第十六話 海は広いよ、大きいね
この話から舞台は新しい地へと足を踏み入れます。
そこで彼等を待ち受けているのは果たして……。
それでは、御覧下さい!!
闇も恐れる漆黒の夜空に怪しく光る月。
その明かりに照らされた地上では激しい魔力の衝突が繰り返されていた。
一人の女性が風の刃を繰り出すと、黒のフードを被った人物がまるで赤子の手をひねる要領でその刃を打ち消す。
「これでも駄目ですか!! ですが、私は諦めません!!」
背に生えた翼に強烈な力が宿ると大空へと羽ばたき。
風を味方に付けて、フードの中で薄ら笑いを浮かべる者へと突撃を開始した。
「私は……。負ける訳にはいかないのです!!」
彼女が身に纏う風の力が膨大に増加した刹那。
「……」
一人の女性が彼女の前に立ち塞がった。
「な!? ど、退きなさい!! その人は敵なの……。きゃあ!?」
左右から急襲した二人の人物に取り抑えられた彼女は地上へと落下。
そして……。黒のフードを被った人物が彼女の前に静かに立つ。
「放しなさい!!!! 放して!!」
必死に抵抗を続けるものの。
傷付いた彼女の力では左右の二人を跳ね除ける事は叶わなかった。
「…………」
黒のフードを被った人物が右手に持つ結晶体を空へと掲げた。
すると、一際大きく怪しく光り輝く。
「な、何をするつもり??」
その人物は口元を歪に曲げ、彼女の背後へと回り。
「や、止めて。止めなさい!! いやぁぁぁぁああああ!!」
上空から一気苛烈に結晶体を項へと埋め込むと、うら若き女性の断末魔の絶叫が空へと駆け上って行く。
絶叫の後。
その地で人が放つ音は消失し、闇と静寂だけが渦巻き。
幾つもの怪しい薄紫色の点だけが闇の中で光り輝いていた。
◇
額から零れ落ちる疲労の雫。
それを若干乱雑に拭い、地面に張られた木の根に足を取られぬ様に只前へと進む。
ミノタウロスの里を出て今日で……。
あぁ、六日目か。
ずぅっと同じ光景の繰り返しにも感じてしまうので、日数の感覚が今一掴み難い。
空気は澄み、陽射しは遮られ、気温も不快に感じられぬのだが。
「ふぁむっ。ふ、む……。んぅ――。まいっ!!!!」
アイツの存在がちょいとばかし苛立ちを募らせている一因なのかも知れない。
移動を開始してからというものの。時間さえ見つけては。
『お腹空いた!!』
と、飯を強請り。
さっき食べたばかりだろ?? そう返すも。
『あれだけじゃあ全然足りないの!!』
お分かり?? と言わんばかりに文句を垂れる始末。
目的地であるルミナの街に到達するまでちゃんと計算して配給しているってのに。此方の計画を見事に叩き折る食欲に呆れて物も言えない。
「よぉ、マイ」
「ん――??」
「食い過ぎ。後、あたしの頭の上で食うな!! 食い滓が落ちる!!」
ユウがそう話すと、鬱陶しさ全開で頭の上に乗る食べ残しの屑を振り払った。
「のわっ!! ちょっと!! 危ないじゃない!!」
「マイ。ユウの言う通りだぞ。目的地までちゃんと計算して食料を残しているんだ。勝手にアレコレ食われたら俺達の分まで食料が無くなるんだぞ」
宙にフヨフヨと浮かぶ太った雀にそう言ってやる。
「だから、何度も言っているでしょ?? 私の食欲はあ――んなちっぽけな御飯じゃあ満足出来ないって!!」
腕を組み、むんっと胸を張る姿がまぁ腹立たしい事です。
「あのな?? 折角、里を出て世界を見て回るってのに。あたしはその志半ばで飢え死にしたく無いの」
ユウの話に便乗し、そうだと言わんばかりに大きく頷く。
「ふぅん、そう」
反省の色が見られぬ事に憤りを感じたのか。
「こ、この野郎!!」
「どわっ!? 何すんのよ!!」
ユウが深紅の龍の翼を掴み。
「そこで反省してろ!!!!」
超強大な山岳地帯の谷底へと沈めてしまった。
「ン゛――!! ゴヴェンナザイ――!!」
「はぁ……。それで?? ルミナって街に書簡を届けるのが任務だったよな??」
「え?? あ、あぁ。そうだね」
上下、左右、右上左下。
シャツの中で有り得ない動きを披露する双丘から視線を反らし。
進行方向である南へと顔全てを向けて答えた。
ごめんなさい。
直視出来ません。
「レイドって新兵だろ??」
「そうだね」
階級は二等兵のピカピカの兵卒でありますっ!!
