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第五十四話 王都への報告 その一

お疲れ様です。


深夜にそっと投稿を添えさせて頂きます。


ごゆるりと御覧下さい。




 新たに出現した女性が放つ圧。


 体の奥から滲み出るそれは安易に人を寄せ付けぬ程に強く、マイ達もそれを感じ取ったのか。


 緊張した面持ちのまま、終始無言で相手の出方を窺い続けていた。



 どうする……??


 話合いで解決の糸口を見付けるか?? でも、彼女の仲間らしき者共を退治した手前。


 それは流石に図々しいか。



 中々纏まらない考えにもどかしい感情を抱いていると、黒に近い緑の瞳が俺を捉え薄い唇が静かに開かれた。



「私の部下を倒すとは……。こりゃあ計算外だね」



 此方の予想より低い声で言葉を放つ。



「貴女がこの人達の首領ですか??」



 警戒を続けながら彼女へ向かって一歩前へと踏み出した。



「そうさ。ここで野盗をしているんだけど……。今夜の獲物はちょっと一味違ったようだね」



 大魔の力を受け継ぐ者達を相手にしたのですから、それは当然の結果です。



「えっと。貴女達は何処から此処へ訪れたのですか??」



 相手にこれ以上余計な警戒心を抱かせぬ様、先ずは軽い質問から。


 そう考えて尋ねてみた。



「この大陸からずぅっと南へ下ったリーネン大陸から訪れたんだよ」



 リーネン大陸、ね。


 初耳だな。



「向こうじゃ色々と問題を起こしちまって、お尋ね者になっちまったんだよ」



「成程。それで此方の大陸に訪れて、強奪行為を繰り返していたと??」



「そ、正解。人間は馬鹿だからねぇ。魔物の姿で襲って、何食わぬ顔で人の姿に変われば。犯罪がバレる事も無いし。正にこの大陸は天国さ」



「つまり、南の大陸から此方の大陸に訪れて犯罪に適した場所を求めて北上を開始。此処で犯罪を繰り返しては人の姿に戻って街、若しくは森の中で潜伏していたと」


「正解っ。随分と頭の回転が早いじゃないか」



 それ位、少し考えれば誰でも思いつきますよ。




「実は、君達に要望を伝えに来たんだ」


「要望??」



 鋭く厳しくも瞳の中に男を誘う女の魅力が詰まった瞳で此方を見つめる。


 その視線を受けると僅かながらに背が泡立ってしまう。


 彼女から受ける印象は、強くて綺麗な瞳の女性。


 しかし、その外見からは想像出来ない悪事を働いているのですよねぇ……。人は見た目によらないとは真実でしたか。




「ここ近辺で行われている強奪行為によって街の人が困っているんだ。それで軍の任務で調査に来た。もしも、野盗の仕業と確定したのなら次は軍が動く。だから強奪行為を止めてくれないか??」



「これはこれは……。御親切にどうも」


「分かってくれましたか」



 此方の要望に対し、彼女が柔らかい笑みを浮かべてくれた。



 どうやら丸く収まりそうですね。


 話が分かる人で良かったよ。



「ここでの強奪行為は止めにするよ。人間に追っかけられるのは勘弁願いたいし。それに……?? 強奪は場所を変えてすればいい事……」


「いやいや。それじゃ、そこの人達も迷惑してしまいますよ」



 解決する処か、問題の堂々巡りじゃないか。




「あんた、本当にお人好しね。こいつらが大人しく話を聞く訳無いじゃない」



 マイが呆れ果てた溜息と共に険しい瞳で彼女を見つめる。



「レイド様?? こういった輩は酷い目に合わない限り、同じ行為を続けますわ」



 そして、珍しくアオイも彼女の意見に賛成のようだ。



 さて、困ったな……。


 強奪行為を止めさせる為、暴力での解決は望まない。


 問題解決の糸口を会話の先に求めるのですが。


 血気盛んな彼女達は口よりも、拳で問題を解決しようとしますからね……。




「あはは。酷い言い方するねぇ」


「ちょっと。人に迷惑を掛けるなって教わらなかったの??」



 ほら、もう前に出ようとしているし。



「さぁ??」



 狂暴な龍を挑発するように、両手を上げてお道化てみせた。


 頼む。こんな安い挑発に乗るなよ??



