む体に鞭を打ち起き上がる。そして無意識の内に森を彷徨い始めた。痛みと空腹、そして絶望感が俺を包み自棄になっていたのだろう。
暫く歩くと…………。
エイミとローファの皮が寄り添うように横たわっていた。エイミはまた感染させられたようだ。
体中から水分を抜かれ体の中身が全部抜かれたように、薄くなっている。これは、夢なんだな。そうに決まっている。
そして、数日前まで楽しく過ごしていた温泉の近くにクリカと思しき皮が、いた。
俺は膝を付き、咽び泣いた。どうして、どうして。
彷徨う様に島を徘徊したが、もう歩く気力も残っていない。草臥れ果てて地面に倒れると。背中に違和感を覚えた。
どうやら俺も感染してしまったようだ。
恐らく、彼女から受け取った水筒が原因だ。感染者は粘膜、唾液から感染を広げる事が出来るらしい。
足元から力が抜けて行く。これを読んだ人に告げる。どうか、俺達のようにならないでくれ。
奴らを見抜くには背中を見る事、感情の変化に気を付ける事、記憶が曖昧若しくは間違っていないか、粘膜の感染には特に注意しろ。
この島に存在する竹を焼き払ってくれお願いだ。
あぁ、意識が無くなる。
このまま奴らの栄養になるくらいなら己で命を絶つ。地面に横たわる鋭い石を掴むと、彼女の笑顔が頭の中に過って行く。
クリカごめんよ。助けてあげれなくて。
どうか……。神様……。楽に死ねますように。 』
手帳はそこで締め括られていた。
「この竹によって五人は命を失ったのですね」
カエデが珍しく感情を露わにして竹を見上げた。
「今からこの竹を超高熱で燃やし尽くします」
「その骨も火葬してあげてもいいかな??」
野晒で朽ち果てて行くよりも、潔く綺麗な姿にしてあげたい。
「構いません。ついでにこの手帳も添えてあげて下さい」
「分かった」
カエデから手帳を預かり、朽ち汚れた鞄の中へと戻し。
竹の根本へ丁寧に遺体と所有物を寝かせてあげた。
「手帳は燃やさなくても良いんじゃない?? 貴重な資料になるんだし」
「あれは彼の所有物だ。勝手に持ち出したら駄目だろ」
亡くなった方の所有物は既に用済みなのだから好きに使えば良いと、現実に即したマイの考えは一理ある。
だが、何んと言うか……。
此処にある物は全て彼の生きた証だ。それを好き勝手に生者が使用するのは、己自身の尊厳を失う行為にも見えはしないだろうか。
「準備は宜しいですか??」
「あぁ、宜しく頼むよ」
「分かりました。延焼しない様に結界で包みます」
カエデがそう話すと、薄紫色の結界が竹を包む。
「ふぅぅ……。紅蓮の炎よ。全てを焼き尽くせ……。炎塊衝破!!!!」
腹の奥をズンっと響かせる衝撃波が生じると同時に竹が根元から激しく燃え上がる。
灼熱の業火の中で崩れていく骨を見つめながら、彼に誓った。
俺達が全部処理します。ですから、安心して逝って下さいね。
「…………」
暫くの間、黙祷の意味を兼ねて沈黙を続け。
激しく燃え盛る炎が収まると、焼け焦げた大地の上には燻ぶる煙を放つ灰が虚しく積み上げられていた。
そして、その灰を見つめていると強烈な使命感が心の中に生まれてしまった。
「――――。これ以上被害を増やさない為にも、この島の竹を全て焼き払おう」
「そうですね。それがこの人達への手向けになると思います」
俺の考えを汲み取ってくれたのか。
カエデが一つ大きく頷く。
よし!!
それじゃあ一度夜営地に戻って皆と合流を果たして、一から作戦を練りましょうかね。
小さく息を吐き、南側へと体を向けると。
マイが真剣な面持ちで何かを思い出したかのように口を開いた。
「ね、ねぇ。私の記憶が正しければ……。ユウ達って筍を見に出掛けて行ったわよね??」
「「「……っ!!!!」」」
その言葉を受けると同時に全員の顔が強烈に強張ってしまった。
しまった!! 手帳の話に夢中ですっかりその事を忘れていた!!
「直ぐ戻るぞ!! マイは全速力で戻ってくれ!! 俺達は後から追う!!」
「恐らく現在位置は島の北側です。南へ向かいつつ彼女達の魔力を感知。遮蔽物の無い上空へと舞い上がり、全力で向かって下さい!!」
「おう!! 行くわよぉ……。風爆足!!!!」
マイが龍の姿に変わり、淡い緑色の魔力が彼女の体を包む。
「おっしゃぁぁああ!! 全速全開で向ってやらぁぁぁああ!!!!」
周囲に猛烈な風が吹き荒れ森の木々を激しく揺らすと、彼女の体がこの場から消失してしまった。
す、すっげぇ速さ……。
もう見えなくなっちゃったよ。
「よし、俺達も走るぞ」
「分かりました。置いて行かないでね??」
「そんな事しないって」
まさかとは思うけども……。季節外れの筍なんて食べて無いよな??
懸命に不安を払拭しようとしても、心の中では次々と黒き感情が湧いてしまう。
頼む!! 皆、無事でいてくれよ!?
彼女達の身を案じつつ、深き森の中へと駆け出して行った。
最後まで御覧頂き有難う御座いました。
まだまだ暑い日々が続きますが、体調を崩されない様に気を付けて下さいね。