声を大にして言う台詞では無いので、相槌を放つ。
「だったらさ。大事な任務を新兵に任せても良いものなの??」
「あ、そっか。その点に付いて話していなかったな」
俺が訓練所で残した成績の所為で、辺鄙な部隊へと配属され。
平地の西。最前線で張っている人員を割く訳にはいかないので、俺が選ばれたと端的に説明してあげた。
「――。ふぅん。つまり、人員不足でレイドに白羽の矢が立ったんだ」
「そういう事。俺だって前線で活躍したかったよ?? でも、さ。仕方が無いんだ」
成績が悪ければ、希望部署に配属される可能性は低くなるのだから。
「成績が悪いって言ってたけど。戦っている感じとしては、悪くないんじゃない?? それに弓の腕前も中々なもんだし。おっ!! 木の実、みっけ!!!!」
「評価を下すのは俺じゃない。上の連中なのさ。――――。その木の実、美味いの??」
木の影へと駆けて行き。
すぐさま戻って来たユウに問う。
「美味いぞ?? ほれ、一個ど――ぞ」
彼女が差し出したのは。
手にすっぽりと収まる大きさの木の実……。と、言うより。果実に近いのかも。
若草色で柑橘系に近い感じだな。
匂いは……。
ふむっ。
無臭ですね。
「あ――ん。んっ!! おいしっ」
カシュッ!!
っと、小気味良い音を立ててユウが果実を齧り取る。
それを見終え。
彼女の所作に倣って口に運んだ。
「頂きます。――――。おっ!! んまい!!」
口の中に優しく広がる甘味。
音的にもっと硬いかと思いきや……。その実。丁度良い噛み応え。
柑橘系に似た爽やかな香りと、水分がたっぷり含まれた果肉が舌を喜ばせた。
硬さは蜜柑以上、林檎未満って所か。
「だろ?? 適当に採って、ウマ子の荷物の中に入れといたから」
「ありがとね」
飯を食い散らかすどこぞの狂暴龍とは雲泥の差ですよ。
こういう所をしっかりと見習って欲しいものです!!
胸の動きが止み。
漸く真面にユウと会話を継続出来る状態になると……。
「ん?? んんっ?? 何か……。空気がしょっぱくない??」
ユウがすんすんっと鼻を嗅ぐ。
「はぁぁ。やっと、この森を抜けられそうだな」
塩気と湿気を含んだ空気。
それが示す事実は唯一つ!!