「おチビちゃんはどうやって言葉を習ったのかしら?? お姉さんに教えて頂戴??」



「ち、ちび……。だって??」



「マイ!! 止めろ!!」



 喧嘩腰で彼女の下へと進むマイの腕を掴み、制止させた。



「そこのお兄さん。そこの貧相な体じゃ満足出来ないでしょ?? ほら、私が満足させてあげるわよぉ」



 前屈みになって、ふくよかな双丘をこれ見よがし強調させこちらに向けて来るのですが……。


 凝視しては首が向いてはいけない方向に向いてしまいますのでね。


 速攻で地面に横たわる小石さんへと視線を落とした。



「おい、てめぇ……。誰が貧相だって??」



 此方の腕を振り解き、先程の体勢を維持する彼女の下へと進み始めてしまった。



「私の名前はデイナよ。そこで転がっているリザード達と同じ種族。分かったかしら?? おチビちゃん」



 大蜥蜴の、魔物としての名称はリザードって言うのか。


 一つ勉強になりましたね。




 ――――。


 いかん、満足気に頷いている場合では無い!!



「話し合いで解決したいから!!」



 これ以上の暴力沙汰はいけませんっ!!!!



「うっさい!! おら、女だったら拳でケリをつけようじゃないの」


「いいわ。乗ってあげる。私が勝ったら……。そうねぇ」



 デイナの瞳が俺を確と捉える。



「あそこの荷物とそこの……。彼を貰っていくわ」


「はい??」



 想像していなかった発言に自分でも驚く程の拍子抜けした声を出してしまった。



「優秀な子供が産まれて来そうな良い体しているからねぇ」



 淫らな唾液を纏わせ、薄い唇に塗りたくり。此方を誘う瞳を浮かべた。



「いや、あの……」



 俺は賭けの商品ではありませんよ?? と伝える前に。



「いいわ。その代わり、私が勝ったら金輪際強奪行為を止めて貰うわ」



 取れる物なら取ってみろと、自信満々の表情でマイが賭けを承諾してしまった。



「決まりね。お兄さん待っててね、直ぐに終わるから」



 アイツが負ける姿は浮かばないけども、万が一の可能性も捨てきれない。



「マイ!! 頼むぞ!!」



 期待を籠めた台詞を力強く、小さいながらも大変頼れる背中に向かって叫んでやった。



「おう!! そこでおにぎりでも作って待ってろ!!」



 やだ、男らしい……。


 じゃなくて。


 そこは任せろ!! では??



 もっとカッコイイ台詞を期待していたのに。本当、台無しですよ……。



「さてと。どうする?? 私はこの武器を使うけど??」



 腰に装備していた短剣を二刀取り出し両手に構える。


 右手の武器は短剣と呼ぶには長い形状であり、そして左手の短剣はそれよりも短い。何だかちぐはぐな二刀だな。


 どういった戦いをするんだろう。



「得物を装備したわね。こっちはコレで十分よ!!」



 男らしく拳をぎゅっと作り、相手に突き出して話す。



「へぇ。素手で私に勝とうって言うの??」


「当り前よ。私、弱い者虐め嫌いだし」


「あはは。面白い冗談ね」


「冗談じゃねぇって。アバズレ女」



「「…………」」



 深紅の瞳と、黒緑の瞳の視線が空中で衝突し。


 暗き闇の中で火花が飛び散る。



 息の詰まる沈黙が始まり、硬い生唾を喉の奥へ送り込み。


 胃へと到達すると同時。



「おっしゃぁああ!! くらぇえええ!!」



 マイが覇気ある雄叫びを放ち、デイナの下へと直進した。


 やはり沈黙を先に打ち破ったのはマイか。


 アイツ、待ちの一手が苦手だものね。



「へぇ!! 速いじゃないか!!」



 マイの右の拳を難なく躱し。



「そら!! 避けてみな!!」



 お返しと言わんばかりに左手に持つ短剣で彼女の急所。


 心臓目掛けて何の躊躇も無しに突き刺した。



「おっせぇ!!」



 短剣の軌道を見切り、直進してくる得物の軌道の更に上。


 御自慢の脚力を生かして宙へと舞い上がり、体を捻った蹴りをデイナの顔面へと目掛けて放つ。



「ちっ!! ちょこまかとぉ!!」



 おぉ!!


 躱した!!


 今の蹴り、絶対当たると思ったんだけどな。



「あいつ、中々の身のこなしだな」


 相手の実力を褒め称えるかの様にユウが腕を組んで、ウンウンと頷く。


「確かに、上手いよな」



 彼女の一言に同感し、此方も思わず唸ってしまう。


 攻撃の手は決して緩める事は無い、しかしそれは我武者羅にでは無く。必ず相手の反撃を予想しているのだ。



 現に。



「ふっ!!」


 マイの腹部目掛けて鋭く短剣を突くと。


「ふんがぁっ!!」



 それを待っていました!!


