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第十七話 大海からの使者

お昼休みの一時。皆さん如何お過ごしでしょうか??

何とか前日の内に書き終える事が出来ました。


御飯片手に、そして飲み物片手に。

寛ぎながらお楽しみ下さいませ!!




 暗闇の中に浮かぶ焚火の明かりが闇を払い、星々が光り輝く夜空へと黒煙が立ち昇って行く。


 薪が爆ぜる乾いた音と、日が完全に沈み真の闇が訪れても等間隔で鳴り響く波音が疲労を拭い去る。



 目的地まで残り一日。

 順調に進めば、明日の夕方にはルミナの街に到着出来る距離で夜営を張り一日の疲れを癒していた。



 此処迄やっとの思いで来たけど。

 流石にちょっと緊張するな……。



 原因不明の理由で連絡が途絶えている街に足を運ぼうとしているのだ。

 緊張感が湧かない方が珍しいだろうさ。

 火にくべていたやかんを手に取り、白湯をコップに淹れた。




 しかし……。


 魔法ってのは便利なもんだ。


 このやかんの中に入っている水は、俺達に同行しているカエデが満たしてくれた。


 どうやら彼女は魔法に精通しているらしく??

 ある程度の物なら容易く用意してくれた。




 右手を翳せば、青く光る魔法陣だっけ?? それが現れると新鮮な水が滴り落ち。

 指先にきゅっと力を入れるとくべた薪に火が灯った。

 挙句の果てには氷を呼び寄せ、乾いた喉をキンキンに冷えたお水で潤してくれた。




 流石に食料を供給する事は叶わなかったが、それでも十二分に移動の苦労を拭い去ってくれている。


 万能な力には欠点が存在するかと思いきや。



『空気中に含まれているマナを使用していますので、この程度なら息をするよりも容易く詠唱出来ます』



 と。

 ケロっとした御顔で新しい単語を教えて下さった。



『マナ』



 何でも??

 遍く存在する物らしく。空気にも、俺が今腰かけている岩にも含まれている物らしい。

 魔法を得意とする魔物さんはこれを体に取り込み、己自身が持つ魔力?? に足して詠唱をうんたらかんたら……。



 兎に角!!

 魔法を使用するのに必要な物なんだとさ。



 いきなり説明されても正直、理解出来ませんよ……。



『――――。ははは……』



 後方の森の奥からマイ達の笑い声が此方に届く。


 きっと、あの温かい雨を浴びている事だろう。



 移動中。

 体を洗うのは精々、水を浸した布で拭く位なのだが……。



『お湯の雨は如何ですか??』



 と、カエデが手を翳すと。


 頭上に橙の明かりを放つ魔法陣が現れ、そこから何んと丁度良い塩梅のお湯が降って来るではありませんか!!



 頭を洗い、体を洗い、ついでと言わんばかりに喉を潤す。

 温まった体は翌日に疲労を残さず、気分を一新して力を得た足は止まる事を知らなかった。


 順調且快適な行軍をここまで続けられたのは、カエデの御蔭なのかも知れないな。


 何とお礼を述べたらいいのやら……。


 温かい白湯をズズっと啜っていると。


「はぁぁ――!! いい御湯だった!!」


 ユウの軽快な声を共に三名の女性が闇の中から姿を現した。


「お帰り。今日もありがとうね、カエデ」


 コップを砂浜の上に置き、しっかりと立ち終えてから感謝の言葉を述べる。


「御飯のお礼です。そこまで大それた事でもありませんし」



 それはカエデの主観です。

 俺達から見れば万能過ぎて怖いくらいなのですから。



「そ――そ――。礼って奴よ」


 あなたはもう少し遜ったら如何です??


 しかも!!

 御飯を作っているのは俺なのですからね!?


 毛布の上で休日のお父さんが取る姿勢で休むマイをジロリと睨むが。


「――――。あ?? 何見てんだ??」


 此方以上の恐ろしい瞳で睨み返されてしまったので視線を反らしてしまった。



 ここで強く言えないのが俺の悪い所かも知れない。



「レイドも浴びますか??」


 ダボっとした白のローブを羽織る彼女が話す。

 背が低い分そう見えるのかしらね??



 低いと言っても、人の姿のマイより少し背が高いけど……。



「毎晩悪いね。じゃあ、お呼ばれしようかな」


「では、此方へ」


 彼女の後に続き、森の奥へと進むが。



「よぉ!! カエデに手、出すなよ――!!」

「もしも、手を出したら……。目ん玉引っこ抜いて、そこに焼いた石捻じ込むからね」



「する訳ないだろ!!」


 全く!! けしからん!!!!