正面から差し込む眩い光に向かって駆け出すと。
「「海だぁ――――――――!!!!」」
深い森を抜け現れた大海原に向け、二人で絶叫を放ってやった。
地平線の更に向こう側まで続く紺碧、空に浮かぶ白い雲も相俟ってより煌びやかに映る。
等間隔に押し寄せるさざ波の音色が凝り固まった心の憤りを洗い流してくれる様だ。
「これが……。海、か」
巨大な荷物を砂浜の上に置き、ユウが感嘆の声を放つ。
「俺も久しぶりに見るけど。やっぱりデカイよな」
子供の時分。
孤児院の先生に連れられて行ったのが最後か。
あの時は海のデカさに圧倒されっぱなしだった。
大人になった今では多少は小さく見えるかと思いきや……。海が放つ壮大さは不変であった。
「な、なぁ!! 遊んで来てもいいかな!?」
頑是ない子供と何ら変わりない表情で俺の肩を掴む。
「良いよ。俺は昼飯の用意をしておくから」
「やっほ――い!! 行って来ま――――す!!」
靴を脱ぎ、裸足になるとちょっと下った凹地の先にある海辺へと駆けて行ってしまった。
「元気だなぁ。よっし、ウマ子。此処で昼休憩しようか!!」
彼女の体をポンっと叩き。
積載してある荷物を粗方下ろす。
『分かった』
砂浜と海の狭間の木陰に入り、足を崩して嘶き声を放った。
幾ら頑丈な馬だからといって、流石に疲労の一つや二つ感じているかと思いきや。
その陰りさえも見せないもんね。
頑丈且漲る体力は俺に似たのかしら。
森の中から枯れ木を集め、一塊にして置く。
火は此処で焚いて。
んで、腐りかけたパンから先に食べるとしてだよ?? 野菜類を煮込み、フェリスさんから頂いた醤油と塩で味付けして……。
うん。
今日の昼食は、腐りかけのパンとクタクタの野菜スープですね。
もうちょっと真面な料理を提供したのだけども。如何せん。
移動中はこうした質素な料理になりがちだ。
いよいよ、その時が迫ったら。保存の効く乾燥したパンを水でふやかして食べたり、腐りかけた水を煮沸させて米を炊く。
体が丈夫な人達だから腹を下す事は考え難いけども。一応、女性だし。
その点に付いては注意を払いたいな。
「マイ――!! 起きろぉぉおお!!」
ユウが胸元に手を突っ込み、深紅の龍を取り出すと。
勢い良く海の中に放り込む。
「――――。しょ、しょっぺぇええ!! 何じゃ、こりゃあ!?」
今まで気絶してたのか。
慌てて海から飛び出すと、ビタビタになった自分自身の体に驚いていた。
「海だよ!! 海!! すげぇだろ!?」
「あ、あのねぇ。私にとっては別に珍しい物でも何でも無いの」
お分かり??
そんな感じで燥ぐ塊を諭す。
「水なのにしょっぱいんだぞ!? あぁ!! ほら、あそこ!! 魚!!」
「わ、分かったから!! 胴体掴むな!! 頭が千切れ飛ぶ!!」
胴体と頭がさようならを告げる握力ねぇ……。
その前哨戦を体験済みですから、凡その痛みは理解出来ます。
あの元気は暫く収まる事は無いだろうし。
ちょっと散歩にでも行きますか。
『何処へ行く??』
ウマ子が俺の顔をじっと見つめる。
「ちょっとそこまで歩いて行くよ」
西の方角へと指を差しつつ歩み出す。
『余り遠くへ行くなよ??』
「はは、うん。気を付けて行くよ」
彼女に小さく手を上げ、奥までずぅっと続く砂浜と森の境目の木陰の中を進み出した。
ユウのあの笑み。
ふふ。本当に嬉しそうだった。
森の中で生活を続けて居たら絶対に経験出来ないであろう。
ボーさんも、そしてフェリスさんもきっとこうした素晴らしい体験を経験させる為に俺達に帯同する事を許可したのでしょう。
まぁ、でも待ち構えているのは楽しい事ばかりじゃあ無いですけどね。
束の間の休息で気が緩みがちだが、この先にある目的地に一体何が起こっているのか。
その原因を解明するまでは気が抜けない。
しかも。
そのさらに先。
蜘蛛だっけ??