 半身の姿勢で躱し、激烈な反撃の拳が。お返しと言わんばかりにデイナの顎先に襲い掛かるのだが……。



「甘いねっ!!」



 右の短剣の切っ先をマイの腕の下から突き上げ、拳の進行を妨げる。



「あっぶっ……!! こんにゃろう……。私の可愛い腕がちょん切れたらどうしてくれんのよ」


「犬の餌にしてやるよ。あ、ごめ――ん。犬も不味そうだから要らないって」


「ぶちのめすぞ!? ごらぁあああ!!」



 そして、相手の性格を熟知した誘導……。



「なぁんか。雲行き怪しくない??」



 誰とも無しに溜息と共に苦言を吐いてしまった。



「そうですわねぇ。単細胞馬鹿とは相性が悪いのかもしれません」



 アオイが此方と同程度の大きさの溜息を吐く。



「相手に翻弄され過ぎ。私なら直ぐに決着」



 そして、海竜様の辛辣な評価が下ってしまった。



「カエデ、それはちょっと言い過ぎじゃない?? アイツ、素の力で戦っているんだし」



 相手は獲物を装備。


 しかし、マイは継承召喚処か。付与魔法も使用していないのだ。



「相手を見下しては駄目。全戦力を以て、一気苛烈に殲滅するのが常套句です」



 カエデの全力、ね。


 俺が受けたら炭の一欠けらさえ、この世に残らないでしょう。


 若干引きつった笑みを浮かべてカエデの冷静沈着な表情を眺めていた。




 そしてその直後、戦いの最中に視線を切ってはいけない事を身を以て思い知る事になる。




「はい!! 貰ったぁ!!」


「へ?? おぼぐ!?」



 強烈な打撃音が響くので、熾烈な戦いを継続させる彼女達の方へと顔を向けると……。


 何と!! 狂暴な龍が此方に向かって飛んで来るではありませんか!!



 やっべ!! 間に合わな……。



「うぶっ!?!?」


「いててぇ――……。あんにゃろう。私の腹を蹴る何て、良い根性してんじゃない」




「よぉ――。マイ、手ぇ。貸そうかぁ??」


「引っ込んでなさい!! ちょぉぉ――っと油断しただけなんだから!!」



 ユウの優しい助力を拒絶。



「お腹、大丈夫??」


「大丈夫!! 私のお腹は鉄よりも硬い!!」



 カエデの冷静な言葉にしっかりと反応出来る辺り、まだまだ余力は残している事が窺えます。


 しかし……。


 何んと言いますか……。



 いい加減、退いてくれないかな??



「ファイ。どいふぇ」


「ひゃぁあっ!!!!」



 顔の上に覆いかぶさった柔らかいお肉に向かって懇願すると、何やら上擦った声と共に飛び上がって頂けた。



「ぷはっ。――――。あのね?? 人の顔を緩衝材代わりに……」


「人のお尻の下で何してんのよ!!!!」


「うぶぐっ!?」



 熟れたトマトも思わず、えぇ――っと。


 訝し気な顔になってしまう程真っ赤な顔の彼女から強烈な平手打ちを横っ面に頂きましたとさ。



「何すんだよ!!」


「あ、あんたが悪い!!!!」



「あははは!! 楽しそうだねぇ」



 貴女は楽しいかも知れませんけどね!?


 こっちは超理不尽な攻撃を食らって涙目なんですよ!?



「あ、あったま来た!! もういい!! 本気出す!!」



 羞恥又は攻撃を受けた悔しさ。


 そのどちらとも見受けられる赤みを帯びた顔をデイナの方へと向け。大股で彼女の方へと進んで行く。


 先程とは打って変わって、その背中にはある種の決意にも似た雰囲気を感じた。



「お帰り。さぁ、続きと行こうか??」



 それをまたしてもお道化て迎える彼女。


 アオイの言う通り、相性が悪いのかな?? また翻弄されてしまいそうな感じだし。


 しかし、俺の心配の種は直ぐに杞憂へと変わってしまった。



「ふぅ――。風の息吹、我に宿れ。いっくわよぉぉ!! 風爆足ウィンドウバースト!!」



 マイが右手を前に翳すと、淡い新緑の魔法陣が出現。


 一陣の風が彼女の周囲に渦巻き、それが体の中に吸収されるように集まって行く。



 おぉ!!


 あの化け物が空へ逃げた時に使用した奴だな!!