 足を止め、愚か者達へ振り返りつつ夜に似合わない声量で叫んでしまった。



「手を出すのですか??」



 これに便乗したのか。


 右隣りのカエデがポツリと言葉を漏らす。


「出しません!!」


 真面目そうに見えて、意外とノリが良いのかもしれない。


「冗談ですよ。それでは、此方へ……」


 静かに歩みを進める彼女の後を追い。

 闇が潜む森の中へと進んで行く。




 一歩踏み出すと木々から落ちた葉が呻き声を上げ、二歩進めば互いの呼吸音のみが闇の中で響く。

 昼は何て事無い森の中ですけども。こうして闇に包まれると少々恐ろしくも見えてしまう。



「此処で宜しいでしょうか??」


「あぁ、構わないよ」


 直径数メートル程度の開けた空間が現れ、地面には大きな水溜まりが出来ていた。


 恐らく此処でマイ達も温かい雨を浴びたのだろう。



「では、雨を降らしておきますのでごゆっくり堪能して下さい」

「ありがとう!!」


 では、早速!!


 カエデが木の影に移動したのを見届け。


 生まれたままの姿に変わり、服の上に大きめの手拭いをキチンと畳んで降り注ぐ雨の中へと突入を開始した。


「はぁ――!! 気持ち良い!!!!」


 頭上から降り注ぐ温い雨の雫が疲労の塊をぎゅっと掴み。


 肌の上を滑るように地面へと流してくれる。


 汗、汚れ、そして精神の疲労。


 その全てを洗い落としてくれる様だ。



「湯加減は如何ですか??」



 雨音に混ざり、カエデの声が届く。


「丁度良いよ!!」


「そうですか」




 此処へ来るまでにカエデについて幾つか分かった事がある。


 彼女は余り表情を変えない。


 冷静且沈着な性格なのか、どこぞの大馬鹿さんが燥ぎ立てても口角を上げる事は無く。

 それ処か、早く行きますよと無言の睨みを利かせていた。




 華奢な体に似合った体力。


 うん。

 これは予想通りでしたね。


 馬鹿みたいに体が頑丈な俺達にとって移動は少々苦になる程度なのだが……。


 カエデにとってはかなり堪えるらしく??

 小さな御口を開き何度も空気を取り込み、汗を流していた。



 無理しなくても、ウマ子に跨れば良いよと薦めても。


『結構です』


 と。

 冷たい藍色の瞳と、棘のある御言葉を頂きました。


 色々と加味した結果。


 第一印象は冷静な性格、負けず嫌いな心、そして魔法が大変得意な魔物さんって所かな。



「魔物にも色んな種類があるけど。カエデってどんな魔物なの??」



 雨の中で髪を洗いつつ、ちょいと気になった事を問う。



「…………」


 あれま。


 無言の返事ですか。



「言い辛いのなら答えなくても良いよ。只、ちょっと気になっただけだから」


「ふぅ……。レイド達と行動を共にして気付いた事があるのですけど」



 はい。

 何でしょうか??



「皆さん。私を信頼し過ぎです。背中をどうぞ打って下さいと言わんばかりの無防備な状態。だらしなく口を開き、隙だらけの寝相。そして、今です」


 今??



「武器も何も持たない状態で森の中で雨を浴びる。私が敵でしたら、この状況を見逃す手はありません」


「あはは。そうだね」



 恐ろしい口調で話すのだが。


 あの可愛い顔で言われてもなぁって感じだ。


「何んと言えばいいのか……。マイと、ユウと出会った時もそうだったんだけどさ。善悪の区別を判断する時、俺はその人の目を見る事にしているんだ」


「目。ですか」


 一本の木が喋る。


 正確にはその裏で腰を下ろしているカエデの声ですね。




「悪人の目は大抵淀んで腐っている。対し、善人の目は曇り一つない鏡の様に綺麗なんだ。砂浜で俺を見上げた目。あれは正に後者そのものだった。だから信頼しているのかな??」



 体はこれ位でいいかな??