密林に住む魔物達の異変も気掛かりだ。
好天とは裏腹に、俺の心は曇天ですよっと……。
考え事をしつつ歩き続けていると。
「あれま。皆が見えなくなっちまった」
後方を振り返ると、湾曲した森の影で元居た位置の死角に入ってしまう。
このまま歩き続けたら体力の無駄だな。
ウマ子の負担を減らす為、俺とユウが荷物を背負わなければならないし。
アイツに荷物を持てと言ったら。
『嫌よ』
超端的な言葉で拒絶の御言葉を頂いたので、二人で運んでいる次第であります。
命令してもどうせ顎が砕かれる。
懇願しても嘲笑い、罵られる。
正に踏んだり蹴ったりだ。
「いかんぞ、俺。偶にはビシッ!! と言ってやらんとな!!」
大海原から勇気を頂き、元居た位置に踵を返そうとすると。
一人の女性が砂浜に座っている姿を視界が捉えた。
背の中央付近まで伸びた藍色の長髪、白の長いローブを纏いそのローブには青の美しい線が波打つように装飾されていた。
両足をきゅっと曲げ、両腕で足を掴む。
どちらかと言えば小さな体にその姿勢は誂えた様にも見えた。
問題は何故、ここで、佇んでいるのかですね。
一人の女性が足を踏み入れるべき場所では無いし。
しかも。
武器という武器も身に着けていない。
ちょっと心配だよな……。
様子を窺うついでに、声を掛けてみよう。
踏み心地の良い砂の上に足の乗せ、海辺へと向かって行った。
「こんにちは」
適度な距離を保ち、彼女の左手側から警戒心を抱かせない声量と声色で話し掛けた。
「…………」
彼女が此方に振り向くと……。
心に大きな波が発生してしまった。
弧を描く丸みを帯びた眉。その下に浮かぶ藍色の大きな瞳。
そして、なだらかな曲線を描く頬の先には細く白い顎。
小さな唇はまるで小動物の愛おしさを抱かせ、整った鼻先は美人の鼻の更に一つ上を行く鼻筋であった。
うわぁ……。
すっげぇ可愛い。
まるで絵画の中から出て来たみたいだ。
幼さを僅かに残す面影。
恐らく、二十歳に届くか届かない程度かな??
彼女が俺の顔をじぃっと見つめ、返事を返さないので。
今一度質問を投げかけてみる。
「え、っと。此処で何をしているのかな??」
無視しないでね??
「――――。海を見ている」
おぉ!!
返事をくれた。
澄んだ空気に良く似合う声色がまた魅力的ですね。
「そっか。海って綺麗だもんね」
俺がそう話すと。
「…………」
丸い目がきゅっと大きく開かれた。
あれ??
俺、何か悪い事言った??
「一人じゃ危ないよ?? 今からさ、皆で御飯を食べるんだけど。良かったらどうかな??」
こんな所で放置しておく訳にはいかん。
――――。
だけど、向こうも見ず知らずの男からいきなり誘われたら警戒心を抱きますよね??
「ち、違うんだ!! ここに居たら危ないし。それに、仲間は女性だけだから安心してくれても構わないから!!」
自分で聞いても言い訳に聞こえてしまう。
もう少し、話術の才があればなぁ……。
「そう……」
彼女が小さく言葉を漏らすと、俺が元居た位置へと歩み出す。
「あ、うん。そっちで合っているよ……」
砂浜の上に刻まれた小さな足跡を辿り、後を追う。
話し掛けようにも……。
これ以上口を開いたら余計な不信感を与えかねない。
波音が十分に聞き取れる静寂の中。二人の足音だけが宙に静かに響き、居たたまれない心地を抱いていると元居た場所へと舞い戻った。
『遅かったな??』
ちょっとのお出掛けに対して、少々大袈裟なウマ子のお出迎えが顔を襲う。
「あはは!! こら、大袈裟だぞ!!」
大きな顔を押し返しつつ話すと。
「この子の名前は??」
件の彼女が小さな御口で、そして小さな声で尋ねて来た。