 速さに特化した付与魔法。


 是非とも地上で見せてもらいたいものだ。



「さぁて、来るのかい??」



 マイの魔法を見たデイナの表情から余裕が消え失せ、真剣な表情に変わる。



 気分の切り替え……。じゃなくて。


 危険な匂いを嗅ぎ取るのが上手いと呼ぶべきか。




「えぇ。三十秒でけりをつけるわ」


「随分と舐められたものだね?? そんなに早く終わったら……。つまらないじゃないか!!」



 二刀を構え風の力を吸収し終えたマイへと向かい突撃する。


 右手の短剣を鋭く腹部に刺し込むが、そこにマイの姿は既に無かった。



「え?? キャッ!!」



 デイナの後方からマイが現れ、強烈な蹴りを無防備な背にお見舞いした。


 それを受けて地面に無防備なまま叩きつけられる。



 うぉ……。


 今の痛そうだな。



「ゲホッ……。一体どんな魔法使ったのよ」



 服に着いた土を払い立ち上がるものの。


 かなりの痛手を負ったようだ。先程までの余裕が消え失せ、足に力が入っていない。



「只単に速く動いているだけよ」


「そ、そんな速く動ける奴がいるか!!!!」


「現にあんたの目の前にいるじゃない」



 これが当然だと言わんばかりに言い放つ。



 むっ……。


 今の表情、ちょっと格好良かったな。



「なぁ、今の動き見えたか??」



 今度は視線を切らずにユウへ尋ねた。



「こうやって遠目で見ると見切れるけど、あれだけ近いとあたしでも見失うかな」



 何か影の様な物が動いたとしか見切れなかったし。


 いかんな、もっと訓練を積まないと。



「さて、どうする?? 降参??」


「誰が、あんたなんかに……!!」



 実力差を見せつけられて尊厳を傷つけられたのか、憎しみを込めた瞳でマイを睨む。


 そして、素早く左手の短剣を納刀。


 腰に隠していたナイフをマイへと向かって投擲する。



「おっそ」



 直線状に何の工夫も無く向かって来る凶器を確実に見切って、躱し。



「お返しだぁああ!!」



 直進はこうするんだよ!! と。


 凶器の軌道を模倣して相手に突貫を開始した。



「ちぃっ!!」



 再び二刀で迎え撃つのだが……。


 何か、猛烈な違和感を覚えた。



 何だろう、この違和感。



「くらえぇええ!!」


 

 デイナが左手に持つ短剣をマイに向かって突き出す。



「はっ!! あんたの攻撃が届く前にぃ…………。っ!?」



 完璧に彼女の攻撃を見切ったと思いきや、何んと。


 頬に切っ先が届くではありませんか!!



「ぬぅっ!?」



 距離を見誤ったのか??


 そんな馬鹿な。戦いに長けたアイツが相手の得物の長さを……。



「ふふんっ。真っ赤な血だねぇ」



 そ、そういう事か!!



 左手に持っていた武器を納刀して、右手に持つ武器を左手に装備。


 そして左手に納刀した武器を右手に。


 つまり、一連の動作の中で左右の武器を交換していた訳だ。



 成程ぉ、左右の武器の長さがちぐはぐだったのはこの錯覚を利用する為だったんだな。



「さぁて、お次はどんな攻撃を繰り出すんだい??」



 でも、例え錯覚を利用したとしてもだよ??


 あの速さを見切れる動体視力は流石だよな。



 両手の武器をお手玉の要領で交換し続け、マイに向かって歪に口元を歪めながら話す。



「あっそう。じゃあその短剣壊すわよ??」


「え??」



 マイが言葉を放つと、彼女が立っていた場所から土埃が舞い上がり。その姿を消失させてしまった。


 はっや!!


 嘘だろ!? アイツ、何処に行った!?



「嘘でしょ!?」



 デイナが警戒を最大限に高め、二刀の短剣を体の真正面に構える。


 しかし、その武器は一陣の風が横切ると同時。


 火花を上げて短く千切れ飛んでいってしまう。



「な、なによ。これ……」



 突風が目の前を通過する度に。己の武器が切られ、徐々に短くなって行く様を愕然として見つめていた。


 そうしている間にもマイの姿を捉えれないようだ。



 常軌を逸した速さ、か。


 全く、凄い奴だよ。お前さんは。



「ふう……。まだやる??」



 姿を現し、武器を失って尻もちを付いているデイナを見下ろした。



「…………降参よ。武器が無くなったら戦い様がないわ」



 戦意を失い、負けを認めたようだ。



「これに懲りたら悪さはしないように。いいわね??」



 力無く項垂れている彼女に勝利の台詞を言い放ち、こちらへ向かって歩み出した。



「マイ!! 凄いじゃないか!!」



 包み隠さない素直な言葉で彼女を迎えてあげる。


 馬鹿みたいに飯を食っているのはこの時の為。そう考えてしまった位ですからね!!