 後は、今日着て汚れた服をついでに洗っちゃおう。



「皆さんお人好しにも程があります。どこの誰かも分からない私に対し、アレコレと情報を与え剰え大切な里の情報も提供。もしも、私が敵でしたらこの情報を基に侵攻作戦を練る事も出来るのですよ??」



 移動中。


 俺達が出会った敵の詳細やら、ミノタウロスの里の様子。そして人間の街の様子等々。


 情報を求めていない彼女に対して与え続けていたもんね。



「それはどう説明するべきかなぁ。ん――……」



 シャツを洗い終え、下着を手に取りつつ考えを捻る。




「信頼を勝ち取る為、かな。人から信頼を勝ち取る為には先ず己の情報を提供する必要があると思うんだ。この人はこれまでどういった経験をして来たのか。そして、そこから人格形成を想像し。己の中で人物像を構築する。ある程度の想像が出来れば、信頼も出来るだろ??」



 どこの誰かも分からない奴から信頼される為には……

 うん。

 間違っていないな。



「それはレイドの主観です。互いを別つ壁は時間の経過と共に低くなりますが。他人と他人は完全に理解し合えるとは考え難いです。ましてや、私とレイド達は未だ知り合って間もない。それなのに……」



 よし。

 洗い物終了っと。



「それを言うならマイや、ユウだって知り合って日も浅いよ。カエデの考えだと……。お互いを信頼するのは相当先の未来の話。俺が言いたいのはさ、自分の全部を曝け出したら自然と信頼してくれるんじゃないかなって事だよ」



 頭を拭き終え、腰に布を巻きつつ話す。



「カエデが話し辛いのなら別に話さなくても良い。それはカエデの自由だし。俺達は自分勝手に自分の中を曝け出しているのさ。馬鹿と罵られても構わないよ。でも、これは言い換えると信頼と好意をカエデに対して抱いているって事だよ」



「――――。好意、ですか」



 羞恥が含まれた声がポツリと漏れる。



「あ、いや!! そういう意味の好意じゃなくてね!? 友人として、そう!! 友達としての好意だから!!」


 危ない。


 変な意味で捉えられる所だったよ。




「カエデの御使いの内容は理解出来ないけど。同じ目的地を目指しているんだ。例え、そこで別れても。共に行動した事実だけは残る。いつか、さ。何処かで出会う事もあるかも知れない。その時、あぁ!! いつぞやの!! って。お互いに笑みを浮かべられたら素敵だろ??」



 その時もきっとカエデは無表情なのだろう。

 でも、微かにでも口角を上げて頂ければ幸いです。



「再び巡り合う可能性は極めて低いですけど……。えぇ、確かに。その光景は酷く綺麗に映りますね」



「そこからまた行動を共にしても良いし。一期一会を大切に。そして、人に魔物に優しくが自分のモットーです!!」



 最後は少々お道化て話した。


 人と人を繋ぐ。



   『縁』



 これはお金で買える物でも無いし。


 人生をより美しく彩る要素だと考えているのです。


 カエデが話した様に、人と人は分かり合えないかも知れない。それが、人と魔物なら尚更だ。


 でも……。


 俺みたいなお人好しが存在すれば、両者を繋ぐ架け橋の役割を担える可能性も残されている。


 思い出すのも困難な大昔。


 人と魔物は生活を共にしていた。


 この事実が残る限り、諦めるべきじゃ無い。相互理解に至る道は茨が生い茂っているが、誰かが。そう、誰かが……。

 血を流し、悪戯に体を傷付けその道を進めば他に続く者も現れる筈。



 俺は、それを信じている。



 真新しい下着を履き、軍服のズボンを履いて首に布を掛けると。

 木の裏から眩い光が刹那に灯った。



 何か新しい魔法でも詠唱したのかな??


 頭を拭きつつ様子を見守っていると……。









 一匹の蛇が姿を現した。







 いや、正確に見ると全然違った。


 にょろりと伸びる胴体に生える角ばった鱗、頭部には尖った耳が生え、藍色の胴体には手足が一対ずつ。

 蛇に似た別種の生物がゆっくりと。

 太陽が東から昇るよりも遅い速度で、木の影から姿を見せ。此方を見つめていた。



「…………」



 器用に手と足を動かし、地面を移動し。

 俺の足元へと到着した。



「これが、私の魔物の姿です」



 頭部から尻尾の先まで凡そ一メートル程。


 巨大なミノタウロスや、醜い豚。そしてよく食べる太った雀さんの姿を見て来た俺にとって特別不思議な光景では無いのだが。


 彼女にとって、己の真実を晒すのは未だ億劫なようだ。


「……」


 僅かに顔を逸らし、明後日の方を向いているのが良い証拠です。



「へぇ!! それがカエデの姿か!!」



「驚きましたか??」


「いや、特には……。これまで驚きの連続だったからね」



 フェリスさん級の驚きを持って来ない限り、早々驚きやしないでしょう。



「蛇……。じゃあないな。一体何の種族なの??」



 蛇に手足、耳は生えていませんし。



「私は。海竜です」


「海竜??」



 あの狂暴龍の親戚みたい……。じゃあないな。



 カエデの胴体は蛇みたいに長い。

 対し。

 あいつの胴体は太った雀だし。



 絶対言いませんよ??