「ウマ子って名前だよ」
「ウマ子……。いい名前だね??」
そう話し、そっと額に白い手を添えた。
『……』
それを受け満更でも無い顔を浮かべて大人しく彼女の手の感触を楽しむ。
へぇ。
あっさりと信用を勝ち取ったな。
マイの場合は……。あぁ、そうだ。
ぱっくりと顔面から咥えられたな。
ユウの場合は、特に変化が無かったし。
動物は人の感情に敏感だ。
つまり。
ウマ子は初見でこの子の事を信に足る人物だと決めたのだ。
「可愛い……。あっ、もう。ふふ……。舐めたら駄目だよ??」
撫でてくれたお礼か。
彼女の頬を一つペロリと舐めた。
それに対し、嬉しそうに嫌がる彼女。
ふぅむ……。
画になるな……。
題するなら。
『馬と戯れる美少女』
売れるぞぉ……。
等と下らない事を考えていたら、海の方角から二人の声が届いた。
「よ――!! 御飯出来た――!?」
「いや――!! しょっぱい!! 広い!! 大きい!! 海、すげぇわ!!」
「未だ出来ていないよ」
取り敢えず。
マイの意見だけを掬って返事をした。
「はぁっ!? あんたは何の為に存在してんのよ!?」
生きる為。
若しくは、己に課せられた人生という運命を全うする為です。
少なくともあなたの飯を作る為には存在していません。
そう言えたらどれだけ楽か……。
解き放てない憤りをどうしようかと考えていると。
「ん!? あんた、誰よ」
マイが彼女を見つけて声を上げた。
「あぁ。向こうで見付けてさ。食事でもどうかなぁ――って声を掛けたんだ。ほら、此処は危ないだろ?? 何処に敵が潜んでいるのかも分からないし」
前半はゆっくり。
そして後半に掛けて捲し立てる様に説明した。
「はっは――ん?? ナンパだなぁ??」
「違います!!!! 断じてその様な不埒な思いで声を掛けたのではありませんっ!!」
想定内の言葉がユウから発せられ。
直ぐに訂正の声を出す。
全く。
任務中に女の子を軟派する訳ないだろ。
「それが建前でぇ??」
「…………。本音は垂らし込もうとしてた訳か。おら、首か顔。どっちにする??」
「で、ですからぁ!! 説明したでしょう!? 彼女の身を案じたまでですぅ!!」
胸倉を掴まれ。
首元に鋭い龍の爪を当てられつつ本音を話した。
「けっ。ってか、この子さ」
はぁ……。
良かった。
俺の命は今日も生き永らえる事が出来た……。
「魔物じゃん」
「――――――――。はい??」
マイの言葉を受け。
俺達の寸劇を目の当たりにしても、無表情のまま。
一切の感情の変化を感じ取れぬ彼女へと視線を移した。
この子が、魔物??
「そっか。レイドは魔力を感じ取れないんだったな」
海水を吸い上げ煌びやかに太陽の光を反射させているユウがそう話した。
えぇ。
人間は上級者なのですが。魔物に関しては初心者ですので……。
「よぉ。私は、マイ=ルクスよ」
「あたしは、ユウ=シモンだ!!」
二人が自己紹介をすると。
「……」
藍色の髪の彼女が俺に視線を移した。
――――――。
あ、自己紹介しろって事か。
「レイド=ヘンリクセンです」
皆の名を聞き終えると。
「初めまして。私の名前は、カエデ=リノアルトと申します」
キチンと。
そして丁寧にお辞儀を放ちつつお名前を仰って下さった。
「カエデって名前か――。こんな辺鄙なとこで何してたの??」
ユウが物珍しそうにカエデを見つつ話す。
「詳細は話せませんが……。強いて言うのであれば、御使いですね」
「「「御使いぃ??」」」
三人仲良く声を揃えて言葉を放つ。
そりゃあそうだろう。
森の中から獰猛な醜い豚の嘯く声が響くかも知れない危険な場所だってのに。
しかも!!
こんな華奢な子がたった一人でだぞ??