「あれくらい当然よ」



 素直な言葉に少しばかり照れてしまったのか、ふいっと視線を外す。




「まぁ、私ならあれ程の相手。瞬殺出来ますけど??」


「どうしてあんたはいちいち一言多いのよ」



 アオイの言葉に難色を示す。



 何はともあれ!! 野盗の首領を退治し、此れにて一件落着っと!!


 さて、これからの行動を問いただそうとすると。



「う――ん。あり?? 姉御!?」



 カエデに調理された黒い塊が目覚め、覚束ない足元でデイナの下に駆け寄った。



「大丈夫ですか??」


「心配いらないさ。それより……。仲間を抱えな。ずらかるよ」



「へい!! ま、先ずは……。えぇ!?!? 何で埋まってんの!?」



 地面から生えるトカ……、おほん。


 リザードを引っこ抜き。



「んっ!! んんっ!!!! ん――――っ!!」


「ひゃ!? デカイ繭!?!?」



 こっちも助けてくれ!!


 ビッチビチと、砂浜に打ち上げられた魚の動きを模倣する繭を肩に担ぎ。



「あ、頭が割れそうにいてぇ……」


「が、頑張れって」



 肩に繭を担いだまま、葱擬きを励ました。


 忙しそうで、手伝ってあげたいけど。生憎、敵対関係ですからね。


 温かい目で見守り続けましょう。




「ほら!! 早く行くよ!!」



「「へ、へいっ!!」」

「ん――っ!!」



 子分達を連れて、西の森へと向かって行くその背中に向かい。



「ちょっと!! もう強奪何て真似しないでよ!!」



 マイが強く釘を差した。


 全くのその通りだ。これ以上厄介事を起こして貰ったら困る。


 それに再び事件を起こすのなら、軍やら周囲の警察関係の方々に迷惑を掛けてしまうのは目に見えているからな。



「さぁ?? どうだろうねぇ?? 野盗は他人から盗むのが仕事……。またあんた達とはどこかで会うかもね!!」



 捨て台詞と言うべきか。


 その言葉を発すると同時、闇に紛れ姿を消した。



「これで懲りればいいんだけどな。――――――。おいおい。あいつら、一人忘れてるぞ」



 俺が矢を当てた一体がまだクルクルと目を回しつつ地面の上で気持ち良さそうに横たわっていた。


 仕方がない。


 このまま捕えられたら拷問される恐れがあるし、起こしてやるとしますか。



 太腿に突き刺さった矢を抜き、ゴツイ肩を大きく揺らしてやる。



「おい!! 起きろ!! 皆帰っちゃったぞ!!」


「ん――。まだ寝させてよぉ……」



 駄目だ、気持ち良さそうに寝惚けている。


 男の癖に、妙な猫撫で声出しちゃってまぁ――……。



「起きろって!!」



 それでも諦めないで揺さぶり続けると目を開き、ゆるりと上体を起こした。



「あれ……。おはよう??」


「おはよう」



 まだ自分の置かれた状況を確認出来ないのか、目をぱちくりと瞬きを繰り返し。俺の顔を何度も縦に割れた瞳に刻み込む。




「皆帰ったぞ??」


「嘘!? 待ってくれよ――!!」



 リザードがデイナ達とは反対方向、つまり東の方向へと駆け出していく。



「違う、あっち」



 マントを呼び止めると、彼女達が去った方へと指を差した。



「お、ありがとう!! 悪いね!! そしてぇ……。あばよぅ!!!!」



 捨て台詞がまぁ――似合う事で。



 でも一応、これで任務は達成かな??



 いや、まだスノウの街へ赴き。王都へ向けて伝令鳥を飛ばさないと。


 まだ残る任務対して大きく溜息を吐き、リザードが意気揚々と大股で森の奥へと駆けて行く様を何とも言えない感情を籠めて見送った。





最後まで御覧頂き有難う御座いました。


深夜の投稿になってしまい、大変申し訳ありませんでした。


明日も……。日付が変わっていますので今日になりますが。投稿させて頂きますので今暫くお待ち下さい。


それでは、皆様。おやすみなさいませ。良い夢を御覧になって下さいね。

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