 骨を折られたく無いので。



「えぇ。この海を守る守護者として生まれ落ちました」


「それは大層な大義名分を背負っていますね??」


「そこまで大それたものではありませんよ。只、静かに暮らしたいだけです。私がルミナの街へ向かっているのは、父と母からとある命を受けたからです」



 おっと。

 此処からは真剣な話だな。



 背筋をピンっと伸ばし、傾聴の姿勢を取った。



「私達海竜は海を守る守護者として、街の方々から崇められています」


「それは……。神様とか。尊い存在として??」




「それに近い存在ですね。大昔、海で遭難した人を助けたのが事の始まりです。それから時が経ち……。 人を守る事に対して私達はそこまで重みを置く様にはしていなかったのですが。しかし……。どういう訳か、父が街へ向かい様子を見て来いと私に命を下したのです」



 そりゃまた唐突ですね。



「住処を出ると強力な魔力を感知し。海の中から様子を窺いました」


「それって、マイとユウの事??」



「その通りです。何も無い砂浜に、しかも二つも感知出来てしまいましたので。暫く様子を窺い。敵性行為、並びにこちらの行動に障害を及ぼさないと判断し上陸。そして、あなたと出会いました」



 燥いでいた姿を見られていたのか。

 全く気が付かなかったよ。



「それから今に至るって訳か」


「その通りです。私のお使いは街の様子を窺う。そして、レイドの任務もまた同じ。利害関係が一致していましたので行動を共に続けているのですよ」


「ありがとうね。事実を話してくれて」



 肩の力を抜き、ふぅっと息を漏らしつつ話した。



「いえ。私を信頼してくれたお返しと思って頂ければ幸いです」


 明後日の方角から此方へと顔を向け、藍色の瞳を向けて話してくれる。


「どういたしまして」


 礼を述べ、一つ大きく頷いた。


「そう言えばそうと……。物凄い傷跡ですね??」


「あ?? これ??」


 腹の傷を指差して話す。


「話したと思うけど、此処から槍が通って……。ほらっ、背中側に繋がっているだろ??」



「ふ、む。よく生き永らえましたね」

「頑丈が売りなのさ。さてっ!! 今の話をマイ達にも話してあげようかな!!」



 パパっと着替えを済ませ、元来た道へと進み出す。



「構いませんけど。詳細は私が話した方がマイ達も信頼するのでは??」


 人の姿に戻った彼女が口を開く。



「あ――……。確かに。俺が話しても、本当かぁ?? って顔されるものね」


「――――。ふふ。そうですね」


 お??

 会話の流れで初めて笑ったね??


 その顔を確かめようと左隣りを見つめるが……。


「どうしました??」


 普段通りの冷静な表情がそこには浮かんでいた。



 残念。

 笑顔はまたの機会にお預けだな。


 暗闇に包まれる森から抜け出すと、月明りが優しく差す砂浜へと出た。


 そして、焚火に残る僅かな明かりが……。


「んがらぁ……」

「すぅ……。すぅ……」


 二人の寝顔を優しく照らしていた。


「この二人……。本当に不用心ですね」



 寝相の悪いマイと、快活な性格とは裏腹に寝相の良いユウを交互に見比べながら話す。



「はは。そこは堂々とした性格と言ってあげなよ」


「物は言い様ですね」


 そう話すと砂浜の上に座り、欠伸を噛み殺す。


「明日にも話してあげなよ」


「そうします。それでは……。お休みなさい……」


 随分と疲れていたのかな??


 砂の上に毛布を敷き、己の腕を枕代わりにしてスヤスヤと安らかな寝息を立ててしまう。


 不用心と仰いましたけども。

 カエデも十分不用心ですよ??


 皆さんは何とも思っていないだろうけども、俺は一応男なのです。


 男の性を多大に誘う女性の寝相と、甘い吐息。


 そこから発生してしまう邪な感情を確実に振り払いつつ、明日の行路及び街の詳細を反芻し続けていた。


如何でしたか??

次話では目的地に到着します。


御覧頂いているお方は、夜の投稿を楽しみにしてお待ち下さいませ。


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