マイやユウなら、単独行動していたとしても頷けるけども……。
今回の場合は不審に思わない方がおかしい。
「皆さんはどういった御用件で此方へ??」
「あたし達は此処から西に向かう予定なんだ!! えっと、ルミナって街だっけ??」
「「はぁ……」」
今度は二人で溜め息を吐いた。
「ユウ、あんたさぁ……」
「任務の内容を軽々しく話すのはどうかと思うぞ??」
俺達がそう話すと。
『しまった』
そんな顔を浮かべ、口元に手を当てた。
「任務、ですか」
もう話してしまったし。
どうにでもなれ。
そんな気持ちで任務の内容を説明してあげた。
勿論。
大切な所は伏せましたけどね。
「――――。と、言う訳で。連絡が途絶えた街へ書簡を届けるついでに偵察して来いと任を受けてね?? この森を抜けてやって来たのさ」
直ぐそこの生い茂る木々に指を差しつつ話す。
「ふ、む。大方の経緯は理解出来ました。しかし、どうしてあなたは私達魔物の言葉を理解出来るのですか??」
まぁ、不思議に思うよね。
「それが俺も分からないんだよ。ほら、さっき説明したけど。マイから力を譲渡された時にそうなったのかもって理解しているんだ」
本当は……。
あの夢の中で出会った人物の所為なのかも知れませんけどね。
「こいつは珍妙な生物なのよ。細かい事を気にしたら駄目よ??」
「いいえ。理解されていない問題こそ、注力を注ぐべきです。何故彼が私達の言葉を理解出来るのか……。人と魔物。この間に立ち塞がる言葉という壁を突破出来るのですよ?? これは驚くべき発見です」
藍色の瞳に少しだけ輝きが宿り、こちらの頭の天辺から爪先まで一通り視線を送る。
う、うぅむ……。
俺の事を研究対象として捉えているのだろうか??
まぁ。
見つめられて悪い気はしませんけど。
「まっ!! 細かい事は飯を食べながら語り合おう!! カエデ!! 腹減ってる!?」
ユウがカエデの背中をバシバシと叩く。
「適度に空いていますね。後、申し訳ありませんがもう少々力を抑えて頂けると嬉しいです」
「あはは!! そう!? あたし的にはこれでも抑えている方なんだって!!」
カエデが痛みで顔を顰めるも。
ユウは気に留めず陽性な表情のままで叩き続けていた。
「私は御使いで西へと向かいます。皆さんの話に興味が湧きましたので御同行させて頂いても宜しいでしょうか??」
ユウから距離を取り、俺達の方へ体の真正面を向けて話す。
「私は構わないわよ」
「あたしも――」
「右に同じだ。宜しくね?? カエデさん」
彼女へ向け、右手をすっと差し出す。
「此方こそ宜しくお願いします。後、名前は呼び捨てで構いませんよ。敬称は不要です」
手、やわらかっ!!!!
女性の手ってこんな柔らかかったっけ!?
「あいよ――。カエデってさ。随分若く見えるけど、幾つ??」
「ユウ。女性に年齢を尋ねるのは失礼だぞ。ましてや、男の俺が居る前で問うべきじゃ無いでしょ」
カエデから手を放し、ユウの肩をポンっと叩く。
「減るもんじゃないし。別にいいだろ」
そういうものかねぇ……。
沈黙を決めるかと思いきや。
次の瞬間。俺達は驚きの声を放ってしまった。
「今年で十六になります」
「「「十六!?!?」」」
「??」
何か、おかしな事でも??
そんな風に首を傾げる彼女。
俺は呆気に取られつつも、その姿が異常に良く似合っているなぁっと。人知れず考えていたのだった。
最後まで御覧頂きありがとうございました!!
そして、評価して頂き有難うございます!! いや、本当に嬉しいです……。
この嬉しさを糧に夜遅くまで執筆を続けます!! それでも疲れて眠ってしまいそうですけどね。
明日の昼、そして夜と投稿する予定ですのでご覧頂いている方は首を長くしてお待ち下さい。




